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チャイナ・パニック


創る名無しに見る名無し [] 2019/01/20(日) 13:02:34.42:p8OiKX6n
「中国大恐慌」の次スレに当たるスレです。

主人公の名はリー・メイメイ。通称メイ。リー・チンハオとラン・ラーラァの一人娘。18歳。
もう一人の主人公の名はヘイロン。民主化を遂げた中国の初代大統領の非嫡子。25歳。

前スレ「中国大恐慌」
ttps://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1542744080/
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:03:45.51:p8OiKX6n
あ。スレタイに【リレー小説】入れ忘れた!
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:05:05.12:p8OiKX6n
あと時代設定は2028年でお願いします。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:08:21.34:p8OiKX6n
その女は27歳になっていた。
地獄の底からようやく生還した悪魔は、獲物を求めて咆哮した。
「リー・チンハオとラン・ラーラァを殺しに戻って来たぞ! リウ・パイロン、貴様も殺してやる!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:11:30.28:p8OiKX6n
北京大学に合格したリー・メイメイは祖国中国へ帰って来た。
アメリカの両親の元を離れ、独り暮らしが始まる。
「フン。私は寂しくなどないぞ」
メイはそうひとりごちると、駅から下宿を探して歩き出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:18:03.63:p8OiKX6n
祖国に帰るのは初めてではなかった。両親について何度か帰ったことはあった。しかし一人で中国の町を自由に歩くのは初めてであり、楽しくもあり不安でもあった。

父親のチンハオが英語が不自由なため、中国語は問題なかった。
「お腹空いたな」ときょろきょろ見回す。
アメリカのハンバーガーのチェーン店などもあったが、珍しいものが食べてみたくて小さな屋台のような店へ入って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:27:12.80:p8OiKX6n
店は混んでいて、普通に相席になった。料理名とどんな料理が出て来るのかが結びつかず、困っていると相席の兄ちゃんが話しかけて来た。

「日本人か?」

そう聞かれて顔を上げるとイケメンだったのでちょっと警戒した。
しかし微弱ながら赤い『気』をユラユラと発しており、格闘技をやっている仲間であることは容易に見てとれた。

「中国人だよ。国籍はアメリカだけどさ。
あ、お兄さん、ちょっと教えて? これどんな料理? 肉肉しいのが食べたいんだけど」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:39:06.49:p8OiKX6n
メイはルーロー飯と鶏肉の炒麺にありつき、ホクホクの笑顔で箸を取った。

「お兄さん、助けて貰ったお礼に一口あげよっか?」

「要らん」

男は無表情にそう言いながら自分の五目炒飯を黙々と食べた。

「お兄さん、格闘技、何やってんの?」

「オリジナルのマーシャルアーツだ」
メイが唐突に聞いたにも関わらず、男は即答した。

「へぇ、また本場だから『アチョー!』とか叫ぶヤツかと思ったよ」

「当ててみせよう」そう言うと男は箸を置いた。「お前は太極拳。違うか?」

「ヒエー。何でわかんの?」

「筋肉の付き方がいかにも太極拳だ。八卦掌かとも思ったが、それにしては足が美しく、長い」

「あ、ありがとう」
足の綺麗さを誉められ、メイは照れてしまった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:53:27.91:p8OiKX6n
目の前の男をまじまじと見つめながらメイは箸を口に運んだ。
ごつい体格をしているのに顔は本当に綺麗だ。茶色く染め、横に分けた前髪がキザっぽいとは言えた。

「何を見ている」

「まつ毛長っ! って思って」

沈黙。

「ところでお兄さん、なんであたしのこと日本人って思ったの?」

メイがそう言うと、男は見もせずに答えた。

「メニューがわからなかっただろ。それに、中国人にしては垢抜けている。台湾人のようにのほほんともしていない。香港人にしてはクールでもない」

「ふぅん?」

「そして肌の色が黒い。日本のギャルは肌が黒いと聞くからな」

「そんだけ??」

「まぁ、それに」
男はそう言うと金を置いて立ち上った。
「顔が可愛いからだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 13:58:17.88:p8OiKX6n
メイは店を出ると、ウィンドウに自分の姿を写して見とれた。
そりゃね、あのお母さんの娘だもん、可愛いに決まってるよっ。
168cmの高身長にも恵まれた。おまけに誉めて貰った通りの、ハーフパンツからすらりと伸びた脚線美。

フンフンフンと鼻唄を歌いながら歩き出すと、すぐに足を止めた。

「おぉ、喧嘩の匂いだわ」

そう言うと暗い路地裏に向かって走り出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 14:09:05.47:p8OiKX6n
「おい、ヘイロン。てめぇ、調子に乗んじゃねーよ」

それぞれに武器を手にした男達が5人、先程メイが飯屋で出会った男1人を取り囲んでいた。

「コケにしやがって。今日こそただじゃ済まさねぇ」

分銅鎖を手にした男はヒュンヒュンと風切り音を鳴らしてそれを振り回している。

「やめておけ」ヘイロンが言った。「くだらん時間を過ごしたくはない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 14:54:11.89:q0mzWCA2
全然リレーしてないから【リレー小説】は必要ナイアガラ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 14:57:55.32:n8zpaxCS
「ふざけんな、テメーーっ!」
背の低い男が拳銃を構えた。
ヘイロンは少しも動じることなく、それどころか馬鹿にした目つきでチビを見た。
撃たないことは容易に見て取れた。『気』の流れが後ろ向きだ。
「まぁ待てよ」
背の高いチンピラ風の男がチビの拳銃を下ろさせ、言った。
「簡単に殺しちまっちゃ面白くねェだろ」
そう言うと懐から大きなアーミー・ナイフを取り出す。
「コイツでじっくり楽しませて貰うぜ」
舌なめずりをするとチンピラはじりじりと距離を詰めはじめた。
本気で刺しに来るのがわかった。しかしヘイロンはつまらなさそうに目を落とす。構えもせず、突っ立ったままだ。
「ヒャッハー!」
チンピラはそう叫ぶとナイフを大きく振り上げ、そのまま固まった。
ヘイロンの踵と地面の間で潰れる自分の顔が見えた。5人の中で一番強かったお陰で正しく未来を見ることが出来、助かったのだ。
「何してやがるッ!」
ナイフを収めて尻込みするチンピラに業を煮やして、銀縁メガネが分銅鎖を投げる体勢に入った。
するとヘイロンはゆっくりとその分銅鎖の渦へ向かい歩き出す。
「なめんなーーッ!」
銀縁メガネが投げた分銅をギリギリでヘイロンは横へかわすと、すぐに自分から鎖に当たって行った。
すると鎖はぐるぐるとヘイロンに巻きつき、分銅は円を描きながらその顔面に向かって行く。
ヘイロンが小指を目の前に出した。そこに鎖が小さく巻きついた。軌道の変わった分銅は銀縁メガネの顔を直撃した。
「あべぇ!」
「……もう、帰ってもいいか?」
どこまでもなめた態度をとるヘイロンに逆上したチビが再び拳銃を向けた。
「クァーッ! もうこうなったらどうなってもいい! 殺してやるーーッ!」
今度は本気なのがわかった。しかし『気』の流れはその本気を引き止めるように後ろにも激しく動いており、まとまりがなかった。
面倒臭ぇなぁ、どうしようかなぁ、と考えていたヘイロンの顔が突然、恐怖に固まる。
「ヘッヘーッ! 怖いか? 顔色変わったな!?」
調子に乗ってチビが吠える。
しかしヘイロンの視線はチビの後ろにあった。
「何をしてる」
いきなり背後から龍が喋ったような声がして、チビは飛び上がると、恐る恐る振り向いた。
目はその男の腹のベルトを捉えた。視線を上に上げて行く。まさに龍を擬人化したような顔がそこにあった。
「ヒ、ヒイーーッ!? リウ・パイロン大統領!?」
ヘイロンは初めて直接出会うその男の姿を見、身体が硬直してしまった。
傷だらけの顔、ぶ厚い瞼の奥で黄色く光る眼光、筋肉の鎧を着ているようでありながら、鈍重さをまったく感じさせないその体格。
母リーランと自分を捨て、女とカネに溺れた憎むべき父の姿であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 14:59:59.31:n8zpaxCS
あと、2028年の設定はおかしいね。ヘイロン8歳という計算になってしまう。
正しくは2045年だね。それだとメイの年齢が不自然ではあるけど。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 15:39:31.59:p8OiKX6n
うぅ……。ツッコミありがとうございます。

前スレでもそうだったけど、思いついたら思いついたとこまで連投でバーっと書きます。
後はお好きにどうぞ。

時代設定は2040年とし、ヘイロンの年齢を二十歳に改めます。
計算できない子でごめんなさい……。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 15:51:31.59:p8OiKX6n
次の瞬間、拳銃を構えるチビの前からリウ・パイロンの巨体が消えた。嘘のように消え去ってしまった。

「……えっ?」

呆然とするチビの真下から、龍は再び現れ、振り上げるその手が拳銃を奪った。

「こんなものは持ってはいけなーい!」

そう雄叫びを上げながらリウ大統領は片手でバキバキと拳銃を握り潰してしまった。

「ヒャアァァー!!」
五人はバラバラに逃げ出してしまった。

ヘイロンだけ動かなかった。
いや、動けなかったと言ったほうが正しい。
「なっ、何て拳銃の奪い方だ……。あんなに派手に奪わなくても……」

「もっと普通に奪えばよかったとでも言うのかね?」
リウは優しくも厳しい目でヘイロンを睨む。
「それでは悪い子はいつまで経っても悪い子だ。心に消えない傷を残してやらねばならん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 16:02:38.38:UVRnHnhP
そう言うとリウはいそいそとズボンを脱ぎ、パンツも下ろした。そして股間に屹立するその逞しい丸太ん棒を見せつけた。

「見よ!これぞ宝刀『マジカル・ステッキ』!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/20(日) 18:11:30.27:ER/dyEkN
ヘイロン「リウ、お前また浮気してたな」
リウ「すぐ言う〜!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/20(日) 19:13:18.71:UVRnHnhP
「君もコレで教育して欲しいのかい?」
リウはニコニコ笑いながら茂みに隠れて見ていたメイのほうを向いた。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/21(月) 01:32:11.30:TDBy7X52
「へ、変態だ。お母さんが言ってた通りの変態だ」
メイは震え上がったが、勇気を出して立ち上がると、リウに向かってダッシュした。
長い脚と歩法により約10m先のターゲットへ3歩で到達する。
そこから一気に脚を一直線にし、蹴り上げた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 04:58:34.87:CvgMIBsP
リウはバレリーナのように片足をあげ
メイの足にかぶせるように優雅に受け止めた。

もちろん、チンポ丸出しで!
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 05:55:23.89:qEJSksQy
マジカルステッキが延びてメイの顎にクリーンヒット。

メイはグロッキーになった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 06:30:35.35:55OBvBt6
ヘイロンはメイを連れ逃げ出した
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 07:13:42.72:TDBy7X52
「むぅ。しかし……似ていたな」
どちらのことを言っているのかわからないが、リウは二人の背中を見送りぬがら、そう漏らした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 07:34:00.78:CvgMIBsP
メイは孤独だった。いつも人との付き合いを避け学生時代は司書めいたことをやっていた。

幼少期のメイは家族と仲間たちに囲まれて幸せに暮らしていた。今の状況にいたるきっかけは10才の時に見た夢だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 08:16:49.28:MFzj202X
夢の中に自分によく似た、しかし女子高生ぐらいの女が出て来て、こう言ったのだ、
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 10:27:06.31:tc/edopD
「うぬはだーせんよごらをあげる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 10:58:33.43:tc/edopD
メイは貞子の呪いのビデオを見てしまったのだ!
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/21(月) 15:16:22.00:CvgMIBsP
よく見ると貞子じゃない。誰だコイツ!?
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 16:06:44.68:tc/edopD
ヘイロンはメイを連れて、走って、走って、毘沙門天を祀る赤い祠のある公園まで来ると、ようやく足を止めた。
荒い息を収める。見るとメイはほとんど息を荒くしていない。

「ちょっとお兄さん」メイが言った。「……手」

「あぁ」とヘイロンがようやく気づく。「もう離してもいいな」

ずっと繋いでいた手を離すと、メイの掌は汗まみれだった。しかし自分の汗じゃない……。

「お兄さん、強いね」掌を見つめたままメイが言う。
「お前の登脚(ドンジャオ)も大したものだ。よくあそこまで脚が上がるな」
「へへ……」メイが得意になる。
「しかし強くはないな」
「あ!?」
「実戦の経験はないだろう。違うか?」
「残念でした〜。アメリカの太極拳の大会じゃ何度も優勝してます〜」
「やはりスポーツか。そんな程度だろうと思った」
「にゃにをぅ!?」
「ルールに守られ、命を懸ける覚悟もない闘いなど、実戦とは呼ばん」
「い……命?」メイがびっくりして笑い出す。「何を言い出したの、この人?」
「格闘術、武術というのは元々人間を殺すためのものだ。それを忘れたスポーツ格闘技など、平和ボケしたお遊びのようなものだ」
「な、何だよ急に……トゲトゲしちゃって。ムカつくなぁ」
「嫌いなんだよ」
「あなたの好き・嫌いを押しつけられても困ります」丁寧にそう言いながらメイは喧嘩腰だ。
「試してみるか?」ヘイロンが左拳を前に構える。
「おぉ、思い知らせてやんよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 16:13:28.05:tc/edopD
そう言っておいてメイは鶴が舞うような構えに入った。しかしそこではっとして動きを止める。
ハオパパから言われていたことを思い出したのだ。

「メイ。武術とは人を殺めるためのものではない。人を生かすためのものなのだ。
また、人を攻めるためのものでもない。人を守るためのものだ。
三つ目に、武術は人前で見せびらかしちゃいかん。いつも自分が座っているために身につけるものなのだ。
1、武術は人を生かすもの。2、武術は人を守るもの。3、武術をひけらかすな。
この三つをよく覚えておきなさい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 16:28:59.42:tc/edopD
「はい……パパ」と言うとメイは構えを崩した。

「どうした」ヘイロンが不思議がる。「やらんのか?」

「バカみたいなことはしねーよ」
メイはベロを出した。
「あたしの名前は李 苺妹(リー・メイメイ)。それだけ覚えときな」

「可愛すぎて似合わん名だな」

「うっさい! アンタの名前も一応聞いとくよ」

「黒竜(ヘイロン)だ」

「苗字は?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 17:13:08.02:tc/edopD
「李だ。リー・ヘイロン。お前と同じだな」

「うわぁ、やっぱ李って姓、多いんだ!」

さっきまで喧嘩腰だったことなど忘れたかのように屈託なく笑うメイをしばらく眺め、ヘイロンは言った。
「お前、いかにも親に愛されて育ちましたって感じの健康さだな」

「うん! パパもママも大好きだよ」

「いいことだ」
そう言ったヘイロンの顔に陰が差した。
「俺の親父は息子の顔を覚えてすらいない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 18:29:50.53:55OBvBt6
メイが両親の祖国で一人暮らしをすると決めたのは
もう一人の自分が両親や仲間達を傷つけることを防ぐためだ。

もちろん何度か訪れる機会があって自信も中国語に堪能だったからと言うのもある。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 18:44:53.42:MFzj202X
下宿で初めて寝た夜、メイは久し振りにあの夢を見た。

「お姉ちゃん……お姉ちゃぁぁん……」

自分にそっくりな女の子が泣いている。

しかし自分はたぶんその子の年齢を追い越してしまった。
昔は大人のように見えたのに、今では自分よりも背が低い。

「お姉ちゃん……。私を思い出して……」

自分には姉も妹もいない。
でも、もしかしたらこの子は生き別れの妹?

「あなたは誰?」メイは話しかけてみた。

すると女の子が振り向き、みるみる大きくなると、悪魔の笑いを浮かべてこう言ったのだった。
「私はラン・メイファン! 地獄の底からようやく甦った!」

次の瞬間、胸の上に何かにのしかかられ、メイは叫びながら目を開けた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/21(月) 21:19:16.16:1cdi4alR
「ただいまぁ〜ベロ〜」
そう言いながら赤い舌を出して、自分を見つめて悪魔のように笑う女がそこにいた。

確かに夢に出て来る子だ。しかし、その10年後といった感じで、大人の色気がムンムンになっていた。
色黒の肌に長い黒髪、肉食動物のような鋭い瞳、むき出した歯並びの中には明らかに尖った牙が上下に四本生えていた。
全裸なのがちっとも不自然でなく、柔らかそうながら豹のように緊張感のあるプロポーションがまさに肉食動物のようだった。

「だだだだ誰!?」
金縛りに合ったように動かない体でかろうじて口を動かした。

「いやぁ、暗かったよ、狭かったよ、怖かったよ。そんな中で憎しみばかり溜めていました」

「いや、だから、誰!?」

「お前だよ」

「え?」

「私は、お前」
そう言うとメイファンはまたニヤリと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 04:27:05.45:yaCj8wWf
リウ大統領がちょっとスケベな感じの寝室で寝そべっていると、3人の女が入って来た。

金髪色白の中国美人が丁寧に挨拶をする。
「陽春でございます。どうか私と……」

丸顔の可愛らしいアイドル系の女性がフレンドリーにピースをする。
「雅雅だよ。私を選んでね!」

黒髪黒肌の地味な女が最後に溜め息をつきながら挨拶した。
「恵妹。……好きにしな」

「断然君だ!」
リウ大統領は恵妹の腕を掴むと、ベッドに押し倒した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 05:38:43.28:2fZM7Eyj
大学時代のメイはいわゆる本の虫という奴で一人でいることが多かった。
だが夜になるとヤリマンビッチに大変身。

男はもちろん女だってホイホイ喰っちまう。夜の町を全裸で散歩したこともある。清楚系に見えて頭の中はエロと下ネタだらけの変態だ。
今さっきだってであって間もないヘイロンとベッドインして、朝帰りしてきてまた寝たところだ。

それはもうひとりのメイが下劣だと忌み嫌うものだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 05:55:46.78:WQQ7iEm0
だがそんな彼女のお仕事は大統領付の秘書だった。
第一希望は変態が高じて排泄物処理業者になろうとしていたが、
武術家であり変態番付上位者でもある大統領が秘書を募集していることを、変態友達から聞き、秘書になる事を決めたのだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 06:39:50.27:Eg6phrnI
学生時代の彼女の日常は変態プレイ、太極拳、読書、セックスだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 07:25:35.74:+G/B64Dp
「ま、ね。アメリカ人だから」メイは言った。「のびのび育てばそうなるでしょ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 07:26:23.08:+G/B64Dp
目に涙を浮かべてメイは続けた。「でもバラさなくてもいいじゃない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 07:37:23.17:JreRWjbP
でも彼女は心のどこかで興奮していた。

それに対してメイファンはそれらの行為をハオやリウに通ずる行為だと憎悪していた。

この十数年メイファンにとってはみたくもない悍ましき光景を見せ続けられる拷問と
誰にも気づかれない底なしの孤独に苦しめられた生き地獄だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 07:50:52.36:+G/B64Dp
ハオ「ええっ? 俺、何かしたっけ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 09:54:20.55:HjVL1KxR

メイ「っていうかあたし、大学入ったばっかりで、明日初登校なんですけど……。」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 09:56:40.07:HjVL1KxR

リウ・パイロン「私が変態番付トップだということをよく知っているね? よきかな、よきかな♪」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 10:14:36.94:HjVL1KxR
メイファンは冷蔵庫から勝手に缶ビールを2本取り、1本をメイの前に置くと、自分のを開けて一気に飲み干した。
「クァーッ! 10年振りの酒は旨ぇー!」
そしてすぐに立ち上がると、また冷蔵庫を開けた。ビールはもうなかった。
「もうねーの!!?」
まん丸の目で振り返ると、メイの前に置いたまだ開けられていない1本を涎を垂らして見つめる。
「どどどどうぞ」メイが勧める。
「いや、それはお前のだ。飲め」
「ととところで聞くの3べん目ですけど……どなた?」
「私はお前だ。そう言ったろ」
「いいい意味がわかりませんですけど」
「お前の中にずっといたんだよ」メイファンの顔が険しくなった。「誰からも忘れ去られたまま、お前の中で、私のことを思い出しもせず幸せになる奴らのことを見ていたんだ。
お前が私に話しかけ、私が名前を答えれば復活できたんだ。しかしお前、なかなか私に話しかけてくれなかったよなァ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 10:21:23.45:HjVL1KxR
「ところでそれ、早く飲め」
メイファンは顎でメイの前の缶ビールを指した。
メイは「はい」とも言わずに怯える手で缶を開け、ちびりと飲んだ。
「イッキしろボケ」
メイは泣きそうになりながら天井を向き、味もわからずビールを飲み干した。
「よし、師弟の盃、確かに交わしたぞ」
「はへ?」
「今日からお前は私の弟子だ。覚悟しろ」
そう言うとメイファンはとても楽しそうに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 10:26:26.98:HjVL1KxR
ちなみにメイファンが消去されてから22年が経っていたが、
その間メイファンがいた異次元での時間経過は現世界とはずれており、
メイファンにとっては10年しか過ぎていなかった。
それでも10年間何もないところに閉じ込められ、
皆が幸せになるところを一方的に見せつけられ、
自分の声は誰にも届かない人生を送らされたメイファンは、
憎しみと鬱憤の溜まりまくった復讐鬼と化していた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 12:31:38.16:JreRWjbP
そのビールは前の住人が置いていったものだった。
メイは急に襲いかかる腹痛に顔を歪ませ
おなかを抱えてトイレへ向かったもの
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 12:41:53.45:/UngV1cx
リウ・パイロン大統領は恵妹をベッドに押し倒すと、横から髪を撫でながら囁いた。
「フフ。私がなぜお前を選んだか、わかるかね?」
「マニアだからだろ」恵妹は言った。「一番冴えないのが好きなんだ、このド変態が」
「違うよ」そう言ってリウはぶちゅうと音を立ててキスした。「お前が未完成の魅力に溢れているからだ」
「ただ地味なだけだ、ボケ親父」
「他の二人は既に完成されていた。完成されてしまったものに面白味はない」
リウは恵妹の着物の前を開帳し、地味なAカップの胸をねちっこくこね回しながら、続けた。
「お前はまだこれからどんどん進化して行くのだ。お前には楽しむべき未来がたっぷりある」
そう言うとリウは立ち上がり、いそいそとパンツを脱いだ。
股間から屹立するマジカル・ステッキがその逞しい姿を現し、燦然と輝いた。
「さぁ、恵妹よ。私の色に染まれ」
鋼鉄の固さで誇らしげにまっすぐ天を向くステッキを、目を見開いて凝視しながら、恵妹は感服した。
「本当に53歳なの? 凄い……!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 12:52:48.03:+G/B64Dp
しかもリウ・パイロンは男色もイケる真性の変態だ。
また、完成してしまったものを破壊することの喜びも知っていた。

だが、リウは気づいていなかった。
恵妹を選んだのは開発の楽しみだけではなく、
その黒い肌、その乱暴な喋り方が、昔懐かしいあの女に似ていたからだということに。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 17:01:53.01:t64AZXqJ
「あったまきた!」
そう言うなり立ち上がると、メイはメイファンに掴みかかろうとした。しかし全裸なので掴むところがない。

『これは不法侵入のこの女を断罪して生かすため、パパとママの大切な自分自信を守るため、見せびらかすわけでもなし……』
「うん! パパの教えに背いてない! 今こそチンハオ流太極拳、使うべき時!」
メイは狭い部屋の中で長い手脚を器用に畳み、蟷螂のような構えをとった。

「きゃあ怖い〜〜。この子、私に歯向かう気〜〜?」
メイファンは缶ビールの底から最後の一滴を諦めると、棒読みでそう言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 17:24:49.68:t64AZXqJ
「チンハオ流太極拳、カマキリの型!」
メイの身体は微動だにしない。しかし手だけが無数のカマイタチのようにメイファンに襲いかかった。
全攻撃がメイファンにヒットする。メイファンはぱたりと倒れた。
「手は抜いた」攻撃を終え、メイが静かに言う。「アンタが気絶してるうちに警察を呼ぶわ」
メイファンが顔を起こし、欠伸をすると言った。「もう、終わった?」
「な、なんで!?」メイが驚く。
「見えねーのかよ、ヒヨッ子め」
そう言うとメイファンは立ち上がり、素っ裸の自分を堂々と見せた。
「見ろ!」
「み……見ろと言われても……」
あまりに堂々と陰毛の真下から覗くピンク色のハマグリまで見せられてメイは思わず照れた。
しかし気づいた。女の中から真っ黒な『気』が発せられ、全身を鎧のように包んでいた。
「あ……」
「お前も出来るだろ? 出来るはずだぞ。やってみせろ」
メイは構わず無視して警察に電話をかけようとした。
すると目の前の女は舌打ちするなり一瞬で至近距離まで近づいて来た。
「ヒッ!?」
頭突きをされる、そう見えた未来は見事に外れた。女はメイの顎に頭をぶつけると、そのままメイの中へ入って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 18:12:33.41:t64AZXqJ
すぐさまメイはアメリカへホログラム電話をした。
ちょうど二人とも起きている時間だったが、時差計算などする余裕もなく急いでかけた。
すぐにパパが出た。

「メイ〜〜! さっそくホームシックか?」
部屋の真ん中に浮き上がって登場した髭面にパジャマ姿のハオは大喜びだった。パパのほうが娘シックなのは間違いなかった。

「パパ!」
緊張感のまったくないハオの顔を見て、メイは心からほっとした。

「メイ〜? パパったらあれからずーーーっと心配してるのよ〜?」
ハオの後ろからララが悪戯っぽい笑顔を浮かべて現れた。
「ラ、ララもだろ!」ハオが顔を赤くしてジタバタした。

「ママ!」
優しいララの顔を見て、メイは既に顔中を濡らして泣いていた。

「大丈夫? そっちは暮らしやすい? 不安とか、ない?」
「あのね、ママ」と言おうとしたメイの口から、自分のものではない声が言葉を遮り、こう言った。
「リー・チンハオ。すぐに北京へ来い。さもなければ娘を殺す」
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/22(火) 18:22:35.18:Eg6phrnI
しばし何らかの会話が続いたあとメイファンは電話を切った

メイファンはオナニーを始めた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 18:29:57.32:JreRWjbP
メイファンはオナニーをやり終えると今度は
全裸のまま外へ出かけた。

メイの中に封じ込められていた頃からメイファンの感覚は共有されていた。
性癖もメイと同じだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 18:40:23.12:PrlE0WC2
メイファンにとってメイメイは向き合いたくないし認めたくもない
本当の自分だった。

そしてメイファンは孤独だった幼少期や殺し屋の経験を積む過程で生まれた
メイファンなりに考えるカッコイイ自分だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 19:18:51.65:3dIpZYE9
まだ薄暗い眠っている街を全裸のメイファンは
恥ずかしがることもなく堂々と練り歩く。

通行人なんざ知ったことではない。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 19:23:03.67:t64AZXqJ
ヘイロンが家へ帰るといつも季節が逆戻りする。
4月の陽射しは急に翳り、冷たいコンクリート壁のボロアパートには2月が染み付いている。

部屋に入ると母が倒れていた。
2m20cmの巨体を真っ直ぐにして床を塞いでいる。
「母さん!?」
すぐに駆け寄り、抱き起こす。
「あァ……。ヘイロン。お帰ァーり」
リーランは力なく言うと、無理やり笑った。

どうしたのかなど聞くまでもない。腹が減っているのだ。
ヘイロンは買って来た五目チャーハンを出すと、リーランは20秒で食べきり、また床に倒れた。

「食パンの耳! 食パンの耳も貰って来たよ!」
45リットルのゴミ袋に一杯のそれを見せたが、リーランは興味を示さなかった。
「うまい棒……うまい棒が死ぬほど食いてェなァ……」
そう言い残すとリーランは気を失った。

「わかった。待ってろよ、母さん。死ぬほどうまい棒、食わせてやるからな」
そう言うとヘイロンは立ち上がり、再び帰って来た玄関のほうを向いた。
「生活保護費も底をついた……。俺のアルバイト代も、もうない」
黒い革手袋をギュッとはめると、黒いマスクを手に持ち、外へ出て行く。
「くそっ。俺達はカネに生かされている奴隷なのか」
4月に冬の風が吹き抜ける中、ヘイロンは明らかな赤い殺気を放ちながら、歩いて行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 19:39:03.59:t64AZXqJ
メイは大学の入学式の間中、周りをきょろきょろと眺めていた。
自分と同じ東洋人の顔が講堂を埋めているのが珍しかったのもある。
しかし、その目は特定の一人を探していた。
周りとは明らかに違うオーラを放つ男なので、いるならばすぐに見つかるはずだった。

『いるような予感、したんだけどな……』

メイはアメリカの学園ヒエラルキーの中で頂点のクイーン・ビーに君臨できる資質は持っていた。
しかしそんなものに興味がなかった上、何よりやはりクイーン・ビーになれるのは白人と暗黙の裡に決まっていた。
中国の大学に進学したのはそんな胸糞悪いヒエラルキーから逃れたいためもあった。
実際、眺め回す限りここにはそんなはっきりした権力を持っていそうな人間は見当たらず、
最底辺のナードに該当しそうなヒョロい黒縁メガネと筋肉質のスポーツマンぽいのが仲良さそうに並んでいたりした。

昨夜はいつの間にか眠っていたので、一連の出来事は夢だと思いたかった。
しかし床にはビールの空き缶が2本転がっており、電話の履歴には夜の22時に国際電話をした跡があった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 20:01:17.29:PrlE0WC2
メイは帰宅すると服をだらしなく脱ぎ散らかし、シャワー室に向かった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 20:23:07.98:PrlE0WC2
「あれはやっぱり夢じゃなかったんだ。」
シャワーを浴びるメイは呟いた。
「まあ、何でもいいけど私の変態タイムは邪魔しないでほしいな」
シャワーのノズルを閉める。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/22(火) 20:48:46.14:t64AZXqJ
そこへ激しくドアの呼び鈴が鳴った。
嫌がらせのように何度も何度も鳴る。
誰だかわかっていたのでメイはゆっくり慌てずに体を拭くとバスタオルを巻き、出た。

「メイーーー!!!」
パパとママが声を揃えて飛び込んで来た。

「……凄い。ほんとに最短で来たね」

「お前、悪魔に憑かれたって本当かーー!?」
ハオはもうずっと泣いていたようで目も鼻も真っ赤である。

「うん。でもあたしを殺すってのは嘘だと思うよ」

「私がメイの中に入って追い出してやるわ!」
ララの目が燃えていた。

「入るってどーやって入んのよ……」

ララはうぐぅと言葉を呑み込んだ。
自分が本当は身体を持たない『気』だけのバケモノだということは娘には明かしていなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 00:29:05.56:VW+Kv2vn
「お集まりの皆さん」
突然、メイの口がそんなことを言い出した。
「御覧ください」
明らかにメイとは違う、大人の女性の声だった。
「それでは、悪魔の登場です」
口の動きと怯えた表情が合わない。
そんなメイの輪郭がぶれたかと思うと、礼儀正しくお辞儀をしながらメイファンが姿を現した。

ハオもララも呆気にとられていた。
メイの身体の中から本当に悪魔が出て来たのだ。しかも全裸で。
悪魔はにっこりと笑うと、いきなりハオの両足首を手刀で薙ぎ斬った。

「わきゃ!?」ハオが泣き声を上げて床に落下する。

そのあとには揃えて脱いだ靴のようにハオの両足が並んでいた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 01:00:01.54:VW+Kv2vn
メイは何も出来なかった。
大好きなパパが目の前で殺されようとしているのに、体が震え上がってしまい、言うことを聞かなかった。
全米の太極拳大会高校生部門で連続優勝した自信は、何の役にも立たなかった。

メイファンはハオの上にのしかかると腹部に手を刺し込み、内臓を引き抜いた。
嬉しそうな顔で右腕を斬り落とし、左腕も斬り落とそうとしたところでララが悲鳴のような声で叫んだ。

「メイっ!」

思わず手が止まった。
しかし娘の名前を叫んだだけだと気づくと、禍々しい笑いを浮かべ、ハオの大腸を掴んでララの口へ押し込みにかかった。

「メイ! やめなさい!」

今度は明らかだった。ララは自分のことを『メイ』と呼んでいた。

「ララ……?」

今、世界で最も憎い女であり、同時に世界で一番愛する姉だった。

「お……覚えてんのかよ? 私のこと……」

ララは何も言わず、太極拳の構えをとったまま睨みつけている。

足首から先のないハオが素早い動きで左の掌打を放つ。
メイファンの右足にクリーンヒットした。

「グアッ!? ハ……ハオのくせに!」

さらにハオは足首のない足で立ち上がると、骨の飛び出した足で突き蹴りを繰り出した。

メイファンがそれを斬り落として避けようとしたところへララの掌打が襲って来る。

メイファンにはその手首を斬り落とすことは簡単だった。
しかし、出来なかった。
ハオは再生する。ハオ自身の超再生能力とララの『白い手』のダブル治療で、いとも容易く再生することだろう。
しかしララは、『白い手』を片方でも斬り落とされれば自身の治癒は困難となり、ハオは自分の傷しか治すことが出来ない。
「メイ」と自分を呼んだ姉を斬ることがどうしても出来なかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 01:09:12.99:VW+Kv2vn
ハオの突き蹴りを後ろへ飛んでかわすと、メイファンは窓ガラスを割って逃げ出した。
一糸まとわぬ姿で外灯の下を走って行く姿が遠ざかる。

ララはハオの両足をくっつけ、右腕を押し当て、内臓を押し込むと、怯えて立ち尽くしているメイを抱き締めた。

「だ……誰だったんだ、あれ」ハオが息を荒らげて言った。

「メイよ」ララが答えた。「わからなかった? 私達の……娘よ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 01:17:53.25:VW+Kv2vn
「クッ……ソ〜……こんなはずじゃ……」
メイファンは夜の住宅街を全裸で歩きながら、悔しがった。
「娘の前でグチャグチャに斬り刻んで、心に穴が空いた娘を乗っ取るつもりだったのに……」

前から男が歩いて来た。
男は暗闇の先のメイファンの格好に気がつくと、慌てたように距離をとった。
黒い手袋に黒いマスクを帽子のように被った男で、血の匂いがした。

「ははァん?」メイファンが面白がる。「見覚えのある『気』だなァ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 01:37:58.33:VW+Kv2vn
ヘイロンは初めて露出狂の女というものを目撃し、ドギマギしていた。
しかし帰り道はこっちだ。どうしてもすれ違わないといけない。
早く通り過ぎて、何も見なかったことにしよう、そう思っていると女が話しかけて来た。
「お前、童貞か?」

「ちちちち違うっ!」思わず返事をしてしまった。

変態女はニヤリと笑うと、いきなり襲いかかって来た。

「キ、キャーーーッ!!」
女みたいな声を上げて逃げ出したヘイロンの背中を掴むと、女は凄まじい力で投げ飛ばした。

空中で鮮やかに回転し、ヘイロンは軽やかに着地するなり言った。
「姐さん、頼むから何か着てくれ」
凄まじい投げだった。常識外れの見た目といい、達人に違いない。服さえ着てくれれば是非手合わせしたいほどだと思った。

「いいね、お前」メイファンは舌なめずりをした。「一番弟子を思い出すわ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 05:02:59.19:KnTyLAO3
すると、突然先ほどまで笑みを浮かべていたメイファンの表情が真顔に変わったあと、
顔を苦しそうに歪ませた。
「あぐっ、ううう」
彼女は膝を付き、呻き苦しみ始めた。
額には脂汗が浮かび上がり、呼吸は荒くなる。
体の芯が燃え上がるように熱い。

「…!?、姐さん大丈夫か?」
ヘイロンは苦しむメイファンにかけより背中に手を添えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 05:55:03.37:rOJJU3Hy
メイファンはヘイロンを押し倒し言った。
「ああっ、服なんざ着てやるから、とっととやらせろ」
メイファンは彼のズボンのチャックを下ろしズボンをパンツごとずり下ろした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 05:58:01.98:EKgbLMwX
ヘイロンはメイファンの腹に突きを入れると言った、
「ヘヘッ、イキのいい女が手に入ったぜ。こいつソープに売ればかなりになるな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 06:34:05.31:I595nFMC
しかしメイファンは、かまわずヘイロンと下半身を繋げ
真夜中の住宅街の道路で大ハッスルした。

公衆の面前で性的行為に及ぶのはハオの遺伝である。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 07:17:15.12:KnTyLAO3
こんな状況にもかかわらずメイは興奮していた。通行人のおじさんやおばあちゃんに見られて快感を感じているのだ。

それはメイファンも同じで、同じ体を使っているので仕方がなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 07:17:49.28:UIf33PjP
ハオ「違う! あれは性行為じゃない! 愛行為だ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 10:28:19.94:aXOfcKB/
メイファンはメイの身体から出て逃げたので、今、二人は別々の人間だ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 12:37:43.74:UIf33PjP
メイはしょげていた。
パパとママのピンチに自分は何も出来なかった。

『アイツの言う通りだった。私は、弱い……。精神が弱い』

「メイ、大丈夫だ」
あっという間に傷の治ったハオが抱き締める。
「悪魔は出て行った」

「いいえ。また戻って来るわ」
ララが優しい顔を険しくする。
「あれはメイだもの。メイの中にまた戻って来る」

二人は真ん中にメイを抱き締め、メイに頬を擦りつけながら悩んだ。

「パパ、ママ、ごめんなさい」
メイはずっと涙をぽろぽろ零している。
「あたし……何も出来なかった……」

「いいのよ」「気にするな」と頭を二人で撫でながら、微笑んだ。

「ピンちゃんがいればよかったのに……」ララがぽつりと言った。「誰か、頼れる人がいれば……」
「いるじゃん」とハオが反応した。「現大統領に協力をお願いしようよ」

「は!!?」ララが全身の毛を逆立てて牙を剥いた。「ド変態の名前出すんじゃねーぞ糞パパ」
「だって友達じゃん。久しく会ってはないけど……」
「アレをダチとか言うんじゃねー! てめえほぼ会話もしたこともないくせに、この虚言癖!」
「でも……他に誰かいるかい?」
「……あたしは口聞かないからね」
「わかった」ハオは内心ドキドキしながら言った。「俺、電話してみるよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 12:45:17.93:El9JK1Kf
その頃メイファンは、下半身裸のヘイロンを置き去りにして夜の住宅街を走っていた。

「あれは私じゃない、リー・メイメイってやつがわるいんだぁーっ!」
メイファンは自分のしでかした行為に混乱していた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 13:22:57.59:UIf33PjP
秘書の美鈴(メイリン)は分厚い木の扉をノックすると、大統領執務室へ入った。
リウ・パイロン大統領は机に両拳を乗せ、楽しそうに笑っていた。その横には黒いボンデージ姿の恵妹が立っている。
「本日の予定ですが……」
メイリンが一通り予定を伝え終わると、リウが口を開いた。
「メイリン。紹介しよう、新しい秘書の恵妹(フェイメイ)だ」

メイリンは恵妹のふざけた姿をじっと見つめると、言った。「なんでゴルフボールを咥えているの?」
「ゴルフボールじゃない! これはSMグッズの……」
「で、私はクビってこと?」
「長い間ご苦労だったね。もう、君には飽きたんだ。君は完璧すぎてつまらない……」
「おい、アホ大統領」
「ムッ?」
「てめぇ、この20年、あたしがどんだけ助けて来てやったと思ってんだ?」
「フムムッ?」
「アンタは確かに有能。人間として尊敬すべきところだらけのスーパーマンだわ。でも足りないところはある」
「足りないというか……行き過ぎてるというかなところだよね?」
「そう。そこをこのあたしが押さえて上手くやって来た」
電話が鳴った。
舌打ちをするとメイリンは電話に出る。
「はい。あー、リー・チンハオ? どのリー・チンハオ? リー・チンハオはいっぱいいすぎて……」
「ハハ! リー・チンハオが電話なんかして来たのか!」
「ララの夫のリー・チンハオ? 何それ」
「オリジナルか!」リウの顔つきが真面目になった。「代わろう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 17:24:55.58:hhDtS5/O
ヘイロンは放置されながらもほくそえんだ。
「フフ…俺も一応リウ一族、俺のあそこも伝家の宝刀を受け継いでいる」

「悪い子を清く正しい善い子に更正させる名刀、マジカル・ステッキさ!」

「さてあの女、こんなモノを自ら受け入れて、果たして無事でいられるかな?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 17:47:50.61:7j00B1+0
『もしもし、リー・チンハオか?』
電話の向こうのリウにビビったハオは必要以上に喋りまくった。
「もっ、もしもしリウ大統領であらせられますか? ぼく、あの、昔友達だったリー・チンハオですけど覚えてますか?」
『もちろん覚えているよ』リウは優しい声で言った。『と言うよりいつも見ているし、いつも名前を聞いている』
ハオは意味がわからなかったのでハハハと笑った。
『ところでどうしたんだい? 電話をくれるなんて』
「実は……」
ハオは見たこと体験したことをすべて話した。
中国で一人暮らしをする娘に悪魔が取り憑いたこと、その悪魔に襲われたこと、外へ逃げて行ったこと。
そして悪魔退治のために力を貸して貰えないだろうかとお願いした。

電話の向こうのリウは暫く考えると、いくつか質問をした。
『その悪魔とやらは、ララのように君の娘の中にいたのか?』
「いえ、あれは『気』だけの存在ではないです。実体を持っていました」
『実体があるなら娘さんの身体とかち合うんじゃないのか?』
「ララが言うには、悪魔は娘自身の別の姿だと……。娘が分かれて二人ににったのだと」
『ふぅむ。考えられんな。……善い子と悪い子に分かれたということかい?』
「わかりませんが、悪魔の放つ黒い『気』が娘のと同じものだったと……」
『黒い(気)だと!?』
「えぇ。でもぼくが見たところでは娘のより……まるで闇のように真っ黒で、しかも量が半端なかったですけど」
『そいつは武器を使ったか?』
「いえ。でも素手でぼくの両足と右腕を根本から刃物を使ったみたいに斬り、腹に大穴を空けました」
『……チンハオ』
「はい」
『メイファンという名を君は覚えているか?』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 18:00:17.75:7j00B1+0
ララはテーブルに座って電話をするハオから距離を置いて、ベッドでメイを抱き締めていた。
「眠れそう?」
「側にいて……ママ」
ララがメイの額にキスをした時、ハオが言った。
「メイファン?」
ララの身体がぴくりと反応した。
記憶の底からとてもよく知っているが見知らぬ女の子の姿が浮かび上がり、それは急激に成長するとさっきの悪魔の姿と重なった。
「どうしたの、ママ?」
急に頭を押さえて苦しみ出したララを心配し、メイが顔を覗き込む。
大丈夫よ、と笑いかけようとして娘の顔を見て、ララは思わず叫んだ。
さっき記憶の底に見たばかりの見知らぬ女の子とまったく同じ顔がそこにあった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 18:03:35.21:riRDBMSL
川のほとりにチャイナドレスが無造作に脱ぎ捨てられている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 18:13:56.07:7j00B1+0
「メイファン? いやまったく知らないです」
『……そうか。やはり君もか』
「その人がどうしたんですか?」
『……チンハオ。全面的に協力しよう』
「本当ですか!? やった!」
『とりあえずそっちへ行くよ。住所をホログラム・マップに出してくれ』
その時、ララが叫び声を上げた。
よほど恐ろしいものを見たようなその声に、ハオは急いで駆け寄り、ララを抱いた。
娘の顔を凝視しながら、まるでヒステリーを発症したように、ララは顔を震わせ、カニのように手をギクシャクと動かし、
嫌悪、溺愛、激しい驚愕、ひどいほどの喜び等、さまざまな感情を顔に浮かべて泣き喚いていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 18:23:00.90:7j00B1+0
電話を切ったリウは突然バンザイをした。
「マンセィ!」

「は?」メイリンがアホを見る目で見た。「何、その珍しいテンション」

恵妹がじっとりとした目でただ眺めている。

「遂に……遂にだ!」
リウ・パイロンは現役散打王の頃のように拳を頭の上で打ち鳴らし、喜びのダンスを踊った。
「遂にお前に会える! メイファン!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 18:59:04.79:I595nFMC
その頃メイファンは独り、橋の下に隠れるようにシクシクと大粒の涙を流して泣いていた。
「違うっ、あんなの私じゃない・・・!」
彼女の脳裏に映るのは売女のように汚らわしくヘイロンの上で腰を振る、鏡に映った自分の姿とその顔だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 20:47:43.27:rOJJU3Hy
メイファン「決めた!ハオもララもリウもメイメイもあのガキも目撃者もみんなみんな、私が殺してやるんだ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 21:02:26.81:kU/XH5CV
そんなことを言っといて、いつも土壇場で「いい人」になってしまうメイファンであった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 21:32:26.75:t6S2Asbu
「やぁ! 久しぶり」
そう言ってワンルームの学生アパートにリウ・パイロン中華人民共和国国家主席改め大統領が入って来た。
秘書らしき眼鏡の女性と二人だけだった。
ハオはコーヒーとアメリカのお菓子を出して迎えた。
「ララは?」
「また発狂しまして……」
「あぁ、なるほど」
ララが発狂するのはいつものことなので、ハオもメイも先程のことはそこまで気にしていなかった。
覚えられてるかな? ビクビクしながら顔をなるべく隠すメイを見て、リウは言った。
「ムッ! 君は!」
「ごめんなさい」先手必勝で謝った。
「いや、いいキックだったよ、あれは。そうか、君が……。どうりで似ていると思った」
「お母さんにはそっくりだってよく言われます。色は黒いけど」
「明日から娘を一人で学校へやるのが心配だろう?」リウはハオに言った。
「えぇ。だからぼくがついて行こうかと……」
「君がついて行っては変質者と間違われて通報されるのがオチだろう」
「そうですね、ハハハ」
「メイリンを貸してやろう」
「ハァ?」コーヒーを飲んでいた秘書のメイリンが振り向いた。
「彼女は大変有能だ。私が保証するのだから間違いない。それに……」
リウはコーヒーを飲み干すと、ニヤケ顔で言った。
「その悪魔と非常に相性がいい。天敵だと言ってもいいほどだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/23(水) 21:40:19.28:t6S2Asbu
「そしてリー・チンハオ、お願いがある」
リウ大統領はそう言うと頭を下げた。
「その悪魔が現れたら、すぐに私に報せてくれ。米中首脳会談をすっぽかしてでも駆けつける!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/24(木) 06:21:30.76:QtyU5a0j
その頃メイファンは河川敷で薪をしていた。
肉を焼いているのだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 07:34:49.78:0Bs999qA
焼いているのは犬肉だ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 08:37:28.15:xGTSAReP
メイファンは狩った野良犬をBBQしながら考えた。

『今、私は何者でもないな……』

殺し屋だった頃は、習近平による権力の後ろ楯の元、何でも出来た。
通行人の首をいきなりはねるようなことはしなかったが、仕事中ムカついた奴の首を依頼もなくはねても習が揉み消した。
それが今は権力の後ろ楯もなく、依頼をして来るクライアントもいない。
服を買う金もない。

裸でいることに抵抗はまったくなかった。
メイファンには服を着ることの必要性というものがわからなかった。
見られても恥ずかしいわけでもなし、暑さ寒さも『気』の鎧を纏っていれば凌ぐことができる。
ただ、警察のおじさん達が喜んでやって来るのがうざいので服を着る必要があった。

『バイトでもするか……』

メイファンはそう考えながら肉を齧った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 08:51:19.27:xGTSAReP
さっき拾ったチャイナドレスを川の水で洗い、干しておいたのが乾いていた。
「明日はこれを着てバイト探しだな」
そう呟くとメイファンは土の上に『気』の寝袋を敷き、眠りについた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 12:49:18.43:xGTSAReP
「姐さん、コイツも頼んでいいか?」
「よっしゃ」
「姐さーん! 後でこの鉄骨も運んでくれー!」
「任せろ」
メイファンは男達に混ざって工事現場の力仕事をしていた。もちろんチャイナドレスに土方ヘルメットである。
親方は満足そうな笑顔でメイファンに話しかけた。
「姐さん、初め来た時『飯炊きのバイトは募集してねェ』なんて言っちまってごめんよ」
「いいってことよ」
「まさか男どもの30人分働いてくれるなんてなァ。その細い身体のどっからそんな力が出るんだ?」
「ヘソかな」

メイファンは習近平の元でお金に不自由することはなかった上、元々金に対する執着が希薄だった。
それでも社会勉強のため、さまざまなアルバイトを経験していたので、仕事の要領もすぐ掴み、現場のヒーローとなった。
しかし現場のバイトを選んだのは即日払いでなければ意味がなかったからに過ぎず、
明日は憧れの制服が着れるハンバーガー・ショップの面接に行こうと決めていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 12:58:40.82:xGTSAReP
現場仕事で稼いだ金で白いカットソーとピンクのスカートだけ買い、下着はどうせ着けないので買わなかった。
求人情報誌についている履歴書に拾ったボールペンで欄を埋めて行く。
戸籍も国民IDもどうせ消去されているとは思ったが、どうせ調べられることはないだろうと住所もID も書いておいた。
書き終えると買って来た缶ビールを一綴り出し、飲みながら昨日の犬肉の残りを焼いて食った。
春の陽気で早速腐りかけていたが、やはり食べ物は腐りかけが一番旨いなと思った。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/24(木) 14:38:43.99:s/OJBqfJ
《超悪質!盗聴盗撮・つきまとい嫌がらせ犯罪首謀者の実名と住所/死ねっ!! 悪魔井口・千明っ!!》
【要注意!! 盗聴盗撮・つきまとい嫌がらせ犯罪工作員】
◎井口・千明(東京都葛飾区青戸6−23−16)
※盗聴盗撮・嫌がらせつきまとい犯罪者のリーダー的存在/犯罪組織の一員で様々な犯罪行為に手を染めている
 低学歴で醜いほどの学歴コンプレックスの塊/超変態で食糞愛好家である/醜悪で不気味な顔つきが特徴的である

【超悪質!盗聴盗撮・嫌がらせつきまとい犯罪者の実名と住所/井口・千明の子分たち】
@宇野壽倫(東京都葛飾区青戸6−23−21ハイツニュー青戸202)
※色黒で醜く太っている醜悪黒豚宇野壽倫/低学歴で人間性が醜いだけでなく今後の人生でもう二度と女とセックスをすることができないほど容姿が醜悪である
 宇野壽倫は過去に生活保護を不正に受給していた犯罪者です/どんどん警察や役所に通報・密告してやってください
A色川高志(東京都葛飾区青戸6−23−21ハイツニュー青戸103)
※色川高志は現在まさに、生活保護を不正に受給している犯罪者です/どんどん警察や役所に通報・密告してやってください

【通報先】
◎葛飾区福祉事務所(西生活課)
〒124−8555
東京都葛飾区立石5−13−1
рO3−3695−1111

B清水(東京都葛飾区青戸6−23−19)
※低学歴脱糞老女:清水婆婆 ☆☆低学歴脱糞老女・清水婆婆は高学歴家系を一方的に憎悪している☆☆
 清水婆婆はコンプレックスの塊でとにかく底意地が悪い/醜悪な形相で嫌がらせを楽しんでいるまさに悪魔のような老婆である
C高添・沼田(東京都葛飾区青戸6−26−6)
※犯罪首謀者井口・千明の子分/いつも逆らえずに言いなりになっている金魚のフン/親子孫一族そろって低能
D高橋(東京都葛飾区青戸6−23−23)
E長木義明(東京都葛飾区青戸6−23−20)
F若林豆腐店店主(東京都葛飾区青戸2−9−14)
G肉の津南青戸店店主(東京都葛飾区青戸6−35ー2
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 15:23:22.74:cc77hIL2
メイファンはムラムラしてきた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 16:25:05.05:xGTSAReP
「行って来ます」
メイは大学へ行く支度を終え、玄関に立った。

「行ってらっしゃい。気をつけてね」ララが見送る。
「本当に本当に本当に気をつけるんだぞ!?」ハオが心配しすぎて泣いている。

「ご安心ください。私がついておりますので」
リウ大統領の秘書の美鈴(メイリン)が眼鏡を光らせ、メイと並んで出て行った。

大学までは徒歩で10分だ。ただし並みの人間なら15分はかかる。
メイは気を遣って小さい歩幅でゆっくり歩いた。

「お嬢様」美鈴が言った。「普通に歩いて下さってよろしいですよ」

「えー、いいの? かなり速いよ?」

「私もこう見えて歩くのめっちゃ速いですので」

「よ〜し。じゃ、競争だ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 16:49:24.68:xGTSAReP
「お嬢様」美鈴が言った。「ま……待ってぇ〜……」

「あははっ! だから言ったでしょ〜?」メイが息も切らさずに笑う。

公園のベンチに腰掛けてしばらく美鈴の息が整うのを待った。
メイはリュックからボトルの水を取り出すと、美鈴に飲ませてあげた。

美鈴は白いシルクブラウスにピチピチの黒スカートを穿いている。スカートには両側にジッパーがついていた。
それを両方ともフルオープンすると、美鈴は言った。
「ふぅ……。ではもう一回ね」

「え。まだやんの? 懲りないね」

「次は負けませんことよ」
可動幅が大きくなった
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 17:14:16.56:xGTSAReP
可動幅が大きくなった黒い網タイツの脚を見せつけ、美鈴は自信ありげに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 20:19:49.93:xGTSAReP
「お、お嬢……。待っ……!」
メイが振り返ると美鈴は遥か後ろにいた。
公園を包む若葉の色が明るい。
「ちょっと本気出しすぎたかな」
ちょっとだけメイも息が荒くなっていた。

講義中、昼ご飯中、空き時間中、美鈴はずっと3m離れて後ろにいた。
大統領の命令とはいえ、よくやるなぁ、凄いなぁ、と感心した。
何もせずに、食事すらせずにじっと警護対象者の周辺に気を配るなんて自分にはとても出来ないことだった。
そのうち美鈴のことが気の毒になって来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 20:34:53.19:xGTSAReP
大学の帰り道、メイは美鈴をハンバーガー・ショップに誘った。

「いいえ。私はお嬢様をお家へ送り届けるまでは気を抜くわけに行かないのです」
美鈴はそう言い張ったが、メイが一言「これは私からの命令です」と言うと、「命令ならば仕方ありませんわね」と嬉しそうに態度を変えた。

店に入り、注文しながらふと厨房の中に気になる『気』を見つけた。
向こうもこちらの『気』に気づいたようで、チラチラと見ている。
「ヘイロンっ」
そう声に出してぴょんぴょん跳びはねながら手を振るメイの笑顔を横から見つめ、美鈴は眼鏡をキラーンと光らせた。
「恋の匂いがするわ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 20:55:37.34:xGTSAReP
「やはりアメリカ人はハンバーガーが好きなんだな」
ちょうど休憩に入ったヘイロンがメイ達の席へやって来て、足を高く組んで座った。
「ここでバイトしてたんだぁ〜。へぇ〜」
メイの笑顔が輝いている。
「そちらは?」ヘイロンが美鈴を見て言った。
「私のボディーガードの美鈴さんだよ」
「美鈴です。以後お見知り置きを」
「ボディーガードて……。大統領かよ」
「へへっ」メイが偉そうに笑った。
「しかし実際、相当お強いですね」
美鈴が顔で「ほう?」と答える。
「えぇ〜? 私のほうが強いよぉ。足だって速いし」
「お前なんか相手にならん。この人の透明の『気』がお前に見えるか?」
「え?」メイが美鈴をじっと見る。「透明……? じゃ、見えないじゃん」
「それが見えない程度なんだお前は。うぬぼれるな」
ヘイロンに「うぬぼれるな」と言われるとなんだか素直になるな、とメイは思った。
「おっと休憩終わりだ。じゃあな」
そう言うとヘイロンは厨房へ戻って行った。すぐに美鈴が声をひそめて言う。
「ちょっといい男じゃない」
「私、メンクイじゃないよ」
「でもやるわね。こっち来てほんの3日でもう彼氏?」
「彼氏じゃない」メイははっきり言った。「でも気になるひと」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 21:24:24.00:xGTSAReP
ヘイロンが厨房に戻るとメイファンがキャベツを高速で刻んでいた。
「おっ? 青年」
「うわっ! 姐さん!?」
「今日からここでバイトすることになったラン・メイファンだ。よろしくなっ」満面の笑みで挨拶した。
「え……。あれ?」ヘイロンは遠くのメイとメイファンをキョロキョロと見比べた。「同じ顔……?」
メイファンはバイトが楽しすぎてメイの存在に気づいていなかった。
「なぁ青年。私の制服姿、どうだ?」
「え……。あ、あぁ、可愛いよ」
「本当か!?」
「あぁ。超可愛い」
「よし!」
「ところで。あの……姐さん? キャベツの千切り使うメニューって……ないんだけど?」
「私が考えたオリジナル・メニューのとろ卵メンチカツバーガーで使うんだよ」
「入ったばっかで勝手にオリジナル・メニュー作るなよ!」
「店長がさっき感激の涙を流しながらOKをくれたぞ」
ふとメニューを見ると確かに加わっていた。
「まじか!」
「ところで青年、お前の自己紹介はまだか?」
「あっ? ああ……ヘイロンだ。愛称とかないからそのまんまヘイロンでいいよ」
「よろしくな!」
「あっ、あぁ。よろしく」
ヘイロンはメイのほうをもう一度見た。メイもこっちを見た。嬉しそうに笑うその顔が一転、恐怖に固まった。
ヘイロンがメイファンのほうに顔を戻すと、こちらはメイのほうへウィンクしながらピースサインを送っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 21:48:18.78:xGTSAReP
美鈴は0.5秒で大統領に連絡すると立ち上がり、レジカウンターから厨房へ声を投げた。

「そこの黒いあなた。そう、制服のよく似合う……。ちょっと顔を貸していただけるかしら?」
腕組みをし、眼鏡の奥から鋭い眼光で威嚇する。

メイファンは明るく笑いながら答えた。
「悪ィ! バイト中なんだ! バイト終わったら殺したげるよ。待ってて!」
気さくに言いながら、眼は面白い獲物を見つけたネコ科の猛獣のように光る。

その頃リウ・パイロンは全速力でハンバーガー・ショップに向かっていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 22:09:34.51:xGTSAReP
「待ってなどいられま……」美鈴は網タイツの脚を上げ、振り下ろした。「……せんッ!」
硬い木製のカウンターを一撃で粉々にすると胸から一枚の紙片を取り出した。『緊急公務』と書いてある。
「ヘェ!」メイファンが眼をさらに面白そうに光らせる。「大統領のSPか!」
騒然となった店内で二人は対峙する。
メイファンは可愛い制服が汚れちゃ嫌だからと全裸になった。

ヘイロンはゆっくりとメイのところへ来ると、聞いた。
「アレ……お前の姉さんか何か?」
「あたしに取り憑いた悪魔なのよ。今から美鈴さんが退治してくれるわ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/24(木) 22:23:58.02:xGTSAReP
【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物?

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。マーシャルアーツの使い手。
リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいる。貧乏。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
元習近平国家主席のボディーガード兼最強の殺し屋だったが、今は権力の後ろ楯を失いただのホームレスに堕落している。
異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物?

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。かつてはメイファンの最愛の姉だった。43歳。
本来『気』だけの存在であり、他人の身体に入ることが出来る。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。
透明の『気』の使い手。眼鏡をかけている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 05:54:23.81:4uX0iQWd
ヘイロンは胸騒ぎがしたのでメイメイを強引に連れて外へ逃げ出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 06:25:57.85:xwaS+Zfm
というのは半分嘘で、本当はメイメイをソープに売り渡すつもりだ。

母リーランとの貧乏暮らしもとうとうヤバいところまで来ていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 06:44:40.04:VopUsQDM
「ねっ……ねぇ! どっちが強い?」
メイは不安そうにヘイロンに聞いた。
盾のように倒したテーブルの陰から戦闘開始を見守りながら、隣のヘイロンが答えた。
「どう見ても美鈴さんだ」
「よかった!」
メイがそれを聞いて安心する。そして呟いた。
「悪魔め。早速今日で終わりだ、この変態悪魔め……」

「ほう」
メイファンはお椀型の両胸を見せつけるように腕組みで盛り上げ、美鈴を見下しながら言った。
「珍しい『気』だな」

「かかってらっしゃい」
美鈴は両腕を斜め前に伸ばし、ジリジリと間合いを詰める。

「見たことのない型だ。あれ、何の武術?」
メイが聞くと、ヘイロンは即答した。
「合気道だ。日本の武術だな」

「どれどれ」
メイファンがまず様子見という風に、一瞬で間合いを詰め、美鈴の顔面を手刀で突き刺しにかかる。

「チリッ」というような、肉を焼くような音がした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 06:45:40.51:4uX0iQWd
ヘイロンの謀略によりメイメイは気を失った
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 06:48:31.35:VopUsQDM
リウ・パイロンは走っていた。
「美鈴! まだやるなーーッ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 13:18:37.58:VopUsQDM
ハオとララはメイが心配すぎて、今日1日ずっと実はGPSを頼りに半径100m以内にいて見守っていた。
二人はバーガー・ショップの向かいのカフェに隠れていたが、激しい物音を聞くとすぐに飲みかけの一杯のタピオカミルクティーに差したストロー2本を置いて駆けつけた。

「あら、メイ。偶然ね」
突然背後から現れたララにメイは喜んではしゃぐ。
「ママ!」
娘に頬にキスをされながら、ララは娘とぴったり身体を寄せているヘイロンを見る。
「あら、お友達? かっこいい」
「どうも」とヘイロンが会釈する。
「悪魔が出たんだな」
ハオがそう言いながら、メイとヘイロンの間に強引に割り込んだ。
「パパ!」
メイがキスをする前からハオは頬を娘に寄せていた。
「へぇ、お父さん、なかなかお強いですね?」
ヘイロンがハオの青い『気』を見ながら言った。
「美鈴さんはあの悪魔と相性がいい、とリウ大統領は言っていた。一体どんな……」
「メイの太極拳はお父さんが教えたんですって?」
「なんだキミは!」ハオはヘイロンを見るなり怒鳴った。「うちの娘を『メイ』なんて呼ぶんじゃない! 警察呼ぶぞ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 13:33:40.58:VopUsQDM
その時だった、肉を焼くような「チリッ」という音がしたのは。

見ると美鈴が鼻クソをほじっており、メイファンが自分の手を押さえて飛び退いていた。

「クッ! なんだそれ」

美鈴は再び構える。

メイファンは美鈴の顔をまっすぐ見ながら、土手っ腹に穴を開ける勢いでミドルキックを放つ。

再びチリッという音が店内に響いた。

メイには悪魔(メイファン)が勝手にミドルキックを回転させ、バレリーナのようにくるくる踊ったようにしか見えなかった。

「あぁっ……」とメイファンが情けない声を上げて回る。

「なんて『捌き』だ!」
ハオが声を上げた。
「あの悪魔のとんでもなく速い動きに合わせて、攻撃を受け流してるんだ! しかも……」
「そう。そこですよね、お父さん」ヘイロンが頷く。
「キミは黙ってろ!」
ハオは思わず立ち上がり、ヘイロンを指差しながらまくし立てた。
「なんだそれ点数稼ぎか!?『ボク青二才だけどこんなに格闘技のことわかっちゃってます〜』みたいな!? ふざけるな!! キミみたいなチャラい男に娘は渡さん!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 13:47:21.33:VopUsQDM
「フン! さすがにあのリウ・パイロンの側近だなァ」
メイファンはあまり面白くなさそうな顔で言った。
「でもお前、リウはお前と手合わせしたがらないだろ」

「そうですわね」
美鈴はコンパクトを出し、化粧を直しながら言った。
「『お前と闘るのはちっとも面白くない』とか仰って、15年ぐらい前からまったく相手をして下さいませんわ」

「お前のは『燃える闘い』とは正反対だ」
メイファンはため息をつき、だるそうに言った。
「『消す闘い』と言ったとこ?」

「『吸う闘い』と言って欲しいですわね」
美鈴は眼鏡を指でくいっと持ち上げた。
「アナタが攻撃して来たら、私は吸う。それだけ」

「さっきハイヒールでカウンター割ったみたいな、あんなの頼むよ〜」
「それはアナタのやる気を吸い尽くし、隙だらけにしてからですわ」
「人のやる気、吸うなよ〜……。ひでえ」
「さぁ、もっと吸ってあげるわ。かかってらっしゃい」
美鈴はまた同じ構えをとった。
「それとも……フフ。私が怖い?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 14:01:34.34:VopUsQDM
メイファンは美鈴の透明の『気』が、自分の『気』を吸ってやや黒くなっているのを見た。

「ドロボー! これでも喰らえ!」
そう言うと厨房にあるバンズを手当たり次第取ると、『気』を込めて爆弾に変え、次から次へと投げつけた。
バンズに込められた『気』を次々と吸うと、バンズはぽんぽんと柔らかく床に落ち、美鈴はまた少し『気』の黒さを増した。

「おい! ヘイロン青年!」メイファンは慌てたように声を飛ばす。
「ヘイロンでいいって」ヘイロンはフレンドリーに返事をした。
「ホウキどこにある!? ホウキだ!」
「掃除は終わってからでいいよ」
「いいから教えろ!」
「厨房の裏から廊下へ出て左行って奥の角を右に曲がって消火栓のところのロッカーの中だ」
「遠いわ!!」
「よそ見はダメよ」
いつの間にか背後に回り込んでいた美鈴がメイファンに抱きついた。
「ほへぇぇぇぇ」
身体中から発生するチリチリという激しい音とは釣り合わない、力のない声を上げ、メイファンは床に膝をついた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 14:11:17.69:VopUsQDM
「美鈴!」
叫びながらそこへリウ・パイロンが飛び込んで来た。
ギャーッと叫んでララがハオの後ろに隠れた。
「……なんてことだ!」
リウは顔を真っ青にし、愕然とする。
「どーでもいーよ」
そうぶつぶつ呟きながら床に座り込んで拗ねているメイファンがそこにいた。
「ああ……! 吸ってしまったのか!」
リウは頭を抱え、悲痛な叫び声を上げた。
「あれ? リウ・パイロンじゃん。……私、リウ・パイロンに会ったら○○したいって思ってたんだけど……なんだったっけ。ま、どーでもいーよ」
メイファンは美鈴にやる気を吸い尽くされ、まるでハオのようになってしまっていた。
「せっかく血沸き肉踊る闘いが出来ると思っていたのに……!」
「ちょっとだけ戻しましょうか?」真っ黒になっている美鈴が言った。
「戻せるのか!? 戻してくれ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 14:22:03.21:VopUsQDM
美鈴はメイファンの頭に手を乗せ、少しだけ『気』を返した。

メイファンは全裸でだるそうに立ち上がると、バカにするように言った。
「よう、大統領さん。どーせお前も私のこと覚えてないんだろ?」
「忘れるものか! メイファン!」
「えっ?」
「ずっとお前とヤリたかったんだ!」
「覚えて………くれてるのかよ……」
「当たり前だ! お前は俺の可愛い妹だ!」
そう言うとリウはメイファンのお椀型の胸をきゅっと掴んだ。
「あ……っ。やっ!」
メイファンは珍しく頬を赤くし、後ろへ身をかわすと、手で胸と陰部を隠した。
「お帰り、メイファン! よくぞ帰って来た!」
リウが両肩を抱くと、メイファンは少女のような目で見つめ返し、その目からぽろりと一粒涙が零れた。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/25(金) 15:16:16.82:VS+xr/0u
そのままリウはメイファンを押し倒し、
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 17:13:39.07:xwaS+Zfm
合体した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 18:07:31.53:NXZaHQYd
「人前で何してんだーー!!」
ハオとララが横からハリセンでどついた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 18:12:03.36:WVtOqZ8R
だがメイファンとリウ・パイロンはまるで本当の恋人のように激しく愛し合った。


子 供 が 見 て い る 前 で。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 19:06:41.92:uN7DuSTv
「いいえ私が許しません」
美鈴は頭の上に手を置くと、パワー全開でリウ・パイロンのやる気を吸った。
「あっ! 私のマジカル・ステッキが……どんどん小さくなるぅ……」
リウはその言葉を最後に膝を抱き、「どうせ僕なんか」と呟きはじめた。
「一生そうしてろド変態」
そう言うと美鈴はメイファンを抱き起こした。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/25(金) 19:25:37.34:WVtOqZ8R
メイファンは子供のように泣き出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 19:43:11.92:uN7DuSTv
「あなた、リー・メイメイに謝りなさい」美鈴はメイファンに命じた。
「ごめんなさい」
「え……」メイはただたじろいだ。
「すっ……! 素直ね。まぁ、いいわ。あちらのお母さんにも謝りなさい」
「……」
「謝りなさい!」
「……」
「謝るのよ!」
「ごめんなさい」
そう言ってしまうとメイファンは、堰を切ったように大泣きしはじめた。
「よし、じゃあ最後にお父さんにも……」
そう言ってハオの顔を見た美鈴の動きが止まり、息も止まった。
ハオがアホ面で「?」と言った。
「うひぃぁぁああリー・チンハオ!」
悲鳴を上げて美鈴は後退った。
「ぼくが何か?」
「いやっ! いやぁぁぁ殺される!」
そう叫びながら逃げ出してしまった。
「失礼な?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 19:54:02.19:uN7DuSTv
子供のように泣く黒い女を見て、ララは何だか可哀想になってきた。
この女は何者だろう? メイの悪い部分が分離したモノではないの? 
悪いモノがこんな子供みたいに純粋な大泣きするわけがない。ララは近づくと、顔を覗き込んだ。
「あなたは……誰?」
ララの問いかけに、メイファンは暫くいじけた子供のように黙ってララの顔を見ていたが、やがて言った。
「43歳にもなって、相変わらず可愛いな、ララ」
「……誰なの?」
「思い出すまで待つよ」
ララは不思議そうにメイファンの顔を間近で見つめた。そして気づいた。
メイと同じ顔だと思っていた。だが、違った。色が黒いからそう思っただけだったのだ。
この子、自分と同じ顔をしている。中身が違うから、特に目つきがまったく別人に見えるけど、重ねてみれば細部までまったく同じ顔だ。
「記憶の底で何度かあなたを見たわ」ララが言った。「妹なの?」
メイファンの目からぶわっと涙が溢れ出した。
「そうだよ! 生まれた時からずーっも一緒にいた妹だよ! 何忘れてくれやがってんだよ!」
「ごめん」ララはメイファンを抱き締めた。「忘れていて、ごめん」
メイファンはララを抱き返し、生まれて初めての勢いで号泣した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 20:00:09.07:uN7DuSTv
「だっ、大丈夫なのか? ララ……」
ハオは妻が悪魔に近寄った時からずっといつでも守れる体勢に入っていた。

「大丈夫。この子は寂しかっただけよ」
ララはにっこり微笑み、言った。
「私が覚えていないせいで、寂しかったの」

メイファンは号泣し続けている。

その髪を優しく撫でながら、ララは話しかけた。
「そうよね? メイファン」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 20:09:40.75:uN7DuSTv
「おい」
膝を抱いてぶつぶつ何か言っているリウ・パイロンを見下ろしながらヘイロンが言った。
「お前、俺が誰だかわかるか?」

リウはボケ老人のようにやる気のない顔を上げると、若い頃の自分をそこに見た。
そして言った、「知らん」

「お前の息子だよ」
ヘイロンは叩きつけるように言ってやった。

「さて……世界中に種をばらまいているからな……。どの女の息子やら」

「てめぇ!!」

「何より」リウはちょっとだけ厳しい顔を取り戻し、言った。「そんなくだらん過去には興味がない」

そこへ美鈴が戻って来た。
「私としたことが……任務現場の放棄などとみっともないことを……」
そう言いながら、リウの薄くなった頭を掴み、吸い取ったやる気を戻した。

リウは立ち上がり、ヘイロンを見下ろすと、唾を吐くように言った。
「俺をゆすって金でも巻き上げる気だったか? 残念だったな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 20:15:43.35:uN7DuSTv
ヘイロンはその通りだったので舌打ちをすると店を出て行った。

「あっ、ヘイロン」
メイがそれを追う。
二人の会話はしっかり聞いていた。大統領の息子という設定に、さらに胸がドキドキして止まらなかった。

「さて、メイファン」
リウが上機嫌を取り戻し、みんなに聞こえる声で言った。
「私が全て持つ。みんなでお前の『お帰りパーティー』をやろう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 23:14:19.20:i3CIF8aj
美鈴が一番に破壊したバーガー・ショップには、弁償と保証を約束した。
店先にやって来た大統領専用のリムジンに一同は乗り込む。
リウ・パイロン、美鈴、メイファン、ハオ、ララ……
「あれっ? メイは?」ハオが気づいた。「メイは? メイは? ねぇ、メイは?」
「彼が送って行ったわ」ララがしょうがなく教えた。「だから安心しなさい」
「ダメだろ! 送り狼とか言うだろ!」
「オッサンが若者同士の邪魔しないの!」
「ダメだって! あの男はダメだって!」
必死に抵抗するハオをリウ・パイロンが無言で担ぎ、車に乗せた。
ララも素直にリウの車に乗った。
私は大人だもん、大人の余裕よ、と自分に言い聞かせた。それよりメイファンと話がしてみたかった。
「ありがとう」ララは余裕たっぷりの顔でリウに言った。
「ララ、来てくれて嬉しいよ」リウは振り返り、ニヤケ顔で言った。
ララは蕁麻疹と鳥肌とパニック障害に同時に襲われながらも、なんとか自分を保った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 23:29:25.53:i3CIF8aj
「ヘイロン!」
名前を呼びながら前を歩くメイに、ヘイロンはようやく顔を向け立ち止まった。
若葉の眩しい公園の、大きな池のほとりだった。
ポニーテールにしたメイの、上向きの髪が露にする健康的な色の肌が眩しい。
ヘイロンは少し目を細めると、はっと大きく息をひとつ吐き出し、言った。
「パパとママんとこ帰れよ。心配するぞ」
「だってほっとけなかったんだもん、ヘイロンのこと」
ヘイロンは可笑しそうに笑った。
「傷ついてるようにでも見えたか? 俺が」
「……っていうか、本当は」
「あん?」
「あたしがヘイロンの後追っかけたかっただけ」
そう言ってメイはまっすぐ見て笑った。
「ストレートだな、アメリカ人ってヤツは」
「アメリカ人じゃないよ」メイは明るく言った。「ヘイロンと同じ中国人だよ。差別しないで」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/25(金) 23:54:53.63:7vBwF3Qz
「ね。どこに住んでるの?」
公園のベンチに並んで座りながら、メイは聞いた。
「大学生? 年上だよね? 好きな食べ物何?」

「つまんねーヤツだな」
ヘイロンがそう言い、メイは首をひねった。無言で理由をねだると、ヘイロンは続けた。
「そんなにそっちからグイグイ興味持たれたら、落とし甲斐がねぇよ」

メイは拳で肩を小突くと、アハハと笑った。
「そんな人じゃないくせに」
「あ?」とヘイロンが今度は理由を聞く。
メイは面倒臭そうなヘイロンの目をまっすぐに見て、言った。
「アンタ、他の男の子とは違ってるよ」

まだ何か言おうとしたメイを邪魔するように、電話が鳴った。ママからだった。
『メイ。××楼で皆でパーティーするんだけど、あなたがいないとパパが大泣きして手がつけられないの。あ、ヘイロン君も連れておいでよ』
それだけ言うとララは電話を切った。

「……だって」
「行って来いよ」
「聞いてた? 連れておいでって」
「リウ・パイロンもいるんだろ? 行かねぇ」
××楼はテイクアウトが出来ないというのも行きたくない大きな理由だったが、それは言わなかった。
「じゃ、あたしも行かない」
「このあと、もう一個バイトがあるんだが……」
「まだバイトすんの!? なんで!?」
「ま、連絡だけ入れてサボるとするか」
「え?」
「付き合ってやるよ。なんか話したいんだろ?」
「うん!」
メイはおそらく生まれて初めてパパより他の男を優先した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 00:37:15.89:64g6PJOx
メイファンは途中、ブティックで服を買って貰い、全裸でなくなった。
白と赤の巫女ルックだ。最近これが可愛いと流行っているらしい。しかしメイファンが着るとなんだか不思議な人みたいになった。

××楼の2階に席を設け、乾杯するとリウがメイファンの紹介を改めて始めた。
「彼女はララの妹のラン・メイファン。とは言っても君達は覚えていないだろう。
君達は皆、習近平が発動させた国務指令一三五六零によって、彼女が存在しない世界を生きているのだ。
しかし私だけは覚えていた。お陰でこうして君達にメイファンが私達の仲間だということを証明出来る。
では、改めてお帰り、メイファン。乾杯!」

それぞれがワインやビールや烏龍茶やオレンジジュースとバラバラな飲み物を持って乾杯した。
「まぁ、手合わせして悪い人間でないことはすぐにわかりましたよ。あんな武術を極めている人間が悪魔であるわけがありません」
美鈴がそう言って烏龍茶を飲んだ。
隣に座ったララが微笑みながらビールを飲んだ。メイファンもお返しにオレンジジュースを注いだ。
ハオはオレンジジュースを持ちながら、メイの到着を今か今かとソワソワしている。

なんだ、いい奴ばっかりだったんじゃねーか、メイファンは思い、温かい涙を流した。
なんで私、こんないい奴らを皆殺しにしようとかしてたのかな、そう思いながら旨いビールを飲んだ。

『チガウダロ』
どこかから声がした。

キョロキョロと周りを見回したが、声の主らしき人間は見当たらなかった。

気のせいだなと思うことにし、隣のララとほっぺたをくっつけ合う距離で色々と話をした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 06:49:23.13:SG3xPBk7
メイファンは夢を見ている。復讐を成し遂げた夢だ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 07:33:29.87:RU1BfDJa
心に穴が空き毎日を抜け殻のように過ごすのだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 08:46:04.22:2CMs5OjG
『ココロナド イラン』
またどこかから声がした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 09:21:27.38:2CMs5OjG
ララはメイファンのことをまったく覚えていなかった。しかし話をして、この子が自分の妹であることを確信した。
多少食い違うところはあるものの、自分しか知らないはずのこと、昔懐かしい出来事を彼女は知っていた。
そして何より初対面なのにこんなに頬をくっつけたくなるのは、ハオと作った家族の他にはいないと思っていた肉親であるからに他ならないと思えた。
お酒のあまり飲めない自分にしつこくビールを飲ませようとする等うざいところはあったが、メイファンのことを大好きになってしまったことは間違いがなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 09:32:00.98:2CMs5OjG
誰からも愛されず、それ以上に誰も愛せなかった子供の頃のメイファンにとって、ララがどれほど世界を照らす光だったか、
メイファンはそんなことは少しも白状せずに、ただ目の前のララを笑わせるのが気持ちよかった。
二人で懐かしい話をいっぱいした。
自分のことを「メイ」ではなく「メイファン」と呼んで来るのが少し気に入らなかったが、
「メイ」は彼女の娘のことだとわかっていたので、気にしないことにした。
ララにビールをたくさん飲ませたり、箸の持ち方が相変わらずおかしいことを叱ったりして楽しんだ。
ララも流行りの巫女ルックだったので、ペアルックみたいだった。
「なぁ、ララ」
「何? メイファン」
「私達、死ぬまで姉妹だよな?」
「何当たり前のこと言ってんの!」
ララが天井を向いて大笑いし、メイファンも姉を見つめて満足そうに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 09:47:20.16:2CMs5OjG
リウ・パイロンが酒を注ぎにやって来た。
怖気を隠せず油汗を流しているララを確認し、メイファンは『そっちの記憶が消えればよかったのに』と思った。

リウは子供の頃のメイファンにとって、ララに続いてこの世に現れた、二つ目の光だった。
大好きになり、愛してほしいと願い、その想いは最悪の形で壊された。
約10年もの間、今のララと同じく世界で一番に憎み続けたが、死闘の末に和解した。
憂鬱な過去よりも笑顔溢れる未来を見ることに決めた。
10年間憎み続けることが出来たのは、ずっと強く愛し続けていたからだとも気づいた。
30年以上も憎み続け、もうそれが条件反射のようになってしまっているララとはメイファンは違っていた。
17歳の自分をリウは妹として見てくれなかったが、今の私はどうだろう?
リウの目に私は魅力的な女性に映っているだろうか? 
そんなことを気にしてメイファンは「酔ったな。、あちぃ」と言って胸元を開いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 09:57:21.16:2CMs5OjG
リウが素早くその胸元へ手を突っ込もうとして来た。
「何すんだ」メイファンは嬉しそうに身をかわす。
「ハハハ! メイファン、お前、もう39歳のわりには若いな?」
「異次元の時間の進みが遅かったんだよ。私は今、27歳だ。毎日日数を数えていたから間違いない」
ララがとても迷惑そうにしているのに気づき、リウは自分の席に帰ることにした。
「ま、楽しめ」
「あっ」メイファンが悲しそうな顔をする。
「また近いうちに、ヤリ合おうぜ」
「もちろんだ! 闘り合おう」メイファンは目を輝かせた。「あとでお前んとこにも酒、注ぎに行くな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 10:13:29.73:2CMs5OjG
メイファンがリウのところへ酒を注ぎに行くと、秘書の美鈴が話しかけて来た。
「アナタと糞大統領が闘ったら、観客を楽しませる闘いになりそうね」
「当たり前だろ。熱い闘いになるぜ。アンタとは正反対だ」
「しかし少しびっくりしたわ。『気』を吸ったらアナタ、一般人みたいに弱くなるんですもの」
「『気』はメイファンの命だからな」リウが言った。「その代わり『気』を纏ったコイツは誰よりも強いぞ」
「お前に勝ったことねーけどな」メイファンが笑う。
「つまり私は天敵というわけね?」美鈴がニヤリと笑う。
「うん。お前とはもう闘んねー」
「あら。負け逃げ?」
「ま、本気出したらお前なんか瞬殺だけど」
「口ばっかりね。レベルが低いわぁ」
殴りかかりかけたメイファンをリウが止め、言った。
「美鈴はいつもこうだ。人を挑発し、やる気にさせておいて、いざ闘うとやる気を奪う。お前はつまらん。クビだクビ」
「あ。じゃあ、お前の天敵がここにいるよな?」
「えぇ……」
美鈴は恐ろしいものを見るように、一番離れて座っているハオを見た。
「戦闘中にリー・チンハオを見ると私、パニックを起こしますの。あれほどやる気のない人間から、やる気を吸うことなど出来ないわ……」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 10:15:57.08:2CMs5OjG
「ねぇ、メイはまだ来ないの?」
ハオがずっと繰り返していることをまた言った。もう答えるのも面倒臭くなってララは無視した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 13:21:03.32:2CMs5OjG
すっかり日は傾いていた。二人はまだ公園の同じベンチに座って会話をしていた。
「ええ? 同じ大学なの?」
「俺は情報学部たからな。キャンバス違いだ」
「へぇ〜、ヘイロンて頭いいんだ」
「イヤミか?」ヘイロンは拾った石で器用にお手玉をしながら言った。「お前の学部のほうが偏差値上だ」
メイはその石を「とう!」と横取りすると、軽く放り投げ、スニーカーを履いた両足先で交互にリフティングを始めた。
ショートパンツから健康的に伸びた脚がリズミカルに石ころで遊ぶのをヘイロンはじっと見つめた。
「じゃ、将来はコンピューター・エンジニア?」メイがリフティングしながら横を向く。
「何でもいいんだ」ヘイロンはぶっきらぼうに答えた。「大学を出ないと稼げる仕事につけん」
「え〜? ヘイロンなら身体で稼げるじゃん」
「身体で? たとえば?」
「ホストとか」
「アホ」
「格闘家とか」
「嫌いだって言ったろ」
「大型トレーラーの運転手とか」
「うん、格好いいな」
「殺し屋とか」
ぴくりとヘイロンがその言葉に反応した。しかしすぐに言った。
「マンガの見すぎかよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 16:18:50.54:2CMs5OjG
「ね、ヘイロン。あたしに稽古をつけてよ」
「稽古?」ヘイロンは既に態度で拒否していた。
「うん。あたし、ヘイロンが言う通り、強くなかった。パパとママを守れなかった」
「……ああ。姐さんのことなら気にするな。あの人は強すぎる」
「でもあたし……足がすくんで動くことも出来なかったもん。あの人と闘ってすらないんだよ」
そう言うと小石を脚でトスし、蹴り飛ばした。小石は池の上を跳ねて行った。
「運動神経だけはいいのにな」
「ね、お願い。次のパパとママのピンチには闘えるようになりたいの。スポーツじゃない、殺し合いの闘いのやり方を教えて?」
「次のパパとママのピンチなんてあり得るのかよ」
「お願い。ヘイロンのお願いも聞くからさ」
ヘイロンは考え込んだ。どうしようか迷っているというよりも、どんなお願いにしようか考えているように見えた。
「俺……」ようやく口を開き、答えた。「手を抜くとかあんまり出来ないぜ?」
「本気でいいよ」メイは嬉しそうに笑った。「ヘイロンの本気見てみたい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 16:35:29.36:2CMs5OjG
すっかり暗くなり、水銀灯が明るく照らす池のほとりで、二人は向き合って立った。
「お願いします」メイが一礼する。
「言っとくけど」ヘイロンが礼もせずに言う。「打撃は寸止めするけど、投げは本当に投げるぜ? 受け身とれよ?」
「オッケー」
「あとマウント取ったらそのまんま犯すから気をつけろ」
「ハハハ……」
「じゃあ、まずそっちから来い」
「here we go!」
タメをつけてそう言うなりメイは前へ瞬間移動した。ヘイロンとの間合い30cm。その間合いからは信じられないことにハイキックを繰り出して来た。
「あのな」
ヘイロンはメイの脚を掴んだ。
「奇襲技なのはわかるが」
掴んだ脚に体重をかけ、後ろへ倒す。
「それなら蹴りじゃなく、アッパーでいいだろ」
ヘイロンはあっという間にメイの上に馬乗りになっていた。メイが頬を紅くし、目を逸らしている。
「寝技に気をつけろと言ったろ」
「鮮やかなんだもん……」
一切抵抗することなく何かを待っているようなメイをじっと見つめ、ヘイロンさ離れた。
「寝技に持ち込むのはまだ早いな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 17:19:02.77:2CMs5OjG
「しかし押し倒すと胸の盛り上がりスゲーな。プリンみてぇ」
「……やっ!」メイは長袖Tシャツの胸を押さえた。「バカっ!」
そう叫ぶと流れるような動作で連撃を繰り出す。長い手足と回転の動きを使い、反撃の隙を与えない猛攻の中に構わずヘイロンは手を差し込んだ。
「あっ?」
顔を掌で塞がれ、メイの動きが止まる。
「寸止めじゃなかったら、その可愛い顔、潰れてるぜ?」
構えを戻すと、メイは頬を膨らませて言った。
「次はそっちから来なさいよ。辱しめを与えてあげる!」
「……辱しめって言葉の意味知ってるか?」
「ヘロヘロにしてやんよ。来ーいっ!」
「じゃ、遠慮なく」
そう言うとヘイロンは初めて構えをとった。左拳を前に出し、コンパクトな動作でステップを開始する。
80kg近くありそうな身体が浮くぐらい軽そうなものに見えた。無駄がない。隙もない。攻撃開始の合図もなかった。
ヘイロンの左拳がまるで無数の蛇になったかのように、ヒュンヒュンと風を切っていきなり襲いかかって来た。
「うわーっ!?」
メイは思わず叫んで後ろへ飛び退いた。しかしわかっていた。寸止めでなければ少なくとも3発はまともに貰っていた。
「いちいち動きがデカイんだよ、お前は」
ヘイロンはそう言うと構えを崩した。
「長い手足と高い運動能力は結構だが、芸術点を狙いすぎだ。フィギュアスケートならいいが……」
電話がかかって来たのでヘイロンは黙った。かなり旧型のスマートフォンの画面を見ると、言った。
「悪ィ。母さんが腹を空かしてる。俺、もう帰るわ」
「もしかして、あれ……晩御飯?」
メイはヘイロンがベンチに置いているビニール袋を見た。中には調理不良のハンバーガーのバンズやパテやレタスが入ってるのを知っている。
「ま、まぁ、たまにはそういう食事も楽しいよね」
ヘイロンは何も言わずに帰ろうとした。
「待って! 電話番号ぐらい教えてよ!」
っていうかそっちから聞けよと思いながらメイは声を投げた。
ヘイロンは面倒臭そうに戻って来ると、再びスマートフォンを出し、ナンバー交換をした。
「ね、これから毎日手合わせしてくれる?」
「気が向いたらな」
そう言うとくるりと背を向け、片手を上げて帰って行った。
『本当に不思議なひと』
メイは思いながらその背中を見送った。
『それにしても今の時代にスマホって……』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 18:06:49.72:2CMs5OjG
「娘さん、北大なんだって? 凄いじゃないか」
リウ・パイロンがワインを手にしながら言った。
「ハハハ。トンビが鷹を生ませました」
美鈴の席に座り、ハオがてれてれと頭を掻きながら顔をクシャクシャにする。
「僕も実は親のコネを使ば北大でも入れたんだが、使う気もなかったし、頭が悪かったから3流大学卒さ」
「それで大統領になっちゃうところが凄いですよ」
美鈴はメイファンの隣でララを交えて会話が弾んでいた。
大統領への誉め言葉はそこそこに、ハオは娘の自慢を続けた。
「僕なんか高卒だし、妻は学歴自体ないのに、こんな夫婦からあんなよく出来た娘が生まれちゃっていいんですかねぇ。エヘヘ」
「そう言えばメイファンも北大だったな、しかも飛び級だ」
リウがそう言うとハオはあからさまにつまらなそうな顔をした。
「明日アメリカに帰るのかい?」
「あっ、はい。悪魔も大丈夫とわかったので……」
「お願いがある、リー・チンハオ」リウはララのほうを見ながら言った。
「ふぁい?」
「メイファンをどうか……連れて行かないでくれ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 18:25:06.68:2CMs5OjG
「美鈴ちゃん、綺麗だからモテるでひょ〜?」
顔を真っ赤にしてベロンベロンに酔ったララが言った。
「男性にはあまり興味がありませんので」美鈴は眼鏡をくいっと指で上げながら言った。「糞大統領を毎日側で見ていると、男なんて……って思っちゃう」
「あー、わかる〜〜! でもね、あのね、男は優ひさが全てよ? わかる? あと、いざって時だけでもいいから、ひたむきさね」
「違うだろ〜! 男は頼もしさだよ〜!」
ぐでんぐでんに酔ったメイファンが言った。前には空になったビール瓶が20本置いてある。
「頼もしさ、という点だけにおいては糞大統領は合格ね」美鈴がニヤリとしてメイファンを見た。
「ところでよ〜。ララよ〜」メイファンが寂しそうに言った。「明日アメリカに帰っちまうよか〜?」
「おひごとあるひね〜」ララが答える。「太極拳教しちゅ、休んでたら生徒達に悪いひ〜」
「こっちで開けばいいじゃんか。帰って来いよ」
「あ、そだ」ララはメイファンの肩を抱いた。「メイヒァン、アメリカに来にゃい? 英語ひゃべれるんでひょ? 来なよ〜」
「アメリカかぁ」
「楽ひーよ? 絶対! うちに空いてる部屋あるからさ〜。そこに住め!」
メイファンはリウのほうへ目をやった。リウもハオの話を聞きながらこっちを見ていた。
「ちょっとトイレ」
そう言うとメイファンはまっすぐリウのところへ行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 19:57:31.34:+ReG0M1R
メイファンはリウの隣に立つと、言った。
「おい、糞大統領」
「なんだ露出狂」リウは嬉しそうに笑った。
「私を雇え」
「それはいいな」リウは手をぽんと叩いた。「早速美鈴をクビにしてお前を私の秘書にしよう」
「秘書なんて柄じゃねーよ」
「ならば何がいい? 夜伽係か?」
「誰がどう考えてもボディーガードしかねーだろ!」
「誰がどう考えても私にボディーガードが必要あるわけがないだろう」
「雇え」
「そうだ。お前を私の養女にしよう」
「殺すぞ」
「なら何がいいんだ」
「ボディーガードにしろ」
「話が元に戻ったぞ」
「ボディーガードがいい。それ以外ならララについてアメリカに行く」
「それはダメだ」
「何でだよ。関係ねーだろ」
するとリウは立ち上がり、真剣な顔で言った。
「お前を妻にしたいからだ、メイファン」
「ファッ!?」
「アメリカへ行くと言うのなら仕方ない。ここでプロポーズさせて貰う」
「ファック!」
「結婚してくれ、メイファン」
「アイル・キル・ユー!」
「……返事しろよ」
「ノー・モア・ヒロシマ!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 21:48:11.21:+ReG0M1R
「おっかえりー」
アパートに帰ると風呂上がりの格好をしてTVを見ていたメイが言った。
「あらあら。ヘイロン君は?」
ハオの肩を借りてようやく歩きながら、酒の匂いをぷんぷんさせてララが言った。
「わっ! ママ、酔っ払っちゃったの? 珍しい!」
ララをソファーに寝かせると、ハオはメイに説教した。
「こらっ。待ってても来ないから心配するじゃないか」
「ごめんなさい、パパ。友達と話が長引いちゃって……」
「いいよぉ〜! ちゃんと部屋に戻っててくれてパパは嬉しいよぉ〜!」ハオは娘に抱きつき、頬擦りし、キスした。
「明日アメリカに帰るんだ?」
「うんそうなんだ。パパはとても寂しい」
「あの悪魔は本当に大丈夫なの?」
「メイ」ララが寝込んだまま言った。「あなたも聞いてたでしょ? あの子、私の妹なの」
「でもあいつ、ぼくの手足とか斬って、内臓引きずり出したんだぜ?」
「ハオ、なんだか私、あれも見るの初めてじゃないような気がするの……。
だからね、メイ。あの子はあなたの叔母さんよ。仲良くしてあげて」
「……わかった」メイは素直に頷いた。「ママの言うことなら信じられるよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 22:24:50.28:+ReG0M1R
メイファンはぐるんぐるん回る海の中にいた。
記憶の中からさまざまな音が聞こえて来る。
幸せな音はあまりなく、殺してやりたくなるような耳障りな音に溢れていた。
しかし一番近い記憶は彼女を笑わせた。
幸せとはこんなものだろうかと、憎しみだけを10年間胸に抱いて生きて来たはずの彼女に思わせた。

『マヤカシダ!』

いきなり真っ黒な声が耳許で聞こえ、メイファンは飛び起きた。

「……ここ、どこだっけ」

ブラックチェリー材の壁に大理石の床、自分が寝ているベッドはまるで海のような広さだ。
自分の身体を見ると、白い絹のパジャマを着せられていた。

「起きたか、メイファン」
そう言いながらリウ・パイロンが入って来た。派手な赤のガウンを羽織っている。

「あぁ……私、酔っ払ってぶっ倒れたのか?」

「酔っ払ってではない」リウはゆっくりと近づいて来ながら、言った。「俺にプロポーズされて倒れたのだ」

あっ、そうだった。メイファンははっきりと思い出した。思い出したら挙動不審になった。
「あっ! 私、帰って見たいTVがあったんだ」
「どこへ帰るんだ?」
「家だよ、家」
「西安のお前の家はもうないぞ」
「あ、アメリカだよ、アメリカ!」
「メイファン」リウはベッドに腰掛け、肩に触れて来た。「プロポーズの返事を聞かせてくれ」
「な、何で私なんだよ!? 私はただの妹じゃなかったのか!?」
「シューフェンが死んで、俺はもう妻は娶るまいと思っていた」
「そそそうだよ! お前の奥さんは永遠にシューフェンさんだよ!」
「しかし、22年間、俺の心を占有し続けたのは、驚くべきことにシューフェンではなく……」
「あっ、わかった! 一緒に日本に行ったあのバケモノだろ」
「リーランは俺が思っていたような女ではなかった。だらしがなさすぎた」
「だだだだらしなさなら私は誰にも負けないぞっ!」
「答えをくれ、メイファン」リウの顔がどんどん近づいて来た。「答えがなければお前を抱くことが出来ん」
「うひっ」
「?」
「うひーーーっ!!」
そう叫ぶとメイファンは勢いよく立ち上がり、手刀を繰り出した。
それをリウは赤い『気』を纏って掴むと、ぐいと引き寄せた。
「そういうところが好きなんだ!」
強くそう言うと、リウは強引にメイファンの唇を奪った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 22:48:25.42:+ReG0M1R
リウにキスされたら、身体がトロットロに溶けちまって、きっと抵抗なんか出来なくなる。
メイファンは17歳の頃そう思っていた。
しかし意外にもララと一緒に窓の外から見たシューフェンの乳首をベロベロ舐めるリウの汚ならしい姿が目に浮かび、気持ち悪くなった。
メイファンは思わず噛みついた。
「グアッ!?」
リウは唇を噛みちぎられる未来を既に見ていたので、軽く血が出ただけで助かった。
「もう……言ってやるーーッ!」メイファンはベッドの上で仁王立ちすると、叫んだ。「リウ・パイロン! お前が好きだーーッ!!」
「ならば!」リウは超低空アッパーを繰り出した。「結婚してくれるかーーッ!?」
「わかんねーーッ!」メイファンはそれを受け止めると、リウの力を利用してサマーソルト・キックで顎をはね上げた。「そーゆーの慣れてねーーッ!!」
リウは自分から飛んで致命的ダメージを逃れると、突進した。「俺の愛をーーッ!」
メイファンは両手を組んでリウの背中に穴を開けようとしたが、『気』の鎧で防がれた。
「受け取れーーッ!!」叫びながらリウはメイファンをベッドに押し倒した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 23:05:52.32:+ReG0M1R
リウはマウントを取っていた。
「ちょーーッ!! またレイプすんのかーーッ!?」
「だから答えてくれよ!」リウは拳を振り上げて言った。「ここから総合格闘技になるかセックスになるかはお前の答え次第だ」
「……」メイファンは目を丸くしてリウを見つめた。
「さぁ、答えろ。パンチの雨を降らせるぞ」
「脅迫だぞ、それ」メイファンはケラケラと笑った。
「もう一度言う」リウはマウントを解き、横に並ぶと、頬に手を触れながら言った。「結婚してくれ」
メイファンは胸で息をしながら、大きな目でリウを見つめた。そして笑顔で言った。
「しょーがねぇな。してやんよ。子供作って3人で殺し合いしようや」
「よし」リウが笑う。「たった3人じゃ寂しいバトルロワイヤルだ! 最低5人にするぞ!」
「来いや!」
「行くぞ、メイファン!」
そう叫ぶとリウは改めてメイファンにキスをした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 23:20:07.99:+ReG0M1R
「美しくなった、本当に美しくなったな、メイファン」
リウはそう囁きながら髪を撫で、メイファンの乳房を揉んだ。
「フン」
メイファンは鮮やかにマウントを返すと、リウの乳首を指でひねった。
「ああっ……」リウが切なそうな声を上げる。
「お前はジジィになったなァ? こんなにハゲ散らかしやがって」
頭を掴み、ワシャワシャと掻き乱すと、リウが泣きそうな顔をした。
「アハァ……。たまんねーな、その顔」
メイファンは涎を垂らし、指を2本歩かして股間へ歩かせた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 23:30:03.53:+ReG0M1R
「ジジィのくせにこんなにしやがって」
最高硬度になっているマジカル・ステッキをメイファンは5本の指で玩んだ。
「おおっ……」とリウがたまらず声を上げる。
「舐めて欲しいのか?」
「な……舐めてください」
「やーだね」
「おっ、お願いだから……!」リウは涙を浮かべた。
「『お願いします』だろうがカス!」
「おっ、お願いします!」
「よしよし、よく言えたな」メイファンは恍惚の表情で見下した。「ご褒美をやろう」
赤い口の中で桃色の舌に虐められながら、リウのマジカル・ステッキは、どんどん悪い子になって行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/26(土) 23:37:44.22:+ReG0M1R
悪い子になったマジカル・ステッキを上から根本まで下の口で包み込み、メイファンは腰を振った。
「あっ……! あっ……!」
「いいか? いいか?」下からリウが聞く。
「たまんないッ! 当たるッ! 奥に当たるッ!」
「太いか? 太いか? 俺のは……」
「太すぎて……好きすぎて……首斬っちゃうかもぉ!」
「防御する! 構うな!」
「アッ……! ヒェヘェ! ウアァァアッ!」メイファンは白目を剥いた。
「行くぞッ! 一緒に、行くぞッ!」
メイファンは狂ったように激しく腰を振ると、地獄のような叫びを上げ、天国へ落ちて行った。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/27(日) 07:45:59.96:Dx+C1Mxa
朝鮮大好き日本嫌いの滝浦真人(放送大学 法政大学)によるお友達審査
お友達から博士号もらったひとが
お友達に博士号をとらせるために学位授与の工作でもしてるのか?
学位授与を暗黙の了解とした審査に何の意味があるんですかね

椎名 美智(しいな みち) 
研究テーマ
近代英語期口語表現の歴史語用論的研究
(ずっと歴史語用論とかいう分野で英語の口頭表現のコーパス研究やってきたひと)
ttp://http://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000020153405/

法政大学国際日本学基幹科目  
国際日本学演習 T・U 椎名 美智
日本語の性格T・U 滝浦 真人
ttp://http://www.hosei.ac.jp/gs/kenkyuka/jinbun/nihongaku/kamoku_kyoin.html

博士論文口頭試問
研究題目 「させていただく」という問題系―歴史社会語用論的調査と考察―
日時    : 2019年1月27日(日)
場所    : 放送大学本部(千葉県千葉市美浜区若葉2-11)
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 11:09:50.45:FsC5mv8q
ヘイロンはアパートに帰って母の世話をすると、再び外へ出た。
黒い手袋をきつく締め、帽子のように黒いマスクを被ると、駅で拾った自転車に乗って走り出した。

待ち合わせの場所へ行くと相棒は既に待っていた。
「アラン、待ったか?」
ヘイロンが聞くと、アランは小さな身体をくねらせて答えた。
「今来たとこだよ、ヘイロン」
「今日の依頼は何だ?」
「クルマにギザギザコインで傷つけた先輩への報復」
「なんだそりゃ。いくらで受けた?」
「800円」
「そんな安いの、受けるな!」
「だって他に仕事なかったし、俺は金額とかどうでもいいからさ」
「俺はどうでもよくねぇんだ。せめて1000円まで釣り上げろよ」
「最初は500円スタートだったんだぜ? これでも頑張ったんだ。誉めてよ」
「しょうがねぇ、行くぞ。案内しろ」
「わぁい」
喜びの声を上げると、アランと呼ばれた小男は、ヘイロンの自転車の後ろに立って乗った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 11:36:14.95:FsC5mv8q
北京体育大学の4回生チョウ・ジンレンは、5回目のチャイムでようやく玄関を開けた。
黒いマスクで顔を隠したバットマンみたいな奴が立っていた。
「は? 誰?」
マスクの男は答えた。
「仕事人、リウ・パイロン」
「あっ。聞いたことあんぞ。お前、ネットで仕事引き受けて、暴力振るってる奴だな?」
チョウが開けたドアの隙間から、小男がするりと中へ入り込んだ。緑色のスーツで頭から足の先まで固めたコスプレ男だった。
「あっ! こら!」
目を逸らしたチョウにドアの隙間から拳が飛んで来た。
チョウがあっさりと床に倒れる。
黒マスクは手を伸ばしてチェーンロックを外すと、中に入って来た。
「テメェ!」チョウが顔を押さえながら立ち上がろうとする。「犯罪だぞ! わかってんのか!?」
その横から緑スーツが靴で顔を踏みつけた。しかし攻撃が軽すぎてダメージがない。
「おい、チビ」チョウが小男を睨みつける。「知ってんのか? 俺がフットボールのエースだってこと」
「ヒィッ!?」
「お前なんかボールだ、ボール!」
そう言いながら小男を蹴り飛ばそうとしたところを黒マスクが肩を掴み、こちらを向かせると顔に突きを入れた。
一撃で失神し、再び床に倒れたチョウめがけ、小男が靴箱の上にあった鉄製の花瓶を取り、振り下ろす。
「やめろ」ヘイロンは花瓶をキャッチし、取り上げた。
「キィーッ……キィーッ……! 殺らせろリウ・パイロン!」アランは激しく興奮している。
「800円で殺してどうすんだ。割に合わねぇだろ」
「クソーッ……クソーッ……! 俺のことボールとか言いやがってェーッ! 殺してェーッ!」
「じゃあもっといい仕事取って来いよ」
そう言うとヘイロンはアランの手を引っ張り、外へ出た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 11:39:32.45:FsC5mv8q
「あっ、そうだ」
ヘイロンは気づくと戻り、玄関先にあったメモを1枚取ると、アランに書かせた。
『クルマにギザギザコインで傷をつけるな!』
そう書かせ、気を失っているチョウの顔の側に置かせると、帰途についた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 11:53:19.84:FsC5mv8q
空港に見送りに来たのは3人だった。
ハオはずっとメイの足に抱きつき、帰りたくないよぅ帰りたくないよぅと泣いていた。
「お気をつけて」と美鈴が言った。
「ありがとう、美鈴ちゃん。わざわざ見送りに来てくれて」ララが微笑む。
「お酒はもう抜けました?」
「大きな声出さないでね、ガンガンするの」
「ママ。パパ可哀想」足元のハオを見ながらメイが言う。「パパだけ残して行ったら?」
「こんなパパでも待ってる生徒達がいるのよ。引きずって帰るわ」
「夏休みにはアメリカに帰るね」
「それもいいけど、たくさん友達作って青春を楽しみなさい」ララは優しくキスをした。「ヘイロン君とも仲良くね」ウインクをする。
「なぁ、今度いつ来る?」メイファンが聞いた。
「アンタ達の結婚式の時よ」ララはそう言うとため息を吐いた。「まさか自分の妹がリウ・パイロンと婚約するとはね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 12:07:24.44:FsC5mv8q
【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物?

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。マーシャルアーツの使い手。
リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいる。超がつくほどの貧乏。
メイに想いを寄せられているが、ヘイロンの気持ちは不明。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。メイファンにプロポーズをする。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
元習近平国家主席のボディーガード兼最強の殺し屋だった。全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になる……のか?
異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物?

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
身体を持たない『気』だけの存在であり、元々は妹メイファンの身体の中に住んでいた。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。
透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 12:23:05.86:FsC5mv8q
「じゃあ、あたし、学校があるから」
両親を見送り、空港を出ると走り出しかけたメイをメイファンが呼び止めた。
「今夜お前んとこ行くぞ。ビール用意しとけ」
「ええっ!? なんで!?」
「お前は私の弟子だと言っただろーが」
あぅあぅあと口を動かすも言葉が出て来ず、仕方なくメイは返事もせずに走り出した。
「青島ビールだぞ!」
メイファンはその背中に大声でリクエストすると、美鈴のほうを見もせずに言った。
「……送って」
「『送ってください』でしょ」
「お願いします」
「いい子ね」
満足した笑いを浮かべると、美鈴はタクシーへ向かって行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 12:49:47.31:FsC5mv8q
大学の昼休み、メイはヘイロンに電話をしてみた。
腕のボタンを押し、電話帳のHの欄を目の前に並べると、ヘイロンの名前を人差し指で突っついた。
耳許で呼び出し音が鳴る。
メイは自分の心音が高鳴るのを楽しんだ。
電話が繋がる。
「ただいま電話に出ることが出来ません。ピーッという音の後にメッセージをどうぞ」
いや、こんな旧式のメッセージの残し方、知らんし。辟易してメイは電話を切った。
今日も稽古、つけてくれるのかなぁ……。そう思っていると、すぐにヘイロンのほうから電話がかかって来た。
電話を取ると、5秒ほどメイは無言で彼の言葉を待った。暫く不思議な無音が続き、やがてヘイロンの声が聞こえた。
『おう』
「ハイ」メイは笑ってしまいながら挨拶した。
『あのな』
「うん?」
『昨日、お前、俺のお願い一つ聞くって言ったよな?』
「うん。変なのじゃなけりゃ何でも聞くよ」
『じゃ、今日、学校終わったらデートしろ』
メイは飛び上がるように背中を伸ばすと、嬉しさを顔いっぱいに表現した。
「え〜? それ、変なお願いかもぉ〜」
『なんでだよ。まだ襲ったりしねぇよ』
「『まだ』って何よ。こっわ〜〜!」メイはくすくす笑う。
『あのな。○○街に焼肉食べ放題の店あるだろ。あそこでデートするぞ』
また何でそんな臭そうな店で……と思いながらもメイは承諾した。
「ね、稽古は?」
『あ? あぁ、デートの前につけてやるよ』
「それもデートのうちじゃないの〜?」
『どうでもいいだろ。じゃな』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 13:02:48.81:FsC5mv8q
電話を切ると、メイは小さく踊り出した。
そこへすぐにまたヘイロンから電話がかかって来る。
『もちろんお前の奢りだぞ!? いいな!?』
「ん。いーよ。で、あたし、どんなの着て行ったら嬉しい?」
メイがそう言おうとした途中で電話は切れた。
可愛い奴め、照れちゃって。そう思いながらメイは小さなダンスを続けた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 19:02:49.66:B/Kx+ZrZ
ふと誰かの気配を感じ、振り返る。
すると植え込みの陰に慌てて隠れる女がいた。どこかで見たことある女だった。
確かめようとメイが立ち上がり、近づくと猛ダッシュで逃げ出した。派手目の茶色のロングヘアー、赤地に金の派手なセーター、黒いショートパンツ。
「あっ。やっぱりムームー先輩だ」
メイは彼女をあっさり追い越し、前に回って確認すると、言った。
「うわぁぁぁぁ!?」
ムームー先輩と呼ばれた女は腰を抜かしかけたが立ち直り、モデルのような姿勢でキリッと立つと、咳払いをして言った。
「私のことを知ってるの?」
「もちろんですよ〜」
メイは嬉しそうに笑う。
「去年のミス北大。モデルの仕事もやってて親はあのポアウェイの社長の弟のお嫁さんの従兄弟。
とにかく北大1の美人のツァイ・ミンムー先輩ですよね!」
「あら。御存知頂けて光栄だわ」
そう言うとムームー先輩は長い髪をふぁさりと手でなびかせた。
「どうしてあたしのこと見てたんですか?」
メイが聞くとあからさまに挙動不審になった。
「あ、あ、あなたのことを見てたんじゃないわよ!」
「え〜? じゃあ……」
そこへ通りすがりの学生三人組が声を掛けて来た。
「きゃー! ムームーとリー・メイメイちゃんだ! 素晴らしいツー・ショット発見!」
「え! お二人は仲良しなんですか?」
「いいなぁ。美女二人が並んでると花が咲き乱れてるみたいだなぁ」
「え……」メイは笑顔がひきつってしまった。「何であたしの名前……」
「とっくに有名人だよ〜、メイメイちゃん」
「アメリカから凄い可愛い子が来たって」
「みんな友達になりたがってるよ〜」
「そ……そうなんだ?」
「いいわね。早々人気者で」ムームー先輩がわざとらしい高い声で言った。
「いやぁ〜。にゃはは!」メイは照れて頭に手をやった。
ムームー先輩は舌打ちすると、背中を向けた。
「私、忙しいので。失礼するわ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 23:02:58.09:B/Kx+ZrZ
学校の帰り、待ち合わせの公園へ行くとヘイロンはまだ来ていなかった。
「まぁ、ね。まだ10分前」
時間ちょうどになっても来なかった。メイはベンチに座ったまま脚の体操をしはじめた。
「遅れちったよー」
男の声がしたので顔を上げると後ろのベンチで待っていた女の子の連れだった。遅れて来た男はさらに言った。
「でも大したことないから気にしない、気にしなーい」
『あぁ、そう言えば中国人って滅多なことじゃ謝らないんだっけ』メイは思った。『で、遅刻も当たり前ってか』
『そのくせ大学は遅刻にも無断欠席にも厳しいって……変なの』
約束の時間を20分過ぎた。
メイが暇潰しにパズルゲームをやっていると、遠くのほうからヘイロンがぶらぶらと歩いて来るのが見えた。
「おっそーい! 30分遅刻!」
「26分だ。馬鹿め」
「うっわー……。やっぱり中国人て謝んないんだ……」
「バイトが長引いたんだ。仕方ないだろ」
「バーガー・ショップ暫く休業じゃないの?」
「だから代わりに現場仕事入ってたんだよ」
「何でそんなにバイトばっかりやってんのよ??」
「お前にゃ関係ないだろ」
しかし、ぶらぶら歩いて来たにしてはヘイロンは汗をかいていた。現場仕事の汗ならとっくに乾いているはずだ。
「ははーん。悪いと思って全力で走って来てくれたんだ? 近くなってからぶらぶら歩きに変えたな?」
「知らねぇよ。さ、行くぞ」
「待ってよ! 稽古つけてから!」
舌打ちするとヘイロンは面倒臭そうに大きな荷物を置いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/27(日) 23:28:18.40:B/Kx+ZrZ
「ね? 汗かいてからのほうがお腹も減るでしょ?」メイが笑う。
二人は日式焼肉バイキングの店のテーブルに向かい合って座っている。
店員がやって来てコンロの火を点け、言った。
「じゃ、今から90分。食べ残し、持ち帰りダメね」
「Alright。じゃ、取りに行こうよ」メイが立ち上がる。
「おっ、おう」ヘイロンも立ち上がった。何だか興奮していた。

メイは肉と野菜と惣菜をバランスよく取って来た。ヘイロンは肉ばかり山盛りで取って来た。
「ケーキとかもあったね〜。あとで取って来よ?」
「ケーキなんかいらん。グチャグチャになるだろ」
「は? グチャグチャって?」
「とにかく肉だ。目移りは決してせん!」
「……変なの」
メイはそう言いながら焼けたカルビを口に入れた。
「……美味しい! 食べ放題の肉って捨てるとこみたいなのよくあるけど、ちゃんとしてるじゃん、ここ!」
そう言ってヘイロンを見ると、何だか変だった。次々と肉を焼いては物凄い勢いで消費している、大きなバッグを膝に開いて……。
「……何してんの?」
「ドカ食いしてんだよ」
「店員さんの目はごまかせても、あたしの目はごまかせないんですけど……」
ヘイロンは箸で肉をタレもつけずに口に運び、口に入れる寸前で素早くバッグの中に仕込んだ45リットルのゴミ袋の中へ叩き込んでいた。
「持ち帰り……ダメだって言われたよね?」
「しっ! 見逃してくれ」
「面白いひとだなぁ……」
メイは鮮やかなヘイロンの箸捌きをじっと見つめながらエビフライを食べた。
「……でも最後にケーキだけ一緒に食べよ? なんか一人で食べてて寂しいよ……」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 00:03:14.04:2ogr8KP7
「でねー、そんな感じであたし、結構噂になってるらしいよ〜」
「ふーん」
二人はアイスクリームをぺちゃぺちゃ言わせながら会話した。ヘイロンのバッグはパンパンに膨れ上がっていた。
「なんかさー、皆があたしと友達になりたがってるって〜」
「ふーん」
ヘイロンは抹茶アイスを夢中でさくさく食べている。
「アメリカから凄い可愛い子が来たって言われてるんだって〜。参ったなぁ、にゃははっ!」
「ふーん」
「『ふーん』ばっかり言ってないでさ、ヘイロンあたしのこと、どう思う?」
ヘイロンはため息を吐きながら顔を上げ、メイの顔をじっと見た。そして言った。
「まぁまぁ可愛いよな」
「まぁまぁかよ! んーでも、具体的にどのへんが?」
「目が2つあって、鼻と口が1つなとこ」
「誰でもだろ!」
「……あれっ? でも、お前……」
「何なに? 可愛さ再発見?」
「よく見たら姐さんにそっくりだな」
「……あ〜、メイファンおばさん? 実際あのひと、実の叔母さんらしいもん」
「そうだったっけか。でも目の迫力が違うな。あの人が豹なら、お前はネコだ」
「ネコのほうが可愛いじゃん」
「俺は豹のほうが好きだな。格好いいわ」
「え〜……」メイはしょぼんとした。
「今日も現場のバイトで一緒だったんだが、あの人本当に格好いいわ」
「一緒にバイトしてたの!?」
「たまたまな。今夜お前んとこ行くって言ってたけど、待たせてないか? 大丈夫か?」
「あー……。そう言えば……そうだった……か」
メイは苺アイスを食べきると、次はチョコアイスを取りに立った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 00:22:24.27:2ogr8KP7
月が出た。アパートに向かって帰りながら、ヘイロンはアランに電話をした。
800円の仕事をやらされることがないよう、これからは前もって確認することに決めていた。
『よう、仕事人リウ・パイロン』アランが電話に出て言った。
「よう、緑色悪夢(ルーサー・アーマン)、今日の仕事はあるか?」
『今日は凄いよ、ヘイロン。五万の仕事だ!』
「おぉ! マジか! 凄ぇな!」ヘイロンは小躍りして喜んだ。「で、内容は?」
『ターゲットは女の子。その子の顔に一生消えない傷をつけること』
「……なんかえげつないな。まぁ、五万だからやるけど」
『ビビる必要ないよ。ターゲットはアメリカ人だ。毛唐だよ』
「何?」
『留学生さ。名前は中国人だけどね、俺らとは違う人種だと思って……』
「待て待て! そいつ、なんて名前だ?」
『えーとね、リー・メイメイ。北大の医学部の新入生』
「断れ」
『えっ?』
「そいつ、俺、知り合いだ」
『おっ、おい? 五万だぜ!?』
「どうせお前はカネは要らんだろ」
『え〜……! 楽しみにしてたのに!』
「断れよ? 絶対だ」
そう言うとヘイロンは電話を切った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 00:28:12.07:2ogr8KP7
すると暫くしてまたアランから電話がかかって来た。
『仕事人リウ・パイロン、大変だ!』
「どうした、緑色悪夢」
『依頼人が報酬20万出すと言って来た』
「に……にじゅう!?」
『やろうぜ』
「……」
『やろうぜ、ヘイロン! デカイ仕事だ! 夢があるぜ!』
「いやいやいや、やらん!」
『なんでだよ!』
「やらんったら、やらん。断れ!」
ヘイロンは乱暴に電話を切った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 00:39:10.33:2ogr8KP7
「ニジュウマン……ニジュウマン……」とヘイロンが呟きながら歩いていると、またまたアランから電話がかかって来た。
「どうした? まさか今度は30万か?」
『50万だ! ヘイロン!』
「なん……だと?」
『50万だ! 50万出すと言ってる!ヘイロン!』
「ご……ごじゅう……」
ヘイロンは50万でうまい棒が何個買えるか計算した。計算するまでもなく答えは出ていたが、途方もない数字が信じられなくて、何度も計算し直した。
「ご……5万本! 間違いなく!」
『さすがに怖いよなぁ? 50万も出すなんて、いかにも裏がありそうでヤバそうだ。やめとこうぜ、ヘイロン。危険すぎる……』
「やると言え」
『あっ。絶対にやらないんじゃなかったん……』
「やる! 絶対にやる!」
ヘイロンの身体から赤い『気』が炎のように大きく立ち昇った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 06:26:20.70:wBm1QlCj
そのころリーランはくも膜下出血で意識不明の重体になっていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 07:19:13.15:bifQnHSm
しかし誰も助けてくれません。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 07:20:21.73:lr2/JFm3
「うわあぁぁ! 母さん! 母さーーんっ!」

ヘイロンは救急車を呼んだ。
救急車の中で母リーランの手を握りながら、ヘイロンは言った。

「母さん……っ。せっかく大量の肉が手に入ったのに……」
「やめてくれよ神様……これ以上俺達母子に不幸を与えるのは……!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 09:00:37.92:Y5NY9/1B
生活保護を受けているリーランであったが、入院は保護の対象外となり、毎月20万の医療費を払わねばならなくなってしまった!
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 09:04:08.23:30iK+0LL
メイが恐る恐るアパートに帰ると、階段の下で黒豹が座り込んで待っていた。
「肉……旨かったか?」人語を喋った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 12:46:10.16:30iK+0LL
「ビールは!」メイファンは部屋に入ると目をくわっと見開いて叫んだ。
「れ、冷蔵庫に買ってあるよ」
たじたじしながら言ったメイの前を飛ぶように駆け抜けて、メイファンは冷蔵庫を開いた。中身を見てまた叫ぶ。
「4本か!」
「あ、あたしは要らないから……全部」
「たった4本なのか!」涙が滲んだ。

あっという間に4本全部飲み干したメイファンを眺めながら、メイは聞いた。
「大統領んとこ帰んないの?」
「慣れん。落ち着かん」
「あたしんとこは落ち着くの!?」
「当たり前だ。可愛い姪っ子のメイだぞ……おっ? メイっ子のメイ……ププ!」
「中国語で姪っ子は『姪(zhí)』なんだけど……」
「とにかく制圧できるからここは居心地がいい」
「おばちゃん」
「以後おばちゃんと呼ぶな」
「じゃあ何て呼ぶ?」
「メイファン様でも、女王様でも、好きに呼べ」
「じゃあメイファン。眠い。もう寝てい?」
「ダメだ。これから稽古をつける」
「これからって……ビール4本も飲んだのに?」
「たった4本だ。それに私のつける稽古には場所も肉体も要らん」
「肉体要らないて……」
メイファンは空になったビールの缶を手に取ると、『気』を流し込み、手榴弾に変えた。
「まずはこれをやってみろ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 14:20:16.94:30iK+0LL
「タネを教えてよ」メイは目を丸くしながら言った。
「マジックじゃねぇ」メイファンは落ち着いた顔で教える。「『気』を自在に使えるようになれば、こんなのは容易い」
「いや普通できないよ!」
「言ったろう。私はお前。お前は私だ。私に出来ることはお前にも出来る」
「背が随分違うよ?」
メイは頭の上からメイファンを見下ろしながら言った。
「お前はハオに鍛えられ、身体も心も伸び伸びと育ったからな。言わばお前は私の『成功バージョン』だ」
「メイファンは失敗バージョンなの?」
「そうさ。私の人生は何もかもが失敗だった」
「そんなことないよぅ〜」
「気休めはいい。とにかく1日中部屋の中で『気』をいじってばかりいた私と違い、お前は身体が育っている」
「胸はそんなに変わらないよ〜」
「おまけに周囲の仲間から愛されて育ち、精神もひん曲がっていない」
「あ〜……。え〜と……。メイファンも自由でいいと思うよ」
「私は10年間お前の中からそれを見て育ったからよく知っている。その幸福ズタズタにしてやると何度思ったことか」
「怖っ!」
「だからな」メイファンは母のような顔つきで言った。「お前に出来ることで私に出来ないことはあるが、私に出来ることはすべてお前は出来るはずなんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 21:48:30.43:30iK+0LL
「でもさ、普通失敗人生で大統領夫人にはなれないと思うよ」
メイはポテチを食べ、コーラを飲みながら言った。
「あぁ。まぁ、どーでもいいことだ」
メイファンは空のビール缶を舐めながら言った。
「どうでもよくはないよ! すっごいことだよ!」
「フン。まぁ、これから幸せとかいうヤツを目指して頑張ってみるかな……。エイヤッ!」
「何してんの……?」
「いや、『気』を流し込んだらビール出来ねーかなって思って」
「出来ないんだ?」
「くそぅ。何で出来ねーんだろ……。いつか作れるようになってやる」
「まだまだ成長中なんだね、おばちゃんも。あっ」
「人生死ぬまで勉強だ。3回目の『おばちゃん』言ったら斬るぞ」
「死ぬまでかぁ。卒業したら勉強なんかしたくないなぁ」
「そんなことしたらお前の親父みたいになるぞ」
「優しくていいじゃん。面白いし」
「まぁ、どーでもいい話はもうやめて、修行だ、修行」
「うん、修行はしたい。パパとママを守れるようにもっと強くなりたいから」
「いい子だ」
「でも、おば。メイファンが……」
「危なかったな」
「……メイファンが大人しくなったら、パパとママを守る必要もないかも?」
「何があるかわからんぞ?」
「例えば?」
「例えば……あのヘイロン青年だな」
「ヘイロン!?」
「あぁ、アイツは金の亡者だ。金の為に何を仕出かすやらわからん。しかもお前よりは強い。お前、気をつけろよ?」
メイはケタケタと笑った。
「ないよ〜! ヘイロンはいいヤツだよ。あたし、信じてるもん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/28(月) 21:56:01.51:30iK+0LL
ベッドでうたた寝してしまったメイの頬を黒い指が撫でた。
「ララの娘……か」
メイファンはメイの寝顔を見ながら微笑んだ。
「……可愛いな」
そう言うと掛け布団をかけてやる。
「さて、私も寝るか。10年間ずっといたせいか、皮肉なことにコイツの中が一番落ち着くんだよな」
メイと向き合って寝転ぶと、メイの中へ入って行こうとした。
「ただいまー」
ガチンと骨と骨がぶつかる音が響いた。
「痛っ!」
「あぎゃーーーっ!?」メイが悲鳴を上げて目を覚まし、顎を押さえた。
「は、入れなくなってる!?」
「もー! おばちゃん、いい加減にして!」
メイを斬るのも忘れてメイファンは目をぱちくりさせていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 12:20:08.04:aQKm5ODK
春の晴天は続き、北大キャンバスも明るい緑が笑っていた。
昼休み、メイは中庭でぼーっと座りながら考え事をしていた。
『メイファンおばさんのせいで寝不足だ……』
『ちょっと芝生で寝ようかなぁ。でも1人じゃ寂しいなぁ……』
その姿は端から見ると悩み塞ぎ込んでいるようにも見える。
体育座りの膝に顔を埋めているメイの肩を、後ろからぽんと叩く者がいた。
「んっ?」
メイが振り向くと、ムームー先輩が何やら期待しているような顔をしていた。しかしメイの顔を見、細部まで確認すると、急に頭に来たような顔に変わる。
「……どしたの? ムームー先輩」
「何でもないわっ!」
早足で向こうへ行ってしまう。
「……何? 今の?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 12:39:21.39:aQKm5ODK
『眠いのに寝れないなぁ……』
メイが膝に顔を埋めながら考えていると、また誰か肩を叩く者がいた。
「ムームー先輩、いい加減にして・…」
顔を上げるとヘイロンが目の前にして、顔がすぐ前にあった。長い睫毛と艶々の唇を間近で見てしまった。
「うわーーーっ!」
「なんだよ俺はバケモノか?」
「ちちち近いよ!」
「どアップでお前の顔見たいと思ってな」
「え……」メイは驚いたのちニヤニヤしはじめた。「それで〜? どアップで見た感想は〜?」
「綺麗な顔してんな〜と思ってな」
ストレートな感想にメイは言葉を失い、ただ顔を苺のように真っ赤にしてしまった。
「……あれっ? ヘイロン情報学部だからキャンバス違うじゃん。どうしたの? こっちのキャンバスに用?」
「お前に会いたいと思ってな」
ひえ〜〜! どうしたの〜〜!? 今日のヘイロンやたらに積極的〜〜!
メイがたじたじになっているとヘイロンは話を持ち出した。
「なぁ、お前、ピアス穴開けないか?」
「ええっ?」
「綺麗な耳してるよな。穴ひとつ開いてない」
ピピピピピアスをプレゼントしてくれる伏線かなコレ。
メイがとくんとくんと胸を鳴らしていると、急にヘイロンの顔が近づいて来た。
「いっ、いつからアンタ、ラブコメ野郎になったの〜!? ら、らしくない……!」
抵抗しようとしたメイの腕をヘイロンは左手で掴むと、右手で耳たぶをつまんだ。
「うん。いい耳の形してるな」
メイは危うく失神しかけた。
「俺が開けてやるよ。ピアス穴、開けよう」
「えっ」メイは気を持ち直した。「ちょちょとちょっと待って! ヘイロンが開けるの? 経験は……」
「やっぱ電動ドリルかな」
「ちょーーっ!! 素人がやると膿んで何かひどいことになるって聞くよ?」
「そうなのか? まぁ、いいじゃないか」
「よくない!」
「一生残る傷になるんだろ? 完璧じゃないか」
「意味がわからない! っていうかヘイロンのことがわからなくなったわ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 12:47:14.67:aQKm5ODK
「じゃあ今度、プロの人に開けてもらうよ。よかったら付き合ってね」
メイが笑顔でそう言うと、ヘイロンは塞ぎ込むようにメイの隣に座り込んだ。
「俺が開けないと意味がないんだがなぁ……」小声で言う。
「ね、一緒に昼寝しない? ここで」
「気が合うな。実は俺、昨夜ほとんど寝てない」
「え〜? 何してたのよ?」
「母さんが急病で入院して、な」
「え」
「ずっと付き添ってた。何とか凌いだけど……」
「そうだったんだ……」メイはヘイロンの髪を軽く撫でた。
「くも膜下出血だってさ」
「……それ、危ないヤツだよね」
「あぁ……」
そう言うとヘイロンは膝に顔を埋めて寝息を立て出した。
「……膝、貸したげよっか?」
顔を真っ赤にしながらメイが聞いたが、ヘイロンはもう何も聞こえていないようだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 15:01:04.51:aQKm5ODK
小M どういうこと? 綺麗な顔のままだった

緑色 ごめん。仕事人が昨日、用があって……

小M 50万払わない。前金返して

緑色 待って。今夜やる

小M 絶対?

緑色 絶対

小M お願いね

緑色 了解

小M 待って
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 15:11:40.68:aQKm5ODK
トイプードルを抱きながら、自宅の部屋でムームー先輩は文字を打った。

「ピアス穴開けて『はい、傷つけた』とかされちゃたまらないわ。具体的に指定しておくわね。例えば……

・鼻をへし折る
・顎骨をバラバラに砕く
・頬骨をへこます
・片目を潰す

このどれか出来るものでお願いね」

チャットを閉じるとムームー先輩は夢見るように笑い、膝の上のトイプードルに話しかけた。
「キャサリン。私はこれからミス北大を連続で獲って、芸能界デビューし、バラ色の人生を送るのよ」
キャサリンは首をひねってそれを聞いた。
「こんなところで早々に躓いてるわけにはいかないわ。邪魔物は排除すべし!」
キャサリンは舌を出し、嬉しそうに笑った。
「見てなさい。あの子を人生の負けイヌにしてやるから!」
ワン! とキャサリンが怒ったように吠えた。
「あっ。ごめんなさい。キャサリンのことじゃないの。キャサリンはもちろん勝ちイヌよ。私の飼い犬って時点で勝ちイヌ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 18:34:36.54:aQKm5ODK
ヘイロンはこめかみに温かい雨を感じて目を覚ました。
高級な餅みたいな絶妙の柔らかさの枕だ、と思ったら太ももだった。
上を見るとメイが正座したまま眠っており、よだれの第二波が降って来ようとしているところだった。
さっきのよだれは手で拭いてしまった。次のよだれを口で受けようとしたところでメイが目を覚まし、よだれを吸い込んだ。
「あ、おはよう」メイがにっこりと笑う。空にあるので太陽みたいだった。
暫くヘイロンはメイの膝枕で大きく口を開けていたが、面倒臭そうに起き上がると、聞いた。
「今、何時?」
メイは腕を見て答える。
「んー。15時」
「起こせよ! サボっちまったよ……」
「2時間ちょっと寝ちゃったねぇ。気持ちよかったぁ」メイはまた笑う。
今度は一足早い大輪のひまわりみたいなその笑顔をヘイロンは見つめ、言った。
「……綺麗な笑顔だな」
「え、何? また急に〜」メイはびっくりして顔を押さえた。
「格闘技やってんのに何でそんな綺麗なんだ? 顔に限らず傷痕が一つもない」
「あ、そゆことか……」メイは照れ笑いをした。「ママがね、怪我したら綺麗に治してくれるからだよ」
「お母さん、医者なのか? ナース?」
「ううん。何て言うか……非正式な医者……みたいな?」
ヘイロンの頭に昔読んだ日本の「ブラックジャック」という古いマンガが浮かんだ。
「お母さん、格好いいな」
「でも、こっちじゃママいないから、怪我しないようにしないとだ」
ヘイロンはメイの鼻を見つめた。綺麗に通った鼻筋で、その頭がつるんと光っている。
「お前……」ヘイロンは聞いた。「もし、自分の顔に消えない傷とかついたら、悲しいか?」
「そりゃ悲しいよ」メイは目を大きく開けた。「せっかくママに貰ったプリティー・フェイスだもん」
「そうか」
「? 何でそんなこと聞いたの?」
「いや……何でも」
ヘイロンの表情はいつも無愛想で何を考えているか読めなかった。メイは意図を知るのを諦め、正座を崩して立ち上がることにした。
「さて、そろそろ講義に戻る?」
「そうだな……。あっ、お前……」
「んー? 今度は何」
「姐さん……メイファンさん、今夜もお前んとこ来るのか?」
「ん。たぶん来るんじゃないかな。あたしの部屋が落ち着くとか言ってたから」
「そうか……姐さん居るのか」
「何でよ?」
「……悪いが、今日の稽古は休みにしてくれ」
「あ、うん。お母さん、見てあげて」
「サンキュ。それじゃな」
ヘイロンはゆらりと立ち上がると、面倒臭そうな足取りで自分のキャンバスへ帰って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 19:05:24.00:aQKm5ODK
しかしヘイロンは講義には戻らず、自分のアパートへ帰った。
下駄箱代わりの木箱の上に置いた病院の書類が憂鬱にさせた。
いつもは母が待っているがらんとした部屋が息苦しかった。黒いマスクと革の手袋を持つと、再び外へ出た。
拾った自転車に跨がると、自分を奮い立たせるようにウィリーをした。
そこから勢いをつけてジャックナイフに持ち込むと、フロントフォークが簡単に折れてしまった。
大きくバランスを崩してあわや地面に顔面を強打しかけたヘイロンは、ハンドルから手を離し、一回転すると着地した。
「……くそ。新しい自転車もパクるか拾うかしないとな」
そう呟くと自転車を裏の林に放り投げ、歩き出す。
「ジャイアントのクロスバイク、欲しいな……」
手袋をはめ、パシパシと拳を掌で打ち鳴らす。
「恨みはないんだ……。わかってくれ」
やがてヘイロンは駆け出した。
「金が要るんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 19:47:49.28:mdVigOge
その時、銃声がなりすぐあとに悲鳴が聞こえた。
ヘイロンは一瞬気になったが走るのをやめなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/29(火) 19:57:10.32:LO4t0cMc
再び銃声が聞こえた。今度は何発も鳴った。
悲鳴や怒号も聞こえる。

流石のヘイロンもその場に立ち止まり辺りを見渡す。目の前からは大勢の人が走ってきた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 06:42:26.69:dICAW9c4
どこからか大きな音が響き町の各所から火の手と煙が上がっていた。

同時多発テロだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 08:07:44.20:vIsC0ZVd
入院している母の安否確認のため病院へ向かった
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 08:12:14.63:HggSlahz
学校が終わり、メイは町をぶらついていた。
すぐには帰りたくなかった。メイファンのことは嫌いではないが、正直少しうざかった。
一人で店に入ったり、景色のいいところを歩いたり、仮想デートを楽しんだ。

何度も自分の左耳をくりくりといじった。ヘイロンの指が同じことをした感覚を反芻した。

アクセサリー・ショップで格好いい純銀のネックレスを手に取った。
『これ、似合いそうだな』
『プレゼントしちゃおっかな』
高いけど一番似合いそうなのは断然それだった。
『あたしにもピアスくれるかもだし……買っちゃえ』
メイはレジで五千八百円のネックレスを買った。
(注:2040年も中国の通貨は元ですが、便宜上分かりやすいように日本円に換算しております)

『ところでアレ、やっぱりついて来てるなぁ……』
少し前からメイは気になっていた。緑色のスーツに全身を固めたコスプレの小男がずっと自分を尾けて来ていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 08:39:04.66:HggSlahz
絶対にアパートに帰すなと言われていた。
後で合流するからそれまで尾行し、帰り道を行き始めたら何とか引き留めろと。

「しかし、ケツいいよなー……」
アランはメイの後ろ姿のショートパンツばかり見ていた。長い足が交互に前後するたび、桃の形のお尻がぷりぷりと揺れる。
「あのケツ踏みつけて、グリグリしてやりたいなぁ……夢は今日、叶うかなぁ……」
メイが路地を曲がった。アランは見失わないよう焦って小走りになり、同じ路地を曲がるとメイが腕を組んで待ち構えていた。

アランは慌てず普通に少しびっくりしたフリをすると、その横を通り抜けて行こうとした。
「コスプレお兄さん」メイがその背中に声を投げる。「尾行、ヘタね」
アランはキョロキョロしてとぼけたが、内心プライドを傷つけられていた。
子供の頃から尾行にだけは自信があった。ターゲットに気づかれず5時間後をついて歩き続けた記録の保持者だった。
「ちょっと!」
アランが構わず行こうとするので、メイはそのスーツを掴んだ。
「ワーッ! 何をする! 金ならないぞ!」アランは短い手足をジタバタさせる。
「ヘタな芝居もやめなさい。そんな格好してずっとついて来られたら嫌でも気づくわよ」
「あっ! そうか」アランは思わず叫んだ。
この派手な緑色のスーツのせいだ。これさえ着ていなければ見事なまでに存在感のない自分は、完璧な尾行を出来る。そうか、スーツが派手だから……
「何が『そうか』なのよ?」
「お嬢さん」
自信を取り戻したアランは貧弱な胸を張り、メイに向き直った。そして初めてターゲットの顔を直視し、恋に落ちた。

その時だった。向こうのほうで銃声が起こった。
「え。何何何?」メイが驚いた。
もじもじしていたアランも驚いたが、これぞチャンスとばかりにメイのお尻に回り込んだ。
「お嬢さん! ぼく、怖い!」
隠れるようにメイのシャツの背中を握ると、興奮しながらおへそのあたりで柔らかいお尻の感触を堪能した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 09:05:06.97:HggSlahz
ヘイロンの左拳がメイの顔の真ん中にめり込んだ。
すかさず自慢の右フックが飛び、メイの綺麗な鼻筋を横から砕く。
その二発だけで充分だった。仕事を終えたヘイロンは、倒れたメイを少しだけ無表情に眺めると、踵を返して帰って行った。
「アーーーッ! 大丈夫!?」
アランはメイの胸の上に馬乗りになると、可愛いさを失ったその顔に小さな拳を連続でめり込ませる。
「大丈夫! ぼくがお嫁さんに貰ってあげるから!」
歓喜の表情で空を仰ぎながら、なおも拳を振るい続けた。
「僕がお嫁さんに貰ってあげるからねーーッ! 大丈夫だよーーーッ!」

そんな妄想をしながらアランは精子を少し漏らしてしまった。
『この恋、絶対に成就させるぞ!』
メイは周囲の物音に集中している。
『何だろう……。なんか、サキイカの匂いがする』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 12:02:35.68:HggSlahz
その頃メイファンは、近くの川の土手で食べられる草をたくさん獲って来て、メイの部屋の前に座って待っていた。
「すげーぞ。イタドリ、オオバコ、菜の花。小っせーけどタケノコまであんぞ。アイツ、帰って来たらびっくりするかな」
可愛い巫女ルックに土方ヘルメットを被ったままである。ヤンキー座りに疲れて地べたに座り込む。
「あ。ビール買って来いって言うの忘れた。ま、なかったら買いに行かすか」
ニコニコしながらじっと待つことにした。
遠くで銃声が聞こえた。
「バカが何かやってんな。習近平の後ろ楯さえありゃ私も一緒になって破壊しに行くんだけど……」
膝を抱き、ちょっと眠ることにした。
「……大統領夫人かぁ。私に出来るのか?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 12:06:46.12:HggSlahz
『シテタマルカ』
夢の中で誰かの声がした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 12:16:38.23:HggSlahz
暗くなりはじめた。
野次馬に混じって混乱を眺めているメイをチラチラ見ながら、アランはヘイロンに電話をした。
「仕事人リウ・パイロン! 今、どこだ?」
『病院だ。母さんが心配で見に来ていた。連絡しなくてすまん』
「ハァ!? お前、50万要らねぇのかよ!?」
『要る。絶対に要る』
「メイちゃんはちゃんと俺がつけ回してる。今、××街でテロ見物してるとこだ。もう来れるのか?」
『大丈夫だ。走ってすぐ行く』
「おいおい!? 自転車は!?」
『ぶっ壊れた』
「じゃ、タクシーで来いよ! 俺が払うから立て替えとけ」
『手持ちが23円しかねぇんだよ』
「頼む! 早く来い! 俺ワクワクしてんだ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 19:13:16.16:dICAW9c4
「あっ、ちょっと」
メイが突然走り出したので、アランも慌てて走り出す。
「はぁっ、はぁっ、急に何なんだよ・・・」
メイを追うアランだがどんどん引き離されていく。

そのとき後ろから轟音が鳴り響き地面が震える。
「うわっ!」
アランは走りながら振り返ると同時に粉塵混じり煙が突風とともに吹き荒れ視界を包んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 21:53:20.11:jLI01eJ0
メイとアランが先ほどまでいた場所は榴弾の着弾により大きな穴が空き、焦げた瓦礫が散らばっていた。

野次馬達も爆発で吹き飛んだらしい。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 22:01:57.74:HggSlahz
「うーん。さすがにうざいから巻いてしまった」
メイは少し本気を出して暫く走ると、振り返った。小男の姿はまったく見えなかった。
「何だったのかな、あの人。ただの変質者?」
そう言いながら、ゆっくり歩き出すと、あっという間にアランのことは忘れた。
「なんかつまんないなぁ」
頭の後ろで手を組んでぶらぶら帰り道を歩く。
「このまま帰って、おばちゃんの相手して、お風呂して歯磨いて、講義の復習やって寝るだけか……」
決定的に何かが足りなかった。
「……ヘイロンのお母さんのお見舞い、あたしが行ったら……変かな?」
大きな池のある公園を通った。辺りはすっかり暗く、しかし水銀灯の明かりでそこらだけ白く浮かび上がった。
前からヘイロンが走ってやって来るのが見えた。
「あっ!……」
しかし人違いだった。白い光の中に姿が現れると、まったくの別人だ。
黒ずくめの格好をして、黒いマスクまで被っている怪しい男だった。
メイの姿を見ると、そいつは黒い革の手袋を締め直し、ゆっくりと近づいて立ち塞がった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 22:21:11.98:HggSlahz
「何ですか?」メイは緊張した声で聞いた。
男は何も言わずに散打の構えを取った。両腕を顔の横に置き、水牛のように顎を引く、往年のリウ・パイロンのスタイルだった。
「……何これ? 闇ファイトってやつ?」メイは表情を険しくする。「私のことを知ってるの?」
ランニングしてたら太極拳の全米学生チャンピオンにたまたま出会い、闘志に火が点いたのかも、とメイは思ってみる。
しかしそんなわけない。学生チャンピオンにそれほどの価値はない。
それならこれは、一体何?
黒ずくめの男は片手を前に出すと、チョイチョイと指で「かかって来い」と言った。
見たところ『気』も発していないし、勝てない相手ではなさそうだ。強いのは間違いないけれど、例えばヘイロンのような余裕は感じない。
何か思い詰めているような、余裕のなさを感じた。充分勝てる相手だ。
しかしメイは逃げることを選ぶことにした。
無益な闘いはしたくない。帰り道を遠回りすればいいだけだ。
駆け出そうと男に背を向けると、そこにあの緑色の小男がいた。あまりに存在感がないので気づかなかった。
「ヒヒッ! 楽しい時間の始まりだぜ!」
小男はそう言うと手を広げた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 22:28:45.01:HggSlahz
「邪魔っ! どけっ!」
メイは二人の男から目を離さないように頭を動かした。
小男をやっつけるのは容易い。しかしその僅かなよそ見の瞬間に後ろの黒ずくめがどう動いて来るのか予想できなかった。
右は池、左は植え込みがある。逃げるなら小男のいる後ろしかなかった。
試しに小男を攻撃する予備動作を見せると、黒い男は弾丸のようにダッシュして来た。
『つかまる……!』
予想以上の鋭いダッシュにメイは攻撃をもって防御する他なかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 22:40:14.59:HggSlahz
肉を打つ激しい音が公園の夜空に響いた。
メイのミドルキックを男が腕で防御し、受け流した。そのまま間合いを詰めて来る。
「Ya!」メイはバック転で逃げながら蹴りを繰り出す。小男はメイの接近にビビってこけた。
このまま逃げようと考えたメイの先を読み、男は着地点に素早くタックルをかまして来る。
「捕まってたまるか!」
メイは着地すると素早く飛び上がり、男の背中を蹴って逃げようとした。
すると男の身体から赤い『気』が放出された。
「!! ヘイロン!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 22:56:24.80:HggSlahz
『気』に包まれた男は急に動きが変わった。身体を反転させ、メイの脚を掴もうと腕を伸ばして来た。
メイは何とかかわしたが、男の腕が当たり、バランスを崩して地面にひっくり返った。そこへ男が突っ込んで来る。
「ヘイロン!」メイはひっくり返ったまま叫んだ。
男の足がぴたりと止まる。
「なんで!?」メイは起き上がろうとしなかった。「やだよ! あたし……」
男は暫く動きを止めていたが、やがてまた静かに赤い『気』を発すると、言った。
「立て」
「……ヘイロンの声だ」
男の構えが変わった。それまでの散打スタイルをやめ、左拳を前に大きく突き出した、いつものヘイロンの構えに変わった。
「えー……。これ、何かの冗談だよね?」メイは笑ってみる。「ドッキリなの? ははは……」
しかしヘイロンは笑わない。ジリジリと間合いを詰めて来る。
「立て」
「……なんで?」メイは涙声になる。
「闘いとは殺し合いなんだ」
「……違うよぉ」メイの身体から力が抜けてしまった。
それをヘイロンは見逃さなかった。素早くメイの上にのしかかると、拳を顔面に放った。

ぐしゃりという鈍い音がした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 23:02:04.09:HggSlahz
「外……派手だなぁ」
あまりの騒々しい爆音にメイファンは目を覚ました。
腹時計を見ると一時間経っていた。
「小メイの奴、遅ぇなぁ……」
メイファンは月を見上げる。なんかシャレコウベみたいな満月だった。
「あ、そうだ。これからアイツのこと、小メイって呼ぶことにしよ。で、私のことは大メイと呼ばせるのだ」
別に面白くもないのに一人で大笑いした。
「早く帰って来ねーかなぁ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 23:11:47.26:HggSlahz
ヘイロンの拳は頬にめり込んでいた。自分自身の頬に、めり込んでいた。
黒いマスクの中から血が飛び、メイの顔にかかった。メイは瞬きもせずそれを驚いて見つめた。
マスクから出ている目が苦痛にきつく閉じていた。それが開き、メイをギロリと見下ろす。
今度は確実に拳は振り下ろされた。メイの頬をかすめもせず、最大パワーで地面を殴った。
ヘイロンは自分の拳を押さえ、怪獣のような叫びを上げた。
「何やってんだーッ! 動画撮ってんだぞーーーッ!」アランが叫ぶ。「決めろーーッ!!」
メイが素早く手を伸ばし、黒いマスクを剥いだ。
素顔を晒したヘイロンは、一瞬呆然とした。メイと視線が合う。メイは大嫌いなものを見るような顔をしていた。
「くぅっ……! くっそーーーッ!!」
叫ぶとヘイロンは立ち上がり、地面を強く蹴って逃げ出してしまった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/30(水) 23:16:29.20:HggSlahz
「アーーーッ! ヘイロン!」
アランは後を追おうとした。
しかしなぜか足を動かしているのに走れない。
見るとスーツの首の後ろをメイに掴まれ、地面から身体が浮いていた。
「……どういうことだか」鬼女が言った。「説明してもらいましょうか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 01:11:53.83:CWV2hkyv
メイファンは上機嫌で草を炒めている。
「胡麻油をかければ何でも旨くなるのだ」
メイはベッドに仰向けになり、目に腕を当て、疲れた顔をしていた。
「出来たぞ。食べられる草のミックス炒めだ。食べるか?」
「うん、食べる」メイはそう言うと、暫くしてから起き上がった。
「ビール、ビール。お前は偉いな、1ダース買っといてくれるなんて」
メイファンは冷蔵庫を開けると、叫んだ。
「なんだこりゃ! バドワイザーじゃねーか!」
「あたしはそれが好きなんだもん」メイは箸を持つと、草を口に入れた。「んー。意外とイケるね」
「こんなションベンみたいなものが飲めるか!」と言いながらメイファンは早速1本飲み干した。
「ねぇ、メイファン」
「どうした。相談事か」
「何でわかるの」
「帰って来た時から何か聞いてほしそうな顔してたじゃねーか」
メイファンはそう言うと5本目を飲み干した。
「飲んだぶんだけお金くれないかな。あたし、一応学生なんですけど」
「なんだそんな相談かよ。私なんかホームレスだぞ。金なんかあるか」
「ちげーよ」メイは苦そうな顔をしてイタドリを食べた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 01:40:29.53:CWV2hkyv
メイは草を食べ、バドワイザーを飲みながら、今日の公園での出来事と、アランから聞き出した話をメイファンに聞かせた。
「だから言ったろう、アイツは金の為なら何でもする奴だと」メイファンはろくに草も食べず、ビールばかり飲みながら言った。
「ヘイロンの家、そんなにお金が苦しかったんだね……」メイは片栗粉で衣をつけて炒めた菜の花を口に入れる。
「知らなかったのか。奴は無敵の貧乏だぞ」
「だからか〜……」
メイは思い出していた。旧世代のスマホ、廃棄ハンバーガーや肉の大量持ち帰り……。
「嫌いになったか?」
メイファンの言葉にメイは答えなかった。
「ネットでね、依頼人の恨みを代わりに晴らしてお金稼いでるんだって」
「サイテーだな」
「うん。サイテーだ」メイは表情を変えずに言った。「でも、お母さんのためなんだよね」
「病弱なお母さんなんだろうな。そのへんは大変だなと思ってやろう」
「でも他にもっと賢いお金の稼ぎ方、あるだろうのに」
「しかも今回はくたびれ儲けだったんだろ。お前の顔グシャグシャにしていくら儲かる予定だったんだって?」
「50万円」
「安っ!」
「ね〜?」
「お前の人生50万円ぽっちで台無しにされるとこだったのか」メイファンは大笑いした。
「失礼すぎるよね〜」
「で、依頼人は?」
「言わなかったよ。秘密は厳守するんだって」
「吐かせられなかったのか! そりゃ拷問の仕方が甘いわ!」
「拷問はしてません……」
「いいか? 拷問の極意はな、死んだほうがましだと思わせるような苦痛を持続的に与えるところにある」
「拷問したことあるんか?」
「拷問スキルを極めるとな、相手は何もしなくても国家機密級のことでも吐くようになる」
「拷問スキルて何だよ……」
「で、お前はもうヘイロン青年とは絶交か?」
「……どうしたらいいと思う?」
「人に聞くことじゃねーだろ」
「うん……」
「タケノコ食え」
「一個しかないのに……いいの?」
「しかしアレだな。お前、スゲーな。金に勝ったんだな」
「?」
「金の亡者のヘイロンが、アイツにとっちゃ大金の50万よりも、お前のほうを取ったってことじゃねーか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 01:52:25.65:CWV2hkyv
「……そういう考え方もあるかぁ」
メイはタケノコを齧った。コリコリのシャクシャクで少し笑顔が戻った。
「そうだぞ。アイツにとって金は何よりも大事だ。しかしその金よりも、お前はアイツにとって大事だったってことさ」
「え〜〜」メイの顔が思わずニヤケた。「でも、あんな暴力野郎」
「許せんか」メイファンは15本目のビールを飲み干した。「まぁ、そうだよな。その仕事を引き受けたって時点でアウトだよな」
「いくらお金に目が眩んだにしても」メイは厳しい顔で言った。しかしその続きが出て来なかった。
「まぁ、今後一切アイツとは話をするな。冷た〜〜〜い目で見てやれ」
「それはやだ」
「なんだそりゃ……。好きなのか? 結局」
「だいきらい」
「じゃあ……」
「だいきらいだもん」
メイは箸をくわえると、力を入れて噛んだ。噛みたくもないのに噛んだ。木の味がしょっぱいな、と思ったら涙が流れていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 04:31:05.34:5aYLknpV
窓の外は地獄絵図の様相を呈していたが、
メイとメイファンは特に慌てることもなく
食事を始めた。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/31(木) 06:41:07.88:E2HDYNY7
砲弾の破片が家の壁を貫通し、命名の頬をかすめると
赤い筋が出来てそこから血がにじみ出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 07:17:56.15:ehKiiS54
「こんなところでご飯食べてる場合じゃないっ!」
メイメイは箸を置いて外へ出ようとした。
創る名無しに見る名無し [] 2019/01/31(木) 08:48:22.87:rLQLsRLJ
「まぁ、一緒に風呂でも入ろう」
メイファンが誘った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 10:34:24.04:CWV2hkyv
メイは風呂いっぱいに泡を張った。
メイファンは全裸で立ち尽くし、だからアメリカ人は嫌なんだという顔をした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 16:22:53.22:CWV2hkyv
次の日、メイは自分のキャンパスに行く前に、情報学部のキャンパスに寄ってみた。
しかしヘイロンの姿は見えなかった。
通りすがりの学生に聞いても、誰もリー・ヘイロンという名前を知らなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 16:33:53.97:CWV2hkyv
メイが学生食堂でジーパイ飯を食べていると、窓の外の遠くからヘイロンがこちらを見ているのに気づいた。
メイは気づいていることを顔でアピールしながらも、外には出て行かなかった。ヘイロンも入って来る気配はない。
メイはわざとのように揚げた鶏肉を少しずつ時間をかけて食べた。その間中、ヘイロンは木に凭れてずっとメイを見ていた。
やがてメイが食事を終え、リュックを持って立ち上がると、ヘイロンも入口に向かって歩き出した。
二人ともお通夜のような表情だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 17:04:59.93:CWV2hkyv
食堂を出るとすぐにヘイロンが近づいて来た。メイは無視して校舎へ少し早足で歩いた。追いつけないほどの早足ではなかった。
「おい」ヘイロンが話しかける。
メイは一睨みすると、また無視して歩き出す。
「待てよ」ヘイロンが腕を掴もうとしてきた。
「先生呼ぶわよ!」メイはその腕を払う。「アンタ、怖い!」
「対不起(ごめんなさい)、メイ」ヘイロンが言った。「対不起……」
メイは足を止めた。険しい顔で振り返る。
「謝ること、出来たんだ?」
「すまん。どうかしていたんだ……」
「アランから話、聞いたよ」メイはまっすぐヘイロンを睨む。「結構前から計画してたんだって?」
「あぁ……。前の日から」
「どうかしてるって気づく時間、充分にあったよね?」
「……金に目が眩んでいたとしか言えん」
「あたしの顔、ぐちゃぐちゃにする気だったんだ?」
「あぁ……バカだった」
「どうして思い止まったんだろ?」
メイは「やればよかったのに、ケダモノはケダモノらしく」と言いたげな顔を突きつけた。
「金は必要だ。しかしそのために友達を傷つけたら、俺は自分が許せないと思った」
「ふーん」メイは目を細め、鼻で笑った。「あたしアンタの友達だったんだ?」
「友達でいてほしいんだ、頼むよ」ヘイロンは珍しく泣きそうな顔になった。「許してくれ。せめて……嫌わないでくれ」
メイはリュックを持つ手を変えると、ポニーテールをイラついたように振った。
「嫌いじゃないよ」横を向いたまま、そう言った。「でも許せない」
「何でもする。頼む。お願いだ。お前に冷たくされると俺……どうしたらいいのかわかんねぇ」
「あんなことの出来ちゃう人をどうやって許せって言うのよ?」
「出来なかっただろ!」ヘイロンはそう言うとすぐに舌打ちした。「……言い訳だな」
「ターゲットがあたしじゃなかったら、他の女の子だったら、やってたんでしょ?」
「そうだな」ヘイロンは即答した。
メイは思わず顔が笑ってしまった。すぐに暗い表情を取り戻し、吐き捨てた。
「ほらね、アンタはやっぱりそういうケダモノなのよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 17:34:12.80:CWV2hkyv
「何でもするって言ったよね?」メイはそっぽを向いたまま言った。
「あぁ。何でもする」
「じゃあ、その悪趣味な商売、やめて」
「喜んでやめるよ」ヘイロンは頭を下げた。「お前が許してくれるなら」
「楽しくてやってたくせに」
楽しくてやってるのはアランだけだ、とヘイロンは言いたかった。しかし金が入って来ることを楽しんでいたことは事実だった。
「何も言えないんだ?」メイはヘイロンをまっすぐ見た。
ヘイロンもメイをまっすぐ見た。
「弱い者いじめサイッテー」
「やめる」ヘイロンは否定もせずに、ただ言った。「許してほしい」
いつもぶっきらぼうなヘイロンが真剣な顔でまっすぐ見つめて来る。
メイは負けたように目を逸らすと、目が潤み、頬を紅く染めた。そして言った。
「お金が要るんでしょ? どうするのよ?」
「別に考える」
「ホストとか?」
「柄じゃないが……考えてはみる」
「っていうか、お父さんに相談するべきじゃないの?」
「……アイツが俺らのために何かしてくれたりするものか」
「相談するだけしてみたらいいじゃん! 違う?」
「……そうだな」
ヘイロンはそう言ったが、本気のようには見えなかった。どうしてもリウ・パイロンに頼るのだけは嫌なのかな、とメイは思い、あっ! と声を上げた。
「そうだ! ヘイロン知らなかったかも……。あたしのおばちゃん……メイファンね、リウ・パイロンと結婚するんだよ」
「な……」ヘイロンの顔つきが驚愕で蒼ざめた。「なんだって!?」
「だからさ、メイファンに頼んで、言って貰えばいいかもって……あれ?」
「姐さんが……結婚」ヘイロンはふらつきながら、譫言のように繰り返した。「姐さんが……結婚!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 17:57:47.17:CWV2hkyv
メイはリュックから紙袋を取り出すと、ヘイロンに投げつけた。
「何だ?」
「何でもするって言ったでしょ?」
「あぁ」
「……それ、して」
ヘイロンは紙袋を開けてみる。中から艶のある輝きを放つ銀のネックレスが出て来た。太く男らしいデザインのネックレスだ。
ヘイロンが顔を上げるとメイは背を向け歩き出していた。
「おい!」その背中に声を投げる。「仲直りってことでいいのか?」
メイは振り向くと舌を出し、精一杯の変顔をただして見せた。そしてまた背を向けて歩き出す。
「いいな! これ。喜んでいただくよ!」
メイは笑顔を見せたくなかった。癪だった。背中にヘイロンの声を聞きながら、ネックレスを気に入って貰えたらしいことがただひたすらに嬉しかった。
春の陽射しに似合う心持ちになった。しかしすぐにはっと気づき、振り返ると言った。
「売るなよ!?」
ヘイロンは早速ネックレスを首にかけ、銀の輝きにぴったりな笑顔でメイを見ていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/01/31(木) 20:06:39.34:3wr9hDSK
(リー・メイメイ。俺は絶対、お前で童卒するんだッ!)
ヘイロンの瞳は希望に燃えていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 05:52:08.89:8EN6vBaa
アメリカにいた頃、優しい紳士や気さくないい人の仮面を被って近づいて来る男の子はいくらでもいた。
しかし彼らは皆、仮面の裏側では狼のように、自分を餌としか見てはいなかった。
ヘイロンみたいな男は初めてだった。
ぶっきらぼうな仮面を被って、実は優しい。
メイに興味などなく、餌としか思っていなくて、殴れと誰かに命令されたら平気で殴れるようなフリをして、実は優しい。
メイはそんなヘイロンにどんどん惹かれて行く自分を止めることが出来なかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 05:53:44.14:wz8cFewI
だがヘイロンは知らず知らずの内に
メイメイの変態プレイにより童貞とアナル処女を奪われていたのだ。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/01(金) 05:54:31.70:8EN6vBaa
「中国人はフレンドリーだ」とか「アメリカから来た素敵な新入生リー・メイメイと誰もが仲良くなりたがっている」とか
聞くわりに、メイに話しかけて来てくれる人はあまりいなかった。
メイのほうから話しかけて行っても、笑顔で会話はしてくれるものの、すぐに皆、逃げるように去って行く。
近寄りがたいオーラを発しているつもりはなかった。

『あたしって、異質なのかな?』

自分が皆と同じ顔をした外国人だという自覚は確かにあった。
アメリカ流に慣れた自分が中国流の中に入って遠慮してしまっている部分は確かにあった。
しかし何かきっかけさえあれば、彼女は学園のクイーンになれるだろう。その資質は持っていた。
メイ自身にはそんなものになりたい願望はそれほどなかったが、運命はきっとそんな方向へ導くだろう、何かきっかけさえあれば。

『誰かあたしに話しかけてくれないかなぁ』

メイはただ友達が欲しかっただけながら、ぼんやりそんなことを受身の姿勢で思っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 06:11:14.30:A5OjsSDN
いつの頃からか、メイは男漁りをするようになった。
昼間はひとりぼっちの不思議ちゃん、夜は変態ヤリマン女。
紳士の皮を被りメイを食べようとする男どもを、
逆に食らい、調教し家畜にする魔性の女だった。

もちろん家族には教えていない。彼女の裏の顔だ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 06:21:00.98:GrQOK5UR
メイの体からは変態の「気」がにじみ出ており
中国の学生らにとってはその「気」が彼らの気質に合わなかったのだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 07:15:33.16:H3/DMs4j
メイ「あたしそんなじゃない!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 08:14:39.13:wz8cFewI
高校時代の彼女は知人から「スポーツ系不思議ちゃん」と思われていた。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/01(金) 10:14:48.54:wqMUO/XM
顔は若い頃の長谷川潤に似ている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 13:39:33.67:H3/DMs4j
教室で男女二人組が拙い英語で話しかけて来た。
「今日は、リー・メイメイさん」
メイは喜び、笑顔で挨拶を返した。二人は自己紹介をする。
「僕はギア。ベトナムからの留学生」
「私はノンナ。ロシアからよ」
メイは英語で返した。
「今日は。リー・メイメイだよ。メイって呼んでね! 二人は中国語は出来ないの?」
「出来るけど」ギアが答えた。「英語のほうがまだ得意」
「私もよ」ノンナが言う。「メイの喋る中国語は上手。教えてね」
「仲良くしようね〜」
「僕らは友達」
「私達は友達」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 13:42:17.31:H3/DMs4j
その様子を教室の窓からムームー先輩が見ていた。
「フフフ、フフフフ。リー・メイメイ……! その二人は恐ろしくってよ! 役立たずの仕事人なんかより、よっぽど恐ろしくってよ!
せいぜい地獄を見せて貰いなさい! ホホ、ホホホホホ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/01(金) 19:58:14.22:H3/DMs4j
メイファンは今日はビキニの水着姿に土方ヘルメットで現場仕事をやっていた。
淡いブルーに白い水玉のビキニだ。
バイトに出て来たヘイロンを見つけると一瞬手を止めたが、すぐにまたネコ車を押しはじめた。
「ちわっす……。姐さん、今日はまた凄い格好で」
「動きやすいからな」メイファンは言った。「邪魔かつ可愛くない作業着など絶対に着てたまるか」
「格好いいっす!」
「おい、ヘイロン」メイファンは仕事の手は休めずに言った。「テメェ、ウチの可愛い姪っ子のメイに非道いことしたそうだな」
「すみませんでした! 本人には謝罪し、何とかお許しを貰いました」
「メイが許しても私は許さん。後で飯場に来い。きっちり可愛がってやる」
「はいっ!」ヘイロンは期待に胸を膨らませるような顔をして頭を下げた。
それから一緒に砂利をスコップで掻きながら、二人は話をした。
「リウ・パイロンと結婚すると聞いたけど、本当?」
「本当だ。面倒くせーんだけどな」
「やめとけよ」
「いきなり何だ」
「俺が貰ってやるよ」
「ふふっ。二人で日雇い生活か?」
「冗談じゃねぇよ! マジだよ!」
汗一つかかずに200kgの荷物を手で運びながら、西陽を背にイカしたスマイルを浮かべるメイファンがヘイロンにはとても眩しかった。
メイと同じ顔をしていながら、メイに対してはこんな感情は抱いたことがなかった。
メイファンはそんな彼の気持ちを察してか、少し冷たい口調で言った。
「青年。私は貧乏とかどうでもいい。大統領だとかも心底どうでもいい」
200kgの荷物を定位置に置くと、遠くを見つめて続けた。
「私はリウを愛しているんだよ。随分昔から、ずっとな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 08:58:46.21:lSPf+Khs
その日稼いだ一万円でメイファンは青島ビール1ダースと鯛を一匹買い、トコトコと夜道を歩いた。
帰る先はリウの所ではなく、メイのアパートである。
ビキニ姿で頭にビール箱を乗せ、腋に大きなピンクの魚を担いだメイファンを、何のパフォーマンスかと通行人が振り返って見た。
「焦ったなぁ」メイファンはララを相手にするように、一人で喋った。「お兄ちゃんだった頃のリウに告白されたみたいだった」
妄想のララが答える。ーーモテ期来ちゃったね
「でも、あれはメイのだからなぁ」
ーーメイ(ファン)の青春はもう終わってるもんね
「っていうか私に青春なんてなかったろ」
ーー寂しくて、妬ましくて、憎らしかったよね、普通の人達が
「そうだなぁ。だから殺すことに躊躇なんかなかった」
ーー何年人を殺してないんだっけ?
「22年だよ。自分の感覚じゃ10年だけどな」
ーーそろそろまた殺したくない?
「別に殺したくて殺してたわけじゃねーよ。仕事だから……」
ーー今のアンタ、まるでラブコメ漫画に出て来る脇役の『いい人なお姉さん』みたいだよ
「ははは! そうだな」
ーーヒヨって同じような平和な毎日を送ってる自分、何か違うと思わない?
「いや、楽しいよ。皆いいヤツばっかりだしな。私は人間が好きになり始めているんだ」
ーー幸せなの?
「幸せになるんだよ、リウと結婚して」
ーー『チガウダロ!』
メイファンは優しくも厳しい微笑みを浮かべると、正体を現した妄想上のララではないそいつに言った。
「お前の正体はわかってたよ、ヘイサー・アーマン。悪いがお前を外に出してやることはもうない」
ーー『ミナゴロシ……』
「泣くなよ」メイファンは優しく宥めた。「お前ごと幸せにしてやんよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 09:20:16.18:lSPf+Khs
【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物?

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。マーシャルアーツの使い手。
リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいる。超がつくほどの貧乏。
メイに想いを寄せられているが、ヘイロンの気持ちは不明。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。メイファンと婚約中。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
習近平元国家主席のボディーガード兼『黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)』と呼ばれる最強の殺し屋だった。
元々姉のララを除く全人類は殺しの対象だったが、全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になる……のか?
異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物?

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
身体を持たない『気』だけの存在であり、元々は妹メイファンの身体の中に住んでいた。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。

・ムームー先輩(蔡 明沐)……メイの大学の一つ上の先輩。昨年のミスコンの優勝者。美人かつセレブ。
アメリカからやって来た新入生(メイ)の人気に嫉妬し、危機感を抱いている。

・アラン(阿藍)……ヘイロンの友達? チビでガリで存在感のなさを売り物にする尾行のプロ。
自分の快楽を満たすためなら何でもするゲス野郎。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。
透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 09:32:16.99:lSPf+Khs
「聞いて聞いてメイファン! 今日ね、あたし、友達出来たんだよ!」
ビールを飲みながら鯛を調理している後ろから、嬉しそうに跳びはねながら報告して来るメイに、メイファンは笑った。
「人気者のくせに友達まだいなかったもんな、この不思議ちゃんめ」
「明日ねぇ、学校終わってから3人でショッピング行くんだ」
「よかったなっ」
「うん! 嬉しい」
メイファンはグリルした鯛にクリームソースをかけ、フランス料理風にするとテーブルに置いた。
メイファンが青島ビールを開け、メイがバドワイザーを開ける。
「よくそんなションベンみたいなのが飲めるな」
「よくそんな田舎臭いものが飲めるよね」
「ビールは断然、青島かコロナかサッポロだろ」
「ビールは断然、バドかハイネケンかサッポロだよ」
「じゃあサッポロ買って来いよ!」二人は声を揃えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 10:02:42.28:lSPf+Khs
「ヘイロンはどうするんだ?」
鯛を綺麗に箸でほぐしながらメイファンが聞いた。
「どうって?」
メイが口の中から小骨を取り出しながら聞き返す。
「稽古つけて貰ってんだろ? 明日は会わずに、新しい友達二人とデートか?」
メイは体を揺らしながらご飯茶碗を持ち、白飯に箸でのの字を書きながら小声で言った。
「まだ許しきれない部分あるしぃ……」
「でも会いたいんだろ?」
「でも付き合ってるわけでもないしぃ……」
「でもセックスしたいんだろ?」
「そこは『でも好きなんだろ?』でしょーがっ!」メイはテーブルをばんと叩いた。
「お前、もっと格好よさを目指せ」
「は? 何、いきなり急に」
「アイツは格好いい女が好きだそうだ」
「ふ、ふーん……?」
「200kgの荷物担いで夕陽をバックに格好よく笑えるような女を目指せ」
「人間じゃないでしょ、それ」
「なれるよ」
「なりたいって言ってない!」
「ヘイロンに身体の使い方を教えて貰え」
「なんかそれ、エロい……」
「私は『気』の使い方を教える。それでお前は私を越える殺し屋になれる」
「殺し屋になるつもりはないっす」
「そうなれば、ヘイロンはお前の虜だ」
「その時、私は私じゃなくなってるけどね」
「元々お前は私だ」
「よくわからないけど」
メイはバドワイザーを喉にくぐらせると、コップを置き、言った。
「気が狂ったメイファンがもしパパとママを襲っても、守れるくらい強くなりたい。悔しかったもん」
「なぜ私が気が狂うんだ……」
「だから稽古はやる。でも私は格好いいメイじゃなくて、プリティーなメイのままだからねっ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 11:11:51.94:lSPf+Khs
ヘイロンは壁中にメイファンの写真を貼りつけた部屋で、請求書をかき集め、ぶつぶつ言っていた。
「だめだ! どう計算しても、今月あと23万足りない!」
すぐにボロボロのスマホを手に取る。自分が生まれる前の製造年のモデルだ。
『なんだよポンコツ仕事人』アランが電話に出た。
「なぁ、大統領暗殺の仕事とか来てないか?」
『ねーよ! っていうか依頼サイトは閉めちまったよ! お前のせいで……』
「なぁ、お前の欲求満たしてやるよ。また金稼げることしようぜ」
『大学やめりゃいいだろ、金ねーんなら……』
「ここでやめたら一生貧乏なままだ。意地でも大学はやめん! ただ、今、金が要るんだ! 何か仕事をくれ!」
『そうだなぁ〜。じゃあ……』アランはニヤついた声で考えた。『メイメイちゃんをデートに誘えよ』
「は? 何だそれ」
『それだけでいい。それでたぶん、30万は手に入るぞ』
「さ、30万だと!?」
『あぁ、簡単だろ?』
「いや、待て待て。またアイツに非道いことするんだろ」
『お前は何もしなくていいよ』アランが不気味な声を出す。『俺がやる。お前は連れて来るだけだ』
「お前が?」ヘイロンは吹き出しそうになった。
『あぁ、俺様がだ』
「それで本当に30万手に入るんだな?」
『最低、な。もしかしたら100万ぐらいにはなるかもしれん』
「やる!」ヘイロンは興奮し、大声を出した。「いつ、どこへ連れて行けばいい?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 11:34:22.37:lSPf+Khs
「リウ大統領の所には行かないの?」
浴室でメイファンの背中を流しながら、メイが言った。
「最近全然会ってねーわ」
「なんで?」
「マリッジ・ブルーかな」
「シャンプーするよ?」
「あぁ頼む」
メイは掌でシャンプーを泡立たせ、メイファンの獣のような黒髪を洗う。
自分より小さなメイファンの全身を見ながら、なんだか叔母さんというよりは妹が出来たみたいだな、と思う。
後ろ姿のメイファンが言った。
「ただ、ちょっとお願いがあるから、明日ぐらいには行って来ようと思ってる」
「お願いって?」
「ガキには難しい話だ」
「自分だってガキみたいに可愛いくせに」
メイは予告もなくメイファンの頭にシャワーを浴びせた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 12:03:45.59:lSPf+Khs
「メイファン、明日大統領の所に行くなら、お願いがあるんだけど……」
メイはやたら丁寧にシャンプーをされながら、切り出した。
「サインならいくらでも貰って来てやるぞ」
「違うって。ヘイロンのこと」
「ま〜たヘイロン君かよ」メイファンが笑いながら溜め息を吐く。
「ヘイロンさ、リウ大統領の息子だって、メイファン知ってたっけ?」
「ハァ!!?」メイファンは手を止めた。
「そうなんだよね。で、今、お金に困ってるでしょ。だから大統領にメイファンから言って、助けてあげるようお願いして貰えないかな……って、あれ?」
シャンプーをする手が止まったままなので、泡で何も見えないメイは少し慌てた。
「ちょっ。メイファン? 何も見えないんだけど……」
「あの野郎、殺す」
そう呟くとメイファンは浴室から出て行った。
「ちょっ。シャワー! シャワー、どこ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 13:09:08.86:PZ6L4hjp
メイファンはすぐに戻って来ると、言った。
「青竜刀どこだ?」
「は? 青……? 何それ」
「ねーのかよ!」
舌打ちするとメイファンはすぐにまた出て行った。
「ちょっ! メイファン? シャワー、シャワーどこ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 16:22:57.58:PZ6L4hjp
恵妹を抱いて眠っていたリウは、けたたましい警報の音で飛び起きた。
モニターを確認するとメイファンが刀を手に、既に官邸内まで侵入していた。
恵妹を隣の部屋に隠すと、リウはピストルを持って立ち上がった。そこへちょうど扉を真っ二つにしてメイファンが入って来た。
「どうした! メイファン!?」
そう言いながらリウは3発撃った。
心臓と頭と鳩尾をそれぞれ狙った銃弾を刀で弾き落とすと、メイファンは吠えた。
「テメェ! 隠し子作ってやがったな!?」
「どいつのことだ?」
リウはさらに3発、今度は跳弾を使って足を狙い撃った。
「ヘイロンのことだボケ!」
メイファンが銃弾を弾いている隙にリウは懐へ飛び込み、メイファンの持つ刀を両手で挟むと、『気』を込めへし折った。
「ヘイロン!? 誰だそれは」
「テメェの隠し子だろうがアホ!」
メイファンは手刀をリウの腹部へ叩き込む。
「名前を言われても知らん! 認知もしていない!」
リウは手刀を3cm突き刺されたところて掴むと、骨を砕きにかかる。
「婚約解消だ!」
メイファンは噛みつきに出た。
「そうはさせん!」
リウは前へ突進すると、メイファンを押し倒した。
「そいつ何歳だ?」リウは首の肉を噛みちぎられるのを逆に押し付けることで防ぎながら聞いた。
メイファンはきつく掴まれた手の指先を二本立てた。
「2歳か?」
メイファンの指が「違う」と動く。
「20歳か」
メイファンの指がOKの形を作る。
「20年前……といえば、俺は日本にいたぞ。子供がいるとすれば日本人として生きているはずだ」
リウはメイファンの腋の下をくすぐり、口を開かせると素早く身を引いた。
「おかしいと思ってたんだ」メイファンは頭突きを食らわせながら言った。「そう言えば確かにお前にそっくりなんだよ」
「ムッ! そう言えば」リウはメイファンの背中にパンチを何発も入れながら思い出した。「この間、バーガー・ショップにいたヤツか」
「あー、そうそう」メイファンはリウの顎に超低空アッパーを決め、吹っ飛ばした。「そいつだ」
リウは一回転して着地したが、メイファンが枕に『気』を込め爆弾を作りはじめたのを見てすぐに間合いを詰めに行った。
「あのような下衆、俺の息子などではない」
リウはマウントを取ると、股間からマジカル・ステッキを取り出し、メイファンの口に突っ込んだ。
「俺は認めていない! だからお前も気にするな!」
メイファンはマジカル・ステッキを噛み切ろうとしたが、どんどん力が抜けて行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 16:24:03.99:PZ6L4hjp
隣室でその様子を見ながら、恵妹が呟いた。
「アツいねぇ、コイツら」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 23:10:01.86:7VkVnoan
最後の講義が終わるとギアとノンナはニコニコ笑いながらメイの席へやって来た。
「メイ、行くぞ」
「メイ、行こう」
「うん、ちょっと待ってね」メイはノートや筆記用具を片付ける。
「メイ、我們很開心(僕らは楽しみだ)」
「メイ、我加油(私頑張る)」
「無理して中国語喋んなくていいよ〜。ベトナム語とロシア語もちょっとならわかるから、使ってね」
「Tôi rất mong chờ điều đó 」
「Я с нетерпением жду этого」
「ごめん。やっぱり全然わかんないや」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/02(土) 23:24:39.97:/xmEor7E
町へ出ると3人はファッションやアクセサリーの店、ディスカウント・ショップに軽食の店など歩き回った。
「メイ、楽しい?」
「メイ、疲れてない?」
「んーん。楽しいよ〜」
そう返しながら正直メイは笑顔が疲れて来ていた。
「メイ、これから楽しい所へ行こう」
「メイ、来てほしい所があるのデス」
そこへメイに電話がかかって来た。ヘイロンからだった。
わざと待たせてから電話に出ると、珍しく明るいヘイロンの声がした。
「メイ、今、ヒマか?」
「え。何?」
「ヒマか?」
「あ、うん。そうだね……」
「デートしないか?」
「え〜?」メイは身体を左右にゆっくり揺さぶり出す。「ま、仕方ないなぁ。いいよ?」
「じゃあ、○○街の公園の裏にある倉庫に来てくれ」
「倉庫? なんで?」
「サプライズだ。来ればわかる」
「ふ〜ん? 何か面白そう」
「待ってるよ」
「うん」
電話を切ると、メイは二人に手を合わせて言った。
「ごめん! 外せない急用が入っちゃった! また遊んでね」
駆け出したメイの背中を二人は冷たい表情で見送った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 01:34:46.71:F0hwaqSn
公園裏の倉庫まで3kmちょっとの距離をメイは10分で着いた。

ヘイロンは低い柵の上に座って待っていた。
「待った?」メイが少し息を切らしながら言うと、ヘイロンは面白くもなさそうに言った。
「流石に早いな」
「こんな所に呼び出して何?」
メイは期待にドキドキしていた。
今は使われていなさそうな古い倉庫だった。公園からは林で仕切られ、あまりにも人気がない。
「まぁ、中に入ってみればわかる」
「中に? 入るの?」
ヘイロンは立ち上がり、歩き出した。メイはその後をついて行く。
白い長Tシャツから首の後ろから、メイがプレゼントしたあのネックレスが見えていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 01:41:50.15:F0hwaqSn
ヘイロンが重そうな鉄の扉を音を立てて開ける。中は真っ暗だった。
「行こう」ヘイロンが振り向く。
「何があるの?」
メイは目を凝らして暗い倉庫内を見回す。精一杯目を開いているところにいきなり眩しいハロゲンの明かりが点いた。
「ッ!?」
メイが目が眩んでいる隙にヘイロンが扉を閉める。ヘイロンは外に出ていた。
倉庫内には8人の男がいた。見事に気配を消していたが、明かりが点くと動き出す。
どいつもこいつもが、いかにも中国マフィアのチンピラといった容姿をしていた。
眉毛を剃った髭面の背の高い男が、気持ちの悪い高い声で言った。
「なるほど、これは上玉だ」
スキンヘッドの男が「いいか?」と聞き、電話で「いいぞ、金を払え」と言った。
その中にアランがいて、嬉しそうな顔で歯を剥いて笑っていたが、存在感がなさすぎて気づかなかった。
「何コレ……」メイは絶望した。「ヘイロン……あたしを売っちゃったの!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 01:56:47.65:+q/YFliS
「そのとーりっ!」アランが前に進み出た。
「アンタは……」メイは目の前がクラクラした。
「ヘイロンにとって君はその程度なんだよ。大金に替わるなら平気で売るような、ね」
「……」メイが泣きそうな顔になる。
「いいねーーッ! その顔、可愛いーーッ! 可愛いそーーッ!」アランが叫ぶ。
「逃げ場はないぜ?」髭面が鳥肌が立つような声で囁いた。「抵抗しなけりゃ悪いようにはしない。大人しくするんだ」
男が3人、メイを取り囲んだ。
「アニキーーッ! お、俺にもやらせてくれるよなーーッ!?」アランが金切り声を出す。
メイは俯き、泣いているフリをすると、いきなり3人の顎へ向けて回し蹴りを繰り出した。
しかし3人は素早い反応で後ろへ避けると、最後の一人が脚を腕で受け止めた。そのまま床へ突き倒す。
苦しそうな声を上げ、メイは床に倒れた。
「キャーーッ! その声、いいね!」アランが喜ぶ。「いっぱい鳴いてねーーッ!」
「そうだな、まずは味見だ」髭面が言った。「いい商品になるかどうか、見極めさせてくれるかい?」
睨みつけるメイを余裕の微笑で髭面は見下した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 02:12:43.92:GlpVQ/zA
倉庫の外の林に隠れ、ヘイロンは二人の男から金を受け取った。
「どうもありがとうございます」
そう言いながら封筒から金を出し、数えると間違いなく100万あった。
「これで……母の入院費用が払えます!」
「金に困ってんだってな。これからもよろしく頼むぜ、苦学生くん」
ヘイロンよりも背の高い屈強そうな男がフレンドリーな笑顔で言った。
「可愛い女子大生、バンバン紹介しろ。いくらでも買ってやる。ただし秘密を漏らせば母親が……わかってるな?」
「はい、大丈夫です」ヘイロンは笑顔で言った。「この人がいれば大丈夫ですから」
「は?」
「この人?」
「私のこと?」
いつの間にかヘイロンと二人の間の低いところにヤンキー座りをしていたメイファンが言った。
「え!?」
「誰?」
メイファンが両手に持った青竜刀を振りながら立ち上がると、二人のチンピラは見事に股間から真っ二つに割れた。
血飛沫を派手に撒き散らして倒れる4塊の肉。赤地に黒と金の豹の刺繍が入ったチャイナドレスを着たメイファンは欠伸をすると、それを蹴っ飛ばした。
「こ……殺すんかい!」
流石にびっくりしているヘイロンに流し目を送ると、メイファンは言った。
「安心しろ。昨日、大統領サマん所へ直々に行って『殺人許可』を貰って来たところだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 02:34:31.99:hTl8ttU+
「中から鍵が掛かっている……どうするんだ?」
重い鉄の扉を全力で開けようとするヘイロンにメイファンは言った。「退け」
そして落ちていた長い枝を拾い上げると、『気』を込め、棍棒に作り変えた。
「牙突!」と叫ぶと連撃を扉に喰らわせる。
隕石がいくつも衝突したような音とともに扉は激しく変形し、真ん中に隙間が開いた。
「うわぉー!?」と中にいた連中が声を揃える。
見るとメイを床に押さえつけ、上着を脱がしているところだった。アランは既にパンツを脱ぎ、存在感のなさすぎるペニスを握っている。
メイファンは躍りながら入り込むと、棒を振った。メイにのしかかっている男達が吹っ飛ぶ。
「ヘイロン、メイを連れて逃げろ」
「俺も闘うよ、姐さん!」
「テメェ、ピストル向けられたら防げんのか!?」
ヘイロンは言葉に詰まった。
「何よりメイに見せたくねぇ! 早く連れて逃げろ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 02:45:02.92:a/Imtoca
そんな会話をしている隙にチンピラ達は銃を構え、発砲してきた。
あ、しまった。『気』を読むヒマなかったから、かわせねぇ……。
そう思ったのでメイファンは上に飛んだ。
ヘイロンはメイの腕を引っ張り、死に物狂いで外へ這い出した。
銃弾が鉄の扉に当たり、鈍い音を立てる。
メイファンは棒を地面に突き立てると、その反動でチンピラ達めがけて飛んだ。
「ハッハー! 久し振りだなっ!」
棒にさらなる『気』を込め、鎌に変えると、まとめて5人、首をはね飛ばした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 02:52:46.44:a/Imtoca
「てっ、テメェ! こんなことしてただで済むと思ってんのか!?」
叫ぶ髭面の首をメイファンはあっさりはねた。
「ただで済まんのはお前らのほうだろ、私の可愛い姪っ子のメイに悪いこと教えようとしやがって」
あっという間に7人惨殺したメイファンは、殺し残しがないことを確認すると、倉庫を出て行った。
隅っこで小動物のようにアランが震えていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 09:12:28.91:Zw+8AQdH
「信じられない……ッ!」
公園を抜けて町に入り、メイは早足で先を歩いていた。ヘイロンは走ってそれを追いかける。
「すまなかったーッ! すまなかったーッ!」
「もう……許さないッ!」
「いや、許してやれ」いつの間にかメイと並んで歩くように走っていたメイファンが言った。
「び、びっくりした!」メイが飛び退く。「メイファン足早すぎ!」
「私が『やれ』と言ったんだ。許してやれ」
ヘイロンは顔を赤くし、俯いた。現場のバイト中、メイファンに相談するまでは、単にまた金に目が眩んでいた。
「まぁ、座ってタピオカミルクティーでも飲もうぜ」メイファンが提案した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 09:33:10.48:Zw+8AQdH
リウ・パイロンは台湾の独立を認めていた。そのお陰で台湾のタピオカミルクティーの有名店が大陸にも進出し、定着していた。
「メイ、胸元が開いてる」
屋外のテーブルに座って烏龍ミルクティーを飲みながら、視線をずらしてヘイロンが言った。
メイは赤い顔でボタンを止めながら、しゃくり上げるような声で言った。
「怖かったんだから……! もう何も信じられない……って、思ったんだから!」
「リウ・パイロンは」メイファンが大粒タピオカ入りのミルクティーを持ちながら言った。「ヘイロンのために金は出さんそうだ」
「すんません、姐さん」ヘイロンが頭を下げる。「変なお願いさせてしまって……」
「何とか金を工面しねーといけねぇ時に、ちょうど怪しげな話がヘイロンに入って来ていた。その金をいただいてからブッ壊しただけのことさ」
「サラッと言いますね」ヘイロンが震えた。
「あたしを巻き込むなよ」メイが二人を睨む。
「すまん」ヘイロンがまた頭を下げる。
「お前絶対必要じゃん」メイファンが大粒タピオカをムキュムキュ言わせながら言った。「お前を買いたいって話なんだから」
もうメイは話が通じないので忘れることにした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 10:02:17.70:Zw+8AQdH
「お父さん、冷たいんだね」
メイがタピオカグリーンティーを飲みながら言った。
「そういう奴さ。わかっていたよ」
ヘイロンが平気な顔で答える。
「リウが言うには」メイファンが珍しく煙草を吸いながら言った。「ヘイロンは騙りに違いないそうだ」
「何だと?」ヘイロンが平気ではない顔になる。
「22年前から2年間、リウは日本にいた。だから中国人の子供が出来ている筈はないそうだ。ヘイロン、お前、日本人か?」
「中国人だよ」
「リウの女癖の悪さにつけ込んで、子供だと言って名乗り出る奴、多いそうなんだよ。特に雰囲気似てる奴が、さ」
「俺が詐欺師だって言うのか」
「詐欺師じゃん」メイが突っ込んだ。「あたしのこと騙したばっかりじゃん」
「大抵の自称息子や娘は真偽を判ずるのが難しいらしいが、そういう理由でヘイロンだけは間違いなく偽物だって言うんだ」
「母さんのこと覚えてねぇのか、あの野郎!?」
「そこでだ。お前の母ちゃん……もしかしてジンチンって名前じゃないか?」
「いや? リーランだ」
「……違うのか」
「なんでだ?」
「日本にいる間、リウはジンチンって女と一緒だったんだよ。一発だけヤッて別れたみたいなんだけどな」
「鬼畜め」
「そいつの子なんじゃねーのか? って聞いたら、ゴムはちゃんと着けた、とか言うんだ」
「鬼畜のくせにエチケットは守りやがるのか!」
「何よりその女、お前の母ちゃんみてーに病弱じゃあり得ねーしな。うーん、どういうことだ?」
「わからん」
「やっぱりお前か、お前の母ちゃんが、ウソ吐いてんのか?」
「姐さん……」
ヘイロンは何も言わず、目つきで『信じてくれよ』と言った。
「まぁ……」メイファンは煙草を揉み消した。「私の目で見る限り、ウソではあり得んな」
ヘイロンは信頼の微笑を浮かべてメイファンを見た。
「お前の母ちゃんに会わせてくれ」メイファンが立ち上がる。「どんな人か、会ってみたい」
「あっ、あたしも!」メイも急いで立ち上がった。「会ってみたい!」
「いいけど……」ヘイロンは烏龍ミルクティーを飲み干した。「びっくりしないでくれ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 10:10:45.33:Zw+8AQdH
「ところでお前、私が怖くないのか?」
極道のような格好で歩くその隣にぴったりくっついて歩くヘイロンを見ながら、メイファンが言った。
「いきなり真っ二つはびっくりしたけどな」ヘイロンが答える。「ミステリアスでいいと思うよ」
「若者は若者同士、くっつけよ」
後ろを歩いていたメイの隣へ追いやる。
メイはあからさまに怒った顔でそっぽを向くと、頬を赤らめた。
「お前、姐さんぐらい強くなれよ」
「そうだね。そうしてヘイロンをギタギタにしてやりたい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 17:29:02.55:Zw+8AQdH
病室のベッドを縦に2つ並べて繋げた上にまるでタチウオのようにヘイロンの母は長々と寝転んでいた。
鬼婆の顔に巨体を備えたその姿は初めて見る者には人間に見えず、既に何人も同じ階の入院患者を絶叫させ、見舞いに来た子供達のトラウマとなっていた。
ドアを潜るなりメイファンが叫んだ。
「ぎゃー! やっぱりお前か!」
「おろっ?」ヘイロンの母リーランがこちらを向く。
ヘイロンがお互いを紹介した。
「俺の母さん、リーランだ。身長は2m20cmだ」
メイは暫くヘイロンの背中に隠れていたが、人語を喋ることがわかると姿を現し、微笑みを浮かべ挨拶した。
「母さん、こちら……知ってるみたいだけどラン・メイファンさん。俺の恩人だ。そしてこっちのが学校の友達でラン姐さんの姪っ子のリー・メイメイ」
「あんらー、めんこい娘っ子らなァ」
「今日は。知り合えて嬉しいです」メイはぺこりと頭を下げた。
「で、そちらのお姉さんは……昔、会ったらなァ?」
「一度だけな」メイファンは答えた。「その一度が強烈だったからよく覚えてるよ」
「あァ……懐かしなァ……。あのひとの、リウの妹さんらァな?」
「妹分、な。お前、昔ジンチンて名前だったろ。名前変えたのかよ」
「あれはリングネームらァ。こっちが本名」
「なるほど。ララがいつもジンちゃんと呼んでいたからてっきり……」
「ララちゃん! 懐かしなァ……! 元気らかァ?」
「あぁ。結婚して、こんな大きな娘がいる」
メイファンはメイの頭を掴むと、前に出した。
「あっ! そか! ララちゃんの娘さんか!」
リーランは身体を起こし、天井にしこたま頭をぶつけると、涙を浮かべてメイの手を握った。
「アンタのママ……ララちゃん、こんなバケモンのオデと仲良くしてくれてなァ……。すごく嬉しかったァよ。ありがとなァ」
「エヘヘ……。自慢のママですもん」
「で、今、ララちゃん、誰の身体にいるだ?」
「へ? カラダ?」
「妹さんの中にいないってこたァ、新しい宿主見つけたんらなァ?」
「や、やど……? 何?」
メイは意味がわからずメイファンのほうを見た。メイファンは話題を素早く変えた。
「っていうかテメェ、確かララと同い年だよな? 43ならまだ若ぇよ! 働けや! 何息子にすんげー苦労させてんだ!」
「母さんだって働いてたよ!」ヘイロンがかばった。
「何の仕事だ?」
「折り鶴折りだ」
「内職じゃねーか! ひとつ折っていくらだ!?」
「一日一万個作って五千円らよ」リーランが答えた。
「ハンバーガー・ショップでバイトしたほうがマシじゃねぇか!」
「母さんは病弱なんだ」ヘイロンが泣きそうな顔で言った。「姐さん、何も知らないだろ!?」
「話してみろよ」メイファンはヘイロンのほうを向いて言った。「お涙頂戴の貧乏話、聞いてやる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 19:24:11.63:Zw+8AQdH
ヘイロンは語りはじめた。所々でメイファンがツッコミを入れた。

「俺の一番古い記憶は産まれた時だ。まだそこそこ綺麗だった今と同じアパートの部屋で、俺は取り出された。
俺を取り出したのは母さんだった。俺はまだ目が見えなかった筈だが、なぜだか覚えている。
母さんは俺を顔の前に抱き上げると、笑ったんだ。産まれて来てありがとうと言うような笑顔だった」

「想像するとグロいな……」

「その頃から既に極貧だったが、母さんは女手一つで俺を育ててくれた。俺にはちゃんとしたものを食べさせ、
自分は毎食うまい棒で我慢した。お陰で俺はこんなにも健康で頑丈な身体に育ち、母さんは何度か栄養失調で倒れた」

「いや、それ単にうまい棒が大好きなだけだろ」

「母さんは身体が大きくて病弱だった。いつからか自分の体重を自分の足で支えきれなくなり、
寝たきりになったんだ。それでも俺を食わせるために必死で働いてくれた。生活保護を受けながら、
俺を高校だけでなく、大学にも行かせてくれた。折り鶴1日五千個が限界だったのを、頑張って
1日一万個折って、俺を大学に行かせてくれたんだ」

「鶴よりまともな仕事なかったのかよ……」

「俺は母さんのために生きて来た。学校に行きながらバイトで生活費を助け、家事も殆どこなし、
合間に自分で編み出したオリジナルのマーシャルアーツを完成させ、その特技を金稼ぎにも生かしつつ、
恋も遊びもせずに、母さんのために生きて来たんだ! 母さんを悪く言う奴はたとえ姐さんでも許せねぇ!」

「いや、やっぱお前の母さんのが私は許せねぇ!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/03(日) 19:43:06.90:Zw+8AQdH
「なんで息子にここまで苦労与えてんだよ! すぐにリウに頼りゃいいだろが!!」
メイファンはベッドの端を叩いた。
「んだけどぉ」リーランは頬を紅くした。「あのひとに迷惑かけちゃいけんしぃ……」
「息子にゃどんだけ迷惑かけてもいいのかよ!?」
「大体、オデはあのひとに捨てられただァよ。もう、あのひととは何の関係もねェだ」
「息子は血が繋がってんだろーが!! せめて認知させろよ!!」
「俺が許せねぇんだよ、姐さん」ヘイロンが言った。「こんな優しい母さんを捨てたアイツが、許せねぇんだ」
「でもお前が生まれてることすらアイツ知らねーんだぞ?」
「そらァ……」リーランがまた頬を染めた。「あのひとが気づかないうちにオデがコンドームに穴開けといたからなァ、知るわけねェだ」
「なんでそんなことしたんだ」
「捨てられる自信、あったからなァ。どうしても、あのひとの子が欲しかっただ」
「……とりあえず、アイツにヘイロンがお前の子だって知らせるぞ?」
「……んだな」リーランは頷いた。「この子が父親を知らないのは正直不憫だっただ」
「俺は別に父親なんかいらん」ヘイロンが言った。「それにアイツが母さんのことを覚えているとも思えん」
「覚えてるよ」メイファンの声が優しくなった。「きっと、お前らを助けてくれる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/04(月) 09:05:27.13:kTBFffEN
メイファンはリウの所へ帰った。
夜道を二人並んで歩いて帰りながら、メイもヘイロンも無口だった。

「あたしのママとヘイロンのお母さん……友達だったんだね」
「そうだな」

「……なんか、運命感じちゃうね」
「そうか?」

「……」
「……」

雲の隙間から月が出た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/04(月) 13:49:17.88:7oEYEK47
一人で寝るのは気楽でいいと思っていた。しかし二日続けてメイファンがいないと何だかメイは寂しくなった。

「抱き枕にちょうどよかったのになぁ……」

皆寝るのが早いのか、住宅街にあるアパートの周りは静かだった。
カチコチと鳴るような時計もなく、完全にデジタル化された一人の部屋はまったくの無音だ。
世界で生きている人間が自分一人だけのような気がして、メイはなかなか安心して眠りの中へ入って行けなかった。

「アメリカは……朝の5時くらいだなぁ……」

両親とメールのやり取りはしていたが、声が聞きたかった。リアルタイムで会話がしたかった。しかし国際電話は高い上、自分が眠る頃にあちらは起きはじめる。

「今……、あたし、楽しいのかな……」

期待に胸を膨らませての中国生活だった。
しかし、入ろうと思っていた太極拳部は存在せず、武術の同好会はあるがあまりにもレベルが低く、格闘技系の部活はボクシングだけだった。
フレンドリーだと聞いていたのに中国人の友達はなかなか出来ず、ベトナム人とロシア人の友達は出来たが、なぜか一緒にいて疲れる人達だった。
気になる男の子はいるが、仲良くなれたのかどうかよくわからず、しかも2回も酷い目に遭わされた。

メイは立ち上がると、大きなプーさんのぬいぐるみを抱き、ベッドに戻る。
抱き締めると少しだけ落ち着いた。

「アメリカに帰りたいなぁ……」

なぜ中国の大学を受けたんだっけ。忘れてしまった。
どんな医者よりも優れた腕をもつのに医師免許がなく、『気』で治療するなどという胡散臭さから馬鹿にされがちな母のことが悔しかった。
自分が医者になれば、その悔しさを晴らせると思った。

「……あんなチンピラどもにキックをかわされるなんて……」

武術の本場だからという期待もあった。早速自分よりも強いヘイロンやメイファンと知り合えた。
しかし全米太極拳の学生チャンピオンのプライドはズタズタだ。怖い人が多すぎる。

「あ、そうだ。リーランさんに会ったこと、ママに知らせよう」
明日起きたら両親に電話をしよう。
そう思ったら心が落ち着き、ようやくメイは眠りに落ちて行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/04(月) 15:28:24.12:7oEYEK47
メイファンが部屋に入るなり、リウは新技を仕掛けて来た。
チャイナドレスを脱がしつつ腕を腰へ回し、両足でがっちり固定すると、ベロベロとおっぱい中を舐めはじめる。
「コラ! まず話を聞け!」
メイファンが頭突きを入れると、リウは一瞬だけクラクラとしたが、すぐにまた乳首に吸いついて来た。
「大人メイファン、オイシイ……」
「あのな! ヘイロンのことだが……あうっ!」
「またアイツのことか。偽物だと言ってるだろう。んちゅ」
「それがな……んっ……あのバケモノ女が……あっ……はぁっ」
「とにかく後にしろ」
「んんっ……あぁっ……! やぁん……っ!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/04(月) 17:46:49.48:OkuRZgfT
リウは向き合ったメイファンを両手で持ち上げると、愛液滴る蛤に自分のモノをあてがった。
「今日のコイツはいつもの可愛いマジカル・ステッキではないぞ。荒ぶるチョイ悪のワイルド・ステッキだ」
それは独立した一匹の生き物のように脈動し、ヌラヌラと輝きを放っている。
「あぁっ! ハッスルしているのね!」
嬉しそうに涎を垂らすメイファンの身体を、リウは思い切り自分の腰へ落とし込んだ。
「ギャアッ!?」
メイファンが仰け反り、叫び声を上げる。
「どうだ? 俺の逸物に貫かれる感想は?」
そう言いながらリウはゆっくりと、突き刺した極太のそれを引き出す。白い愛液がまとわりついている。
「あっ……いっ……いいっ」
リウが再びメイファンを深く突き刺す。
「奥まで届いているか?」
「んあーーっ! こっ、壊れちゃう!」
子宮口をグリグリと圧迫して苛めながら、リウが聞く。
「もっと欲しいか?」
メイファンは激しく何度もうなずいた。
「よし」
そう言うとリウはピストンを開始した。
「いやぁんっ!」
口で嫌がりながら、メイファンは悦びに口元を歪め、自分からも腰を振った。
「いやぁんっ! いやぁんっ!」
パンパンパンと肉同士がぶつかる音が部屋中に響き、温度が急上昇し、汗が飛び散った。
リウは言葉を忘れ、夢中でメイファンと濡れた身体を擦り合わせ、亀頭を子宮口にぶつけまくる。
やがてメイファンの膣の中が膨らみ、イク気配を感じるとリウはベッドに押し倒し、両足首を掴むと大きく脚を開かせ、腰の動きを早めた。
「あぁっ! あああーーっ! イクっ! イクっ!」
「おっ、俺も……っ! たまらんっ!」
既に絶頂に達し、痙攣しているメイファンの膣内に、リウは大量の白い劣情をぶちまけた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/04(月) 23:33:41.72:7oEYEK47
メイファンは眠るリウと並んでベッドの上で、豪華な天井を見つめながら考えた。
『うーん。こんなのと結婚して本当にいいんか……私?』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 10:28:41.07:9Yp6WR9E
翌朝メイが学校へ行くと、なんだか様子がおかしかった。
遠巻きに自分を見る学生達の目が冷たい。メイから話しかけても、いつもの恥ずかしそうな笑いではなく、冷笑が返ってくる。
いつもひとりぼっちには違いなかったが、皆の態度が違いすぎる。これはどういうことなのか理由を突き止めずにいられなかった。
ギアとノンナに聞いてみようと思い、探すと離れた席でメイに後ろ指を差していた。何か不穏な空気を感じつつも、構わず近づき声をかけた。
「おはよう」
「オハヨウ」
「オハヨウ」
「何か皆のあたしを見る雰囲気がいつもと違うんだけど……何か知らない?」
「英語ムズカシイデス」
「中国語ワカリマセン」
「ぉあ!?」
「しゃんま?」
「しゃんま?」
「何かアンタ達……怪しいんだけど……」
「アッ! 暴言ヲ吐カレマシタ!」
「メイメイさんは酷い人!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 15:53:29.31:/Xv6XCK4
「お前らのキャンパスのことはわからん」
昼休み、一緒に学食で食事をしながら、ヘイロンが言った。
「だが、心当たりはある」
野菜大盛焼きそばを食べていたメイの手が止まる。
「心当たりって?」
「俺だ」
「へ?」
ヘイロンは大盛薄卵焼きご飯を一口食べると、続けた。
「俺は周囲からこの大学に相応しくない人間として避けられている。まぁ、ヤクザだと思われているみたいだ」
「ほえぇ……」
「そんな俺とつるんでいたらお前も避けられるようになるのかもしれん。人気者になりたければ俺にはもう構うな」
「んー……」
ヘイロンはそう言いながらも食べる手を止め、捨てイヌのような目でメイを見つめた。メイはひとしきり考えると、言った。
「違うと思う」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 16:34:35.89:/Xv6XCK4
「あっ、あのっ……」
メイの後ろで一人で食事をしていた女の子が振り返り、話しかけて来た。
「リー・メイメイさん、実は……変な噂が立って……ますよ」
大人しそうな、可愛い女の子だった。真っ黒な髪のロングストレートにチェックのシャツがとても地味によく似合っている。
「何か知ってるの?」
「みんな……知ってる。だから……」女の子はもじもじしながら言った。
「ご飯持って、こっちおいで。聞かせて」
すると食べかけの小籠包を3個持ってメイの隣に席を移って来た。

彼女が言うには、ギアとノンナが流暢な中国語で悪い噂を流しまくっているらしかった。
メイと町に遊びに行ったところ、終始面白くなさそうな顔をし、中国がいかにアメリカに比べて遅れているかを
何かを見るにつけバカにした口調で述べ、アメリカ人の自分がとれだけ優れているかを語り、
しまいには途中でアメリカ人の友達から電話がかかって来ると砂をかけるようにギアとノンナを
ほったらかしにしてそっちへ行ってしまった、という話を会う学生ごとにして聞かせているらしかった。

「何よ、それ」メイは悲しさと怒りが入り交じった複雑な顔をした。「何で皆そんなの信じちゃうわけ?」
「アメリカに対する我々中国人のコンプレックスを利用したんだな」ヘイロンが言った。
「でも、私、ギアとノンナに嫌われるようなこと、してないよ」
「どうもお前に嫉妬して一方的に恨んでいる奴がいる。俺達に依頼をして来た奴……たぶん女だ」
「ギアとノンナはそのひとに依頼された仕事人てこと?」
「おそらく、そうだろう」
メイは黒髪の女の子に向き直ると、礼を言った。
「教えてくれてありがとう。お陰でスッキリした」
「メイメイさん、そんなこと言わないよね? 言ってないよね?」女の子はまっすぐメイの目を見つめて来る。
「言ってないよ、絶対」
「よかったぁ」
「えーと……」
その女の子を教室で見た覚えはあった。しかしどうしても名前が思い出せなかったので、改めて聞いた。
「小飛です。シャオフェイ・ナーナ。よろしく、メイメイさん」
「小飛はどうして信じてくれたの?」
「だって……」小飛は両手の指を複雑に絡ませ、もじもじしながら言った。「だってなんだもん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 16:59:18.02:/Xv6XCK4
ヘイロンと並ぶほどに小飛も、今一つ何を考えているのか分かりにくいキャラだったが、メイはすぐに好きになってしまった。
一緒に食事しながら談笑しているうちに、皆に嫌われてもこの二人がいてくれればそれでいいか、とさえ思えて来た。
「あ、そだ。ヘイロン」
「ん?」
「今朝、うちのママに電話したらね、変なこと言うの」
「変なこと?」
「あたしとヘイロン、兄妹かもしれないんだって」
「何?」
「生き別れの兄妹ってこと?」小飛が喜んだ。「ロマンチック」
「んーん。あり得ないよ、小飛」
「メイの父親がリウ……ってことか?」ヘイロンが暫く考え、言った。
「どう考えてもあり得ないんだけどね」メイはオレンジジュースを口を尖らせて飲むと、言った。「だからヘイロンとは結婚するなって」
「えー?」小飛が悲しそうに言った。「好きでも結婚できないの?」
「ヘイロン、残念だね」
「残念だったな、メイ」
二人は同時にそう言うと、くくっと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 17:21:10.21:AxQyWa3r
アメリカはノースキャロライナ州にある小さな町で、ビルの1階を借りてハオとララは太極拳教室を開いている。
ハオの教え方に定評があり、優しくて可愛い奥さんもいて、何より全米チャンピオンを数人輩出していることで入門希望者は絶えなかった。

「あっ、思い出した」
腕組みをして生徒達の動きを見ながら、ハオが隣に並ぶララに言った。
「ジンチンって、あのデブか。あの人……女だったの?」
「相変わらず恐竜並みに情報伝達力が遅いね、ハオは……」
白い拳法着姿のララが溜め息を吐く。
「あの娘の息子だったのよ、ヘイロン君。びっくりしたけど」
「ヘイロン……て誰だっけ」
「……もう……いいわ」
「いいの?」
「とにかく、あたしの身体がリウ・パイロンから引きちぎって作ったものである以上、
リウ・パイロンの息子であるヘイロン君とメイは兄妹ということになると思わない?」
「メイの父親は俺だ!」
「そうだけど、言わばメイは、ハオとリウ・パイロンの間に産まれた子だと言うことが出来ると思うの」
「き、気持ち悪いことを言うな!」
「あたしが言ってて一番気持ち悪いんだから我慢しろや」
「とにかくリウ・パイロンなんか関係ない! メイは俺とお前の子だ!」
「じゃあメイとヘイロン君は結婚出来る、ということね」
「出来ない!」
「はいはい」
「俺がさせない!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 17:31:02.50:OnOrilit
ハオもララも子供は何人でも欲しかった。
しかし毎日頑張ってもメイの次の子は出来なかった。
ララは身体がないので本来出産能力をもたない。たとえメイファンの身体にララが入り、ララが身体の支配権を得ている時に妊娠したとしても、それはメイファンの子である。
ララはリウ・パイロンの身体を引きちぎり自分の身体を作った。『気』の支配力を用いて骨を作り、心臓を作り、女性器も子宮も作った。
しかし人工の身体であるためか、子供はなかなか出来なかった。むしろメイが産まれたことが奇跡であるとさえ言えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 17:50:35.64:OnOrilit
「んふふ。ハオちゃん」ララが言った。
「なぜにちゃん付け!?」ハオが答えた。
「あたしね、昼からちょっと病院行って来る」
「病院!?」ハオがびっくりしてララの顔を見る。「どっか悪いの!? 自分で治せないぐらい!?」
「出来ちゃったのよ」
「えっ」
「出来ちゃったのよ〜〜〜!! 二人目!」
「えええええええ!!!」
練習中の生徒達が全員、動きを止めてララに注目した。祝福の声が二人を取り囲む。
「マジか! でかした! ララちゃん!」ハオは大喜びだ。
「ああっ、大騒ぎになっちゃった……!」ララは慌てた。「まだ確実じゃないのよ? 妊娠検査薬に出ただけじゃ……」
「早く病院に行こう!」
ハオは急いで車のキーを手に取ると、着替えもせずにララを急かした。
「ちょっ。拳法着で行くの? 昼休みになってからでも……」
「いいんだ。ペアルック格好いいじゃないか! 何より大切なのは一刻も早く喜びを確定させることだ!」
「でも、生徒達が……」
「自習! いいな?」
「行ってらっしゃーい」生徒達は笑顔で声を揃えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 17:52:53.96:OnOrilit
車に乗り込むとハオは興奮して言った。
「でかした! でかした! 諦めずに頑張った甲斐あったなぁ……」
「え。ハオ、やりたくないのに頑張ってたの?」
「バカ! やりたい上に頑張ってたに決まってるじゃないか!」
二人は熱烈なキスを交わすと、お互いの身体をぽんぽんと叩き合い、出発した。

一時間後、ララのおめでたが確定した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 19:24:27.09:BhvruC37
真夜中、メイファンの寝言でリウは目を覚ました。
メイファンは安らかな寝顔で物騒な寝言を言った。
「ん〜……お前ら全員殺してやる。ミナゴロシだ……」
リウは掛け布団を掛け直してやる。
『殺し屋時代の夢を見ているんだな、メイファン』
「産まれて来るガキも含めて殺してやる……。私を……寂しく……させやがって……」
リウは優しく髪を撫でてやる。
『もう二度とそんな夢は見ないぐらいに俺が幸せにしてやる。覚悟しろよ、メイファン』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 20:04:57.78:BhvruC37
豪華な朝食が並べられた食卓を眺め、メイファンは言った。
「私、草が食べたいな」
リウは意味のわからないその台詞を楽しみながら、言った。
「グリーンリーフに豆苗ではダメか?」
「まぁ、いいけど……。あとビール」
「朝から何を言う。常識的な生活に慣れて貰うぞ」
メイファンは草が食べたいと言ったにも関わらず、ローストビーフをまず頬張ると、言った。
「ところでせっかく殺人許可証を出したんだ。邪魔な政敵とかいたら言えよ? 殺してやるぞ」
「必要ない」リウもローストビーフを取る。「今まで俺は裏工作などせず、すべて実力で勝ち抜いて来た。これからもそうするつもりだ」
「でも目障りな奴はいるんだろ? たとえば、田とか」
「22年も眠っていたくせによくわかっているな、流石だ」
「田 英男(ティエン・インナン)は新・中国共産党を興し、お前が築き上げた民主主義を倒そうとしている。相当目障りなはずだ」
「まぁな。奴は現代の毛沢東になろうとしている。危険人物には違いない」
「毛の時代と違い、マルクス主義はもはや迷信となっているし、お前の築いた国も平和で、問題はないように思える。しかし……」
「その通りだ。習近平による独裁政治の続きを見たがっている者は存在する。しかも少なくはない」
「中国の世界制覇」メイファンはブロッコリーを齧りながら言った。「人のいいお前にはとても掲げられない夢を奴は人民に対し匂わせている」
「俺の身にもしも何かがあれば、権力を握るのはまず間違いなく田だ」
「お前と正反対でありながら、お前の支持層の中にも田に賛同する者は多いと聞く」
「俺がもし死んだりした時には田を殺してくれるか?」
「あぁ、任せてくれ」
「だが必要ない」
「何だと?」
「俺のほうが奴よりも正しいなどと言えば神が笑う。」
リウはナプキンで口を拭くと、ゆっくりと言った。
「それに、お前にもう人殺しはさせたくない」
そこまで言ったところで美鈴が入って来て報告した。
「大統領、リー・チンハオ31號が脱走しました」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 20:17:55.42:BhvruC37
「またか」リウは肩を落とした。「アイツら、やる気はないくせにすぐ脱走しやがる」
「どういたしましょう? 追いますか?」
「美鈴。君はクビにした筈だ。新秘書に任命した恵妹を連れて来い」
「不当解雇には従えませんわ」美鈴は眼鏡をくいっと上げた。「追いますか? って聞いてんだオイ」
「まぁ、ほっておけ。腹が減ればどうせ帰って来る」
「女に飢えている上、性欲が異常発達している個体ですが」
「大丈夫だ。いざとなったら何も出来やせん。優しいだけが取り柄だからな」
「ははっ」メイファンが可笑しそうに笑った。「習近平のアレ、お前引き継いでんのか」
「あぁ。お前、知っていたんだな」
「後で見せてくれ」メイファンは食事のスピードを少し早めた。「久々にあのアホ面を拝みたい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 21:21:05.10:BhvruC37
地下へ降りると錆びた鉄の匂いが強くなった。
広い空間にいくつもの檻が設けられ、その中に無数のリー・チンハオがいて、入って来た二人のほうを一斉に向いた。
「年齢がバラバラだな」
メイファンが言う通り、一番若いリー・チンハオは6歳ぐらい、一番年上は50歳前後だった。
「毎年一体ずつ作っているんだが、何人か脱走したり死んだりした。ここには52体のリー・チンハオがいる」
「うすら寒いが、綺麗にはしてあるな」
「すべて失敗作だが、死なせたくはないのでな」
「成功作は未だなしか……」
「あぁ、やる気のあるリー・チンハオは産まれて来ない。ここにいる奴らすべて、オリジナルと同じあの素晴らしい素質を持っているんだが……」
自分の弟子だった頃と同じ30歳ぐらいのハオの前に立ち止まり、メイファンは懐かしそうにじっと見た。
ハオもじっと見つめ返すと、うっとりしたように言った。
「女だ〜。可愛いな。ねぇ、エッチしようよ」
「いいぞ。お前がやる気になれば、な」
「もう、ヤル気マンマンだよ〜」
そう言うとハオはズボンを下ろしてぺニスを出し、オナニーを始めた。
「なるほど。こりゃダメだ」
「まだ見るか?」
「いや、痛々しくて見てられん」メイファンは踵を返した。「戻ろう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/05(火) 21:27:27.70:BhvruC37
「逃げたのは何歳のリー・チンハオだ?」
「確か25歳のヤツだ」
二人が階段を上がって行くと、美鈴が顔を出し、報告した。
「大統領、31號見つけました」
「ほっとけと言ったろう。無駄な仕事はするな」
「無駄ではありません。○○区の住宅街に逃げ込んだようなので」
「○○区の住宅街?」
メイファンが声を上げた。
「メイのアパートのあるとこじゃねーか!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/06(水) 07:20:54.39:GnOdf/M1
ヘイロンとは方角が違い、小飛は大学構内にある寮住まい。メイは友達が1人増えても帰り道はやはり一人ぼっちだった。
『まさか皆の嫌われ者になるとは思わなかったなぁ……』
普通に歩けば10分ほどの距離をとぼとぼと時間をかけて歩いた。
横手の公園から3人の女の子が出て来たのが見えた。よく見るとムームー先輩とその取り巻きである。
「あっ、ムームー先輩。今日は」
メイが挨拶をすると3人は立ち止まり、少し嗤ったように見えた。
「リー・メイメイさん、聞いたわよ」ムームー先輩が一転、憐れむような優しい顔になる。「あなた、悪い噂を流されているわね」
「ははは。そのようです」メイは力なく笑う。
「あんなの根も葉もないわよね? 私、あなたのことよくは知らないけど、信じているわ」
「ありがとうございます」メイが頭を下げる。
取り巻きの2人の女の子はなぜだかまだ嘲笑を浮かべている。
「ねぇ、あなたさえよろしければ」ムームー先輩は切り出した。「私のグループに入りません? こう見えて結構校内でも権力的に上のほうになってますのよ」
「あー、ごめんなさい」メイは頭を掻いた。「そういうヒエラルキー的なものが嫌でアメリカを出て来たところ、あるんで……」
「あっ、そう」ムームー先輩が冷たい顔になった。「なら、いいわ」
そう言うと何も言わずに出て来た公園へ戻って行った。
「ごめんなさい」メイはその背中にもう一度謝った。
3人はヒソヒソと小声で会話をしながら茂みの向こうに姿を消した。
『なんで出て来たところへ戻るんだろう』
メイは首を捻りながらアパートへ向かって歩き出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/06(水) 07:41:07.87:GnOdf/M1
ムームー先輩は公園内を歩いて大学へ戻りながら、3人と会話をした。
「チッ! グループに入れれば好きに可愛がってやれるものを」
「やっぱりアメリカ帰りを鼻にかけてるんだわ。あの生意気さ」
「許せないわね。もっといじめてあげようよ」
綺麗な服を着て歩く3人の女子大生を、茂みの中からランニングシャツとトランクスという下着姿の青年がじっと見ていた。
「言われるまでもないわ。次はどうしてくれようか……」
「靴の中に画鋲を入れとくとか、どう?」
「古典的〜! でもそういうベタなのが、されてみると一番嫌なものなのよね」
「そうね。手軽で効果抜群。それで行きま……」
突然、ムームー先輩に後ろから男が抱きついた。
「ギャーッ!?」
取り巻き2人が驚いて見つめる中、ハオ31號はムームー先輩のお姫様ロールの髪の匂いをフンフン嗅ぎまくり、声を上げた。
「女だぁー! 25年振りの女だぁー!」
そして自分のパンツの中に手を突っ込み、何かを激しくしごき始めた。
「なっ、何コイツ!」
「変質者!」
取り巻き達が攻撃する。しかし31號は襲いかかるカバン攻撃を受け流し、ハイヒール・キックを尻の動きだけで無効化した。
「こっ、攻撃が当たらないわ!」
2人のさらなる攻撃も軽く捌きながら、31號はムームー先輩のお尻に大きくなった自分の元気棒を押しつけ、上下に動かし始める。
「あぁ〜〜! 密着感がいいです!」
白目を剥いてそんなことを言い出した男を振りほどくことが出来ず、ムームー先輩はヒステリックに叫ぶしか出来なかった。
「はっ、早く何とかしなさい! けっ、警察を呼びなさいッ!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/06(水) 08:20:44.24:GnOdf/M1
石つぶてが飛んで来て、31號は寸前で気づくと手で払った。
「やい変質者! こっちだ!」
公園の遊歩道の向こうで、長い手足をいっぱいに広げて叫ぶメイを一同は見た。
「リー・メイメイさん!」
「先輩の悲鳴を聞きつけて……」
「助けに来てくれたのね!」
31號はそれでもムームー先輩を離さず、腰を気持ち悪く動かしていたが、メイを見ているうちに何やら大人しくなって来た。
「ハッ!」
掛け声とともに、遠くにいたメイがあっという間に間合いを詰めて来た。
「おっ。やるなぁ」
31號はムームー先輩から手を離し、メイのハイキックを受け止めた。
「今っ!」
メイがそう言うとムームー先輩はよろけながら逃げ出した。
「警察呼んであるから! もう来るから!」
そう言いながら取り巻き達も走って逃げ出した。そして二人が残った。
対峙しながら二人は短く言葉を交わした。
「可愛いなぁ」31號がメイの全身を舐め回すように見ながら言った。「なんだろう……。俺、君のことが、特別可愛い」
「変質者め」メイは31號の顔を睨みつけながら言った。「気持ち悪ィんだよ! 寄んな!」
そう言いながらメイは気づいてしまっていた、目の前の変質者が、写真で見たことのある若い頃のパパにそっくりだということに。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/06(水) 15:40:15.35:GnOdf/M1
父親そっくりの変質者はじっと待っている。隙はあるような、ないような、よくわからない。
メイはクモの巣を相手にしている気分だった。どんな攻撃をしても恐らく当たる。しかし当たった瞬間、絡めとられる。そんな未来が見えた。
「おいで。ねぇ、エッチしようよ」
31號はとぼけた顔で誘う。メイはうかつに攻撃できない。
逃がした娘が警察を呼んだと言っていた。このまま膠着状態を保っていれば、いずれやって来て、結果的にメイの勝ちということになるだろう。
しかしそれは癪だった。武道家の娘として、全米学生チャンピオンとしてのプライドがあった。こんなふざけた男に勝てなくてどうする。
しかし動けなかった。暫くの膠着状態の後、動けずにいるメイを見ると、男はおもむろに自分のパンツの中に手を突っ込んだ。
「なっ……何を!?」
男は鼻の穴を広げ、メイの脚を見ながらオナニーを始めた。
「さっ、させるかーーっ!」
たまらずメイが動く。3mの間合いを一歩で詰めるとアッパーで顎を砕きに行った。31號の目がキラーンと光った。
ふざけた動きでメイのアッパーを横にかわすと、ぺニスをいじっていたほうの手でメイの二の腕を掴む。
「わぁ、すべすべだ」
そう言いながら体の回転を使ってメイを地面に投げ伏せた。
「あうっ!」
背中から地面に叩きつけられ、メイは一瞬、息が出来なくなる。
そこへ31號が柔道のような技で抱きついた。そのままおっぱいを触り、背中へ移動して羽交い締めにする。
「警察を呼んだと言っていたな」
31號はメイを起こすと、人目のない池のほとりへと引き摺って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/06(水) 16:04:25.79:GnOdf/M1
茂みに身を隠すと、31號は自分のランニングシャツでメイの腕を縛り、メイのショートパンツを脱がしにかかった。
「ぼくの子を産んでくれ。生きた証を残したいんだ」
「ま、待って!」メイは刺激しないよう、穏やかに話しかけた。「あなた、あたしの親戚とかじゃないかな。リー・チンハオって知ってる?」
「リー・チンハオは俺だ」
「ええっ!? 違うよ! リー・チンハオはあたしのパパだよ!」
「じゃあお前のパパもリー・チンハオなんだ。俺もリー・チンハオ。不思議はない」
「不思議すぎるよ!」
「まぁ、いいからセックスしよう」
「近親相姦じゃないの!?」
「インブリードだ。天才か、バカか、どっちかが極端なのが産まれる」
31號はメイの苺のパンティに両手をかけた。
「Noooo! damn! you, daughter fuckerrrr!」
「ファック? うん、そうだよ。ファックするんだよ、今から、ぼく達」
パンティを脱がすと若々しい陰毛が現れた。31號は脱がせたパンティをメイの口に押し込み、両足を持つと、開かせる。ピンク色のものが見えて来た。
「うわぁぁぉこれがオマ○コ……」
しかし急に視界が真っ暗になった。
「あれっ?」
「だーれだっ?」女の声がした。
「ちょっとやめてよ。お楽しみ中なのに」
メイファンは持っている棒を渾身の力を込めて31號の肛門へぶち込んだ。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/07(木) 05:08:17.67:s9qceN2x
そして3年後…
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 05:50:42.62:FbHFY8H3
いや、三分だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 08:32:03.37:HCRw9jiN
メイファン「あー。3ヶ月経った」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 11:28:51.45:HCRw9jiN
3ヶ月経ってもメイの周りはあまり変わったところはなかった。
ヘイロンは相変わらず貧乏で、たまにちょっと悪いことをしながら何とか暮らしを保っていた。
メイとの関係も進展は何もなく、メイは彼のことをもしかしたらホモかもしれないと思いはじめていた。
ヘイロンの母リーランは相変わらず入院中で、息子に苦労ばかりかけている。
メイと小飛はますます仲良くなり、色んなところへ遊びに行ったりしていた。
しかし他の学友達は悪い噂を信じたままで、メイと新たに仲良くなってくれる者はいなかった。
ただ、メイに恨みを持ち、色々と仕掛けて来ていた人物はめっきり大人しくなり、あれ以来嫌がらせのようなことはして来なかった。
ムームー先輩は相変わらずメイに興味があるのかそれとも嫌いなのかわからない距離を保っていた。
アメリカの両親はあの日の翌朝、電話でメイに弟が出来たことを報せた。
メイは19歳下の弟の誕生を心待ちにし、名前のアイディアを色々と考えていたが、未だ決まらずにいた。
リウが中国を離れて海外を回っているので、メイファンは毎晩メイの部屋で寝泊まりしていた。
リウにヘイロンのことを話し忘れたまま3ヶ月経っていた。

変わったことといえば、毎日のようにヘイロンとメイファンから稽古をつけてもらい、メイは明らかに強くなっていた。
中国へ来てから頻繁に見舞われる危機に、めげることなく本気で強くなることを欲した結果であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 13:28:15.75:HCRw9jiN
「メイ、頼みがあるんだ」
学食で向かい合って大盛中華おこわを食べるヘイロンが言った。
「ロンの頼み事って、大抵ろくでもないから悪い予感しかしない」
特大中華バーガーを齧りかけた口を止め、メイはそう言った。
小飛は黙々と水餃子3個を、たっぷり時間をかけて少しずつ食べている。
「人身売買の仲介業者にお前を売らせてくれ」
「またそれかよ……」
「今度は大丈夫だ、マフィアとは関係ない」
「でもヤクザだろ」
「それほど組織的なものではないんだ。ギリギリになって業者どもをぶっ飛ばして逃げてくれればいい」
「なんであたしが……」
「今のお前なら出来る」
「なんであたしがロンのためにそんなことしなきゃなんないの?」
「うぅ……」
「あたしにどんな得があって、そんな危険なことしなきゃいけないわけ?」
「頼む」ヘイロンは頭を下げた。「人助けだと思って」
「3ヶ月前、100万手に入れたじゃん! 見た感じ贅沢なんかしてなさそうだけど、あれどうしたの?」
「すべて支払いに消えた」
「100万のストックがあって、1日3つバイト掛け持ちして、それで回らないんじゃ、この先も真っ暗でしょ!」
「母さんがもう退院する。今回だけなんだ!」
メイは大きくため息を吐くと、言った。
「本当にこれっきりだからね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 14:27:38.52:HCRw9jiN
ヘイロンは深々と頭を下げ、礼を言うと、メイのことを褒めちぎった。
「さすがはメイ、学校1可愛いだけのことはある」
「お前の脚はカモシカの脚の300倍綺麗だ」
「お前と手合わせするのが最近楽しくなった。もう俺とどちらが強いかわからないな」
初めのほうの明らかなゴマスリの褒め言葉には適当に返事を返していたものの、メイは最後の言葉に顔がニヤケずにいられなかった。
「もうあたし、ロンより強いかもね〜」
「そうだな。しかし強くなり始めた途端、危険に遭うことがなくなったな」
「ま、そんなものだよね」
「自分の強さを試してみたくてウズウズしていたんじゃないか?」
「何事もないのが一番だよ」
メイはそう言うとバーガーにかぶりついた。
「心を落ち着け、座っておくことが出来るようになるために、武術を身につけてるんだから」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 16:44:45.14:HCRw9jiN
そんなことを言いながら、メイは本当はウズウズしていたのだった。
父親そっくりの変質者に簡単に組伏せられた、もうあの時の自分ではない。
たかがチンピラ3人にハイキックを簡単に避けられた、もうあんなことはありえない。それを実証してみせたかった。

二人が会話する間、小飛はずっと楽しそうに水餃子を食べていた。
最初の一個目をようやく食べ終わり、踊るような箸捌きで二個目に取りかかったところだ。
メイとヘイロンにとって、小飛はそんな存在でよかった。何も喋らなくても側にいてくれればいい、ペットみたいな存在だった。
「フェイの食事風景を見ていると癒されるな」ヘイロンが言った。「俺、ずっと犬が飼いたかったんだ」
「え〜、あたし犬じゃないよ〜? ロンロン」
メイがクスクス笑い、もうすぐ夏が来ようとしていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 17:22:14.32:qiPFyBRG
しかし小飛も明らかにヘイロンに恋しており、
メイは気が気ではなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 21:08:34.09:yRLt2bpf
アパートに帰ると、メイファンが全裸にエプロン姿で餃子を焼いていた。
「お帰り。今日はガオティエ(焼き餃子)・パーティーだ。色んなもん入れて焼いてっからびっくりすんなよ?」
「わぁ、面白そう!」メイはメイファンの背中に抱きつき、はしゃいだ。「変なモノも入ってるの?」
「それは食ってからのお楽しみだ。さ、お前も早く脱げ脱げ」
「うん!」
そう言うとメイはあっという間に着ているものを脱ぎ、全裸になった。そして言う。
「あ〜、この解放感、サイコー」
そこへチャイムが鳴った。
「宅急便でーす」
若い男の声だ。
「いやぁぁぁ! メイファン出て〜!」
「じゃあ、これ見てろ」
餃子をメイに任せると、メイファンはエプロンを脱いで玄関へ出た。
メイは餃子を見ながら耳を澄ませたが、メイファンの声しか聞こえなかった。やがてメイファンが大きな段ボール箱を頭の上に乗せて戻って来た。
「アメリカからだ。大根かな」
「夏服だよ。ところで宅急便のお兄さん、どうだった?」
「普通に目を丸くして黙ってたよ」
「メイファンの迫力に何も言えなかったって感じかな」
「どーでもいいな。今度誰か来たらお前出ろな」
「服着るのに時間かかっちゃうよ」
「着なきゃいいだろ。気にするほうがおかしい。人間、自然の中では全裸なんだから」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 21:13:38.35:yRLt2bpf
トウモロコシや茹で卵や歯みがき粉の入った面白餃子のパーティーが終了すると、メイファンは切り出した。
「なぁ、メイ」
「んー?」
「今日、ララから電話があってな」
「ママから? 何て?」
「実はな……」
「うん」
「今、ララのお腹にいるお前の弟のことなんだが……」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 21:27:56.88:yRLt2bpf
「ララ、もうみんな帰ったよ。打ち明けてくれるかい?」
ハオは道場を閉めると、事務仕事をしているララに言った。
「……さすがハオにはわかっちゃうね」ララは目を伏せて笑う。「稽古が終わったら打ち明けようと思ってたの」
「昼間、病院から帰って来てから変だった。無理に明るくしてたろ。何があった?」
ララはボールペンを置くと、ハオのほうへ向き直り、打ち明けた。
「お腹の子供のことなんだけどね」
「うん」
「……普通じゃないの」
「障害者なのか?」
「そうね」
「そうか」
「……どう思う? ショック?」
「可愛いじゃないか」
「え?」
「可愛いよ。どんな子でも。俺とララの子供なら、何があっても俺、可愛いと思う自信たっぷりだよ」
「ハオ……」
「で、どんな障害なの?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 21:37:42.64:yRLt2bpf
「あたし、可愛いがるよ」メイは言った。「待ち焦がれた自分の姉弟だもん」
「ほう?」メイファンは青島ビールを新しく開けた。
「パパとママがその子の面倒もし見れなくなったら、あたしが面倒見る。一生!」
「口では何とでも言えるさ」メイファンはニヤニヤと笑った。「果たして出来るかな?」
「不安になるようなこと言うなぁ……」
「だってお前、実際どんなもんか知らんだろ」
「んー……そんなに大変なの?」
「とんでもなく大変でもあるし」メイファンはビールを飲み干した。「とんでもなく楽しくもある」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/07(木) 22:26:05.45:fb5eINdJ
酔いつぶれたメイファンが目覚めると、どこか出し物小屋のようなところにいた。
そこでは蓮舫が性剣技巨大乳輪の舞を練習していた。
「素晴らしい!私もぜひ弟子入りさせてください!」
こうしてメイファンの血のにじむような特訓の日々が始まったのである。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/08(金) 00:18:09.01:dELFM/rX
ララはハオに聞いた。
「もしもさ、赤ちゃんが、産まれた瞬間、喋ったら、ハオどうする?」
ハオは真顔で答えた。
「可愛いじゃないか。産まれてすぐにお喋り出来るなんて嬉しいじゃないか」
「『パパー! ママー! ようやく会えたー!』とか、出て来た瞬間に喋り出すんだよ? キモくない?」
「えええ!? そんなの『俺も会いたかったぞー!』って言うに決まってるじゃないか」
ララは少し泣くと、涙を拭いて顔を上げて笑った。
「あたし、ハオの子に産まれてればよかったな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/08(金) 08:47:02.63:gt0xvUXY
真夜中、メイファンの寝言でメイは目を覚ました。
「うーん……私、猛特訓とか面倒臭いことはしねーから……」
なんか変な寝言で起こされちゃったなぁ、メイは少しイラッとした。
『でも、まぁ、これないと眠れないからね』
そう思いながら全裸で抱き合うような姿勢で安定すると、すぐに安らかな眠りへ戻って行った。
「メ……イ。お前だけは殺さないでおいてやる」
メイが眠った後、メイファンはまた寝言を言った。
「お前は……私だからな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/08(金) 12:51:12.94:gt0xvUXY
メイファンとリウ・パイロンの結婚式は一週間後に迫っていた。
リウは今日の昼にはアラスカから帰って来る。
ハオと妊娠4ヶ月目のララもアメリカから来ることになっていた。

「まぁ、ちゃっちゃと済ませちゃおうか」
ピチピチのTシャツにショートパンツ姿のメイが、へそを出しながら言った。
「もし危なくなったら助けに入る。救命啊!(助けて)と叫べ」
いつも白いTシャツにジーパン姿のヘイロンが言った。
「わかった。ま、呼ぶことないと思うけど」
「しかし今回は小型犬を守りながら闘わないと、だぞ。そこが不安だ」
「わたし、犬じゃないよ〜」
黄色いワンピース姿の小飛が唇を尖らせて言った。
「で、あたし達、いくらで売れたの?」
「メイが40万、小飛が60万だ」
「わ〜いメイちゃんに勝った〜」
小飛が無邪気に喜んだ。
「……どーでもいいはずなのに何か悔しいな」
「そろそろ時間だ。行こうか」
ヘイロンがそう言い、古ぼけた倉庫の裏に座り込んでいた3人は立ち上がった。水銀灯の明かりが3人を照らし出した。
「何も知らないフリをしろよ? フェイ」
ヘイロンがそう言うとメイが小飛を見ながら笑顔で言った。
「大丈夫だよ。なんかフェイ、余裕綽々だね。楽しそう」
「楽しんでるよ〜」小飛は平和な笑顔を見せた。「メイちゃんが一緒なら安心〜」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 00:10:30.62:iLwpOmsd
中へ入るといかにもインチキそうなイカツイ男が3人待っていた。
「わぁ、楽しそう〜!」
メイはぴょこんと跳ねながら倉庫の中を見渡した。
『わざとらしい。不自然だ、メイ』
ヘイロンが小声で言った。
奥から派手な格好をしたおばちゃんが出て来た。
「ご苦労様」と声を掛けると、ヘイロンと腕を組んで外へ出て行った。
3人の男達が笑顔でメイと小飛に話しかけて来る。
「お嬢ちゃん、ジュース飲むかい?」
「話は聞いてるかな? 俺の名は阿東。よろしくね」
「ま、こちらに座りなよ」
ゴリラみたいな男が椅子を勧め、ハンカチで座面を拭いてくれた。
『フ、フレンドリーだ!』
メイは困ってしまった。こんなにいい人達が相手では闘えない。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 09:44:43.07:iLwpOmsd
「話が違う!」
倉庫の外でヘイロンは派手なおばちゃんに詰め寄っていた。
「現金で今、払ってくれ! でなければこの話はなかったことにする!」
「わからない子だね」
派手なおばちゃんは苛々しながら言った。
「空中取引でペイしてやるからエアホ出せっつってんだよ」
「俺はスマホしか持ってないんだ」
ヘイロンは堂々と言った。
「ちなみにクレジットカードも持っていない!」
「2040年代にスマホ? マジか? 化石か?」
「何とかしてくれ」
「先に言っとけアホ。あんたが何とかしな! こっちは払いたいのに払えないんだ」
「……わかった。中の女の子にエアホを借りよう」
「ふ〜ん」派手なおばちゃんはニヤニヤと笑った。「それはおかしな話だねぇ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 09:59:08.45:iLwpOmsd
メイと小飛が3人のイカツイ男達とジュースを飲みながら談笑していると、扉が開き、ヘイロンが走り込んで来た。正確には突き飛ばされ、最後には床に倒れた。
「おかしいと思ったんだよ」
ヘイロンの後からゆっくりと入って来た派手なおばちゃんが言った。
「やたら素直なくせに、金の受け渡しだけは急かすのは、詐欺師の特徴だ」
「バ……バレた。失敗だ」ヘイロンが助け起こそうとするメイに言った。
イカツイ男達は立ち上がり、悲しそうに言った。
「お嬢ちゃん、おじさん達を騙そうとしたのかい?」
「せっかく友達になれたと思ったのに……」
「女は汚いよ! あぁ……女性不信になりそうだ」
「あんまり大人をナメるんじゃない」派手なおばちゃんが煙草をふかしながら言った。「イケメンのお兄さんも含めて3人とも売り物にしてやろうか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 10:41:35.79:iLwpOmsd
「くっ……!」
ヘイロンは立ち上がると、派手なおばちゃんに向かって左拳を前に突き出し、構えた。
相手は女性ながら迫力満点だ。ただ者でないことはわかっていた。
おばちゃんを描写しても誰も喜ばないので詳しくは描写しないが、一言で言えば色とりどりの化け物だった。どどめ色の『気』を発すると、おばちゃんは言った。
「やるんか! オォ!?」
典型的なおばちゃん体型で両腕を振り上げ、構えた。可愛いクマさんみたいなその姿に小飛がアハハッと小さく笑った。
「危ないよ、お嬢ちゃん達はこっちへ」
イカツイ男に優しく言われ、メイはつい従ってしまった。
ヘイロンが軽やかなステップを踏み、左のジャブを高速で繰り出す。
おばちゃんはそれをすべて掌で受け切った。防御に専念しているところへ死角からヘイロンの右ロングフックが飛んで来る。
『あ、決まった』
そう思ったメイの予想は外れ、おばちゃんはしなやかに屈んで避けると、伸び上がってフライング頭突きをかました。
左腕でガードするも、その重圧にヘイロンは吹っ飛ばされた。
そこへおばちゃんの猛追がかけられた。急いで立ち上がったヘイロンへ低い姿勢から両手で突っ張りを繰り出す。
「そっ、その突っ張りは……!」
そう叫びながらヘイロンはダンプカーにはね飛ばされるように二階の踊り場まで吹っ飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 11:00:18.11:iLwpOmsd
「あのコ、なかなか強いわ」
おばちゃんはそう言うと、阿東に命じた。
「骨抜きにして、マダム専用の男娼にしよう。連れて来て」
「その昔、モンゴルに天才力士が現れた……」
ヘイロンは誰に言うともなく解説した。
「そいつは日本へ行って横綱を目指そうとした。しかし日本の大相撲は、女性という理由だけで彼女を受け入れなかった。
その名は……確か……オドンチメグ」
「そう、オドンチメグ姐さんは歩くデコトラよ」阿東はヘイロンを抱き起こしながら言った。「姐さんに負けたからって落ち込む必要はねぇ」
メイと小飛はジュースを飲んでお菓子を食べながら、それをただ見ていた。
「ヘイロンが……負けた」
呟くメイにイカツイ男2人が優しく言う。
「怖かったね、もう大丈夫だよ」
「頑張ってお仕事しようね。君らならトップを目指せる」
小飛がメイのTシャツの背中をぎゅっと握りしめた。
「あ……」
メイはようやく気づいた。
「ここって、あたしが闘うシーン?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 16:54:22.21:bJwqPxjw
その頃、メイファンはメイの部屋で焼きそばの準備をしていた。
「よっしゃ。あとは焼くだけだ」
そう言うと缶ビールを開けかけて思いとどまった。
「おっと。後のお楽しみ、お楽しみ」
エプロンを脱ぐと全裸でベッドに座り、動画サイトで最新の音楽をチェックし始める。
習近平がヒップホップや低俗な音楽を禁止していた時代と違って、セックスのことを歌った黒人音楽モドキばかりだった。
「うん、乱れてるな。いい時代になったもんだ」
しばらく動画を見つめていると、ふと寂しくなった。
「ここでずっとメイと暮らしたいなぁ……」
そんな言葉が口をついて出、ゴロンと横になると股を開き、エアコンの風がハマグリに当たるのを楽しんだ。
「結婚なんかしたくねぇなぁ〜……」
黒い陰毛がそよそよと気持ちよさそうに微風に揺れた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 18:59:06.67:kaxZUYDb
その時、轟音と地響きがおき窓が揺れた。
またテロだ。この数ヶ月間で起きたテロの回数は二桁になろうとしていた。

ニュースではイスラム過激派によるものと報道されている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/09(土) 23:46:15.55:8chIWHt6
「リウ・パイロン大統領も大したことねぇな」
メイファンは寝転んだままニヤリと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 08:08:01.00:2KnHA9Ld
そしてテロの脅威は大学にも及び、自爆テロにより生徒や職員に多大な犠牲者も出てしまっていた。
そう、さきほどの轟音の正体である
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 09:36:07.36:BliYQRrd
「おいおい、お嬢ちゃん、何する気だい? 危ねぇよ」
イカツイおじさんはオドンチメグに向かって歩き出したメイの背中に声を掛けた。メイは振り返り、ウィンクする。
「ありがと、おじちゃん。でも、あたしも格闘家だからさ、自分の強さを試してみたいの」
「そうかい? 気をつけなよ」
おじさんは心から心配そうに見ている。
「ヘェ、お嬢ちゃん、彼氏がやられるのを見てたろ? それでもかかって来るのかい?」
オドンチメグはメイが黒い『気』をユラユラと揺らめかせて歩いて来るのをじっと見ている。
ヘイロンは阿東にロープで縛られているところだった。小飛はおじさん2人に見守られながらジュースをチビチビ飲んでいる。
「だって、あたしが頑張らないと、みんなの人生が変わっちゃうでしょ」
「悪いほうに変わるとは限らないよ」オドンチメグは言った。「少なくとも生活には困らなくなるさ。監禁生活で浪費癖も治る」
それを聞いたメイはヘイロンを振り返り、『いいじゃん?』みたいな顔をした。ヘイロンが吠える。
「俺は浪費癖などない!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 16:51:09.87:X87AJAvh
天安門広場では学生を中心とした群衆が「テロ反対」の集会を開いていたが、次第にそれは習近平政権批判に変化していった。
メイと小飛はさっそく天安門に行き性剣巨大乳輪の舞を群衆に披露した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 23:17:02.80:fQ5vXCNt
リウ・パイロン「すまない。今は2040年。習近平は21年前に死んだんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 23:21:42.51:fQ5vXCNt
メイファン「ちなみに私は糞漢族よりは人見知りな回族のほうが好きだな。ウイグルやら過激派やらは知らんけど」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/10(日) 23:34:19.46:fQ5vXCNt
「本気でお嬢ちゃん、あたしと闘るつもりかい?」
オドンチメグは闘気を立ち昇らせたまま言った。
「やめときな。可愛いお顔に傷をつけたくない」
メイは一礼すると、静かに舞うように構え、言った。
「大丈夫だよ。鎧を纏うから」
「鎧だって?」
目を丸くするオドンチメグの目の前で、メイは真っ黒な『気』の鎧に自分を包んだ。
「行くよ」
そう言ったのとオドンチメグの巨体が3m吹っ飛んだのは同時だった。メイの超高速の登脚が顎を捕らえ、真上に相手を吹っ飛ばした。
メイはすぐに『気』の鎧を柔らかいマット状に作り変えると、落ちて来たオドンチメグを受け止めた。
「格好いい……」ヘイロンが唸った。「格好いいよ、メイ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/11(月) 11:17:54.57:RZXhixDJ
メイとヘイロンは日本鬼子を退治するため海を渡った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/11(月) 22:12:01.62:4xZHAb6o
「いや待て! 母さんを放っておけない」
ヘイロンは自分のボロアパートへ帰った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/11(月) 22:44:00.88:4xZHAb6o
今日は母リーランが退院する日だ。ヘイロンは迎えに病院へ行った。
金が手に入らなかった。入院費をどうやって払おう。
そんなことを考えながらも、暗い顔にならないよう気をつけて病室に入ると、誰かが来ていた。
家から出ず、親戚も友達もいない母を見舞いに来てくれる者などいない筈だ。かろうじて滞っている借金もないので借金取りも来ない寂しさだ。
一体誰が? と思いながらカーテンを潜ると、立派な背広姿のリウ・パイロン大統領の巨体が振り向いた。
「やぁ、ヘイロン。この前はすまなかったね」
ヘイロンは暫く言葉を失った。言いたいことを察してリウ・パイロンは続けて言った。母リーランがそれを嬉しそうに見ていた。
「メイファンから聞いたんだ。まさかリーランに子供が出来ていたとは知らなかったんだ」
リウは立ち上がった。ヘイロンはそれを見上げた。優しい眼差しで見下ろしながら、リウが言った。
「君は私の息子だ。認知しよう」
「な、なんだって?」ヘイロンはようやく声を出した。
「これほど似ていて親子でないわけがなかったんだ。21年前ならば計算もちょうど合う」
「今さら……ふざけるな」ヘイロンは声を震わせた。「俺と母さんが……どれだけ苦労したと思ってるんだ!」
「すまなかった」リウは頭を下げた。「もっと早く知っていれば……」
「オデが知らせなかったからだよぅ」リーランがナナフシのように細長い腕を伸ばし、リウの背中をぽんぽんと叩く。「アンタは何も悪くねェだ」
「そんなことはない!」ヘイロンがリウを睨みつける。「そもそもアンタが母さんを自分勝手に捨てたりしなければ……!」
「せめて今からでも償わせてくれ」
「何だと!?」ヘイロンは低い声で凄んだ。
「君達に明るい未来を約束したい。生活を保障し、毎月送金もする」
「な……何だと!?」ヘイロンは甲高い声で叫んだ。
「ただし、君が私の子だということは表沙汰にしないでくれ」
リウに抱きつきかけていたヘイロンがピタリと止まった。高揚していた表情がどんどん暗くなる。
「いや……やっぱりアンタの世話にはならねぇ」
ヘイロンはそう言うと、リウを出口へ向かって突き飛ばした。
「出て行ってくれ! アンタに父親面されるのは御免だ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/11(月) 23:06:10.33:4xZHAb6o
メイが帰るとメイファンはエアコンをガンガンにかけたまま、布団に潜り込み、寒そうに丸くなって眠っていた。
「メイファン、帰ったよ〜?」
メイが声をかけても起きない。
「おばちゃん?」
禁句を言っても目を覚まさない。
いつもならメイが階段を上がる前の砂利の駐車場を踏んだ時点で目を覚ましている筈が、珍しいことである。
熱でもあるんじゃないかと額に手を当ててみると、逆に冷たかった。
「し……死んでる?」
「生きてんよボケ」メイファンは目を開いた。欠伸をしながら言う。「たまには野生の猛獣だって熟睡するだろ」
「でも……身体冷たいよ?」
「う〜ん。クーラーで冷えたかな」
「体温下がるもん?」
「ビールでも飲んで身体温めるか」
そう言うとメイファンは起き上がった。
「あれっ?」
メイは驚いてベッドの上を見た。メイファンが起き上がった後に、黒い『気』だけがメイファンの形をしてベッドにまだ寝ていた。
それは目を開け、メイと暫く見つめ合うと、面白くもなさそうにゆっくりと立ち上がり、一瞬にしてメイファンの背中を追い、中に入って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 08:26:50.16:NmlfRgaO
体育座りをするように身を縮こまらせたリーランの巨体を乗せた車椅子を押して、ヘイロンはアパートに向けて帰り道を歩いていた。
「悪いな、母さん。せっかく金持ちになれるチャンスだったのに」
「お金のことはいいだよ」リーランは振り向いた。「ただ、オデはお前と父さんに仲良くなってほしかったなァ……」
「無理だよ。母さんを捨てるような奴と……」
「それはオデがだらしなかったからだァ」
「だからって愛する人を捨ててしまうような奴を俺は父親と認めない」
「オデがだらしなすぎるからだよぅ」
「母さんのたらしなさはよく知ってるよ」ヘイロンは言った。「だからって俺が母さんを捨てると思うかい?」
リーランは苦しそうな顔をした。
「……オデも……もっと……頑張ろうとは……」
「いいんだ。母さんは病弱なんだから」
それきり二人は黙り込み、ただ歩いた。
ヘイロンはふつふつと煮えたぎっていた。
母をこんな目に遭わせた奴が、今度は敬愛するメイファン姉御を娶ろうとしている。
自分にはどうすることも出来ないのか。
いっそ結婚式場に乗り込んで滅茶苦茶にしてやろうか。姉御も喜んで一緒になって暴れてくれるような気がする。
「うん、それ、いいな」
「何がだァ?」
「いや、何でもないよ、母さん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 12:11:31.82:NmlfRgaO
講義のない空き時間、ヘイロンが大学構内の庭を散歩していると、ベンチに体育座りをして本を読んでいる小飛を偶然見つけた。
「フェイ、隣、いいか?」
「あっ。ロンロン。どぞどぞ」
そう言って小飛は空けるまでもなく空いているスペースをさらに空けた。
二人は並んで座ったが、会話はなく、しかし気まずいわけでもなく、小飛は医学の本を読んでクスクス笑い、ヘイロンはそれを楽しそうに見ていた。
ヘイロンは小飛を見ているとどうしても長毛のシーズーを見ている気分になる。
長い黒髪、すべてのパーツが丸で出来ているような顔、何より全身からぽよぽよと湧き出している純白の『気』がそう思わせる。
猫の飼い主が帰宅してその日あった出来事を猫に語って聞かせるように、ヘイロンは小飛に語り始めた。
「なぁ、フェイ。昨日、俺達親子を捨てた父親に会ったんだ。今さら俺達の面倒を見るとか言い出しやがった。
もちろん俺は金は欲しい。でもな、あんな奴を親父だとは認めたくない。バシッと断ってやったよ」
いつの間にかヘイロンは小飛を自分の膝に乗せ、向き合ってその頭を撫でていた。
小飛は無垢な瞳を向けてたまに頷きながらヘイロンの言葉をただ聞いていた。
「前にも言ったと思うけど、そいつ、近々メイの叔母さんと結婚するんだ。その叔母さんがイカれ……
じゃない、イカした人でな、その人、糞親父に騙されようとしてるんだよ。アイツ、メイファンさんのことも
どうせ捨てるに決まってる。だから俺、結婚式場に乗り込んで滅茶苦茶にしてやろうと思ってるんだ」
「ロンロンはメイファンさんのことが好きなんだね?」
無垢な目を向けて小飛は言った。
「好き……っていうか」ヘイロンは目を逸らした。「憧れの人だ。格好よくて、大人で……それでいて自由で」
「でもロンロンのこと大好きなのは、その人じゃなくて……」
「あぁ、メイか? アイツのことは……」
「フェイだよ」
「えっ?」
「フェイはロンロンのことが大好き。だからそんなことしないで」
「フェ、フェイ?」
「好きなの。フェイは犬じゃないの」
ヘイロンの髪を撫でる手が止まる。
「女の子なの」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 12:50:01.13:NmlfRgaO
「フェイがいないとやっぱちょっと寂しーね」
そう言いながらメイは特盛オムライスを口に運んだ。
「あぁ」
心ここにあらずといった顔でヘイロンは小さなルーロー飯を持て余している。
「突然帰っちゃうなんて何事? 気分悪そうだった?」
「……わからん」
小飛はヘイロンに告白をした直後、突然走って寮に帰ってしまったのだった。
「後で寮に様子見に行ってみようよ」
「いや、俺はいい」ヘイロンは少し顔を赤らめ、話題を変えた。「それよりちょっと……聞いてくれるか」
向かい合って食事をしながら、ヘイロンは小飛に言ったのと同じ話をした。ただしメイファンの姪っ子であるメイに後半の計画は伏せた。
「ふーん。別にお金を貰うのはいいんじゃないの?」
「なんか……アイツに面倒見て貰うのが嫌なんだ」
「面倒見て貰うって考えるからじゃない? 金を出させるって考えれば?」
「なるほど……。こっちに主導権があるって考え方か?」
「そーだよ。言わば復讐みたいな感じで。金出せコラァ!みたいな勢いで」
「うーん。さすがお前、姐さんの姪だ。言うことがセコいな」
「褒めてんのか、それ?」
「なるほど、参考になった。サンキューな、メイ」
「任せろ」メイは明るく笑った。
「ところでお前、友達出来たか?」
「出来ないよ。変な噂流されちゃったし……ロンとフェイがいればいーよ」
「俺はヤクザ者だし、フェイは気が小さい。しかしお前は本来人気者になるタイプだと思うんだがな」
「いいって、いいって。友達なんて作ろうとするもんじゃなく、自然に出来る時は出来るもんだよ」
「まぁ、お前はそういうタイプだよな」
「ねぇ、ロン」メイはスプーンを置いた。「ロンにとって、あたしって、どう?」
「何だよ急に」
「どう見える? 嫌なヤツ?」
「そんなの思ってたら友達でいねぇよ」
「友達以上にはなれないタイプ? 女の子としてどう? ヘイロンにとってあたしって……魅力的なコ?」
「おいおい……?」
ヘイロンは何か他の話題に切り替えて誤魔化そうとしたが、メイが切実な目で答えを求めて来るのを見て、自分でも正直かどうかわからない答え方をした。
「メイは俺にとって……」少し考えてから、言った。「妹だな」
「そっか」メイは再び明るく笑った。「変なこと聞いちゃってゴメンね!」
そう言うと残り半分の特盛オムライスを一気食いし、立ち上がった。
「午後の講義、行かなきゃだ。じゃあねっ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 13:26:05.05:NmlfRgaO
メイの気持ちは知っていた。自分も彼女のことが好きかもしれないと思っていた頃もあった。しかしいざ気持ちを聞かれると、思い知るしかなかった。
自分はメイファン姉御のことが好きだ。初めての相手は姉御でなければ嫌だ。
「モ……モテ期……来たのか?」
ヘイロンは小さなルーロー飯を持て余しながら呟いた。
自分がイケメンだという自覚はあった。しかしそれ以上に貧乏だという意識が、彼を恋愛から自ら遠ざけていた。
また、いつも一人でいて怖そうなヘイロンに言い寄って来る女の子もいなかった。
それでいて意外にロマンチストのヘイロンは、童貞卒業の相手は好きな女性でなければあり得なかった。
その好きな女性がいて、今、自分の父親のものになろうとしている。
しかしメイの言うようにリウ・パイロンに金を出させるには結婚式を滅茶苦茶にしてやるわけには行かない。
しかし金よりもメイファンに対する気持ちのほうが……。
いや変なことをするのはやめ、諦めて、自分を好いてくれる二人のどちらかと……
小飛は可愛い。自分の飼い犬のように可愛い。いつも側にいてもちっとも邪魔じゃない……。
メイは気が合う。ルックスも抜群だ。最高の友達であり、可愛い妹だ……。
「あぁっ! 俺はどうすればいいんだー!」
ヘイロンはそう心の中で叫ぶとご飯茶碗に食べかけのルーロー飯を残し、食堂を出て行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 16:32:13.71:NmlfRgaO
メイファンはリウ・パイロンの官邸内を全裸でフラフラと散策している。
自分の育った習近平別邸と少しだけ似ている。2040年の新しさは勿論あるものの、何か似たような匂いがする。
「う〜ん。何だろう。加齢臭かな」
そう思いながら歩いていると、色々懐かしい顔に会った。
右手の部屋からジャン・ウーが出て来るなり「よぅ、メイファン。酒飲まんか」と声を掛けて来た。
「飲む」
そう言って部屋に入ると、中には真っ白な衣裳を着けたシューフェンがいて、何も言わずににっこりと笑いかけて来た。
「習近平は?」
メイファンが聞くと、ジャン・ウーが答えた。
「梵天界におる」
「へぇ」メイファンは嬉しそうに言った。「じゃあ私も天国、行けるな」
「どうにゃかにゃ。お前さんは人を殺し過ぎた」
「それを命じた習近平が梵天界だろ?」
シューフェンが可笑しそうにクスクスと笑った。白い衣裳の胸のあたりが少し血で汚れた。
「地下にはさらに地下があるよ」とジャン・ウーは老酒を注ぎながら言った。「皆、お前さんに感謝しとるけどな」
すると床に大きな穴が開き、下から眩い光の国が出現した。
顔も覚えていないが、恐らくは自分が過去に殺して来た人達が、口々に自分への感謝の言葉を述べていた。
「ありがとうメイファン、殺してくれて」
「黒色悪夢、あんたに殺されて俺は幸せだ」
メイファンは興味もなさそうに酒を飲みながらそれを眺めた。
「ふぅん。みんな幸せそうだな」
「1000人ぐらいおるな」ジャン・ウーがざっと数えて言った。
シューフェンが称賛するようにメイファンを見て、微笑んだ。
「さて」メイファンは立ち上がった。
「行くのか」ジャン・ウーが見上げる。
「私は結婚するんだとさ。その準備があるんだ」
「紅い部屋に寄って行け」
「何だって?」
「紅い部屋だ。懐かしい扉の奥にある。寄って行け」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 16:51:40.32:X9FJBw5a
ジャン・ウーの部屋を出、フラフラと廊下の続けを歩いていると、確かに懐かしい扉があった。
「あー。これかぁ」
17歳まで暮らした自分の部屋の扉だった。外に吊るした「Mei fang」のプレートまでそのままだ。
「入ったら芸能人のポスターだらけなんだよなw」
独り言を言いながらドアノブを掴み、開けると中は血で真っ赤だった。壁も床も血に塗れ、天井からは鮮血が滴っている。
「うーん。面白いけど……落ち着かないな」
メイファンが素足で血の海を踏み、中へ入ると奥にうっすらと別の扉が見えた。
「フン」物怖じもせずに真っ直ぐ扉へ向かって歩く。「過去の亡霊達よ、一体私に何を見せたいんだ?」
ノブもないその扉を手で押すと、回転扉になっていた。壁が回り、向こう側に光が見えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/12(火) 21:17:00.15:eapEynnD
光の先は1989年6月4日の天安門広場につながっていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 07:42:41.73:3L/anvs0
「これ、私、制圧する側だから」
そう呟きながら血みどろの学生等を掻き分けてさらに奥に進んでいると、肩を叩く者があった。
反射的に手刀で首を斬ろうとすると、その男は顔を引き、華麗に攻撃を避けた。
何だか知っている男だ。何も言わずに微笑んでメイファンを見つめている。
「あっ。日本人の……」メイファンは思い出した。「タケルお兄ちゃん!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 07:58:16.21:3L/anvs0
時代設定=2040年、舞台は民主化を遂げて21年経つ中国、北京。

【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
黒い『気』を使う。生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物?

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。マーシャルアーツの使い手。
赤い『気』を使う。リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいる。超がつくほどの貧乏。
メイに想いを寄せられているが、ヘイロンの気持ちは不明。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。メイファンと婚約中。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
習近平元国家主席のボディーガード兼『黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)』と呼ばれる最強の殺し屋だった。
元々姉のララを除く全人類は殺しの対象だったが、全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になる……のか?
異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物?

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
身体を持たない『気』だけの存在であり、元々は妹メイファンの身体の中に住んでいた。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。現在妊娠4ヶ月。

・フェイ(小飛)……メイとヘイロンを合わせて仲良し3人組。口数の少ないマスコット的存在。
長い黒髪、丸い顔、小さな身体が小型犬を思わせる。ヘイロンのことが好き。

・ムームー先輩(蔡 明沐)……メイの大学の一つ上の先輩。昨年のミスコンの優勝者。美人かつセレブ。
アメリカからやって来た新入生(メイ)の人気に嫉妬し、危機感を抱いている。

・アラン(阿藍)……ヘイロンの友達? チビでガリで存在感のなさを売り物にする尾行のプロ。
自分の快楽を満たすためなら何でもするゲス野郎。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。
透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。

・タケル……謎の日本人。22年前、メイファンをそそのかし、消されるきっかけを作った張本人。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 08:07:35.39:3L/anvs0
タケルは優しく微笑んだ。
「メイファンちゃん、久しぶりだね」
そして黙ると、聞き上手の姿勢に入った。
「どうしたんだい? 僕に話したいことがあるだろう?」
メイファンは何から話そうかと考えながら、黙り込んでいるうちに、どんどん17歳の少女に退行して行く。
「また、みんなから一人ぼっちにされているのかい?」
「ううん」少女は首を横に振った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 08:10:08.63:3L/anvs0
「あのね、けっこんするんだよ。私、リウ・パイロンと」
「それは凄いね」タケルは優しく笑った。「でも、望んでするのかい?」
「わからない。私、リウのことは大好き。だけど同じぐらい憎んでる」
タケルはただ相槌を打った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 08:29:14.53:3L/anvs0
それからメイファンはタケルに色んなことを話して聞かせた。メイのこと、ララのこと、昔のこと。
しかし突然タケルが身構え、逃げ出すような格好をする。
「どうしたの?」
メイファンが不思議に思って聞くと、タケルは怯えたように言った。
「敵が来た」
すると天安門広場に広がる群衆も軍隊も、悲鳴も爆音も遠くのほうから光に侵されるように消えはじめ、タケルの姿も消えてしまった。
気がつくとメイファンは狭い部屋の中に茫然として突っ立っており、入口には逆光を背に立つ美鈴がそれを見ていた。
「どうしたのかしら、メイファンさん。こんなにあなたの黒い『気』を広げて?」
「『気』? 私の……?」
「まぁ、私が既に全部吸っちゃいましたけどね」
「私自身が私に全て見せていたのか……」
「最近あなた、おかしいわよ。マリッジ・ブルー?」
「すまん。何でもないんだ」
「花嫁衣裳が届いてますわよ。こちらへ来て試着なさって下さい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 14:16:41.35:5y2fF15H
メイはアパートに帰るとベッドにダイブした。
ヘイロンの「妹」という言葉が頭から離れなかった。
「あたし……フラれちゃったのかな……」
暫くベッドに身体を預けて放心する。
「それとも……まだ、望みはあるの?」
てっきり既にそういう関係の入口に立っているような気になっていた。しかしそうではなかったと思い知ると、途端にヘイロンのことが恋しく思えて来る。
メイはもぞもぞと着ているものを脱ぎ、最近いつも部屋の中ではそうしているようにパンティー1枚残して全裸になると、指を動かし始めた。
5本の指すべてに集中し、バラバラに動かす。メイファンから教わった『気』のトレーニングである。
「『気』の力のぶん、あたしヘイロンより強くなっちゃった……」
横になりながら自分の指を見つめる。
「でも、まだ、純粋に肉体同士の闘いじゃ、ヘイロンには敵わない」
右目の涙が左目に入り込み、目を閉じた。
「もっと教えてよ……。教えてよ……ヘイロン」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 15:52:26.89:5y2fF15H
「教えてくれ、姐さん」
ヘイロンは思い切って口に出した。
「俺に……女性の身体を!」

しかしメイファンはバイトに出て来ていなかった。ヘイロンの言葉はトイレで自分の排泄物に向かっての予行練習だった。
そんなお願いをして、もし断られたり、子供のようにあしらわれたなら男らしく諦めようと考えていた。
遅れて来るかもしれないと思い、現場の入口をチラチラと見ながら仕事をした。
仕事をしながら頭には色っぽい妄想はかりが浮かんで仕方がなかった。
おかげで仕事に身が入らず、前屈みになってばかりいた。
「こんな俺、メイやフェイには見せられないな」
そう考えた瞬間、今度はメイの太ももや小飛を膝に乗せた時の尻の感触が浮かんで来て、さらに大変なことになった。
「おっ、俺は単に思春期なのか……」
二十歳の夏、遅い思春期であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/13(水) 16:52:58.52:5y2fF15H
「あ……。フェイの様子見に行こうとか言っといて、忘れてたな」
メイはそう呟くとベッドから起き上がり、なるべく可愛い服を着た。
玄関を出ると、しかし大学寮のほうへは向かわずに、池のある公園へ向かって歩き出す。ヘイロンにいつも稽古をつけて貰っている、あの公園である。
ヘイロンは現場仕事のバイトの後、最近は夜のバイトも入れていて、久しくこの公園での稽古はお休みになってしまっていた。
池のほとりへ着くと、やはり誰もいない。
「そうだよね……」
メイは池の柵の上に座り込んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/14(木) 05:49:00.02:o1dUoRaP
ドボォーン!
柵の寄りかかっていた部分が外れメイは池の中に落ちた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/14(木) 06:47:40.95:04pf0RXF
しかし誰も助けには来ない。
「夏でよかったぁ」
そう言いながら池から上がるメイ。しかし乳首が透けていた。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/14(木) 12:53:02.65:eYR3HlfQ
角質を食べる魚がそこに吸い付いた
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/14(木) 19:58:00.42:htIH5VTM
猿と豚と河童も寄ってきた
「さあお前ら、日本鬼子を退治する旅に出るぞ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 09:27:52.11:X64uPROj
「やっ、柔らかい……!」
「もっと……触ってい〜よ」
「フェイのここ、すごく柔らかい……」
「ヘイロンの指、気持ちいい……」
ヘイロンは小飛の部屋で、彼女の耳たぶを触っていた。
「なんて柔らかいんだ……」
「んん……っ!」
メイファンのことをきっぱりと諦めようと思った。その代わりに選んだのは小飛だった。
スキンシップをお願いしたいのは、メイよりもどちらかと言えば小飛だった。
小飛には常日頃から触りたくて仕方がなかった。頭を撫でたり、喉をくすぐったり、耳たぶをつまんでみたりしたかった。
対してメイは触れ難かった。何か神々しく、エロい気持ちで触れたら壊れてしまいそうなものがあった。
しかしメイファンを忘れるために小飛を利用しようとしている自分はサイテー男というやつなのだろうか?
ヘイロンはそんなことを考えながらも、しかしどうしても小飛でエロい気持ちになれずに苦しんでいた。
『だっ……ダメだ。こいつのこと……とても可愛いシーズー犬にしか思えない!』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 09:31:32.78:X64uPROj
ヘイロンは小飛の耳に指を突っ込んだ。
「くっ……くふぅっ!」小飛がたまらず声を上げる。
ヘイロンは思った。『そうそう。ワンコって耳に指突っ込んでやると、こういう反応するんだよな』
面白くなり、さらに指をぐりぐり動かすと、小飛はたまらなそうに頭を傾け、耳を押しつけてきた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 10:19:19.58:X64uPROj
「私……犬じゃないの」
そう言うと小飛はヘイロンに抱きつき、胸を押しつけてきた。
小ぶりな胸の大きな弾力がヘイロンの顎を包む。
「ロンロン……好き!」
小飛は思いっきりその頭を抱き締めると、頬擦りをした。
顔を離すと、涙に濡れた目でひとしきり見つめ、その目を閉じた。
小さいが肉厚な唇を突き出し、キスを待つ態勢に入る。

『うあぁぁぁ! こういう時どうしたらいいんだ? 先輩! 教えてくれぇぇぇ!!』
ヘイロンは妄想上の先輩に助けを求めた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 12:29:00.21:X64uPROj
「ごめん、フェイ……」
ヘイロンは小飛の両肩を掴むと、ゆっくりと引き離した。
「俺、やっぱり……お前のこと、友達としてしか見れない」

小飛が髪で顔を隠して踞るのを背に、ヘイロンは部屋を出た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 12:41:20.90:X64uPROj
ヘイロンは帰り道を歩きながら、思った。
どんなに可愛くても、ペットで童貞卒業することは出来ない。ならば、メイと……
妄想の中でメイのショートパンツを脱がせた。長く美しい脚が根本まで露になる。
Tシャツを脱がせ、プリンのような乳房を……
『ダメだダメだダメだダメだ!!』ヘイロンは激しく首を振った。『アイツに失礼だ! アイツを汚してはいかん!』

ヘイロンは二十歳ながら自慰行為というものをしたことがなかった。
アルバイトと自己流マーシャルアーツの鍛練で毎日忙しかった上、壁の薄いボロアパートで母と暮らしていたので、覚える暇がなかったのだ。

公園に差し掛かった時、ゴミ箱の中にエロ本が捨ててあるのを見つけ、拾ってみた。
『オ○ニーでもしてみるか』ヘイロンはパラパラとページをめくっているうちに興奮してきた。『しかし……どこで?』
暫くエロ本を手に突っ立ったまま考えを巡らしていたが、我に返るとゴミ箱にそれを投げ捨て、アパートへ向かって歩きはじめた。
『くそっ! 俺はどうしたって言うんだ?』
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/15(金) 14:32:12.64:eI4YG2rP
するとどこからか声が聞こえてきた。

「助けて〜!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/15(金) 16:51:38.64:OocMpR7l
見ると故 市原悦子似のおばちゃんが池で溺れているではないか!
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/15(金) 21:53:35.08:8+nKBePH
ヘイロンが池に飛び込み助けると、おばちゃんは微笑んで立ち、言った。
「あなたが落としたのはこの金の斧? それともこちらの銀の斧?」
「金」
ヘイロンは迷わず言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/16(土) 11:11:05.62:kd4Iku5Z
「大ウソつきのお前は日本鬼子の島で苦しんで死ぬがいい!」
気が付くとヘイロンの周りの風景が変わっていた。
ヘイロンの前にはオザワ先生と蓮舫がいた。
「ようこそ日本へ。記念にhuaweiのスマートウォッチを進呈しよう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 08:35:19.81:YfI7lIK+
20年間オナニーをしたことがないヘイロンの夢精の量と回数は凄まじいものだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 20:14:36.69:esbyigQA
ふと気がつくとメイが屈み込んで見ていた。
「何してんの? ヘイロン」
自分を見ればびしょ濡れだ。公園の池の中に倒れ込んで、何してたんだっけ? 思い出せない。
「お酒飲んでるの?」
珍しいものでも見るようにメイが見下ろしてくる。ヘイロンは恥ずかしさを隠すように仏頂面をして言った。
「そんな金あるわけないだろ」
「いや……でも、お酒臭いよ?」
「バカな?」
酒など飲んだわけがない。しかし記憶がないので何とも言えない。口の中には確かに酒の味が残っている。
「記憶がない……」
ヘイロンは頭を抱え込んだ。
メイは暫く黙っていたが、やがて優しく笑顔を浮かべると、言った。
「とりあえずお風呂入りなよ。あたしのアパートすぐそこだから」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 20:38:44.98:esbyigQA
「いいのか? 俺、びしょびしょだぞ?」
メイの部屋の玄関口に立ってヘイロンは言った。
「いーよ。拭けばいいから。そのまま入って」
靴下だけ脱ぎ、ジーパンの裾をまくり、ヘイロンはメイの部屋に入った。
吊るしてあるカーテンを潜るとすぐにワンルームの部屋があり、ベッドが置いてあった。
白い壁に天井、オレンジのカーペットに青い布団。女の子らしいものといえば何体かのヌイグルミぐらいなのだが、不思議なことにどう見ても女の子の部屋だ。
キッチンはよく使っているようで、食器や調理器具やタッパーが取りやすい場所に機能的に並べられていた。
ヘイロンが何と言おうか迷っていると、メイがバスタオルと着替えを手渡してきた。
「な、なぜ男物のパンツが?」
「夏はあたし部屋着これだから。でっかいトランクスが穿きやすくて楽でいいんだ」
「お前の服……俺が着てもいいのか?」
「なんで?」
「なんで……って」
「?」
「その……」
不思議そうに見つめながら、メイの顔にはなぜか勝ち誇ったような笑いが浮かんでいた。
「その……臭いぞ?」
「フフフ」メイはタオルと着替えをヘイロンの手に押しつけた。「全然いーよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 20:42:07.55:esbyigQA
浴室で身体を洗いながら、ヘイロンはドキドキしていた。
『まさか、背中を流しに入って来たりしないよな……』
いろいろ妄想してしまった。
『全裸で一緒に入るとか言って来たりしないよな……』
妄想が止まらなくなった。
『入って来ないかな……入って来ないかな……。畜生、なんで入って来ないんだ』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 20:53:13.72:esbyigQA
バスタオルで身体を拭き、メイのトランクスを穿き、メイのTシャツとジャージ下を着け、浴室を出るとメイは料理を始めていた。
「あたしもまだだからさ、食べて行きなよ」

食卓に特盛の炒飯が2つ並べられた。
「ありあわせで作ったからこんなもんしか出来なくてゴメンね」
「いや、めちゃめちゃうまそうだ」
二人はせーので競うように食べはじめた。
静かな部屋に二人の飯を食う音が生々しく響き、少し恥ずかしくなったメイがTVをつけた。バラエティー番組の芸人が騒がしい声で音を隠してくれた。
「感想ぐらい言えよ」
「こんなうまい炒飯は初めて食った」
「ならすぐそう言えよ」
「言葉を忘れていた」
メイはにっかりと笑うと立ち上がり、冷蔵庫からサッポロ黒ラベルビールを2本出して来て、食卓に置いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 21:17:57.80:esbyigQA
「フェイの所へ行ったか?」
食後、二人はベッドに少し離れて座り、会話をした。
「あー……のね。ちょっと用事が出来ちゃって。行ってない」
「普通に元気そうだったぞ」
「え。行ったの?」
「あぁ、様子を見に」
「1人で?」
「あぁ」
「女の子の部屋だよ?」
「あぁ」
「……フェイ、普通に上がらせてくれたの?」
「あぁ。だって友達だろ」
「そっか……。で、何かした?」
「何か……とは」
「その……ゲームとか」
「いや。耳たぶだけ触って帰った」
「耳たぶ?」
「あぁ。触ってみてもいいと言うから……」
「なんだそれ! 変態!?」
「あぁ、あと耳の穴に指も突っ込んだ」
「立派な変態行為だそれ!」
「やはり変か……。変だよな」
「っていうか、それだけして帰ったの?」
「あぁ」
「前から思ってたけど」メイはぶっちゃけた。「ロンって、ホモなの?」
「違う」
「あんな可愛い女の子の部屋で2人きりになってムラムラとかしないの?」
「しない」
「やっぱおかしいじゃん! 男として普通じゃないよ、それ」
「ムラムラしなきゃいかんのか」
「うん。男の義務として」
「義務なんて言うな」
「だって男ってそういう生き物でしょ。据え膳食わぬは何とかって言うし」
「他の男は知らん」ヘイロンは大真面目に言った。「俺は愛する女しか抱かないんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 21:29:57.85:esbyigQA
「ど……」メイは言葉に詰まった。
『童貞の台詞だコレ!』
しかし何も言えず、ヘイロンの顔をただまじまじと見た。
この、端正な顔立ちをした、格闘技に長け自信に満ち溢れた、いかにも何人もの女の子を泣かせて来てそうな青年が童貞だとは俄には信じ難かった。
しかしそのことに感づくと、急にこの逞しい身体つきをした男が可愛く見えて来て、悪戯をしてやりたくなった。
「ふーん。そうなんだ」
メイはそう言うと、ヘイロンのほうへ擦り寄り、横顔を突きつけた。
「あたしの耳たぶも触ってみる?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 21:51:09.46:esbyigQA
ヘイロンは壮大な発言をしながら、ついさっき浴室で抱いた自分の願望にうちひしがれていた。
自分が愛するのはメイファンであり、それならばメイに一緒に風呂に入って欲しいなどとは思わないはずであった。
『いや、違う。さっきのは、そう。単に友達と裸の付き合いをしたかっただけなんだ。そうだ』
必死に自分に対して下手な言い訳を心の中で呟いているところにメイが迫って来た。
「あたしの耳たぶも触ってみる?」
薫り立つような褐色の耳と同時にうなじかすぐ目の前に近づいた。
メイの耳たぶは前にピアス穴を開ける提案をした時に触ったことがあった。あの時は何とも思わなかった。しかし今、それはヘイロンに思わぬ動揺を与えた。
「や、やめろ」
「何で? いーじゃん。フェイの耳たぶ触ったんでしょ? あたしのも触ってよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/17(日) 23:57:45.72:IdriYe99
ヘイロンは蓮舫の巨大乳輪にむしゃぶりついた!
「俺の愛しているものはこれだけなんだ・・」
メイの耳たぶを触りながらオザワ先生が囁いた。
「ヘイロンは既に我々の支配下にある。君もやがてそうなるだろう・・」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 08:38:52.81:ajOyzx/u
「ダメだ。やめてくれ」
ヘイロンはメイの肩を押し返した。
「たぶん俺、止まらなくなる」
その言葉を聞いて、メイのほうが止まらなくなった。ヘイロンの腕を捌くと、息を荒くして逞しい胸を両手で撫で回しはじめた。
ポニーテールを解いた長い髪がヘイロンの腕をくすぐる。
「ダメだ、メイ。俺、そういうのを知ってしまったら戻れなくなる気がするんだ」
「知らないの? なら教えてあげる」
「一生知らないほうがいいこともあると思うんだ」
「一生童貞でいるつもりなの? 冗談でしょ」
「帰らなければ! 母さんがうまい棒を食い散らかしているはずだ。袋を拾って、カスを掃除しなければ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 09:50:53.61:ajOyzx/u
その一言でメイはどっと疲れてしまった。
今までアメリカで付き合って来た男の子とは違う。しかし違いすぎた。新鮮というよりも珍種だった。
「帰れ」
メイは抱いた膝に顔を埋めると、それだけ言った。
そう言われるとヘイロンは素直に帰れなくなった。
「メイ……」
「……」
「そうだ。もうすぐお前、誕生日だよな?」
「……」
ヘイロンは首にかけたネックレスを手に取ると、言った。
「プレゼント用意してあるんだ。大したものじゃないけど……楽しみにしててくれ」
「無理しなくていーよ」メイは顔を隠したまま言った。「お金ないのに」
「金か……」ヘイロンは独り言のように言った。「そうだ。金が一番大事なんだ」
「何の話?」
「メイファンさんの結婚式、明後日だよな?」
メイは膝ごと頷いた。
「決心がついたよ、俺」ヘイロンはそう言うと立ち上がった。「俺は愛よりも金を取る!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 10:30:11.16:ajOyzx/u
メイファンは結婚式が近づくにつれ、どんどん大人しくなっていた。
「ニッポンの華道を覚えました」
花火のように豪華絢爛に開いた菊を前に、おしとやかに言った。
「ファースト・レディーとなる身、このぐらいは出来ないとですわ」
「らしくないわね」美鈴が不愉快そうに突っ込む。「あなた、何か企んでいるのではなくて?」
和風の着物に身を包み、髪を綺麗に結い、正座したままメイファンはにっこりと柔和な笑顔を浮かべる。
そこへリウ・パイロンが入って来るなり言った。
「メイファン、ヘイロンに金を出す。構わないか?」
メイファンは何事にも動じない表情でリウを優雅に見上げた。
「金だけ出せば世間に親子だということは黙っていてくれると了承してくれたんだ」
「過去の過ち、お金で解決、合理的」
メイファンは詩を詠むようにそう答えると、再びにっこりと笑った。
「まぁ、当然の償いですわよね」美鈴が不機嫌そうに言う。
「俺の妻となるのはお前だけ。俺の子となるのもお前の産む子だけだ、メイファン」
「お口だけなら、何とでも、言えるよな」
メイファンは詩に転調を加えると、目の前の菊の花びらを一本千切って食べた。
「今後、浮気は一切しない。生涯愛するのもお前だけだ。誓うよ」
「麗しいですわね」
そう言うとメイファンは鋏で菊の首を一本切り落とした。
「和服もいいな。今、ここでやらないか」
そう言って胸に手を突っ込んだリウの頭を美鈴が掴み、やる気を吸ってしまった。
「おい、エロ大統領。私の前で性描写は許さん」
「おぉ、怖い」メイファンが芝居の台詞のように言った。「美鈴さんは私達の天敵ですわね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 12:28:43.37:ajOyzx/u
街角の喫茶店でヘイロンと美鈴は待ち合わせた。
美鈴がブラックコーヒーを脇に退け、書類をテーブルに広げると言った。
「では、リウ・パイロンはこれより、あなたのお母様がご存命である限り、毎月50万円を仕送り致します」
ヘイロンは生唾を飲み込んだ。
「また、お母様が大病を患い入院等された場合は、全額をリウ・パイロンが支払います」
「お、おぉ……」
「その代わりあなた方は生活保護の対象からは外れます。よろしいですね?」
「美鈴さん」ヘイロンは涙を流して頭を下げた。「感謝します」
「感謝は大統領になさって下さい」
「いや、俺、アイツのことは、ゆすってるつもりなんで」
「正当な請求ですよ、これは。ゆすりなどではありません」
「えぇ、はい。ただ、自分の気持ち的に」
「そうですわね」美鈴はにっこりと微笑んだ。「大統領が施しているのではなく、あなたが大統領から出させている。そういう形にしましょう」
ヘイロンは美鈴に見とれた。綺麗に纏め上げられた黒髪、石膏のように白い肌、赤い唇、眼鏡の奥の凛々しい目。
「あの……美鈴さんて、おいくつなんですか?」つい聞いてしまった。
「あら。勇敢なことを聞くのね」美鈴は表情を変えずにコーヒーを飲んだ。「いくつに見えるかしら?」
難問ではなかった。彼女が大統領秘書を20年務めていることは知っている。どれだけ若くとも40歳は下らないはずだ。
しかしヘイロンは素直に思ったままを答えた。
「27?」
美鈴はコーヒーを噴き、ホホホホと大笑いした。
「45よ。口が上手すぎるのはかえって嫌味よ、坊や」
「いや、俺は思ったままを……」
「45歳独身よ。このまま一生仕事のためだけに生きるオバサンよ」
「もしかして……」ヘイロンは正直が止まらなくなった。「処女?」
「ふふん」美鈴は顎を上げ、見下しながら言った。「そう見える?」
「見えない」
こんなクールで美しい女性が処女だったら大問題だ、そう思った。しかしもしかしたら、とも思えた。
「恋愛に対する理想が高すぎるとね」美鈴ははっきりとは答えないまま、言った。「私みたいになるの」
「じゃあ……!」
「ヘイロン君」美鈴は話題を変えた。「メイちゃんとはうまくやってるの?」
「アイツとは友達だから。……友達として、うまくやってます」
「メイちゃんの気持ちも考えてあげてね」そう言うと美鈴は立ち上がった。「では、よろしいですわね? 初回の50万はすぐに振り込み致します」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 12:37:23.72:ajOyzx/u
喫茶店を出るとヘイロンは思わず万歳をした。
これでよかったんだ、俺は最良の選択をした。
「ヘイロン君」
振り返ると美鈴がハンドバッグから何かを取り出しながら近づいて来た。
「忘れるところだったわ、これ」
手渡されたものを見ると、結婚式の招待状だった。
「よかったら、お母様と二人でいらしてね。服はこちらで用意するわ」
行くつもりはなかった。メイファンの花嫁姿を見たら、きっと式をぶち壊したくなる。そうなれば仕送りの話も壊れるだろう。
しかし、さすがにアルバイトに出ては来なくなったメイファンに会いたいという気持ちもあった。
結局破り捨てることも出来ず、ズボンの後ろポケットにそれを仕舞った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 14:43:21.21:ajOyzx/u
日本の成田空港で、ハオはうどん屋のショーケースを眺めていた。
ワシントン空港から北京までの乗り換えで、間が一時間空いていた。
通路のほうを見ると、清楚な服に身を包んだ色白の女性がハオに手を振りながらやって来たので、見とれた。もちろんハオの妻、ララの姿だった。
「決めた? この店?」ララが心地よい声で聞いて来る。
「うん。うまそうだよ、ここの烏龍麺」
「ハオちゃん?」ララはチッチッチッと舌打ちしながら人差し指を振った。「烏龍麺じゃないのよ。これはニッポンのWU DONGなの」
「UDONって書いてあるよ、ここに」
「ほんとだ」ララは素直に間違いを認めた。「何て読むの? ユィードゥ・オン?」
「普通にウードンじゃね?」
正解は見つからなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 15:06:06.24:ajOyzx/u
「日本の食べ物は味が綺麗だね」
ハオがうどんをすすりながら言った。
「うん。澄んだ川の水みたい」
ララが頷いた。
「ところで君も澄んだ川の水みたいに綺麗だよ」
「ハオも澄んだ青空のような心が顔に現れてるわよ」
「っていうか、本当に今日はなんだか特別若々しくないか?」
ハオがそう言うと、ララは悪戯っぽく笑った。
「実はね、今まで言わなかったけど」
「何だい?」
「あたし、若さのコントロール出来ちゃうのよ」
「若さのコントロール? 何だそれ?」
「この身体、厳密に言えばあたしの身体じゃないでしょ?」
「え。……うん」
「本当は歳取らないのよ、あたしの身体」
「おいおい」ハオは笑った。「いつまでも若々しいのは確かだよ。でも確実に歳取ってるだろ」
「そう見せかけてるの」
「?」
「歳取らないとおかしいからね、自分で少しずつ歳取らせてるの」
「まじで?」
「あたしのイメージで見た目を作ってるのよ。別人に化けることは出来ないけど、年齢はコントロール出来るの」
「じゃっ、じゃあ……」ハオは興奮した。「出会った時の……21歳の君の姿にもなれるのかい?」
クスクスと笑うとララはうどんを食べる手を止め、ハオの眼前でみるみる若くなってみせた。
すべての皺があっという間に伸び、眩しいばかりの21歳のララがハオに笑いかけた。
「久しぶりね、お兄ちゃん」
ハオは泣いた。鼻水がうどんの中に大量に落ちた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 15:19:14.78:ajOyzx/u
「ララが来るよ〜 ララが来る〜」
メイファンは食堂で食事もせずに踊っていた。
「ララララ〜 ララが来る〜」
一人でカレーライスを食べながら、煩そうに見ていた美鈴が、仕方なさそうに口を開いた。
「嬉しそうね、メイファンさん」
「うん! 嬉しいんだ」
「あなた、シスコンなのね」
「そう! シスコンなんだ」
「そこまでお姉さんが好きな妹もなかなか珍しいと思うわ」
「あぁ! 私は珍種だ! それでいいんだ」
「あなたのお姉さんへの想い、聞いて差し上げるわ」美鈴は溜め息を吐いた。「だからカレーを食べなさい」
「本当か!? 聞いてくれるか!?」
メイファンは目を輝かせて座るとスプーンを持ち、食べるフリをしながら語り出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/18(月) 15:49:33.72:ajOyzx/u
「ララは私が産まれた時、私の中に入って一緒に産まれたんだ。身体を持たない『気』だけの人間で、私と一緒になって産まれるまで4年間ずっと母親のお腹の中にいたんだ」
「聞いてるわ」
「産まれた瞬間、私の口を使って『パパー! ママー! やっと会えたー!』とか喋っちまったもんだから私も含めてバケモノ扱いされてよー」
「災難ね」
「何!?」
「お姉さんがいなければ、あなたもひねくれずに育ったかもしれないのよね」
「誰がひねくれだボケ!」
「……まぁ、いいわ。それで?」
「一人の人間の中に二人住んでる私達のことを、みんなバケモノを見る目で見やがってよー。私が愛するのも、私を愛してくれるのも、ララだけだったんだ」
「なるほどね」
「そんなんでずっと生きて来た。だから私にはララが世界のすべてみたいなもんなんだ」
「で? どうしてお姉さんはあなたの身体から出て行ったのかしら?」
「それは……」メイファンは目をウロウロさせた。
「あなたの身体の中にいたら自由がなかったからじゃない?」
「う……」
「実際、自由になって結婚し、メイちゃんという可愛い娘が出来、今、幸せなのよね?」
「……」
「あなたにとってはお姉さんが全てでも、お姉さんにとってあなたは全てではなかった、ということかしら?」
「テメェに何がわかる!」メイファンはカレー皿をカレーライスごと真っ二つにした。「私達姉妹の絆のこと、何も知りもしねーで!」
「わかるわよ」美鈴は冷たく言った。「あなたは余計なものが入って産まれたせいで不幸になった。その不幸の源にあなたは依存して生きて来た。違う?」
メイファンは食卓を真っ二つにした。
しかし美鈴は言葉を止めなかった。
「そして不幸の源はあなたから離れて一人だけ幸せになった」
「首斬るぞ!」
「やってみなさいよ」
メイファンは手刀を構えたまま、わなわなと身を震わせた。
「まぁ、いいじゃない」美鈴はそう言うと立ち上がった。「明日の結婚を機に、お姉さん離れしなさい」
「るせー! 年増!」
「そしてあなたも幸せになるのよ」
美鈴の眼鏡の奥で眼差しが優しくなった。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/19(火) 14:20:36.36:ZSF78Gvd
さぁ、皆でこれ↓をコピペしてGoogle翻訳のおばちゃんに読んで貰おう!↓

    滿口哭色經情搖擺
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/19(火) 17:55:28.48:eF42Pyue
「マ○コくっさー」ハオが言った。「ちんちんヤバーイ」
「何言い出したの?」
飛行機の座席で雑誌を読んでいたララが『またかよ』みたいな顔で隣のハオを見た。
「いや、読んだだけだよ、を」
「22年も一緒にいてハオのそういうとこよくわからない」
「ところで本当によく出席する気になったね、リウさんの結婚式」
「メイファンの結婚式よ。だから行くの」
「でも、まだ妹のこと、よく思い出せないんだろ?」
「実を言うと」ララは答えた。「まったく思い出せない」
「それじゃ他人とリウさんとの結婚式に出るようなもんじゃない?」
「思い出せない。……でもね」
ララは雑誌を膝にゆっくり置くと、窓の外を楽しそうに見ながら言った。
「嬉しいの。ずっと一人で辛い目をして生きて来たと思ってた。でも、一緒に辛さを乗り越えて、きっと喜びも分け合って来た妹がいたんだと知って」
「でも本当に妹なの?」
「おかしいと思ってたの。あたしは身体がない人間なのに、この今の身体に入る前はどこにいたんだろう? って」
「俺じゃないの?」
「ハオと会ったのはあたし21歳の時でしょ。それまでの物語が矛盾してるのよ」
「君の記憶ではどうなってるの?」
「あたしは身体を持って産まれた。でもハオと出会った時、あたしは身体を持たないからハオの中に入ったことになってる」
「俺の記憶じゃ、初めて会った君が虎の首を斬り落として、俺を無理やり弟子にして……。散々いじめてくれた後、優しく治療してくれて……」
「なんかおかしいでしょ?」
「うん、おかしいな。もう一人誰かいたような気がする」
「それがメイファンだったのよ」
「俺達は習近平の魔法にかかって忘れちまってるわけか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/19(火) 18:27:43.75:eF42Pyue
「あたしに忘れられて……メイファンはきっと悲しく思ってる」
「しょうがないよ」ハオはララの肩を抱いた。
「だからね」ララは少し泣いた。「会える機会があればいっぱい会って、あの子の話をたくさん聞いてあげたいの」
「それで思い出せるかもしれないね」
「思い出したいけど、思い出せなくてもいいの」
「いいの?」
「うん。あの子、あたしと同じ顔してるじゃない」
「君を怖くしたような顔だよな」
「姉妹なのよ。この世でたった二人の。その事実さえあれば、思い出はこれから作って行けばいい」
「そうだね」
「早く会いたいなぁ」
「俺はあのひと、怖い。悪いけど」
「ハオはいきなりバラバラにされかけたもんね」
「あれ……殺すつもりだった……よな?」
「まさかぁ」ララは笑った。「ハオに超回復力があること知っててのおふさけだよ」
「おふざけ……ねぇ」
ハオは正直少し不安だった。ララに殺気を感じ取る能力はない。あの時、感じた凄まじい殺気を忘れることは出来なかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/19(火) 23:12:08.92:fF9F0Lo/
ハオは蓮舫の巨大乳輪攻撃を恐れていた。
時空の歪みが出現しないように毎日のお祈りを欠かさなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/20(水) 06:23:29.77:7DGoSLwy
「ところでぼちぼち43歳に戻っといたほうがいいんじゃない?」
「あら、ハオがもっと見てたいと思って」
ピチピチ肌のララはしかし娘のようではなく、逞しい奥さんの貫禄を湛えて笑った。
「21歳の君ももちろん眩しいけど」ハオは正直な気持ちを言った。「熟女の君のほうがやっぱり素敵だよ」
二人は人目構わずキスをした。
娘のように若い女性と鼻息を荒くして熱烈なキスを交わす髭面のオッサンのことを、後ろの席のハゲたオッサンが羨ましそうに見ていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/20(水) 08:23:01.49:7DGoSLwy
北京国際空港に迎えに来ていたのはメイ、メイファン、美鈴の3人だった。
3人は飛行機到着の時間が迫るとロビーへ出、ハオとララの姿が現れるのを待った。メイファンはメイの服を借り、Tシャツにショートパンツ姿だ。
「あれぇ?」メイがその気配に気づき、声を出した。「何でアンタ、ここにいんの?」
人波を避けて柱に凭れているのはヘイロンだった。
「お前にいつも世話になってるからな」ヘイロンは言った。「ご両親に挨拶しなければ」
「おぉっ? ヘイロンじゃねーか」メイファンが喜んだ。「なんか久しぶりだなぁ」
「お久しぶりです、姐さん」ヘイロンは頭を下げると、うっとりと笑った。「御一緒させてください」
「んー。でも、四人も要らないんじゃね?」メイファンは美鈴に言った。「お前、帰れ」
「そんなことを仰ると吸いますわよ、メイファンさん」美鈴は眼鏡をくいっと上げた。
そこへやたらチュッチュしながら歩いて来るハオと若い娘の姿が現れ、一同は黙り込んだ。
「んっ?」美鈴が眼鏡の位置を調整し、凝視する。
「浮気か?」ヘイロンが美鈴と並ぶ。
メイファンが思わずメイの視界を塞ぎ、叫んだ。
「ママー! 歳! 歳ー!」
その声にはっと気づいたララは後ろを向くと、瞬時に22歳歳を取り、振り向いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/20(水) 08:25:54.43:7DGoSLwy
「あら、ララさんだわ」美鈴が納得した。
「ど、どういうことだ?」ヘイロンは納得できなかった。
「メーイ! 会いたかったよぉー!」
そう言うとハオは駆けて来て、メイファンを抱き締めた。
「あっ」ララが固まった。
ハオはメイファンの両頬に激しくキスをすると、顔を離して見つめた。
「パパぁ、私も会いたかったよぅ」メイファンは調子に乗った。
「んっ? お前、小さくなったな? ちゃんと食べてるのか?」
「パパに会えない寂しさで拒食症になっちゃったの」メイファンは猫のような目で言った。
「顔もなんだか老けて、ぶさいくになってるぞ。大丈夫か?」
メイファンの後ろからメイが姿を見せ、じっとりと父親を見つめた。
「あれっ?」ハオは本物の娘のほうを見つめた。「可愛いじゃん?」
「誰がぶさいくだ」
メイファンのグーパンが飛んで来て、頬にクリーンヒットした。
ハオは床に倒れるとすぐに飛び上がるように起き上がり、メイにハグをしようとしたが、メイはそれを避けた。
「パパ、信じらんない……」
義妹と娘を間違える父親のことが信じられなかったのはもちろん、この間の父親そっくりの変質者にレイプそれそうになった記憶が強烈にこびりついていた。
「ごめん! ごめんよ! 最愛の娘と叔母さんを間違えるなんて、パパ、最悪だ!」ハオは無理やりメイをハグした。
「やめて!」メイはハオを振りほどいた。「パパ、臭い!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/20(水) 18:32:07.25:fxnesEdp
「反抗期はとっくに終わったはずなんだけどなぁ」
カフェのテーブルに頭頂部をつけてコーヒーを飲みながらハオが言った。
「たまたま機嫌が悪いだけですよ、お父さん」
向かい合ってコーヒーを飲むヘイロンが慰めた。
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはな……。いや、そうか。君とメイは兄妹なんだったね」
「いや、友達ですよ」
「兄妹ならエッチなことは出来ないねぇ」
この人、苦手だ。意味がわからない。そう思いながらヘイロンはコーヒーを飲み干し、メイファンのほうを見た。
メイファンはララとメイと3人で楽しそうに会話が盛り上がっている。美鈴はトイレなのか、席を外していた。
『おや?』
よく見るとメイファンの後ろに誰か座っている。
目を凝らしてよく見ると、メイファンに重なってもう一人メイファンが座っており、無表情で黙っていた。
「お父さん」ヘイロンは思わずハオに言った。「あれ、何ですかね?」
そこへ美鈴が戻って来た。メイファンの隣に美鈴が座ると、もう一人のメイファンは霧のように消えてしまった。
「あれって?」ハオが顔を起こした。
「いや……消えてしまいました」
「君の言うことは意味がわからない」ハオはそう言うと、また頭頂部をテーブルにつけた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 18:11:54.84:7lN8yrsN
親子3人はメイのアパートに向かって歩いていた。その後をメイファンがついて来る。初夏の夜空に浮かんだ爽やかな月もついて来た。
「学校は楽しい?」ララが聞いた。
「うん。楽しいよ、とっても」メイは笑顔で答えた。
「友達出来た?」
「うん。フェイっていう子で、ちっちゃくて可愛いの。また紹介するね」
暫く3人バラバラに歩いていたが、そのうちハオとララが真ん中にメイを挟み、くっついて歩きはじめた。
「無理しなくていいんだぞ」ハオが言った。
「辛くなったら、いつでも帰ってらっしゃい」ララが言った。
「頑張るのはいいことだ。だが、無理はするな」ハオがメイの肩に触れた。
「忘れないでね。いつでもあなたには帰る場所があるんだからね」ララがメイの肩を抱いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 18:23:05.17:7lN8yrsN
3人1塊になって歩く親子をメイファンは少し離れて後ろから見ていた。その顔には笑っているようでいて、寂しそうな、複雑な表情が浮かんでいる。
『帰る場所……か』メイファンはぼんやりと考えた。『私の帰る場所は、どこだろう?』
明日リウと結婚式を挙げれば、それが出来るのだろうか? しかし今はどうにもそうは思えない。
『ララがいないからか? やはり私は、ララに依存しているのだろうか?』
そう思いながら前を歩くララの後ろ姿を眺めた。
この姉がいなければ、自分は両親に捨てられることもなく、愛され、朗らかなメイのような女の子に育っていたかもしれない。
そして自分が不幸になるきっかけとなった当の姉は、今、自分から離れ、目の前で幸せそうに家族とともに歩いている。
『何を考えている、私は』
メイファンは首を振った。
『ララに、産まれて来ないでくれたらよかったのに、とか言うつもりか』
気持ちを変えようと月を見上げた。
『私の帰る場所は、闇だ。それでいい。私は殺し屋(黒色悪夢)なのだから』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 18:40:36.53:7lN8yrsN
『ところでアレは何なのだろう……』
メイファンはずっと後ろを尾けて来る男のことが気になっていた。
見て確認するまでもなく、ヘイロンが壁や柱の陰を移動しながらずっとついて来ているのだった。
さすがにメイも気づいていて、メイファンのところへやって来て言った。
「メイファン、アレ、メイファンに用があるみたいだよ」
「いや、お前のストーカーだろ」メイファンは面倒臭そうに言った。「アレはムッツリスケベだ、気をつけろ」
「わかってるでしょ」メイも投げ槍な口調で言った。「アイツ、メイファンのことが好きなのよ。結婚前に言っときたいことでもあるんじゃない?」
「私はないぞ」
「まぁ、いいから行ってあげれば?」
メイはメイファンにくるりと後ろを向かせ、ドンと背中を押した。
「ちゃんと諦めさせてあげてね」
そう言うとメイは両親の真ん中に戻り、メイファンを置いて歩いて行った。

嫌そうに立っているメイファンの前に、ヘイロンは堂々と姿を現すと、すぐにもじもじし始めた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 18:56:18.67:7lN8yrsN
「何してんの、お前?」
メイファンが声を投げると、ヘイロンは思い切って顔を上げた。
「姐さん! 話がしたかった」
「30秒で済ませ」
「おっ、俺と駆け落ちしてくれ!」
「なんでだ」
「嫌なんだろ? 明日の結婚式」
「面倒くせーだけだ」
「リウ・パイロンは姐さんをきっと不幸にする! 俺の母さんを不幸にしたみたいに!」
「そん時ゃぶっ殺すだけだ。はい、終わり」
そう言ってくるりと背を向けたメイファンに、ヘイロンは後ろからしがみつこうとした。
死角から襲って来る気配にメイファンの自動防衛機能が発動した。
「危ねぇ!!」
そう叫びながらメイファンの手刀がヘイロンの首を狙って繰り出された。
格闘技の達人でなければ確実に首が飛んでいた。優れた反射神経で頭を引くと同時に防御のために出した両腕が、メイファンの手刀で手首から飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 19:04:16.23:7lN8yrsN
「うあぁぁあぁ!?」
悲鳴を聞いて振り返ったメイは、両腕から血の噴水を上げるヘイロンを見て悲鳴を上げた。
「きゃあぁぁぁあ!?」
「ララぁ、すまん、頼むぅ」
メイファンがそう言い終わる前にララは走って来、地面に落ちているヘイロンの両拳を掴むと、白い手を発動した。
あっという間にくっついた自分の手を見ながら、ヘイロンは呆然としてしまった。
「な? 私はお前の手に負えるような女じゃない」メイファンは言った。「セックス中にも興奮してこういうことよくするんだぞ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/21(木) 21:30:29.71:7lN8yrsN
「ははは! これでヘイロンにはしっかりと嫌われたな」
メイの部屋でテーブルに掛けてメイファンは笑った。同じく掛けたハオとメイは引いている。
お茶を入れてララが戻って来た。
「おっ、サンキュ」
そう言ってお茶を受け取るメイファンにララが言った。
「ねぇ、メイファン」
その顔は悪人を見る者のように強ばっていた。
「どうしてヘイロン君の手を斬ったの?」
「不可抗力だよぅ」メイファンはララの表情を見て慌てた。「アイツが背後から襲いかかる気配見せやがるから」
「だからといって、手を斬るの?」ララの目が冷たい。
「反射的に動いちまうんだ!」メイファンはすがるような目で言った。「ララだってよく知ってるだろ!」
「あ……」ララは固まった。
「あっ……」メイファンはしまったと思った。
「そ、そうね……。知ってるわ」ララは無理やり笑った。
知っているわけがなかった。覚えているわけがなかった。メイファンもそんなことはわかっている筈だった。
妙な沈黙が流れた。
ララは空気を変えようと、話題を探した。しかしメイファンが先に口を開いた。
「昔もさぁ、ハオとセックスした時に、興奮してハオの腕を斬っちゃったことあったじゃん? 覚えてね?」
「は!?」ハオが口を大きく開けた。
「え……」メイが思い切り嫌悪を顔に表した。
「何ですって?」言葉を失っていたララがようやく口を開いた。
「あっ……」メイファンはようやく自分の失言に気づいた。
「ハオと……何をしたですって?」ララは身体が震えていた。「しかも子供のいる前で……何を言い出すの……? あなた?」
「あうぅ……」メイファンは何も言えなくなった。
「あなた、何なの?」ララは泣き出した。「あたしの妹ですって? 覚えてないわ、あなたなんて! 知らないわ! あなた、誰よ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/22(金) 12:12:50.17:0FrkYgrE
花嫁は結婚式の前夜を公園のベンチで寝ることになった。
「畜生、なんで覚えてねーんだ、ララの奴」
メイファンは17歳の時、確かにハオとセックスをした。しかしそこにはララもいたのだ。
身体の中に住んでいたララごとハオに抱かれたのであり、いわばあれがハオとララのファースト・セックスであった。
「昔は私のすること全部受け入れてくれたくせによぅ、オバサンになりやがって」
そんなことを言いながら酒を呷った。忘れるために飲む酒がまったく効かなかった。
月を見上げると、思い出が走馬灯のようにその中を駆け巡った。しかしその思い出は、自分だけのものだった。
ララにさんざん語って聞かせてはある。だがララは物語のようにしかそれを知らない。
ララの記憶の中に自分はいない。
それをどうすることも出来なかった。
「私の姉ちゃん、もう、この世にいねーの?」
月が涙で滲んだ。
「私、この世でひとりぼっちなの?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/22(金) 16:01:56.06:0FrkYgrE
「一人でイイジャナイカ」
メイファンの後ろからもう一人のメイファンが声を掛けた。
「お前はいいだろうさ」
メイファンは泣きべそをかきながら言った。
「世界中ノ人間全てヲ殺シテ一人にナリタイ……」
「私はもう殺し屋はやめるんだ。普通の主婦になってやる」
「ソレは幸せナノカ?」
「わかんねーよ。でも、やってみるんだ」
「違ウ! 私ノ幸せハ阿呆な人間共ヲ殺すコトダ!」
「もう眠れ、黒色悪夢。明日は早い」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/22(金) 16:27:09.98:0FrkYgrE
「もう動いたり、する?」
メイがララのお腹に耳をつけ、言った。
「動かないわね」
ララは微笑み、メイの頭を撫でた。
「弟かぁ。楽しみだなぁ。一緒にサッカーとかしてやろうかな」
ララとハオは顔を見合わせ、ふふっと笑った。
「サッカー、出来る子だよね?」
メイの問いの意味を正しく理解し、ララは答えた。
「大丈夫よ。きっとね、見た目は普通の子と変わりない。運動も出来るわ、たぶんね。……愛してあげてね?」
「もちろんだよ!」メイは笑った。「なんだったら一生面倒見てあげちゃうよ」
「お願いね」
ララは笑いながら一滴涙をこぼした。
「ママ……あのね」
「なぁに?」
「メイファンのこと」
「……うん」
「嫌わないであげてね」
「……うん」
「メイファン、凄く個性的だけど。一緒に暮らしててわかったよ。悪い人なんかじゃない」
ララは目を伏せ、無言で頷いた。
「突拍子もないことする奴だけど。何て言うかなぁ……。ライオンの子供か何かだと思えば、凄く愛らしいよ」
「ライオンの子供かぁ」ララは思わず笑った。「そうね。さっきは少しびっくりしちゃったけど、仲直りのメッセージを送っておこう」
「じゃないと明日の結婚式、出れないよね」
「あの子はあたしの妹だもんね」ララはメイの頭と自分のお腹を同時に撫でた。「もっとあの子のことを知ってあげなくちゃ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/22(金) 16:31:19.06:0FrkYgrE
時代設定=2040年、舞台は民主化を遂げて21年経つ中国、北京。

【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
黒い『気』を使う。生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。メイファンとは同一人物?

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。スレタイにある25歳は誤り。我流のマーシャルアーツの使い手。
赤い『気』を使う。リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいるが、超がつくほどの貧乏を父のお陰で脱出出来そう。
メイに想いを寄せられているが、ヘイロンはメイファンへの気持ちが強く、メイの気持ちに応えられない。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。メイファンと婚約中。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
習近平元国家主席のボディーガード兼『黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)』と呼ばれる最強の殺し屋だった。
元々姉のララを除く全人類は殺しの対象だったが、全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になる……のか?
異次元の時間の進みは遅く、前スレの17歳から22年経っても27歳である。黒い『気』を使い、様々なことが出来る。メイとは同一人物?

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
身体を持たない『気』だけの存在であり、元々は妹メイファンの身体の中に住んでいた。現在の身体はリウ・パイロンの肉を引きちぎって作ったもの。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいる。現在妊娠4ヶ月。

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。

・フェイ(小飛)……メイとヘイロンを合わせて仲良し3人組。口数の少ないマスコット的存在。
長い黒髪、丸い顔、小さな身体が小型犬を思わせる。ヘイロンのことが好き。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。年齢不詳。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。45歳の美魔女。
透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/23(土) 14:44:42.66:NtzBO7ho
中国人民の圧倒的支持を得て習近平政権が誕生した。
習近平は全権委任法を制定し総統に就任した。
諸悪の根源は日本人にあるとして日本人は迫害され見つけ次第ガス室に送られた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/23(土) 17:47:11.46:ZJSIX3NQ
オザワ新党が誕生した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/23(土) 18:32:29.92:hASegjw2
メイファンはスマホ料金の支払いを忘れていた!
しばらくメイファンは書き込みが出来ない!( T∀T)
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/23(土) 21:31:41.20:2rLlvsmM
メイファンもガス室送りとなった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/24(日) 10:30:59.22:/5Z4ak+V
ララもメイもフェイもガス室に送られた。
うず高く積まれた日本人の死骸に交じって彼女らの死体もあった。
それを発見したヘイロンはニヤリと笑った。
「ふふふ、うまくいった・・これで大金持ちだ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/24(日) 14:19:51.42:IUCcAc+e
ヘイロンは蓮舫の巨大乳輪にむしゃぶりついた。
「ああ、やっぱりこれがいい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/25(月) 18:26:52.21:GcCCeUEV
若き実業家ワン・ヅーさんは愛車サリーンES7エレクトリック・スポーツで高速道路を140km/hで巡行していた。
どうしても会わなければならない相手と天津で会い、明朝6時までには北京に戻っておかなければ仕事に支障が出るのである。
「まったく……。こっちの身にもなってくれよ。140で飛ばしてようやく3時間睡眠が取れる」
しかし神様はワンさんに厳しかった。警察の検問に停められ、3時間眠れないことが確定した上、免許停止まで確定したのである。
「許してください!」ワンさんは泣きながら跪いた。「6時までに北京に帰らないと、僕の人生終わりです!」
「急がなくてもいいように、ちゃんと余裕を持ってスケジュールを組んでくだしいね」
警察官にそう言われ、ワンさんは立ち上がると、通りかかった大型トラックめがけて飛び込むフリをした。
「はいはい、危ないからやめようね」
簡単に警官に止められ、ワンさんは振り向くと泣きながら訴えた。
「本気ですよ! 許してくれなきゃ人生終わるんだから!」
「はいはい。ここに拇印押して、名前書いてね」
そこへ新たに停められた赤いベンツの最新型EVがあった。
「よく飛ばされてましたねー。180km/h出てましたよー」
警官のピストルを奪って自殺するフリをしようとしていたワンさんは手を止め、そっちのほうを見た。
後部席の人物に見覚えがあった。
「あっ、あれ、大統領のリウ・パイロンじゃないか」
警官は運転手と短いやりとりをすると、リウ・パイロンを乗せたベンツは何事もなかったように走り出した。
「おいっ! あれ、許されたのか!?」ワンさんは叫んだ。
「まぁ、何て言うか」警官は笑いながら言った。「緊急事態なんじゃないですか?」
前をパトカーが先導し、みるみる加速したベンツはどう見ても200km/hを越える速度で消えて行った。
「いいのか、あれ!?」ワンさんはヒステリックに叫んだ。「俺も緊急事態なんだぞ! アイツとどこが違う!?」
「国家レベルの緊急事態ですよ」警官は冷めた口調で言った。「いいから拇印」
「俺が人生終わるのはいいのか!?」
「いいから拇印」
「拇印押して一人になってから死んでやる!」
「そういうのいいから、拇印」

「停められちゃいましたね」運転手がリウに言った。
「パトカーが先導してくれれば安心だ。かえって停められてよかった」
リウはそう言うと、窓の外を猛スピードで流れて行く黒い林を眺めた。
「早くメイファンのウェディング・ドレスが見たいんだ。急いでくれ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/25(月) 22:13:36.25:VQigUXbY
リウはメイファンが待っているはずの部屋に駆け付けたが何かおかしい。
そこはガス室だったのだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 06:50:38.39:Wfo+Dsd1
ガスとは言っても霧のことである。
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/26(火) 06:54:28.55:jvwdqad1
リウ「なっ、なんだこれは! 何も見えん!…」
メイファン「霧の魔周湖へようこそ」
創る名無しに見る名無し [] 2019/02/26(火) 10:15:25.70:Cw80ZP7b
摩周湖付近では中国陸軍の軍事パレードが行われていた。
リウ「総統閣下、お目にかかれて光栄であります」
習近平「うむ。君には小日本の管理を任せよう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 12:03:47.09:Wfo+Dsd1
リウは日本人達をまるでハムスターのように可愛がりはじめた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 16:19:05.28:UtO/OdEv
メイは初めてヘイロンのアパートを訪れ、想像以上の貧乏さに愕然としていた。
外壁の至るところを白蟻に食い荒らされ、雨水の染みた跡が縦縞の模様のようになっている。
首都北京から一瞬にしてどこかの荒野にワープしたかと思うほどに、周囲は荒れた林に囲まれ、暗かった。
ララも少しびっくりしたようで、振り向いてメイにひきつった笑いを浮かべて聞いた。
「ほ、本当にここなの?」
「うん。聞いた通り来たから、間違いないと思う」
「なんか落ち着くな」ハオが言った。「俺の産まれ育った田舎の景色みたいだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 16:28:09.25:UtO/OdEv
ドアをノックするとすぐにヘイロンが顔を覗かせた。
「入れよ」
無表情にそう言われ、メイは3人の先頭を切って中へ入った。
「本当に貧乏だったんだね」
中へ入ると夏だというのに寒くなった。家具はすべてどう見ても廃材を拾って来て作ったものばかりだ。
「凄いだろ。あ、ちなみにトイレは外な」
「産まれた時からずっとここに住んでんの?」
「あぁ、しかし、ようやく引っ越しできる」
ヘイロンは幸せに身を震わせながら言った。
「お父さんに感謝だね」
「違う。絞り取ってやるんだ」
『そりゃ、こんなところで育って来たら』メイは思った。『珍しい人にもなるわ』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 16:42:54.21:UtO/OdEv
奥から「いらっしゃい」とか細い声がした。か細いのに薄い壁を伝ってはっきり聞こえた。
「ジンちゃん?」ララが声を弾ませ、奥へ入って行った。
ヘイロンの母リーランは、ぺったんこになるほど使い込まれた敷布団を二枚縦に並べ、その上に2m22cmの身体を横たえていた。
ララが姿を見せると「あぁ、ララちゃんだァ」と言って嬉しそうに笑った。
「ジンちゃん! あなた、化け物?」
「いきなりひどいだァ」
「いや、だって、22年前とまったく変わってないよ!?」
「これ以上崩れようがないだァ。たぶん死ぬまでこのまんまだァ」
リーランはそう言うと鬼婆のような顔を皺くちゃにして笑った。
ハオが入って来て一瞬ビクッとしてから挨拶をした。その姿を見てリーランは「あぁ、ハオ號機さんだァ」と懐かしそうに言った。
「ジンちゃん」ララはリーランの横に正座すると、言った。「あなた、ヘイロン君に苦労かけすぎ」
「メイファンちゃんにもそう言われただァ」
リーランは照れ臭そうに頭を掻いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 17:17:03.27:UtO/OdEv
「母さん、俺、やっぱり明日の結婚式、出ることにする」
ヘイロンが言い出した。リーランは答えた。
「そか。お父さんによろしくなァ」
ララが口を挟んだ。「ジンちゃんは出ないの?」
「オデなんかが行ったら皆ビックリするだァ」
「そんなことないよ〜! 美味しいご飯食べ放題だよ?」
リーランは少しも動じずに、言った。
「オデはうまい棒さえあればいいだ。それに、あの人が他の人と結婚するのを、やっぱり見たくねェだ」
それを聞いてメイが言った。
「今でも……ずーっとリウ・パイロンのことが好きなんだ?」
「メイちゃん、オデなァ」リーランは耳元まで裂けた口をうっとりと開いて笑った。「初めてのロマンスが忘れられねェだよ」
「えー。そんなに好きなら」メイは空気も読まずに言った。「奪っちゃえばいいのに」
「オデはとっくに捨てられただァ」リーランはまた頭を掻いた。「オデがたらしなさ過ぎるから、何したってダメだァ」
「気が知れないけど」ララが言った。「アレを好きならそのパワーで自分を変えようとか思わないの? ジンちゃんっ?」
「いろいろ努力はしたんだけど、どうしても変えられない自分があったんだなァ」
「ララにも悪いとこあるだろ」ハオが口を挟んだ。
「あら。何よ? あたしの悪いところって」ララが口を尖らす。
「すぐ発狂するだろ」
「う……」
「22年前なんか、それで俺のケツ掘ったろ」
「ちょっ……! そんな昔のこと……! 子供の前で……!」
しかしメイもヘイロンももちろん意味がわからずキョトンとしていた。
「未だにすぐ発狂するじゃん。で、それ、どうしても変えられないだろ」
「何よぅ!」ララは早速発狂態勢に入った。「ひどいじゃない! 皆の前で! またケツ犯すぞ! キャハハ!」
「俺はそんな欠点ごと君を受け入れ、愛して来たんだよ」
「えっ」
「リウさんはしかし受け入れられなかった。それだけのことだよ。だからリーランさんが悪いんじゃない」
「いやァ、オデが悪いんだよォ」リーランは真っ赤にした顔を手で覆った。「ハオ號機さんはオデのこと知らないだけだァ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 17:24:17.00:UtO/OdEv
しかしハオとララはリーランそっちのけでラブラブモードに入ってしまっていた。
ハートを撒き散らしてキスを始めた両親を見ないようにして、メイはヘイロンに言った。
「ロンは……メイファンのことが好きなんでしょ?」
「あぁ」
「辛くないの? 好きな人が他の人と結婚式挙げるのを見ても」
ヘイロンは何も言わず、ただ寂しそうにフッと笑った。
「あ、そか」メイが思い出して言った。「腕をズバッと斬られて、嫌になったとか?」
「いや」ヘイロンは笑った。「あのことを気にしていないと伝えたいんだ。そのために行くのさ」
「ふぅん?」メイは面白くなさそうに言った。「よくわかんない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 21:30:23.35:kd65FKJO
メイファンは公園のベンチでなかなか眠れずにいた。
スマホ料金の支払いを忘れていたため、ララからの仲直りメッセージもまだ読めずにいた。

寝転んで白い月を眺めていると、今まで愛して来たものと憎んで来たものが記憶から次々と流れ出して来た。

愛して来たもののほとんどは芸能人だった。リウ・パイロンとララだけが例外のように身近な人間だった。
憎んで来たものは数えきれなかった。しかしそのほとんどは軽蔑程度のもので、つまりは取るに足らなかった。
激しく憎んだ人物、それはただ二人愛した人物と重なっていた。
裏切られてリウを9年間ずっと憎み続けた。
捨てられてララを、メイの中からその幸せそうな姿を傍観しながら、22年間ずっと憎んでいた。
その憎しみが消えた今、メイファンは気が抜けたように空虚だった。
明日が結婚式だというのに。
『憎しみガ? 消えたッテ?』
「うん。消えてしまったよ」
『違ウ! お前ハそれヲ押し潰したダケダ!』
「ははは。押し潰したら消えるもんじゃないのか?」
『私ハ押し潰された蛙ダ。見ロ! こんなにも惨めダ!』
「惨めなんかじゃない。黒色悪夢よ、お前は私の一部だ。私が愛してやんよ」
『イチブガゼンブと言うダロウ!』
「なんかそんな歌あったな」
『押し潰された蛙ハまた膨れ上ガル! 消えてハいないのダ!』
「そんなに憎いのか」
『ニクい! お前はニクくないのカ?』
「忘れろよ」
『ニクい!』
「忘れろって」
『ニクい! ニクい! 憎い!』
「あーあ。火ぃ点けちまったな」
『憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/26(火) 21:42:03.77:kd65FKJO
『憎しみヲ忘れたなどと言ウ貴様モ憎い!』
「は!? 殺気!?」
メイファンは思わず飛び起きた。
ベンチの上に、自分から完全に離脱した黒い『気』が仰向けに寝ており、自分に鋭い殺気を向けて睨みつけている。
「おいおい」メイファンは笑ってしまった。「お前、まさか私を殺す気か」
白い月に照らされ、黒い影は薄くなるどころか更に黒さを増し、ゆらりと起き上がる。
「ははは」
バカみてー、と言おうとしたメイファンめがけ、黒い『気』が音もなく手刀を振るった。
すかさず『気』の鎧を纏おうとしたメイファンは、しかしわかっていた。
『気』はすべて相手に取られてしまっていた。自分は武器を持たないただの女だった。
「なんだこりゃ」
そう喋りながらメイファンの首が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/27(水) 07:21:36.48:QyO4Ed/6
夜が明け、結婚式当日がやって来た。
7月の空は晴れ、朝焼けは少し茶色がかっていた。

式の始まる2時間前になってもメイファンは帰って来なかった。
「おい、花嫁はどこにいるんだ」
既に支度を終えているリウ・パイロンが美鈴にしつこく聞いた。
「昨夜はメイちゃんのアパートに泊まったと思っていたところ、喧嘩して飛び出したそうです」
「あいつのことだ、公園で寝泊まりしたんじゃないか?」
「1時間ほど前から探させているのですが……」
「見つからないのか」
「はい。ただ、○○公園のベンチの近くで大量の血痕が見つかり、今、その辺りを重点的に調べさせています」

報せを受けてララは重く落ち込んでいた。
「あたしのせいだ……。あたしがあんなこと言ったからだ……」
メイファンに送った仲直りメッセージは未読のままだった。
「大丈夫だよ」ハオがララの肩を叩いた。「あの人のやることは滅茶苦茶で当然じゃないか。それでいてきっちり時間になったら戻って来る」
「とりあえず行こうよ、結婚式」赤い正装に身を包んだメイが言った。「ヘイロンも来るんだって」

「結婚する日に血痕だって?」リウがひきつった笑いを浮かべた。
「何か事件に巻き込まれ、殺されでもしたのでしょうか?」
「まさか」リウは笑い飛ばした。「あいつが殺すことはあっても、あいつが殺されることなどあるか」
「ですわよね」美鈴は眼鏡を外して拭くと、言った。「ては、私は廷内を探して参ります」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/27(水) 12:35:20.15:QyO4Ed/6
「何だって? 姐さんが?」
ヘイロンは花嫁行方不明のことをメイから聞くと、眉間に皺を寄せた。
「俺のところへは来てないぞ?」
「当たり前でしょ。なんでアンタんとこいるのよ」
メイはそう言うと靴を履いた。
ハオとララも次いで二人とも格闘着姿で玄関へ出て来た。
「ヘイロン君、あたしのせい……あたしのせいなの」
ララが嗚咽を漏らしながら言った。
「大丈夫、大丈夫」
ハオがララの背中を抱く。
「なっ、なぜ格闘着なのですか?」
ヘイロンの問いにハオが答えた。
「アメリカじゃどこでも正装の場にこれ着て行くと喜ばれるんだ」
「はぁ……なるほど」
「俺に言わせれば君の格好のほうが変だ。まさかそれで行くつもりか?」
ヘイロンはいつもの白いTシャツにジーパン姿だ。
「あっちで服を貸して貰えることになってるんです」
「ヘイロンは毎日それ着てるもんね。一張羅ってヤツ?」
メイのツッコミにヘイロンはムッとした。
「同じ服を何着も持っているだけだ! セットで買うと安いからな!」
階下に黒いリムジンが停まっている。
「さ、行こっか。運転手さん待たしちゃ悪いよ」
メイはそう言うと、アパートの階段を降りながら、ヘイロンに聞いた。
「ところであたしの可愛いこの格好、見て、感想、何もなしですか」
「姐さんが心配だ」
「あっ、そう」
並んで歩いていたヘイロンを抜いて、リウ・パイロンが寄越してくれた車に1番で乗り込もうとしたメイの前に、1羽の鳥が降りて来た。
「ありゃ。白いカラスだ。珍しいな」
ヘイロンが追いついて来たのでメイは振り向き、言った。
「ねぇ、なんか白いカラスさんがあたしのこと好きみたい。いきなり通せんぼして来たよ」
それを見てヘイロンはさらに眉間に皺を寄せた。
「中国の縁起悪いものを知らないのか?」
「え。これ、縁起悪いの?」
「最悪級だ」
「マジで?」
「悪い予感がする」
ヘイロンが捕まえようとすると、白いカラスは嘲笑うように飛び立ち、結婚式場の方角へ消えて行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/27(水) 13:14:59.93:tgM+MbRZ
ヘイロンは結婚式場で猛毒ホスゲンを吸い込み意識不明の重体に陥った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/27(水) 17:08:23.05:QyO4Ed/6
「あら、ヘイロン君。お似合いね」
美鈴はホスゲンをすべて吸い出すと、言った。
ヘイロンは借り物のグレーのスーツに身を包み、恥ずかしがり屋のファッション・モデルのように立っている。
「俳優さんみたいよ。ね? メイちゃん」
メイはいつもと違うヘイロンの姿に目が釘付けになりながら、美鈴の隣になんとか立っていた。
「に、似合うか?」
「似合うわよ、ねぇ? メイちゃん」
メイは何も言わず、美鈴に凭れかかった。目が潤み、顔が赤い。
「どうした、メイ!? 風邪か?」
「よろめいちゃってるのよ。そのぐらいわかりなさい」
そこへリウ・パイロンが入って来た。
「やぁ、メイちゃん、いらっしゃい」
そう声を掛けてもメイがとろんとろんに溶けているので、その視線の先を見るとヘイロンと目が合った。
「おぉ」リウが言った。
「あぁ」ヘイロンが言った。
「リーランは来なかったのか」
「昔の男の結婚式に出たがるとでも思うか?」
「しかし」リウはニヤケた微笑を浮かべると、言った。「よく似合っている。さすがは俺の息子だ」
ヘイロンは何も答えず、小さく舌打ちをするとポケットに両手を突っ込んだ。
「ネクタイが曲がっているぞ」
そう言うとリウは近づいて手を伸ばした。やめろとも言えずヘイロンはされるがままになった。
「よく、来てくれたな」リウが言った。
「メイファンさんに伝えたいことがあっただけだ」
「本当に、お前には苦労をさせてしまった」
「金さえ寄越すならそれでいいよ」
ネクタイを直し終えると、ふいにリウがヘイロンにハグをした。
「困ったことがあったら何でも言ってくれ。何でもしてやろう」
ヘイロンは思わず言葉が詰まった。涙のようなものが出そうになるのを抑えた。
父親の温もりと大きさに抱かれ、氷のような意地が溶け始めた。ヘイロンはそれを心地よいと感じた。
「息子と呼ばせて貰ってもいいか?」
「あ? お、おぉ……」
とりあえず離せ、クソ親父、と頭に浮かんだ言葉は言えなかった。
「ね、メイちゃん」美鈴が小声で言った。「男二人きりにしてあげようか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/28(木) 07:22:05.32:tecquAeh
そのとき、メイファンの脳裏を恐怖の光景がよぎった。
ガス室で多くの日本人とともに自らも苦しみながら死んでいく光景が・・
「自分は本当に生きているの?」
スマホ料金を滞納したときから何かがおかしいと感じ始めていたのである。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/28(木) 12:34:05.63:gNJgrwo/
ハオ、ララ、メイ、美鈴、ヘイロン。
『気』を感知することの出来る者は総出でメイファンを探した。
新郎のリウ・パイロンさえ控え室を出て、派手な結婚衣裳の姿で近いところを探した。
「いた? ヘイロン君」
「いや、気配もありません、お母さん。やはり外にいるのでは……」
「ママ!」メイが向こうのほうからララを呼んだ。「地下に怪しい部屋があるよ!」
3人はメイを先頭に地下への階段を降りた。すると行き止まりのようになっており、固い鉄の扉で先を閉ざされている。
「ね? この扉の向こうに何か『気』を感じない?」
「うーん。怪しいけど、でも、勝手に入っちゃ怒られるわよ。鍵がかかってるのに」ララは躊躇して言った。
「確かに何かやたらデカイ『気』を感じるな」ヘイロンが気を澄まして言った。「こんなデカイ『気』、姐さん以外に持ち主はいないだろう」
ララは扉を叩き、中へ声を投げた。
「ねぇ、メイファン! いるの? 昨日はゴメン! 傷ついたのなら謝りたいの!」
しかし扉はあまりに厚く、中に声が届いているかもわからなかった。
「美鈴さんに言って鍵を借りて来よう」ヘイロンが提案した。
しかしメイはそれを無視するようにララに言った。
「ねぇ、ママ。開けちゃってよ」
「え〜? 勝手に……いいのかな」
「何を言ってる? 鍵がかかってるんだぞ?」
不思議がるヘイロンを横目に母子は頷き合い、勝手に開けることで合意した。
ララが手を白くし、扉に当てると、鉄がその部分だけ液体のように柔らかくなり、ずぶずぶと手が入って行く。
ヘイロンが呆気に取られて見つめる前で、メイは聞いた。
「届きそう?」
「なんとか」
カチャリと鍵の外れる音がした。
「開いたわ」
「入ってみよう。メイファン、いるかな」
3人は重い鉄の扉を開け、その向こうを見た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/28(木) 12:43:25.17:gNJgrwo/
「あっ」
「あっ」
「あっ」
「女の子だ」
「綺麗なおばさんだ」
「イケメンまでいるぞ。悔しいな」
檻に入れられた父親そっくりの男が約30人、一斉にメイ達を注目して喋りはじめた。
「おーい。久しぶり」ハオ31號がメイに声を掛けて来た。「君は僕とファックするんだよ。こっちへおいで」
「なんだとぅ」30歳ぐらいのハオがそれを聞いて怒りはじめた。「ずるいぞ、お前。俺もヤリたいよぅ」
「おねえちゃんたち、だれ?」小学校低学年ぐらいのハオが見上げて来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/02/28(木) 17:44:51.83:gNJgrwo/
「あなたこそ、誰?」
メイは聞いてみた。こどもは答えた。
「ぼくはリー・チンハオ」
「パパ!?」
ララは驚いて声も出せなかった。世界で唯一愛する夫は、こんなにもいっぱいいた。
「パパが……30人もいる」メイが呟いた。
をよく読め。52人だ」ヘイロンがよくわからないことを言った。
「どう受け止めたらいいの、あたし、これ」
「クローンだ。リウ・パイロンはお前のお父さんのクローンを作っていたんだ」
「何のために!?」
「わかるか!」
中には現在のハオと同年代の個体も何人かいたが、髭がなかったり微妙に顔が違ったりした。
「き……気持ち悪い」メイは嫌悪を露にした。「パパ気持ち悪いーーっ! あーーっ!」
そう叫ぶと振り返って走り出し、階段を昇って行った。
「メイ!」ヘイロンは放っておけず、後を追った。
「……あはは」ララはようやく声が出た。
「奥さん」50歳ぐらいのハオが話しかけて来た。「やらないか」
そいつはおもむろにズボンを下ろし、パンツも脱ぐと、ララにそそり立った如意棒を見せつけ、胸を張った。
「こんなところまで……」ララの目から涙が落ちた。「こんなところまで同じだなんてーーっ!!」
ララは顔を押さえ、鍵をかけるのも忘れて逃げ出した。
「あーあ」
「行っちゃったよ」
「お前がいきなり変なモノ見せるからだよ」
ハオ達は残念そうに言葉を交わした。
「で?」
「逃がしてくれるの?」
ハオ達が部屋の奥に視線を集中させる。
そこに隠れていた黒い影が白い目を開き、牙を剥いて笑うと、ハオ達に言った。
「アァ、逃がしてヤル」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 11:49:37.98:lQyKpn3S
全て習近平の仕業だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 20:29:36.28:aWe53d6w
呆れるほどの巨大乳輪に苦笑いするしかなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 23:06:14.26:7XJqWcjW
「そうだ。あそこをまだ探していなかった」
リウ・パイロンは思いつき、自分の寝室に向かった。
今朝、起きた時にはもちろんメイファンはいなかった。それだけに寝室にはいないものと決めつけ、探していなかったのである。
灯台もと暗し、いつの間にか帰って来ていて寝ているのかもしれない。

寝室のドアの前で美鈴とばったり出会った。
「あら、糞大統領もここをお思いつきで?」
「お前と気が合うとはムカつくな」
そうけなし合いながら同時にドアを開けると、ベッドにメイファンが寝ていた。
「あら」
「良かった」リウはほっと息をついた。「よく寝ているな。今から起こして着替えさせれば何とか間に合う」
きっちり口までかぶっている布団を剥がそうとするリウを、美鈴が止めた。
「お待ち下さい、大統領。……何かおかしい」
「何だと?」
リウを下がらせ、美鈴は恐る恐るベッドに近づくと、勢いよく布団を剥いだ。
メイファンの頭は仰向けに寝ていた。が、身体は俯せだった。
頭と身体の間が5cmほど空いていた。そしてベッドの上は赤黒い血の色に染まっていた。
「あああああ!?」リウが声を上げた。「メイファン!? メイファン!!」
「探す対象を変更します」美鈴が急いで出口へ向かって歩き出した。「殺人鬼はおそらく近くにいる。メイちゃん達が危ないわ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 23:17:09.54:7XJqWcjW
部屋を出た美鈴はすぐに禍々しい殺気を感知し、足を止めた。
しかしそれは慌てたように逃げはじめた。廊下の角の向こうから階段を昇る気配がする。
「大統領! 追います!」
美鈴はそう言葉を置いて走り出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 23:39:47.20:7XJqWcjW
スカートの両側についたファスナーを上げながら、ハイヒールを脱ぎ捨てて美鈴は駆けた。
階段を昇り詰めた物置部屋のドアの前にそいつはいた。
「……どういうことですの?」
美鈴は目の前のそいつを目にして言葉を失った。
ドアを背にして不敵な笑いを浮かべているのは間違いなくメイファンであった。
しかし、身体がない。『気』だけである。
身体を置いて『気』が外に出てしまったら、生きていられるわけがない。
呼吸も出来ず、血液も通わない。エネルギー源なしでエネルギーだけが存在しているのは不可能な筈であった。
しかしそいつはそこに確かにいた。凄まじい殺気を放って美鈴を睨みつけながら笑っている。
「……まぁ、よろしいですわ」
美鈴はそう言うと、合気道の構えをとった。
「あなたが『気』ならば、私はまさにあなたの天敵。私に触れた瞬間、あなたを吸い取って差し上げましょう」
「天敵ダト?」そいつは笑った。
「えぇ。かかっていらっしゃらないなら、こちらから行きますわよ」
「デハ、お前の天敵はコレカ?」
そう言うと後ろの物置部屋のドアを開いた。
部屋の中から無数のリー・チンハオが美鈴をじっと見つめた。
「ひっ!?」
後ずさった美鈴の後ろからも階段を昇って数人のハオがやって来た。
「本当だ」
「美人だ」
「ヤッちゃえ」
「ヤッちゃうぞぅ」
口々に気持ち悪い言葉を吐くハオに美鈴は全身総毛立ち、震え上がった。
ヤッちゃうぞなどと言いながらどこにもやる気の見えないハオ達が、美鈴には宇宙一気持ち悪い類の宇宙人に見えた。
「いっ、いっ、いやぁぁぁ!!」
パニックを起こした美鈴めがけて巨大な黒い手裏剣が飛んだ。
己の全身を手裏剣に変えたブラック・メイファンは美鈴の身体を真っ二つに裂くと、ヒトデのような姿で床に立った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 23:42:12.03:7XJqWcjW
「あっ」
「話が違う」
「なんで殺す」
「これじゃもうヤレないじゃん」
口々に文句を垂れるハオ達に、ブラック・メイファンは言った。
「お前達もモウ用済みダ」
無数のハオの首が飛び、踊り場は血の海と化した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/01(金) 23:49:24.65:7XJqWcjW
リウはメイファンの亡骸を抱きながら、その気配を感じていた。
真っ黒な『気』の塊が、美鈴の気配を消して、寝室へと降りて来る。
「メイファン……。仇をとるぞ」
そう言うと、目を閉じた穏やかな表情の愛する女の首をベッドにそっと置き、立ち上がった。
派手な赤い中国式の結婚衣裳に身を包んだリウ・パイロンは、全身から衣裳よりも赤い『気』を立ち昇らせた。
入口からユラユラと真っ黒なものが入って来る。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/02(土) 00:00:08.14:lV4KDMBg
リウ・パイロンは松田聖子の赤いスイトピーを熱唱した。
それを聞いていた黒服のオザワ先生が「ブラボー!」と拍手を送った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/02(土) 16:31:34.95:3lXDk8IQ
「お前は……」
入って来た黒い影を見て、リウ・パイロンは小さなその目を見開いた。
「お前なのか……。メイファン」

「ソウ。私ダ」
そいつは小馬鹿にするような笑いを浮かべながら、言った。
「私コソがラン・メイファン。そこで死ンでいるのは偽物ダ」

「俺はお前ごと、メイファンの全てを愛するつもりでいた」
リウは首を横に振ると、言った。
「だが……こんなことをされては、お前を愛するわけにはいかん!」

「愛……ダト?」
ブラック・メイファンは鼻で笑った。
「自分を兄ト慕ウ少女をレイプするのがお前ノ愛ダロウ?」

「美鈴は弱点のリー・チンハオを利用して破ったようだが……」
リウはゆっくりと構えると、真っ赤な『気』を爆発させた。
「忘れたか? お前はこの俺に勝てたことが一度もない!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/02(土) 16:42:09.29:3lXDk8IQ
その頃ハオは、中庭に隠れてタバコを吸っていた。
「あぁ、美味しいなぁ」
最初だけメイファンを探すフリをしていたものの、すぐに抜け出してここでタバコを吸っていたのだった。
「タバコを吸って、酒を飲んで、あとセックスだけして生きて行けないもんかなぁ」
建物の中で何やら起こっているのには気がついていた。しかし誰かが何とかしてくれると思い、腰を上げるのが面倒臭かった。
「もうちょっとしたら中に入って、一生懸命探してたフリでもするかな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/02(土) 20:08:29.29:fxWi0pRR
「お前が『気』の塊ならば」リウは拳を赤い火の玉に変えた。「『気』で破壊するまでだ」
ブラック・メイファンもさすがに身構える。その隙にリウは闘気の準備を完成させた。
リウが前へ突進した。待ち構えるブラック・メイファンの前で突然、視界から消える。
「フン、また超低空アッパーか?」
下を見るが、そこにリウはいなかった。
「上か!」
しかしそこにもいない。
ブラック・メイファンの左側からロング・フックという名の火の玉が飛んで来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/03(日) 14:55:14.25:zqVUqkJw
もちろんピンク・メイファンはお色気担当である。
巨大乳輪拳からのパンチラに固定ファンも多かった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/03(日) 22:42:34.69:WC8c3kph
ブラック・メイファンは正直リウ・パイロンを舐めていた。
53歳ともなれば昔のような技のスピードはなく、老いぼれに負ける理由はないと高を括っていた。
実際、ベッドの上の攻防では体重差でいつも結局負けてはいたものの、スピードにおいては勝っていた。
全身を武器に出来るこの身体ならば、組み伏せられる前に首を落とすことが出来る筈だった。
しかしリウ・パイロンは全力をセーブしていたのだ。
衰えた身体に負担がかからぬよう、おそらくは60%程度の力しか見せてはいなかった。
今、この身体など壊れてもいいとばかりに全力で襲いかかって来た元散打王は、若い頃そのままのスピードでロングフックを放った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/03(日) 22:48:54.37:0R6rONBz
「シカシ、ヤハリ衰えてイル」

僅かの差だった。若い頃にはもうほんの僅かだけ、速かった。

その僅かの差にブラック・メイファンの反撃が食い込んだ。

リウのフックをスゥエーでかわしたメイファンは、身体を柔らかな巨大手裏剣に変えるとともに回転させ、床スレスレを飛んだ。

リウ・パイロンの両足が切断された。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 07:08:18.00:Z1M4+Rii
思いもしなかったカウンター攻撃を受け、両足のなくなったリウ・パイロンは床に前から倒れた。
その背後に着地したブラック・メイファンは、ゆっくり振り向くと無様なリウの姿を見つめ、ニヤリと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 07:15:34.44:Z1M4+Rii
頭のほうへ歩いて回りながら、途中で蹴って仰向けにさせる。リウは顔に絶望を浮かべていた。
「俺が死んだら中国は滅茶苦茶になるぞ」リウは弱々しい声で言った。「中国共産党が復活し、また習近平の時のように、無理な大事を始めるに違いない」
「ドーデモイイ」ブラック・メイファンは唾を吐くように言った。「私に需要ナノは、お前ガ憎い、ソレダケダ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 07:27:04.13:Z1M4+Rii
「そうか……」リウは黒いそれを見つめながら、言った。「お前は凝縮されたメイファンの憎しみなのだな」
「ピュアなメイファンだ」黒いそいつは言った。「そこで死んでいるのは不純なメイファン」
「ピュアな殺意、だろう」リウは否定した。「お前も含めた総合体こそがメイファンだ」
「ドーデモイイ。私は殺意ダケではナイ。今、お前ヲ殺せる喜びにコンナニモ満たされてイル!」
そう言って鋭利な刃物に変えた両手を振り上げたブラック・メイファンの動きが止まる。
『気』を関知して駆けつけたメイとヘイロンが部屋に飛び込んで来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 07:32:03.12:Z1M4+Rii
寝室に飛び込んだメイのほうも動きが止まった。
床には両足のなくなったリウ大統領か仰向けに倒れている。
こちらに背を向けて大統領を今まさに殺そうとしているのは、どう見てもメイファンだ。
しかしベッドには頭と胴体の離れたメイファンの死体が横たわっている。
「メイファン!?」メイは頭がパニックになった。「何、これ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 07:47:29.02:Z1M4+Rii
ブラック・メイファンは振り向くと、メイに襲いかかった。
しかし首を斬る動作ではなく、抱きつくような動作であった。
メイは瞬時に落ち着きを取り戻し、黒い『気』を込めた登脚でそれを迎え撃った。
横にかわしてブラック・メイファンはすぐにターゲットを変える。ヘイロンには真っ直ぐに首を斬りに行った。
あの夜、メイファンに両腕を斬り落とされた経験がなければ、首を簡単に落とされていたかもしれない。
しかしヘイロンは攻撃を後ろにかわし、防御のための両腕を出すこともなく、反撃を繰り出す余裕さえあった。
「ぼぉっしゅ!」
気合いを充分に込めたヘイロンのアッパーがブラック・メイファンの顎めがけて繰り出された。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 08:02:14.89:Z1M4+Rii
クリーンヒットした、とヘイロンは思った。
しかし受けたアッパーの力をそのまま伝えたブラック・メイファンの脚が下から飛んで来た。
みるみる刃物になりながら競り上がって来るその脚を、ヘイロンは寸前でかわした。つもりだった。
しかし顎が二つに割れ、血が飛び散った。
「でええええっ!!」
叫びながら横からメイがキックでブラック・メイファンを蹴り退けた。
蹴られた勢いを利用してブラック・メイファンは猫のように跳びながら逃げた。
ヘイロンは顎を押さえて踞る。リウ・パイロンは両足から大量に出血している。メイはそれを放って後を追うことが出来なかった。
「待ってて! ママを呼んで来る!」
そう言うと白い『気』を探して駆け出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 13:55:05.37:Z1M4+Rii
「待て! メイちゃん」リウが呼び止めた。
足を止め、振り返ったメイにリウは言った。
「あれは放っておけば死ぬ。身体を持たない『気』だけの存在が単独で動けていること自体が奇跡だ。
「あれは身体を必要としている筈だ。しかし今は身体を奪うよりも殺すことを優先しているように見える。
「だが、君に対してだけ、明らかに違う動きをさっき、した。
「君を殺すのではなく、君の中へ入ろうとしたように見えた。
「君があれに身体を奪われてはおしまいだ! 放っておいても死ぬことはなくなり、君の身体を使って君の両親を殺すかもしれない」
「あたし……どうすれば?」
「ここにいろ」
「でも……ママを呼ばないと……! 二人を治療しなきゃ!」
「電話で呼んでくれ」
ヘイロンが顎を押さえながら言った。
「あ……! そか!」
自分がパニックを起こしていたことに気づき、メイは少し笑ってしまいながら、震える手で電話をかけた。
呼び出し音が鳴った。
5回鳴っても、出ない。
10回鳴っても、出ない。
「ママ……?」
おかしい、これはおかしい。
ララはメイファンを探している筈で、電話に出られない理由はない。
ヘイロンが『気』を澄ます。一階の遠くの広い部屋に、真っ黒な『気』と白い『気』が一緒にいるのを見つけた。
「一階だ! あっちのほう!」
メイがヘイロンをすがるような泣き顔で見る。
「お前のお母さんがアイツに襲われている!」
何も言わずにメイはすぐさまトップスピードで駆け出した。
リウ・パイロンは「待て! 行くな!」とは言えなかった。
ただ歯ぎしりをしながらメイの後ろ姿を見送った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 14:03:17.07:Z1M4+Rii
「お前は行かんのか」リウはヘイロンに言った。「顎を割られたぐらいで」
ヘイロンはメイファンの生首を放心したように見つめていた。
やがてリウのほうへ向くと、言った。
「お前……死ぬんじゃねぇぞ」
「これしきで死ぬか。早く行け。メイちゃんにあれが入るのを何としてでも阻止しろ」
「お前は俺達母子の金ヅルなんだからな」
「わかっている。心配するな」
ヘイロンの目から涙が激しく零れた。
「いいか! 金のことだけが心配なんだからな! 死ぬなよ? 絶対、死ぬなよ!?」
そう言うと立ち上がり、出口へ向かって走りながら、叫んだ。
「死んだら殺すぞ! 糞親父!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 14:32:30.54:Z1M4+Rii
少し前、ララはメイファンを探して厨房にお邪魔していた。
式場のビュッフェを支度するのに全員が出払っているらしく、厨房には誰もいかなかった。
「エヘヘ。ここが一番美味しいのに」
寸胴鍋に焦げついたクリームシチューを指でこそげとると、思い切り口に含んだ。
「美味しいっ」
舐めた指を鍋に突っ込むと、再びこそげとる。
「行儀悪いのはわかってますよっ。でもこれはお腹の赤ちゃんのためなんだからぁ〜」
歌うように一人言を言いながら、ララは栄養を摂取していた。
その後ろからゆっくりと近づいて来る気配を感じて、振り向く。
「あっ。メイファン?」
メイファンの形をした真っ黒なものが、仕切りガラスの向こうを通り、やがてララの前に姿を現した。
「ここにいたんだぁ〜? 皆あなたを探してたんだよ?」
メイファンの形をした真っ黒なそれは、ゆっくりと、鋭い口角を大きく上げて、笑った。
「あっ。つまみ食いしてるとこ見つかっちゃったねぇ?」
照れ臭そうに笑うララの左腕が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 14:52:32.52:Z1M4+Rii
ハオは中庭で10本目のタバコを吸おうかどうしようか迷っていた。
「さすがに気持ち悪くなってきたなぁ……。でも他にすることないし」
日陰に隠れていても7月の外は暑かった。
「戻るか? でもあのひと、俺に見つけられたらちょっと……嫌なんじゃないかなぁ」
卑屈な笑いを浮かべて一人言を言うハオがぴくりと顔をこわばらせた。
「やべっ。ララが厨房に入って来た。サボってんの見つかったらキレられるぞ」
ハオはちょうど厨房の窓の下にいて、タバコを吸っていたのだった。
ララの『気』を感じるとハオは自分の気配を消した。
「あっ。あいつ、クリームシチューを舐め始めたぞ」
ハオは窓からそっと覗き、一部始終を見ていた。
「俺には行儀悪いってブチ切れるくせに」
そこへ真っ黒なそれが入って来た。
「あっ。メイファンさんじゃん。見つかったねぇ、良かったねぇ」
そう思いながら眺めていると、突然ララの左腕が血飛沫を上げて飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/04(月) 22:56:46.93:rSu5S7h2
ララの左腕はたちまちイエロー・メイファンに変身した。
そいつはカレーライス大盛りを異常な速度で平らげた後の大量脱糞攻撃が持ち味である。
オザワ先生が遠くから戦況を見守っていた。
「グリーン・メイファン、そろそろ出動準備だ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:00:20.80:XPyxXfdG
ララは火傷をしたような声を上げ、後退った。
ブラック・メイファンは嬉しそうな笑顔をして言う。
「お姉ちゃん、良かったねぇ」
ララが急いで自分の左腕を拾って治そうとするのを見て、右腕も根本から斬り落とした。
「メイのこと捨てて、出て行ったお陰で、新しい家族が出来て、幸せになって」
厨房の窓ガラスを外から激しく叩く音がした。ララがそちらへ目だけを向ける。ハオが窓を叩いて割ろうとしている。
ブラック・メイファンはそれを振り返りもせずに、悲しそうな表情に変わると、続けて言った。
「なんで私のこと『メイ』って呼んでくれなくなったの?」
ララは油汗を流しながら、目の前の真っ黒な『気』の塊と、外のハオを交互に見ながら、歯を食いしばった。
状況はよくわからない。妹が自分を激しく憎み、殺そうとしている。
しかし、死んでたまるか。自分一人の命ではない。
お腹のこの子だけでも、何としてでも守る。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:24:31.45:XPyxXfdG
「くそっ! 防弾ガラスか? これ!」
ガラスが簡単に割れるものと思っていたハオは激しく焦った。
大統領官邸の窓とはいえ、そこは防弾ガラスにまではなっていなかった。ただし大人の男が全体重をかけて体当たりしても割れない程度の強化ガラスである。
ガラスの向こうでララの右腕が飛んだ。
「ララっ! あーーっ!! ララ!!」
両腕がなくなってしまってはもう自分を治すことは出来ない。しかもララは元々戦闘能力を持たない。
自分が行かねば。あそこへ行かねば。
この忌々しい窓ガラスさえなければ。
別の入口はあまりにも遠い。何よりララから目を離すことなどしたくない。
こんな時こそハオは心を落ち着けた。
昔、リウ・パイロンが超高層ビルからあまりに細いロープ一本を足につけ、バンジージャンプの修行をした時に、いかにして助かったか。
誰から聞いたのかは忘れたが、その時の話を思い出していた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:25:17.71:XPyxXfdG
『ハオ、お前は自力で何とも出来なかった。しかし、飛んだだけでも大したものだ。
リウ・パイロンはこの修行で著しい進化を遂げた。高層ビルの窓は強化ガラスで出来ている。
リウは大人の男が全力で体当たりしても割れないその窓ガラスを、拳で割って部屋に入り、助かったのだ。
その時に、いわば火事場の馬鹿力で習得したのが現在のリウ・パイロンの必殺技、超低空アッパーだったのだ』
誰の声かわからない。しかしその声がハオに希望をくれた。リウ・パイロンに出来たことが自分にも出来なくてたまるかと思えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:26:11.64:XPyxXfdG
ハオは心を静かにし、青い『気』を一点に集めた。
リウの赤い炎よりも、それは高い温度を発する。
厨房の向こうからメイがやって来る気配を感じた。
メイは動転し、心を乱しているのがハオにはわかった。
乱すな、落ち着け、静かに、心を落ち着けるんだ。
そして、一気に、放出しろ!
「チンハオ流……菩薩掌!」
強化ガラスがビキビキと音を立てたかと思うと、弾け飛んだ。
その時、ララの首が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:36:58.51:XPyxXfdG
「わかってるよ」ブラック・メイファンはララに言った。「自分の娘にメイって付けちゃったからだよね」
ララは激しく呼吸しながら、窓の向こうで『気』を溜めているハオのことを頼もしそうに見た。
「愛されてるんだよね? 娘に……」
ララはブラック・メイファンの言葉を聞きながら、ハオに自分を見て欲しいと願った。
今から自分がすることを、しっかり見逃さないで欲しい、と。しかしハオは窓ガラスを割ることばかりに集中し、気づいてくれない。
しかし、信じた。きっとハオは、ハオなら気づいてくれる。
「でも世界でお姉ちゃんのことを一番愛してるのはこの私なんだからね!!」
ブラック・メイファンが泣き叫ぶ。
ハオは、きっと気づいた。ララは心の中で『お願いね』と言うと、フッと笑った。
自分の気持ちを鼻で笑われた、そう思ったブラック・メイファンがさらに声を上げて泣き叫んだ。
「お姉ちゃんは私だけのもの……笑うなーーっ!!」
「やめてーーっ!!」
駆けつけたメイが叫び声を上げる前で、ブラック・メイファンはララの首を斬り落とした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 06:56:54.19:XPyxXfdG
床に落ちる寸前でハオはララの首をスライディング・キャッチした。正面を向かせ、その顔を見る。
「ハ……オ」
唇がそれだけ動き、沈黙した。
ハオはその頭を抱き、その唇にキスをする。
斬りつけて来るブラック・メイファンの攻撃を側転で避けたが、服の背中が裂け、血が飛んだ。
「パパっ!」
メイが怒りに燃えた表情でダッシュし、背中へ蹴りを放つ。
ブラック・メイファンはそれをかわすとメイのほうへ振り向き、メイの中へ入ろうと、その胸に向かって飛び込もうとする。
後からやって来たヘイロンがそこへ飛び蹴りを食らわせた。
食らう瞬間に自分から飛び退いたブラック・メイファンは、今度は再びハオに襲いかかった。
ハオはララの生首を抱き、その唇に唇を重ねたままメイのほうへ走った。
メイの手を引っ張ると、そのまま出口から廊下へ逃げ出した。
すぐにメイが先に立ち、自慢の俊足で父の身体を引いて駆け出した。
追おうとするブラック・メイファンの前をヘイロンが立ち塞ぐ。
「こんなことをする貴様を姐さんとは思わん! 殺す!」
ブラック・メイファンはニヤリと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 07:17:05.21:XPyxXfdG
開いていた部屋に飛び込み、メイは中から鍵をかけた。
ハオと並んで壁に凭れて座り込む。
ハオはようやくララの首から唇を離した。
「ママ!」
目を開けて無念そうな表情で固まった母親の生首にメイはすがりついた。
「大丈夫だ!」ハオが言った。「大丈夫だ、メイ! 僕をよく見ろ!」
「ハァ!? 何言ってんの、パパ!?」
「落ち着け! よく見るんだ!」
メイは言われた通り、ハオを見た。
ハオの中に、ララがいた。
白い『気』が、薄く金色に光るとても小さな『気』を抱いて、ハオの中にあった。
「メイ」ハオの口からオカマのような声が出た。「私は無事よ。赤ちゃんも無事」
混乱するメイにハオが説明した。
「メイ、これがお母さんなんだ。お前にはずっと黙っていたけど……。
お母さんは産まれた時から、身体がない。『気』だけの存在なんだ。だからこそ、助かった。
そしてお前の弟も、お母さんと同じなんだよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 07:45:10.11:XPyxXfdG
ララは首を斬られるとわかっていて、斬られる寸前で頭部に移動したのだった。
身体にいては助からなかった。頭部に逃げればハオに口から吸い出して貰うことが出来た。
それでもハオが動転して気づいてくれなければ終わりだった。死んだ頭部の中では呼吸も脈動も止まり、自分もすぐに死ぬ。
しかしハオは気づいた。息苦しくなる暇もなく迅速に、自分を吸い出してくれた。
「愛してるわ、ハオ」
そう言いながら、口をチュウの形にする父親の姿にメイは愕然とした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 07:56:54.25:XPyxXfdG
「ララ、君はメイの中に入れ」ハオが言った。
「それだと必殺の『白色好夢』が使えなくなるわ」ハオの口が言った。
「僕は自分で傷を治せる。君はメイが傷ついた時のためにメイの中にいてくれ」
「あの真っ黒を倒す切り札がなくなるわ。メイがもし傷ついたら私がハオの手を白くして治す」
一人で会話をする父親をメイは唖然として見た。しかし父親の中に母親が入っているということは何とか理解してはいた。
「じゃあ赤ん坊をメイに任せよう」
「そうね。そのほうが私達も闘いやすいわ」
「メイ、口を開け」
父親にそう言われ、思考停止していた18歳の娘は、言われるがままに口を開いた。その口に、父親は思い切り口づけた。
「ヴアアアアア!?」
じたばたと手足を動かすメイの口の中に、父親の舌が差し込まれた。
舌はぐいぐいとメイの舌を押し退けて入って来ると、喉を通った。
いや、舌じゃない、コレ。舌にしては小さすぎるし、綿みたいなものだ。
ちゅぽんと音を立てて口を離すと、父親は爽やかに笑った。
「赤ちゃんがお前の中に入ったぞ。お前が守るんだ」
なんとなくその場の勢いでメイは父親を殴り倒してしまった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 08:01:30.56:XPyxXfdG
「あれっ? えつ? ……ってことは、パパが今、『白い手』を使えるの?」
メイが思い出して、言った。
「そうだぞぅ」
ハオは最愛の娘に殴り倒され、泣きながら言った。
「誰か傷ついた人がいるの?」
ララがハオの声で言った。
「大統領が……リウ・パイロン大統領が! 早く!」
「マジで?」
ハオは嫌そうな顔をしながら、立ち上がった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 08:11:05.73:XPyxXfdG
「ウフフ……。ヘイロン」
ブラック・メイファンはヘイロンに迫っていた。
「お前、私のことが好きなんだろう?」
ヘイロンは左拳を前に出して構えると、言った。
「お前は姐さんじゃない」
「私はメイファンだよ」
その姿は確かに段々と実物に近くなっていた。真っ黒な影のようだったのが、今は乳首や陰毛さえはっきり見える。
「違う! お前は姐さんから出た悪しきものだ! 今、ここで倒す!」
「そんなことを言うな……。私は悲しい」
「惑わされんぞ」
「私も……お前のことが……好きなのに」
「惑わされんぞ!」
「リウ・パイロンなんかと結婚したくなかったんだ。私は……お前とひとつになりたかった。だからこんなことをしてしまった」
「……本当に?」
「あぁ……。ヘイロン。愛しいその唇にキスさせてくれ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 13:11:23.46:XPyxXfdG
「あぁ……。姐さん」
ファースト・キスだった。初めてを憧れの女性と出来る喜びにヘイロンは身体を震わせた。
肩を抱かれ、黒く美しい顔がどんどん迫って来る。
その唇が触れただけでヘイロンは逝きそうになった。吸いつかれると全身が蕩けた。
メイファンの熱い舌が入って来た。
目を閉じてヘイロンは余すことなく味わおうとした。
どんどん舌が奥まで入って来、喉を通って食道へ、もっと深いどこかへと入って行く。
さすがに気づいて目を開くと、メイファンの身体はもう足まで入り込んでいる。
「ふぁふぁふぃふぁふぁぁぁあ!!」
怒りの色を帯びた意味不明の叫びを最後に、ヘイロンはメイファンに身体を乗っ取られた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/05(火) 13:38:16.62:/BWss1tK
ヘイロンはピンク・メイファンに変身した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/06(水) 13:13:06.21:cR9IuNnT
イギリス王室は激怒した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/06(水) 16:37:31.22:nvYdPhQj
ハオ號機に乗ってララが寝室に駆け込むと、リウ・パイロンは仰向けに床に倒れ、一人言を呟いていた。
「ジンジンするよぅ……。アハハ、お花畑が見えて来たぁ……」
「出血多量。手遅れ」ララは一瞬で診断すると、そう言った。
「そんなこと言わずに足、つけてあげようよぅ」ハオが言った。
「じゃあ、あたし『気』だけ出すから、ハオがつけて」
「お、俺が? いや俺がどれだけドジか、君、知ってるだろ」
「ドジでも足をくっつけるぐらい出来るわよ」
「俺、小4まで靴の左右がわからなかったんだぞ! 左右間違えてつけちゃったらどうすんだ!」
「なんなら前後を間違えてつけてもいいのよ?」
「いいんかい!」
「とにかくハオがつけて。昔からそうだったでしょ?」
「は? 何が?」
「あたしが白い『気』を使うより、ハオが手を白くして治したほうが強力だったじゃない」
「ないない! それ、誰の話?」
「あれ? そう言われれば……じゃあ、あれは、誰?」
「……メイファンだ」
「そうだ! 『メイファンの白い手』!」
「なんで忘れてたんだろう!? 俺に超高層ビルからバンジージャンプさせたのもメイファンだった!」
「あぁ!」ララはベッドの上のメイファンの死体へ駆け寄ると、首と胴体を合わせ、白い『気』を送った。
「思い出したよ……メイファン! お願い! 目を開けて!」
しかし死後時間が経ち過ぎている上、何より首を斬られていては生き返らせようがなかった。
「メイファン! あぁ……メイファン!」
「ねぇ、パパ、ママ」メイが後ろから言った。「こっちも早くしないと死んじゃいそうだよ? 早くしてあげて」
リウ・パイロンは気が遠くなり、幻覚に襲われていた。
「あぁ……シューフェン。やっと会えた! 今、君のところへ行くよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/06(水) 16:47:49.41:nvYdPhQj
救急車のサイレンの音が聞こえて来た。
「あっ。誰か救急車を呼んでくれてたのか……。メイか?」
「あたしじゃないよ。そんな余裕なかったもん」
「じゃあヘイロン君ね」

玄関に到着すると救急車から救急隊員が二人、降りて来た。
玄関が開き、グレーのスーツに身を包んだ美しい青年が一人、迎えに出て来た。
「電話をされたのはあなたですか?」
「そのようだな」青年は答えた。
「それで、怪我人はどちらに?」
「くだらん仕事をするな」青年が殺気の籠った声で言った。
「は?」救急隊員は頭のおかしい人を見る目で青年を見た。
「人を助けて何になる? いいか、人はな、人間は、すべて殺すべきものなのだ」
そう言うと青年の両手が真っ黒に染まる。
風切り音とともに救急隊員の首が飛んだ。
「フム。ヘロ號機の性能は大したものだ」
ブラック・メイファンはヘイロンの口でそう言うと、玄関からまた中へ入って行った。
「さて、殺戮式の始まりだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/06(水) 16:55:50.59:nvYdPhQj
結婚式場には既に多くの客が集まっていた。
リウ・パイロン大統領の結婚式である。政府の要人、芸能人、その他壮壮たる顔ぶれが集まっていた。
「もう予定の時間を大分過ぎていますな」
「まぁ、我々中国人。時間にいい加減なのは当たり前ですからな」
そこへ扉が開き、花嫁の着る筈だった真っ赤なチャイナドレスを着てヘイロンが入って来た。
てっきり花嫁だと思った客達は、ムキムキのイケメンの豪華な女装に呆然とした。
「やぁ、皆様、よくぞお集まりで」
ヘイロンの口でブラック・メイファンは言った。
「リウ・パイロン大統領の殺戮式へようこそ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 09:56:15.03:42ZQaTqV
「よくやった、ララ!」ハオが言った。
「やったね! さすがママ!」メイが後ろから抱きついた。
蕁麻疹だらけでハァハァと息を荒らしながら、ハオの身体でララが呟いた。
「やった……。あたし、リウ・パイロン・アレルギーを克服したんだわ」
リウの血は完全に止まり、足は何ともなかったように元通りくっついていた。
「ありがとう、ララ」
リウ・パイロンはむくりと起き上がると、その手を両手でしっかりと握った。
「頭はフラフラしない?」
「少しまだぼうっとするが、大丈夫だ」
「よかった」
そう言うとララは口から泡を吹き、白目を剥いて倒れかけた。ハオが素早く身体の操縦権を取り戻し、立ち直る。
「手を離してください」
「ひどいな……。ララ……」リウは傷ついた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 10:03:37.44:42ZQaTqV
「ところで、アイツは?」リウがブラック・メイファンのことを聞いた。
「アイツ?」ハオはきょとんとした。
「あっ。ヘイロン! ……大丈夫かな」メイがやっと思い出した。
「ヘイロン? ヘイロンがどうしたんだね?」リウの表情が焦る。
「ママが首を斬られて、パパが連れて逃げて、あたしが身体を乗っ取られかけて、ヘイロンがそれを助けてくれて……」
「ヘイロン一人でアレと対峙しているのか!?」
「うん」メイの顔が涙で崩れた。「もう……殺されちゃったかな」
リウは急いで立ち上がると、言った。
「コントロール室へ行こう。あそこなら邸内の全てが見渡せる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 10:11:38.90:42ZQaTqV
ずらりと並んだモニター画面の中の4つが結婚式場を映し出していた。
式場は血と肉で埋め尽くされていた。
無数の身体と同数の小さな首が床に転がり、その中で血に染まったスーツ姿のヘイロンが食事をしていた。
部屋を囲うように並べられたビュッフェ・スタイルの料理を楽しそうに選びながら口に運んでいる。
「乗っ取られたのか……あのバカ息子」
リウはそう言いながらも少しほっとしたようだった。
「栄養補給しているんだな」ハオが言った。「これで放っといても死ななくなっちまった……」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 10:56:18.44:42ZQaTqV
「真っ黒メイファンはあたしの身体を欲してるんだよね?」
「メイ!?」なんだか嫌なことを言い出した娘の顔を、ハオは見た。
「あたしがアイツの前に出れば、ヘイロンの身体から出て、乗り換えようとするんじゃない?」
「駄目だ」リウが言った。「そんな危険なことはさせられない」
「そうだそうだ」ハオが言った。「ヘイロンはどうなってもいいけど、メイはどうなっても良くはないんだから!」
「アンタ……」リウが何か言いかけて黙った。
「メイファン、あたしの中にいたんだよね? ずっと」メイは言った。「でもあたしはメイファンに乗っ取られなかったよ? あたしのほうが強かった」
「状況が違う」リウが言った。
「あたし、メイファンを抑えてみせる!」
強く言い切るメイをハオが叱った。
「何を言ってるんだ! 可愛い娘にあんな変なモノ食べさせられるか!」
「メイちゃん」リウは優しい目をして、言った。「君の『気』は黒いメイファンにとても近いものだ」
「だからだよ!」メイは力説した。「あたしはこの黒い『気』を使えるようになった。だからアイツも取り込んで、あたしが支配してやる!」
「そうなればいいが、逆に出れば黒いメイファンの力を増幅させることになる」
「ならないよ! あたし、ずっとメイファンを閉じ込めてたんだから」
「やってみなければわからない。その時とは状況が違うんだ」
「でも……!」
「メイちゃん」リウはメイの頭を撫でた。「君の身体の中に、赤ちゃんがいるよね?」
メイはそう言われて思い出した。自分の中に、お腹のほうに、ララから預かった自分の弟が薄い金色に光っていた。
「君はその子を守ってやってくれ」
そう言うと、リウ・パイロンは立ち上がった。
「自分の息子の後始末をするのは父親の役目だ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 13:31:30.02:7SyGco9u
リウは演説を始めた。
「旅順要塞に居座る露助を追い出そう!乃木大将万歳!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 16:52:26.52:5plzBQsF
「りょじゅ……はっ? わ、私は何を言ってるんだ?」
リウは我に返ると寝室を出てゆっくりと階段を降りはじめた。
「乃木大将……か。清のボンクラどもが日本に旅順を取られなければ、ロシアも負けずに済んだものを」
階段を降り切ると、まっすぐ式場へと向かう。
「……さっきから何を言っているんだ、私は。歴史に『もしも』はない。あるのは未来だけだ」
式場の扉のノブを握りしめた。
「今を動かし、全力で未来を作るのみだ!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/07(木) 18:11:41.34:DZ15x6FF
ドアの向こうはモニター画面で見た通りの血の海だった。
メイファンに身体を乗っ取られたヘイロンは貴婦人の死体を枕にすやすやと眠っていた。

「あっ。疲れたんだな。お腹もいっぱいになって眠たくなっちゃったんだな。可愛い…」
リウはそれを見て目を光らせた。
「チャーンス。さてどうする?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/07(木) 22:27:21.40:0+WO69iE
リウはヘイロンの巨大乳輪にむしゃぶりついた。
「ああ、やっぱりこれがいい・・」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/08(金) 13:15:10.61:KY7+CoVq
二人はシャワールームに案内された。
しかしそこはガス室だったのである。
猛毒ホスゲンを吸い込み二人は苦しみながら死んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/08(金) 20:13:33.74:ZX7dKXIC
リウとヘイロンの墓の前で、オザワ先生は巨大慰安婦少女像の建築を誓った。
生き残った日本人をほぼ全て動員しても最低5年はかかる一大事業であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/09(土) 07:26:46.33:GKAZRwIl
遊び疲れてフェレットのように深く眠るヘイロンに静かに近づくと、リウはその顔を見た。
眉毛は太く逞しいが、睫毛は女性のように繊細で長い。自分に似ているが、自分を修正してイケメンに作り替えたような顔だった。
閉じた瞼の奥で眼球がぴくぴくと動いているのがわかる。何の夢を見ているのだろうか。
唇はクレヨンで塗ったようなピンク色で、しっとりと濡れている。
リウはその唇に自分の口を寄せ、熱い吐息とともに吸いついた。
舌を差し入れ、唇をめくる。閉じきっていない歯を舌で開かせ、奥へと進む。
逞しい舌が若々しいオスの匂いを放つ舌と唾液を混じり合わせながら、のどちんこを露にさせた。
その奥で眠っているブラック・メイファンをリウは思い切り吸い出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/09(土) 14:52:06.36:08CZnA6f
リウとヘイロンは再び墓のなかに帰っていった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/09(土) 20:05:26.29:sF+vaC9u
5年後、東京に高さ4000mを超える超巨大慰安婦少女像が完成した。
富士山をも凌ぐその壮大な像に世界は驚嘆した。
少女像の目には弾道ミサイル発射口が備えられ、遠くワシントンに照準が向けられていた。
そのミサイル発射ボタンを握っているのはもちろん習近平総統である。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/10(日) 08:52:30.61:fpNsuKNN
世界は習近平のもとにひれ伏すであろう!
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/10(日) 14:06:32.42:FHFZNX2o
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  |∵.|  \___|_/| < 慰安婦少女像はかつて恐るべき科学力で天空にあり
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  |     ・ ・   | <  全地上を支配した恐怖の帝国だったのだ
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創る名無しに見る名無し [] 2019/03/10(日) 18:39:25.23:TUYtCJUQ
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創る名無しに見る名無し [] 2019/03/10(日) 18:40:44.07:TUYtCJUQ
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| 行ってきまぁ〜す♪ |
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ぶお〜ん( ⊃┳⊃
    ε´ヽJ⌒ノ
   ( ( ・ω・)
≡≡≡◎-◎^^⊃^⊃
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/12(火) 09:49:30.28:3/x53hrm
ツイッターやネットでテクノロジー犯罪と検索して、まじでやばいことを四代目澄田会の幹部がやってる
被害者に対して暴力団以外にタゲそらしをしてるがやってるのは暴力団で普段外に出ることが少ないため遊びで公共の電波と同じような電波を使って殺人をしてる
統失はほとんどが作られた病気で実際は電波によって音声送信や思考盗聴ができることが最近明らかになりつつある
警察や病院では病気としてマニュアル化されてしまっているのが現状で被害者は泣き寝入りしてる
被害者がリアルタイムで多い現状を知って、被害者間でしか本当の事だと認知できていない
実際にできると思われていない事だから、ただの幻聴ではない実際に頭の中で会話ができる
できないことだと思われているからこそ真面目に被害を訴えてる
海外でも周知されつつあることを知ってほしい。
このままだとどんどん被害が広がる一方


#テクノロジー犯罪
#四代目澄田会

[参考]
ttp://https://black.ap.teacup.com/yamisiougn01/6.html
ttp://https://tekunoroji-hanzaihigai.jimdo.com
ttp://https://blogs.yahoo.co.jp/patentcom 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:87f20c3c9ee883ab649a4d7f8b996d63)
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/12(火) 12:32:22.27:Jaszvbot
ハオは寝室の壁に凭れ、自分の中に声を投げ続けていた。
「ララっ。起きろ。起きてくれぇ」
ララが気を取り戻さなければ必殺の合体技『白色好夢』が使えない。
ハオ一人では到底メイファンに敵わないからには、ララが起きないことには動くことが出来なかった。

メイはベッドの上のメイファンの死体をずっと眺めていた。

メイファンと暮らした約4ヶ月の思い出が胸の中を駆け巡っていた。

ビールの銘柄を巡る喧嘩、意外に何でも作れるメイファンの手料理、相談に乗ってくれたあれやこれやのこと……。
暴力、横暴、支配や放置されたこともあったけれど、満たされない学生生活を送る自分を支えてくれた一人は間違いなくメイファンだった。
毎晩のようにつけてくれた『気』の稽古のお陰でこんなにも強くなれた。
しかし、またママを守れなかった。
何より、メイファンのことを守ってあげられなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/12(火) 12:37:05.44:Jaszvbot
『何のために、あたし、強くなったの?』
メイは自分に問いかけた。
『愛する人を守るため……そうだよね?』
メイは両拳に黒い『気』を集めた。
『また守れないっていうの!?』
そして今、誰が危機に陥っているのか、考えるまでもなくわかっていた。
『ヘイロン!』
メイは側にあったテーブルを拳で打った。テーブルは派手な音を立てて粉々になった。
「メイ!?」
ハオが察して叫んだが、メイはもう立ち上がり、駆け出していた。
「メイーー!! 戻れ!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/12(火) 12:42:03.97:Jaszvbot
『メイファンはあたしのことを(お前は、私)と言っていた』
メイは廊下を全力で駆けながら考えた。
『つまり、あたしはメイファンなの? それとも……』
根拠はなかったが、そう信じるしかなかった。
『そう! メイファンがあたしなんだ! メイファンはあたしの一部!』
式場のドアの前で足を止めた。
『あたしはメイファンの黒い『気』を取り込んで、支配できる!』
思い切りドアを開いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/12(火) 12:47:40.15:Jaszvbot
ドアの向こうで、ヘイロンが自分の胸に自分の手を突き刺していた。
その胸から大量の血が床に迸り、ヘイロンの肩を掴んでリウが叫んでいた。
「ヘイロン! 何てことを……!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/12(火) 19:36:15.26:BxKvtPWZ
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  |     ・ ・   | <  事を急ぐと元も子もなくしますよ閣下
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創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/13(水) 09:36:51.45:wvlIll8j
習近平「私の本当の名はロムスカ・パロ・ウル・ラピュタだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/14(木) 12:23:59.11:b6k5FrZH
と思いきや、自分のことを習近平と思い込んでいる痴呆老人だった。

老人の名は銅鑼右衛門。またの名をドラエモソ。
腹話術人形のアソパソマソと会話するのが日課だ。
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/15(金) 06:16:21.50:AXpbLsrf
ツイッターやネットでテクノロジー犯罪と検索して、まじでやばいことを四代目澄田会の幹部がやってる(アメリカではMKウルトラ計画)
被害者に対して暴力団以外にタゲそらしをしてるがやってるのは暴力団で普段外に出ることが少ないため遊びで公共の電波と同じような電波を使って殺人をしてる
統失はほとんどが作られた病気で実際は電波によって音声送信や思考盗聴ができることが最近明らかになりつつある
警察や病院では病気としてマニュアル化されてしまっているのが現状で被害者は泣き寝入りしてる
被害者がリアルタイムで多い現状を知って、被害者間でしか本当の事だと認知できていない
実際にできると思われていない事だから、ただの幻聴ではない実際に頭の中で会話ができる
できないことだと思われているからこそ真面目に被害を訴えてる
海外でも周知されつつあることを知ってほしい。
このままだとどんどん被害が広がる一方


テクノロジー犯罪
四代目澄田会もやってる

[参考]
ttp://https://black.ap.teacup.com/yamisiougn01/6.html
ttp://https://tekunoroji-hanzaihigai.jimdo.com
ttp://https://blogs.yahoo.co.jp/patentcom
ttp://https://twitter.com/celesty_cs 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:87f20c3c9ee883ab649a4d7f8b996d63)

ttp://https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account)
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 10:14:22.36:4m0Bg5DB
ヘイロンは死んだ。また救えなかった。
メイは絶望しその場に立ち尽くすことしかできなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 16:49:09.95:IsF1u0oS
数秒前、リウはブラック・メイファンを吸い出すことに成功しかけていた。
しかし吸い出してどうするのか? ヘイロンよりも強いリウが身体を乗っ取られたなら、事態は更に悪化するかもしれない。
リウは自分の身体にメイファンを取り込んだ瞬間、自決しようと決めていたのである。
それでメイファンは死ぬ。
もちろん自分も死ぬが、それで構わないと思っていた。
愛するメイファンの一部とともに死ねるのなら。そして、我が息子を守って死ねるのなら。

しかし、吸い出しかけたブラック・メイファンは、あまりにも大きくなりすぎていた。
吸い込んだものは小さなしっぽに過ぎず、その先には象の巨体が待っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 17:01:42.76:IsF1u0oS
「んばぱぁっ!!」

ヘイロンが心臓を狙って突き出してきた手刀をリウは後ろへ跳んで避けた。
きつく重なり合っていた父と息子の唇が離れた。
もう少しだというのならリウは離さなかったであろう。しかし全くの不可能を悟り、躊躇いなく離した。

「レイプの次は息子の唇を強引に奪うのかよ、変態大統領?」
メイファンはヘイロンの口で嘲る言葉を放った。その口はリウの唾液で濡れている。

「メイファンの姿をした悪魔め、ヘイロンから去れ!」
リウはそう言って近くにあった十字架を掲げてみたが、もちろん何も起こらなかった。

しくじった。というより、これを吸い出すのは不可能だ。
そう確信したリウ・パイロンは、瞬時に気持ちを切り替えた。
愛する女メイファンと、血を分けた息子ヘイロンを、同時に殺す。
その後、自分は……

リウは渾身の赤い『気』を燃え上がらせ、拳を握ると、噴き上がるマグマの如きアッパーを前進しながら放った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 17:14:01.33:IsF1u0oS
「遅いって言ってんだろ」
メイファンは若く逞しくそしてしなやかなヘイロンの身体を動かして、リウのアッパーを容易く横に避けた。
「リウ・パイロン……。長かった! ようやくお前を殺せる!」
心から嬉しそうにそう叫ぶと、ヘイロンの右腕が青竜刀に変わり、リウの胴体を横から薙いだ。
飛んだのはヘイロンの身体のほうであった。リウの巨体が高速で回転し、右の回し蹴りがメイファンを襲った。
死角から突然現れた暴走列車にはねられたように、ヘイロンの大きな身体が肋の砕ける音とともに弾け飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 17:24:34.77:IsF1u0oS
誰にも使ったことのない技だった。
超低空アッパーから右回し蹴りのコンビネーション。
誰も超低空アッパーを避けたものがいなかった故に使う機会がなかったのだ。
「まさか我が子に使うとはな」
結婚式の招待客が作る血の海に沈んだメイファンへ向かい、リウはゆっくりと歩いた。
手にはウェディングケーキナイフを持っている。
「許せ、息子よ」
リウはそう言うと、長いそのナイフを振り上げた。
「俺もすぐに行く」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 17:40:41.10:IsF1u0oS
「ふざけんなよ、糞大統領」
背後から美鈴の声がした。
「アンタが死んだら、この国はどうなると思っていらっしゃるの?」

中国共産党が復活する。それだけにとどまらないだろう。
リウの後を狙うティエンは、過激な世界征服思想の持ち主であり、習近平時代の夢の続きを求める一部の民衆に強く支持されている。
民主制維持を願う多くの民衆が支持すべきリウ・パイロンの後任者はいない。
中国が巨悪となる時代がやって来るだろう。

しかし妻となるはずだったメイファンと、唯一リウが自分の嫡子として迎えてもいいと思いはじめていたヘイロンを失って、果たして生きて行けるだろうか?
そんな時はいつも尻を叩いてくれた秘書の美鈴まで失って?
リウ・パイロンも人の子である。
何もない未来を見て生きて行けるほどの強さは持ち合わせていなかった。

振り上げたリウの手が止まり、そこへメイファンにより槍に変えられたヘイロンの足が襲いかかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 17:57:00.34:IsF1u0oS
リウは蹴りを後ろへ跳んで避けた。
むしろ前へ出て、差し違えるべきであった。
立ち上がるなり、黒い長刀に変えたヘイロンの腕で放って来たその突きを、リウは避けることが出来なかった。
長刀はリウの腹部に突き刺さり、最早メイファンの操るヘイロンを止められる者は誰もいないと思われた。
しかし長刀は、リウの腹部に届く寸前で止まった。
「ヘイロン?」
メイファンの支配を掻い潜って、渾身の力で攻撃を止めているヘイロンの姿をリウは見た。
黒い長刀がじわじわと短くなって行く。
リウは前へ出て、ウェディングケーキナイフを捨てた。
「来るな!」
明らかにヘイロンの声が言った。
リウの動きが止まる。
もう少し近づけば、ヘイロンのもう片方の腕がメイファンの意思で繰り出されるところだった。
ヘイロンの額から大量の脂汗が滴る。
「ヘイロン!」
父は息子の内なる戦いをただ見守るしか出来なかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 18:08:31.65:IsF1u0oS
ヘイロンの戦いは短かった。
「俺らの糞親父を殺されて……たまるか……よ!」
鋭い刃物に変えられた自分の腕を、ヘイロンは躊躇うことなく自分の胸に突き刺した。
大量の血が床に迸り、倒れかかるその肩をリウは掴んで支えた。
「ヘイロン!」リウが叫び声を上げる。「何てことを!」
そこへちょうどドアを開いてメイが飛び込んで来る。
ヘイロンの身体とともに死にかけていたブラック・メイファンは、その姿を見ると嬉しそうに牙を剥いて笑った。

「いやぁぁぁぁ!!」
メイは悲鳴を上げ、駆け寄った。
「ロン! いやぁぁ!!」

走って来るメイの身体めがけ、ヘイロンの口から真っ黒な煙の塊がずるずると現れると、真っ直ぐに飛んで来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 18:10:44.31:IsF1u0oS
飛びかかって来たそれは、口から入るまでもなく、メイの胸へ染み込むような音を立てて、入った。
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/16(土) 18:41:25.45:6Qvat2uE
     ____
    /∵∴∵∴\
   /∵∴∵∴∵∴\
  /∵∴∴,(・)(・)∴|
  |∵∵/   ○ \|
  |∵ /.  ミ  | 彡 |  / ̄ ̄ ̄ ̄
  |∵.|  \___|_/| < 愚か者!
   \|   \__ノ /  \____
     \___/

     ___
    /     \     _____________
   /   ∧ ∧ \  /
  |     ・ ・   | <  お叱りは後 きゃつらメイ様を狙っています お早く!
  |     )●(  |  \_____________
  \     ー   ノ
    \____/
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 20:43:39.23:kquujbNx
「ロン! いやぁぁ!!」
悲鳴を上げながらそのまま走り寄って来たメイに、リウは思わず身構えた。
肩を掴んで支えていたヘイロンの身体が崩れ落ちかけ、急いでまた手を添える。そのまま床へ寝かせる。
「ロン! ロン!」
メイが自分の膝にヘイロンの頭を乗せ、顔中を涙で濡らしてその頬を両手で触った。
「メイ……」
ヘイロンは息も絶え絶えに、口を開いた。
「死んじゃダメ! 死なないで!」
「お願いがあるんだ、メイ……」
「喋らないで! 今、ママを呼ぶから……」
「いや……俺はもうダメだ……。自分の身体だ……自分でわかる」
「諦めんな! 頑張れよ! バカ!」
ヘイロンはなんとか手を動かし、自分の口から噴き出る血を拭いた。そして、言った。
「キスしてくれないか」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 20:51:47.77:kquujbNx
リウは構えを崩さずに見守った。
メイに殺気はない。それどころかブラック・メイファンの禍々しい真っ黒な『気』が嘘のように消えてしまった。
ここにあるのは普通にメイの黒い『気』だけだ。

最期にメイにキスをして欲しいというヘイロンの言葉の意味を、メイは恐らく正しく理解していた。
愛する女のキスが最期に欲しい、という意味ではない。
女を知らずに死ぬのは悔しい、最期にキスだけでも味わいたい、という意味に違いなかった。
しかしメイは自分の膝の上のヘイロンの頬を愛しげに撫で回すと、逆向きに顔を近づけた。
童貞のまま死ぬ哀れな青年の願いを叶えてあげたいという気持ちもあったが、それより何より自分がしたかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 21:09:34.69:kquujbNx
メイはヘイロンの唇にそっと唇を重ねると、気持ちを込めて何度も小さく吸いついた。
薫り立つような少女の愛に、ヘイロンは弱々しい力で応えた。
唇を押しつけ、包み込むようなメイのくちづけに、涙のしょっぱさを感じながら、ヘイロンは愛を返した。
メイが唇を離す。
目を開けるとヘイロンが優しく微笑んでいた。そして、言った。
「舌も入れてくれ、頼む」
メイは何も言わずに再びくちづけると、彼の唇を割って舌を伸ばし入れた。
ヘイロンも舌を伸ばし、柔らかく温かく、熱く濡れた軟体動物のような二つの舌が互いの口の中で絡み合った。
やがて離れると、メイは自分の国の言葉でぽつりと言った。
「I love you, Hei long……」
ヘイロンはそれには何も答えず、満足そうに笑うと、言った。
「ありがとう。これで死ねる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/16(土) 21:17:50.45:kquujbNx
「ヘイロン君!?」
そこへ入って来たララが、ハオの口で声を上げた。
「ママ!」メイが振り返る。「ロンが……。お願い! 助けて!」
ララは急いで近づくと、ヘイロンの状態を確認する。手刀は心臓を掠めて外れていた。
「うん、大丈夫。任せなさい」
ララはそう言うと白い手をヘイロンの胸に当てた。
「助かるの!?」
顔を涙でぐしゃぐしゃにして聞く娘に、ララはウインクをした。
「これぐらい、朝飯前」
「えっ……」
ヘイロンが困ったような声を出した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 07:02:53.18:Upw3giYq
「ありがとう、ララ」
リウはララがまた気絶しないよう、めちゃめちゃ遠いところから礼を言った。そしてメイを呼ぶ。
「メイちゃん、ちょっとこっちへおいで」
「行っちゃダメ。レイプされるわよ」
「ひどいな! ララ……」
「はい、大統領」
メイは答えると、ヘイロンの頭をそっと芸能人の死体の上に置き、リウの傍へ歩いた。
「大丈夫なのか?」
赤い正装を血で黒くして自分の前に立つメイの内側を隅々まで確認しながらリウは聞いた。
「何がですか?」
メイの答え方はなぜか不機嫌そうに見えた。
「何が……って。アレが君の中へ入っただろう」
気をつけろ。メイファンは殺気のまったくないところからいきなり人の首をはねる。
そう思いながら警戒を解かずにいるリウに、メイは言った。
「アレって?」
「メイファンだよ。真っ黒なメイファン」
「あたしの中に? 入ったんですか?」
「気がつかなかったのか?」
「気がつかなかったです」
リウはどうしていいのかわからなかった。あれを気づかないわけがない。しかし目の前の少女は、入られる前と何も変わりがない。
「君の内側を見てくれ。よく見てくれ。おかしなものがいるはずだ」
メイは目を閉じ、『気』を澄ませ、自分の中に感覚を探った。そして再び目を開けると、邪念のまったくない目で言った。
「何も変わりないです」
「バカな……!?」
「あ」
「なんだ!?」
「じゃ、やっぱり、そうだったんですよ」
「何がだ」
「あたし、メイファンを支配できたんですよ。あたしの中にいる限り、メイファンは何も出来ないんだ。あたしのほうが、強いんだ」
「……」
「ほら、言ったでしょ?」
「……」
「もっと早く、あたしの言う通りにしてれば」メイはリウを責めるような目で見た。「ロンが死にかけたりせずに済んだのに」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 07:13:21.26:Upw3giYq
ヘイロンはララの治療ですぐに良くなり、立ち上がったが、メイと目を合わせることが出来なかった。

ハオとララはリウから話を聞き、娘の身体を心配そうに見た。
しかしメイファンはどこにも見当たらず、いつも通りのメイの『気』をひとつ感じられるだけだった。

「一件落着ってこと?」
ハオが気の抜けた顔でそう言ったが、誰も安心した顔をしていなかった。
ただメイだけが、疲れきった顔で両親に寄りかかると、すべてが終わったというように、こう言った。
「眠い……。あたし、凄く眠い」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 07:37:11.86:Upw3giYq
警察がやって来たが、犯人のことを正直に話しても信じて貰えそうになかった。
最近頻発しているテロリストの仕業であり、犯人は逃げてしまったということにして、その場は収まった。

リウは3階へ上り、そこで真っ二つになって死んでいる美鈴を見た。
ハオとメイも上がって来たが、周りで首を斬られて死んでいる無数のハオクローンのこともあり、あまりの凄惨さに見るなと止めた。

20年間、自分を支えてくれた優秀すぎる秘書の顔と断面を繰り返し見ながら、リウはぼそりと言った。
「ありがとう……。すまなかったな」
悔しさで固まったその瞼に指を触れ、静かに閉じさせてやった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 07:46:23.10:Upw3giYq
「あ〜あ。また身体なくしちゃった」
官邸の一室を借りてコーヒーを飲んで休みながら、ララとハオが一つの口で会話をしている。
「僕のカラダに何か不満でも?」
「これじゃ夫婦喧嘩も出来ないじゃない」
「妹とは一つの身体で姉妹喧嘩してたじゃないか」
「大体、太極拳教室の生徒さん達にどう言うのよぉ? 『奥さんは?』『ここでぇす』とか言うの?」
「死んだことにすればいいじゃん」
「軽く言うなぁ〜! アメリカじゃあたし、戸籍もある一人の人間なんだから!」
そこへリウ・パイロンが入って来ると、ララに言った。
「ララ、実は君にプレゼントがあるんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 08:00:34.90:Upw3giYq
ハオクローンのいた地下室をさらに奥へ進むと扉があった。
中へ入ると培養液の中で全裸の少女が眠っていた。
白い肌に栗色の長い髪。21歳のララの姿であった。

「これ……は」
ハオの股間にテントが張った。
「習近平が作らせていたんだ。当時はまだまだ未完成だったんだが、私が引き継いで研究し、完成させた」
ララはガラスの向こうの自分の眠る姿を茫然と見つめた。リウが話を続ける。
「彼女は身体こそ21歳だが、中身は空っぽだ。ただ生命を維持しているだけで、赤ん坊ほどの精神すら持たない」
「きれい……」
ララは自分そのものの少女を見つめて呟いた。
「君の身体にするといい」
「は、早く入れよう」
ハオが少女の桃色の唇をギンギンに見つめて、言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 08:17:09.17:Upw3giYq
メイが目を覚ますと、豪勢なベッドの上だった。
ひどく疲れていた身体は回復していた。
思い切り伸びをし、大きな口を開けて欠伸をする。
着物はパジャマに替えられていた。パパが着替えさせてくれたのかと思うと、ちょっと気持ち悪くなった。
起き上がるとちょうどそこに大きな鏡があった。
鏡の中の自分の顔が何かうまくいったという風に笑っていた。
驚いて二度見すると、普通に寝起きの自分の顔だった。
身体中が汗でベトベトしている。
シャワーを借りようと立ち上がり、廊下へ出ると誰の気配もなかった。
暫く歩くと血の匂いがしはじめたので、引き返した。
「パパ?」
声を投げながら反対側の廊下を歩いた。
「ララ?」
声を投げながら歩いて行くと、自分の中で何かがどくんと動いた。
見ると薄い金色の光に包まれて赤ん坊が自分のお腹を内側から蹴ったのだった。
「あ。蹴った! 蹴ったよ!」
メイは嬉しそうにそう言うと、小走りに母親を探した。
「ララ〜! 赤ちゃんがあたしのお腹、蹴ったよ〜!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 08:48:24.18:Upw3giYq
「メイ!」
背後の部屋から誰かが顔を出し、呼んだ。
振り向いて見るとヘイロンだ。青いパジャマを着ている。
「ロン! よかった」
メイは駆け寄るなり、抱きついた。
「うっ」ヘイロンが情けない声を出す。
「元気になったのね?」
「なっ……何の話だ」
ヘイロンは腰を引き、元気になった股間がメイの身体に当たらないようにする。
それに気づいているのかメイは、ウフフと笑うと、ヘイロンの恥ずかしくなっている部分を追うように、さらに身体を密着させた。
「お前の母さん達、地下室にいるぞ」
そう言うとヘイロンはメイの身体を引き剥がし、先を歩き出した。
「行くぞ」
「あん、待ってよ〜! ロン!」
メイはわざとらしく足が遅いフリをしながら背中を追った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 09:00:46.93:Upw3giYq
地下室に先に入ったヘイロンは、輝くばかりの白い裸体をさらけ出した栗色の長い髪の少女に笑いかけられ、
「どはー!?」と悲鳴を上げて逃げ出した。
「あら、メイ。起きたのね?」
メイはその美少女に思わず見とれた。初めて見るというよりは、あまりにも懐かしい姿に見えた。
「ララ、ララなのね?」
「母親を名前で呼ぶんじゃないわよ」ララは可笑しそうに言った。「でも、ちょうどいいわ。その呼び方を癖にしなさい」
「綺麗だよ、綺麗だよ」
しつこくキスして来ようとするハオを払い退けながら、ララは言った。
「あたし、北京大学に入学するわ」
「えっ?」メイが目を見開いた。
「ええーっ!?」ハオがびっくりして尻餅をついた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 09:24:33.38:Upw3giYq
「メイがあまりにも心配だもの。同じ学生になって、近くで見守りたい」
「なら、俺も残るよ!」ハオは言った。「君のことがあまりにも心配だよ!」
「ダメよ。あなたは太極拳教室でお金を稼いでくれなくちゃ」
「僕のお世話は誰がするんだよ!?」
「家政婦のメアリーに決まってるじゃない。元々あたし、家事とかほとんどしてないし」
「君が側にいてくれないとたまらないよ!」
「何か変なもんが溜まるだけでしょ」
「君は僕と離れて平気だって言うのかよ!?」
「平気よ?」
「あっ……。あっ……! 浮気しようと思ってるな!? 若い男子学生を食いまくるつもりだな!?」
「しないわよ。ガキに興味ないもの」
「じゃっ……じゃあロマンスグレーの大学教授か!?」
「もうやめて。くだらない」
「みんなでアメリカに帰ればいいじゃないかー! メイも一緒に!」
ララはメイを見た。
「……だって。どうする?」
「あたしは帰らないよ」
メイは即答すると、続けて言った。
「せっかく北京大学に入ったんだもん。どんな医者よりも優秀なのに免許がないってだけでママが馬鹿にされるのが悔しかった。
あたしがママの後を継いで、絶対に医者になるんだから」
メイの言葉を聞くと、ララは嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ。そう。あたしもこれで正式に医者になれるのよ」
「あっ、そうか! 大学を卒業すれば……」
「それにあたし、小学校すら行ってないから、学校に行くのが夢だったの」
「でもなぁ、簡単に言うけど」ハオが落ち着きを取り戻して言った。「天下の北大にララなんかが入れるわけないだろ」
「いや、私が入らせる」リウ・パイロン大統領が言った。
「やだぁぁぁ!!」ハオは再び泣き出した。「一人で帰るのやだぁぁぁ!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 09:47:04.10:Upw3giYq
「あ、そだ。ママ、赤ちゃんがね、さっきあたしのお腹を蹴ったのよ」
「本当?」ララは目を輝かせた。「『気』だけでも蹴るのね。あたしのお腹は蹴ったことないわ」
「ね、ママ」
「ん?」
「赤ちゃん、しばらくあたしのお腹にいさせてい?」
「んー……そうね」ララは考えてから、言った。「いいわよ。面倒見てあげてね?」
「酸っぱいものばっかり食べたくなるかも?」
「ないと思う。つわりもない。でもいっぱい栄養取って、健康的に楽しんで、嬉しい気持ちも赤ちゃんにも分けてあげてね」
「うん!」
「とりあえず服を着てください、お母さん」
ヘイロンが扉の陰から弱々しい声で言った。
「服を着てください。眩しすぎます、お母さん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 10:08:12.90:Upw3giYq
時代設定=2040年、舞台は民主化を遂げて21年経つ中国、北京。

【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
黒い『気』を使う。生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。ブラック・メイファンを中に宿す。

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。童貞。スレタイにある25歳は誤り。我流のマーシャルアーツの使い手。
赤い『気』を使う。リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいたが、だんだんと気持ちが通じ合って来ている。
片想いしていた憧れのメイファンが死に、メイと両想いになりつつある……のか?

・ブラック・メイファン……メイファンの憎しみだけが具現化した、身体を持たない『気』だけの存在。
全人類を憎み、皆殺しにしようとしている。全身を武器に変えて攻撃することが出来る。
現在はメイの身体の中に入り、大人しくなっている。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。婚約していたメイファンと結婚式の日に死別。

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいたが、今では触られただけで失神するほどのアレルギーに変わっている。現在妊娠4ヶ月。
身体を持たない『気』だけの存在。リウの作った新しく若い身体を得て、この夏女子大生デビューすることが決まった。

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。
タバコを吸って酒を飲んで、あとセックスだけしながら生きて行くのが夢。
武術の才能は4千年に一人と言われるが、やる気がまったくない。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
習近平元国家主席のボディーガード兼『黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)』と呼ばれる最強の殺し屋だった。
元々姉のララを除く全人類は殺しの対象だったが、全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になるはずだった。
結婚式の前夜、自分の中から現れたブラック・メイファンに首をはねられ、あっさり死亡。

・フェイ(小飛)……メイとヘイロンを合わせて仲良し3人組。口数の少ないマスコット的存在。
長い黒髪、丸い顔、小さな身体が小型犬を思わせる。ヘイロンのことが好き。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・美鈴(メイリン)……リウ・パイロンの秘書。クビになる寸前なのを頑なに居座っている。45歳の美魔女。
透明の『気』を使い、相手のやる気を吸い取ることが出来る上、相当強い。眼鏡をかけている。
ブラック・メイファンに身体を真っ二つにされ死亡。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 15:28:10.23:H9b1BtIb
リウとヘイロンは再び墓のなかに帰っていった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 22:00:24.77:86F409qg
メイファンと美鈴の葬儀が済み、ハオは一人アメリカに帰って行った。

「何かあったらすぐ知らせてくれ」
リウは別れ際、ララにそう言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/17(日) 22:55:16.31:oomcDAaQ
アメリカでは謎の日本人タケルが大量殺戮を繰り返していた。
タケル「うおーーーーーーーーーーーー!!!俺は日本神話だーーーー!!!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/18(月) 08:17:44.66:KwfsHVsc
無事アメリカに着いたハオにも
タケルの凶刃が襲いかかる。
「…はうあっ!?」
が、ハオは情けない声を上げながらもそれを華麗なステップで躱す。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/18(月) 09:41:46.71:EXnWLpiE
タケルは唐突にケツを出した。
タケル「いきなり尻見せ!」
ハオはあっけにとられ硬直した。
ブリブリブリブリブオオオオオ!!!!!!!!!
タケルの肛門から下痢便が噴出しハオの眼球にクリティカルヒットした。
そして視界を奪われたハオにタケルの凶刃が迫る。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/18(月) 11:22:46.85:RkmCaGWl
タケルはハオの首をはねた!
ハオははねられた自分の首を脇に抱え上げた。
「タケル、勝負はまだだ!」
「なにい!」
「人間がこの世にある限り、私は必ず戻ってくる。必ず戻ってくるぞ!ははははは」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/18(月) 17:22:30.19:XN7bDxj7
「うぉぉぉぉお俺は中国四千年なんてどーでもいいんだーーッ!」
ハオはそう言うと、星条旗を振り回した。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/19(火) 13:30:59.86:7FEICe8C
(ノ∀`)アチャー
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/19(火) 20:37:07.40:4iu4Dhfs
「リー・メイメイさん」
「あ。ムームー先輩、おはよう」
「あなた、暫く見ない間にムードが変わりましたわね?」
「そう? どんな風に?」
「何と言いますか……大人っぽくなりましてよ」
「えー。嬉しいな。セクシーになったってこと?」
「といいますか、その……」
「ん?」
「なっ、なんでもありませんわ! では、お先に」
そう言うとムームー先輩は通学路を先に立って歩き出した。
『なんだか、あの子、どこかしっかりしたというか……いじめづらいムードに変わってくれやがりましたわね……』
そう考えながら早足で歩く後ろから、あっという間にメイが追い越して行った。
「ごめんねムームー先輩おっそいから先に行くね!」
そう言いながら長い黒髪をなびかせ、白い牙を見せて笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/19(火) 20:51:27.07:4iu4Dhfs
暫く行くと、チョコチョコと小さい歩幅ながら結構早く歩いている小飛の背中が見えて来た。
「フェイ! おはよっ」
メイが背中を叩くと、小飛はびっくりしてから振り返った。
「あ、メイちゃん、おは……」挨拶しかけた小飛の笑顔が消えた。「……誰ですか」
「えぇっ? ひどいなぁ。友達の顔を忘れちゃったの?」
「メイちゃん? 本当にメイちゃん?」
「なんで? なんか私、違うかな?」
「目が……」
「ん?」
「目が……怖い」
「はぁ?」
メイはポーチから手鏡を出すと、自分の目を確認した。
「ね? 怖い……」小飛が怯えた声で言う。
「いやぁ? 別に、何も変わってないだろう?」
メイは顔を上げ、獲物を威嚇する豹のような目で小飛を見、笑った。
「私、元々こういう目だぞ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/19(火) 21:17:57.02:4iu4Dhfs
いつも通りメイと小飛とヘイロンは学食で一緒に昼飯を食べた。
小飛はメイの目つきを怖がりながらあんパンをちびちび食べた。
ヘイロンは、特盛のワンタン麺を食べながら、メイと目を合わせられずに困っていた。
あのキスの感触が生々しく唇のみならず舌や歯の裏にまで残っていて、メイの顔を見たら挙動不審になってしまいそうだった。
「ねぇ、ロン」メイがヘイロンに話しかけた。「私、なんか変わったかなぁ?」
「何がだよ?」ヘイロンはワンタンを見ながら聞いた。
「ムームー先輩もフェイもね、ムードが変わったって言うんだけど」
「ふーん」
「ふーんじゃねーだろ。こっち見ろよ」
「そう言や、お前のお母さん、いつから学校来るんだ?」
「明日からだよ。ってか、こっち見ろって」
「あぁ。ワンタンが見ていたいんだ。すまん」
「首斬り落とすぞ、この野郎」
「あ!?」
カチンと来るメイの物言いに、ヘイロンは思わず顔を上げ、メイを見た。
いつものポニーテールを解き、長い黒髪が小さな顔の周りをワイルドに縁取っていた。
健康的な黒い肌に桃色の唇、そこから覗く白い牙。いつもと同じメイのようでいて、明らかに何かが違っていた。
目だ。優しく可愛らしい猫の目が、人を寄せ付けない猛獣の目に変わっている。
そのせいか全体の雰囲気も随分逞しくなったように感じられた。
「姐さん!」ヘイロンは思わず声を上げた。
「誰が姐さんだ」メイは手刀でツッコんだ。「二つ年下のレディーに向かって!」
ツッコミを入れた先にあったワンタンが、触れてもいないのにぱっくりと二つに切れた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/20(水) 06:34:16.78:BMty7zi6
「お帰りぃ」
メイがアパートに帰ると、ララが飛び跳ねながら迎えた。
「入学手続き、完了だよぅ」
メイはニコニコしながら「おめでとう」と言った。
「これで明日から同学だねっ」
「べっ、別にウキウキしてるわけじゃないからねっ」ララは少しあたふたして見せた。「真っ黒いのに入られたメイが心配だから側で見守るためなんだからっ」
「わーってる、わーってるよ」メイはニヤニヤと笑った。「晩御飯、どうする?」
「え。なんにも考えてない。外に食べに行く?」
「私、作るよ」
「わぁい。料理の出来る娘を持つと心強いわ。料理の出来ないママとしては」
メイは服を全部脱ぎ、エプロンだけ着けると冷蔵庫を開け、チンゲン菜を取り出した。
「こっち来てから部屋着はいつも全裸なの?」ララが笑顔で聞いた。
「うん。メイファンおばちゃんの影響でね。このほうが解放感あっていんだ」
「そう」ララは微笑んだ。

テーブルに立派な広東料理が並べられた。豚肉とチンゲン菜のあんかけ、卵スープ……
「こっち来てからさらに料理の腕が上がったのねぇ。アメリカじゃここまで立派なの作れなかったよね?」
「これもメイファンおばちゃんのおかげ。あの人、料理プロ級だったから」
ララは一口食べると、ほっぺたが落ちそうな顔をした。
「おいし?」
「おいしすぎ」

「ところで赤ちゃん、どう?」ララが聞いた。「お腹、蹴る?」
「そういえばあれから蹴らないなぁ」メイは箸を舐めながら答えた。「なんか私がママみたいだね」
「今はあなたがママよ」ララは微笑んだ。「赤ちゃんがお腹にいると、優しくなったり、狂暴になったり、心が安定しないから気をつけてね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/20(水) 06:43:50.19:BMty7zi6
深夜、メイは同じベッドで並んで眠るララの頬を撫でていた。
21歳の頃の、むしろそれよりも美しくなったララの、白い顔を舐めるように見つめながら。
ララはゆっくりと目を開けると、くすっと笑った。
「どうしたの?」優しく大きな瞳で娘を見つめる。「何してるの? メイ」
「……何してたんだろ、あたし」メイは我に返った。「ごめんね。お休み。でも、ママ、可愛くなりすぎ」
「娘より可愛くなっちゃったわね。ごめんね」
「いやいや! あたしのほうがまだ可愛いですから〜」
そう言うと向こうをむいて枕に頭を埋めた娘の後ろ姿を、ララは微笑んで見つめた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/20(水) 07:47:41.69:BMty7zi6
ヘイロンは新しく買ったジャイアントの中古のクロスバイク(自転車)の後ろに荷台をつけた。
荷物を積むためだと口では言ったが、本当はメイや小飛を乗せるためだった。

「どうだ、格好いいだろ」
いつもの公園でヘイロンはメイと小飛を前に黒く光る愛車を見せびらかした。
「イカスー」小飛が言った。
「なんで中古なんだよ、この貧乏性が」メイが言った。
「新車が五万、中古が四万なら誰でも中古買うだろ!」ヘイロンはムキになった。
「一万ケチったせいで明日壊れたらどーすんだボケ」
ヘイロンは黙り込んだ。歯に衣着せぬ罵倒が心地よかった。

前に取り付けたカゴに二人のリュックを乗せると、ヘイロンは自分の荷物を体にくくりつけ、二人を乗せて走った。
前の赤錆号と違い、ペダルを踏む足が軽いので、調子に乗って飛ばし出すと小飛が悲鳴を上げた。
「やー! 怖いのー!」
「ハハハ! このぐらいまだ序の口だろー」メイはそう言いながらヘイロンと自分の間に小飛をしっかりと挟んだ。
「やー! 降りるー! ロンロン止めてー!」

仕方なくヘイロンはベンチのところで自転車を止めると、小飛はフラフラになりながら真ん中から降りた。
「怖がりだなぁ。面白かったのに」
メイはそう言うとリュックから紙パックの野菜ジュースを出し、小飛に持たせた。
「それ飲みながら待ってなよ。あたし達、スピードの向こう側まで行って来る」
「その表現、いいな」ヘイロンが目をキラリと輝かせた。
荷物の番を小飛に任せ、ヘイロンはメイを乗せて再びペダルを踏んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/20(水) 08:26:58.95:BMty7zi6
「オラオラオラオラ40km/hだ!」ヘイロンはペダルをビュンビュン漕いだ。
「まだまだぁー! このぐらい、あたしの足でも出せるぞぉー!」メイは笑いながら叫んだ。
「よし! お前の足を超えてやる!」
ヘイロンは標準装備のスピードメーターを意識しながら、前傾姿勢を強めると、全力でペダルを漕いだ。
「うらぁー!! 平地で70km/h行ったる!!」
「頑張れー! まだ55km/hだぞー!」
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」
メーターが60km/hに届きそうになったその時、ボールを追いかけて子供が飛び出して来た。
「うおおおお!!」ヘイロンは渾身のパワーで自転車をジャンプさせた。
子供の頭の上を大きく飛び越えた。しかし着地のことは考えていなかった。
「あっ。買ったばかりなのに……もう壊れたかな、コレ」
「任せろぉぉぉぉお!!」メイは叫ぶと黒い『気』を自転車に流し込んだ。
自転車は大きな黒豹に姿を変えると、しなやかに着地し、そのまま元の黒い自転車に戻る。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/20(水) 10:07:21.63:BMty7zi6
帰り道はゆっくり漕いだ。
もう19時を過ぎていた。
8月の夕陽に照らされながら、ヘイロンは唐突に言った。
「なぁ、俺達、付き合わないか?」
メイは何も答えずヘイロンのベルトを握りしめていた。
二人の体が路面の凸凹を踏んで揺れる。
「なぁ、メイ」
赤い顔をしてヘイロンが振り返った。
「小飛、待ってるよ」メイは何も聞こえなかったように言った。「早く帰ってあげなきゃ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 07:50:22.48:f0X90dnh
習近平が設計及び造形し、リウ・パイロンが完成させたララの新しい身体は、21歳の頃のララよりも美しくなっていた。
実際のララによく似て作られていたが、そこには習近平の理想がふんだんに盛り込まれていた。
「つまりピンちゃんの理想のあたしってことね」
「でも間違いなくママではあるよね」
「だーめ、ママって呼んじゃ」
「オッケー、ララ」

並んで歩く黒と白の美しい母娘に誰もが振り向いた。
「リー・メイメイさん、また綺麗になったよね」
「隣の白く輝いてる娘は誰?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 08:23:33.04:5dMBLf/e
「あなたがフェイちゃんね。メイからいつも可愛い子だって聞いてるわ」
中庭のベンチで本を読んでいたら白い光を纏った天使に話しかけられ、小飛はオドオドした。
「だ……誰ですか」
後ろからメイがぴょこんと現れ、紹介する。
「あたしの従兄弟のララちゃんだよ。ラン・ラーラァちゃん。よろしくね」
「あ、同じ顔」
「ん?」
小飛は鋭い直観で気がついた。
「色が違うだけで同じ顔。あと目の表情が違うだけ」
「そーかなぁ。ララは大分理想化されてるよ?」
「理想化!?」意味がわからず小飛は固まった。
「そんな人を作り物みたいに」ララは笑った。もちろん本当に作り物だ。
「きれい……」小飛がうっとりと二人を見つめた。
「ありがと、フェイちゃん。ララとも仲良くしてね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 08:43:27.72:f0X90dnh
「お母さん!」
そこへやって来たヘイロンが思わずそう呼んだ。
「お母さん?」
小飛がまた意味がわからずララとヘイロンの顔を交互に見る。
「ロンロンのお母さんなの?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 09:48:31.15:fOBrowNP
実に面白い
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 16:41:42.65:WvN8X/lG
「ありがと」
そう言ってララはメイから皿を受け取った。
今日の晩御飯は四川風黒麻婆豆腐。もちろんメイの手料理だ。
「ママ辛いの好きだから、口に合うと思うぞ」
「うんっ! シビレる〜!」ララはもう口に運んで満面の笑みを浮かべていた。

「ヘイロン君とは進展ないの?」
ララの質問にメイは表情も変えず、麻婆豆腐を乗せたご飯を口に運びながら答えた。
「アイツ年上フェチだから、どうせママのこと追いかけ出すよ。気をつけて」
「わたくし、こう見えて人妻ですのよ」ララはおどけて見せた。
「ママは浮気しないの?」
「しないわよ」
「パパ一途ってことね?」
「たぶんね、パパがあたしみたいな状況になったら、女子大生の後つけ回し出すわ」
「浮気するってこと?」
「そこまでの度胸があるかはわからない。でも、あたしのことなんか忘れてはしゃぐに決まってる」
「ママは浮かれポンチにならないの?」
「だから、そういうパパみたいにはなりたくないから、浮気もしないし浮かれポンチにもならない」
「復讐だね?」
「一家を預かる妻としてのプライドかな?」
「パパのことアホだと思ってる?」
「思ってるけど思ってないわよ。いざという時にはママには頼れる人はパパしかいないわ」
「複雑だね」
「で、どうなの?」
「何が?」
「ヘイロン君と、進展あった?」
「告白された」
「わぉ! じゃ……」
「でも進展はないよ」メイは特盛麻婆丼を完食すると、お茶を呷った。「自分の気持ちがわからないんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 16:53:49.02:WvN8X/lG
「ねぇ」
二人でベッドに寝転がってTVを見ながら、メイが聞いた。
「ママはあたしが怖くないの?」
ララは娘に背を向けたまま、笑いながら答えた。
「メイの中のメイファンがいつ現れて、あたしを殺すかもしれないってこと?」
「うん……。まぁ……。そうだね」
「怖くないわよ」
「え。でも……」
「メイは怖いの?」
唐突にそう聞かれて、メイはしかし即答した。
「怖くないよ」
「そうでしょ?」
「だって、あたしがママを守れる自信あるもん」
ララは微笑みながら振り返った。メイは続けて言う。
「今まで一度も守れたことはないけど、今回は自信たっぷり。だってメイファンは、あたしの中にいるんだから」
ララは娘の頬を優しく撫で、愛しい顔を見つめた。さらにメイが言った。
「ヘイロンでもさ、自分の身体に入ってお父さんを殺しかけたメイファンを、内側から止めたんだよ。あたしが止められないわけないじゃん」
「でもね」ララは優しく言った。「どうしても許せないなら、殺してくれてもいいのよ?」
「なんであたしがママを許せないのよ!?」
「ふふっ」ララは娘の猛獣のような目を見つめ、可笑しそうに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 17:22:10.69:WvN8X/lG
「ママはどうして怖くないの?」
メイが聞くと、ララは身体ごと娘のほうを向き、ほっぺたにキスをしてから言った。
「だって、あたしの妹でしょ」
「えー。でも首斬られたじゃん」
「あの子はね、愛され足りないのよ」
そう言うとララはメイを抱き締め、押し倒した。
「最愛の娘と最愛の妹が同じ身体にいるのよ? こんな愛すべき物体ありえないわ」
「あはは! ママ! くすぐったい!」
「愛して愛して愛しまくってやるから覚悟なさい」
「でもさ、でもさ、ママ」
「なぁに〜?」ララはメイの身体中にキスをしながら聞いた。
「赤ちゃんさ、ママのお腹に戻したほうがいんじゃないかな」
「なんで〜?」ララはメイの身体中をくすぐった。
「だぁはっ……! だぁはってさ、あたしに預けてたら心配じゃない?」
「ううん。断然メイの中にいてもらったほうが安心」
「そなの? なんで?」
「なんでも」
「ふぅん?」
メイは意味がわからないながらも、ララがそう言うならと納得した。
「じゃ、あたしがも少し育てるね?」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/21(木) 23:09:04.64:xfi7e+yG
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創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 23:37:44.14:9HwtWp4b
じゃあ韓国スレも立てなさいよ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/21(木) 23:50:38.32:EZlSQ5eY
「大丈夫か? 何かあったらすぐ知らせろよ? 心配だー、心配だよぉー」
そう言うとハオは今日11回目の電話を切った。
「奥さんと?」門下生のミーシャが聞いた。
「うん。もう心配で心配で」
「なら中国に残して来なきゃよかったじゃない」
「あ。もう少しゆっくり喋ってくれる?」
「アメリカに来てもう20年ぐらいになるのにまだ英語不自由なの? ヘボね」
「だーかーらー! 速い! 何言ってんのかわかんない!」
ミーシャはくすくす笑うと、皆が真面目に太極拳の套路を行っている道場から連れ出すべく、ハオを誘惑した。
「ねぇ先生、あたし喉が渇いたわ。ドリンクを奢ってくれない?」
そう言いながらミーシャは自分のTシャツの襟元を広げ、汗を乾かすフリで豊かな胸元を見せた。
「オーケー。僕もだ。喉が渇いた」
「休憩室へ行きましょう」
「オーケー。レッツゴー」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/22(金) 03:40:07.16:zwpGvHQ+
ハオはミーシャと獣のようにファックした
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/22(金) 03:48:54.96:DmdA3rjV
ハオ『どーせララもあっちでロマンスグレーの大学教授とヨロシクやってんだ。僕も自由にヤらせてもらうぞ』

パンッ パンッ パンッ

ミーシャ「オォッ! アァッ! Harder! Harder! Harder!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/22(金) 10:13:29.30:+osY/FZz
新しくイチロウ先生もメンバーに加わった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/22(金) 19:28:14.88:M5gtew0j
「ラン・ラーラァさん、僕と付き合ってくれない?」
「ララちゃん、君に一目惚れしたんだ。どうか、俺と……」
イケメン学生達に相次いで告白され、その度にララは同じことを言った。
「ごめんなさい。私、本命がいるんで」

ある日は医学部名誉教授の王陽がララを自分の研究室に呼び、話を持ちかけた。
「君に特別に目をかけてあげよう。どうだね? 私の愛人になるなら……」
そこでもララは同じ断り方をした。
「すみません。私、本命がいるんで」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/22(金) 22:08:51.96:Z6Oj6aRa
ララの本命はイチロウ先生だった。
「振りチン打法サイコー!」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/23(土) 14:10:54.97:PFpmWzWU
   |∵∴∵∴∵∴∴|  
   |∵∵∵∴∵∴∵| 
   |∵∴(・)∴∴.(・)∴|  
   |∵∵∵/ ○\∵|    ドグン_____ 
   |∵∵ /三 | 三| |      /   __  \ \
   |∵∵ | __|__ | |     /   /..  \  \\
   |∵∵ |  === .| |   .. | |ノ (...|  ドグン|   \ 
   |∵∵ |___/ |    |..| ⌒ | ..  //     `ー、、
   |∵∵∵∴∵∴∵ \    |  .||  /    /   i  ヽ、 
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵\/..  ||. / /  /   i i ト、ヽトヽ
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴ .  /r、/__/_, ィ  l i    l l レ l }ヾ,
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵../ { _ヨニE_/-  { l  i |i レl| Vレ' }
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵│  77i ト、\  lト、 l | | |l ノ,乍{  !
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵/  .∠ノ'l ト、V`   _ヽl |ル' イ.‖ヽ _      
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴/   ./ { | ト、ヽ   /n \|     `  ,」       
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵/    { {; l | ヽ   {  i     /// /
   |∵∵∵∴∵∴∴∵/      .l ll  lヽ、  、_`ー-i      { ふりちん打法さいこぉぉぉぉぉぉぉぉーー
   |∵∴∵∴∵∴∵/        ヾヽ. l  `''ー--tミ      __/
   |∵∴∵∴∵∴∴|           ヽヽ、{   _ /    / ̄
   |∵∴∵∴∵∴∴|             `   }  ` ー- 、/
   |∵∴∵∴∵∴∴|                /      ___ヽ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/23(土) 22:38:12.50:lk1eMbIr
ヘイロンは悩んでいた。
確かにメイは自分に夢中だったはずだ。
しかし最近そっけない。
何故だ。
最近自分が変わったことと言えば、貧乏でなくなった。
もしかして貧乏な自分に魅力があったのか。
ハングリー精神が失われたのか。
それとも原因は自分ではなく、メイのほうにあるのか。
言うまでもなく、ブラック・メイファンに入られてからメイは変わった。
しかし何が変わったかと言えば、単に雰囲気が変わっただけだ。
会話の内容も、好きなものも、以前と何も変わりない。
本当にブラック・メイファンを支配してしまったように思える。
しかし好きなものに変わりがないのなら、自分のことも変わらず好きなはずではないのか。
確かにメイはあの時、自分の告白の言葉を聞いたはずだ。
しかしはぐらかした。

「何を悩んでいる、ヘイロン」
はっとして顔を上げると、身体を拭かれながら、母リーランが自分の顔をじっと見ていた。
「なっ、何でもねぇよ」
ヘイロンは顔を背け、タオルを盥の湯に浸し、絞る。
「お前、恋をしてるだな?」
「ばっ! 柄じゃねぇだろ!」
リーランは優しくフッと笑うと、手を伸ばして棚の引き出しを開け、何かを取り出した。
「恋のお守りだ、持っとけ」
ホームランバーの当たり棒だった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 06:45:10.53:JzGNRe0w
もうすぐ8月11日はメイの誕生日だ。
ヘイロンは用意していた手作りのネックレスを改めて見た。
ゼミの旅行で大連へ行った時、大量に採って来ていた貝殻を繋ぎ合わせて作ったものだ。
白や桜色が輝き、完成した時は我ながら見惚れたものだった。
しかし今見ると、どうもショボいような気がしてしまう。
こんなものをプレ○ントして、軽蔑されたりしないだろうか。
父リウ・パイロンからの仕送りで貧乏を脱出したことだし、この際町の宝石店で綺麗なネックレスを買おうか。
いやしかしこの俺なんかが宝石などという普通の人が買うようなものを買ってもいいものか。
大体メイが貧乏な自分のことを好きだったのなら、手作りネックレスは彼女の心を引き戻すきっかけになりうる。
しかし、手作りなんて貧乏臭いもの、失礼だし、恥ずかしい……

「プ○ゼントか、ヘイロン」
ドアの隙間からじっと覗いていた母リーランが言った。
「のっ、覗くなよ!」
リーランは優しくフッと笑うと、母から息子へのアドバイスを贈った。
「こないだの母親節(母の日)にお前かプレゼ○トしてくれた限定版デミグラスソース味のうまい棒、うまかっただよ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 06:45:50.68:JzGNRe0w
知らなかった……「プ○ゼント」ってNGワードに引っ掛かるんだね
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 08:24:13.62:JzGNRe0w
ララはあっという間に皆の人気者になった。
可愛く、美しく、何より大人の女性のように包容力のあるララは、皆から引っ張りだこになった。
「ララさん、ボクシング部のマネージャーをやってくれませんか?」
「いやいや! ララさんには文系が似合う! ぜひ我らが文芸部へ」
すべての勧誘にララは謝謝(ありがとう)と笑顔で答えながら、断った。
メイの側を離れるわけに行かなかったし、ララにはやってみたいことがあった。

ララの人気が上がるとともに、いつも一緒にいるメイのことが見直されはじめた。
メイが中国人をバカにし、アメリカ人である自分のことを鼻にかけているというのがギアとノンナによる悪意ある噂だったことがわかり、
あっという間に友達が増え、小飛も一緒にメイは明るい学園生活の中へ入って行った。

それを傍から見ているヘイロンは、しかし生来のアウトロー気質を崩せなかった。
崩すつもりもなかった。輪の中に入って行くつもりなどない。皆をバカにしているつもりなどないが、外れ者が性に合っている。
しかしどんどん自分から離れて行くメイを見ていると、胸が締め付けられ、呼吸が苦しくなった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 09:59:38.76:T31IOMDt
ヘイロンはイチロウ先生に振りチン打法を教わることにした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 10:30:59.88:mmc0c2am
「振りチン打法とはどんなものだ? 惚れた女を自分に夢中に出来るのか!?」
ヘイロンは藁にもすがる気持ちだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 12:34:31.03:5cuw88E+
イチロウ先生「その前にちんこを見せたまえ」
ヘイロンは全裸になった。
イチロウ先生「この租チンでは振りチン打法は無理だな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 14:00:38.50:mmc0c2am
「むっ、無理なのか……」
ヘイロンは男らしく諦めた。
しかし陰でチ○コ増大の努力を始めた。
浴室がないのでは熱湯で鍛えることは叶わない。
ネットで調べると、オナニーがあそこを大きくする、という情報に出会った。
「そうか……。俺はオナニーをしたことがないから小さいのか」
しかし壁が薄すぎるので、オナニーをすると母に丸聞こえになる。
「……引っ越しをするか!」
毎月50万の金が入るようになっても、住み慣れたボロアパートを離れる気にはなれなかった。
しかし今、自分のチ○コを大きくするためヘイロンは、壁が厚く、浴室のある部屋へ、引っ越すことを決意したのであった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 14:05:49.06:mmc0c2am
「人生、金がすべて」だったヘイロンの生き方は、この日を境に「人生、チ○コがすべて」に変わって行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/24(日) 15:24:06.36:Bdf/WXzQ
ヘイロン「そうだ!蓮舫先生の巨大乳輪拳なら俺にもできるかも!」
それからヘイロンの血のにじむ様な特訓の日々が始まったのである。
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/25(月) 08:35:18.51:xqpepfA4
その頃、坑州のとある施設に世界各国から選りすぐられた5人の美少女が集まり、世界を救うための猛特訓を受けていた。

李 清歌(中国)、ローズ・バレット(イギリス)、神宮寺 玉藻(日本)、イザベラ・ホリー(アメリカ)、カティア・ウラノーヴァ(ロシア)。

彼女ら5人の中から世界を救う「スワン」となれるのは3人だけ。
そしてそれを決定するのは……あなたなのだ!
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/25(月) 15:34:16.70:XywdT3ii

「&#25112;斗&#21543; 歌&#23020;(戦え 歌姫)」いいよね!
ttp://https://youtu.be/wysegk2c1a4
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/25(月) 15:36:46.19:XywdT3ii
文字化けしたか……
戰鬥ba 歌姫
戦闘ba 歌姫
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/25(月) 15:37:26.32:XywdT3ii
繁体の戰鬥なら化けないんかい! ようわからんわ……
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/26(火) 06:03:42.21:n6z/ZJEr
オザワ先生は激怒した。
「偽イチローめ!けしからん!」
大きなちんぽをぶるんぶるんと振り立てた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 07:07:08.76:4WAWVIX2
メイ、ララ、小飛は学食で、大勢の取り巻きに囲まれて食事をしている。
1人ぼっちでヘイロンは特盛の卵ごはんを食べていた。

「ねぇ、ヘイロン君もこっちへ呼んであげましょうよ」ララがメイに言った。
「アイツ、1人が好きなんだって。呼んでも来ないよ」
「じゃあ私、ロンロンのとこ行って食べる」小飛が自分の桃饅頭を持って立ち上がった。
「え〜? じゃあ、あたしも行くよ」メイが自分の特盛豚丼を持って立ち上がった。
「それならあたしもご一緒するわ」ララが自分の羊肉の雑炊を持って立ち上がった。
取り巻き達もついて来た。

「落ち着かん……」
ヘイロンは暫く大勢に囲まれて食事をしていたが、すぐにそう言うと立ち上がった。そしてメイに声をかける。
「メイ、ちょっといいか?」
「は? なんだよ?」
「話があるんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 07:29:48.34:4WAWVIX2
取り巻き達がそれを見送りながら、ララに聞いた。
「ねぇ、リー・メイメイさんって、ヘイロン先輩と付き合ってるの?」
「どうなのかしらね」ララは遠くへ席を移した二人を眺めて答えた。「これからのこと次第だと思うわ」

向かい合って暫く二人は無言で飯を食った。やがてメイが不機嫌そうに聞く。
「おい、何だよ話って?」
ヘイロンはご飯の上の薄焼き卵をかき回した。
「えぇとな」
「うん」
「そのな」
「……皆のとこ帰る」
「まままま待て!」
「だからなんだよ」
「その……。明日、デートしないか?」
「無理。ララと買い物に行く約束」
「そ、そうか」
「じゃね」
「あ。メイ! 俺、今度引っ越しするんだが……」
それを聞いて、立ち上がりかけていたメイの動きが止まった。興味ありげな顔で聞いて来る。
「あのボロアパートから出るの? 遂に?」
「そ、そうなんだ。で、もしよかったらでいいんだが、引っ越しの手伝いを……お願いできないかな? もちろん礼はする」
「水くさいな」メイは笑った。「礼なんていいよ。手伝うよ。で、いつ? 予定開けとく」
「明明後日なんだ」ヘイロンは物凄い笑顔で言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 08:17:09.88:4WAWVIX2
引っ越しの朝、メイは7人を引き連れて手伝いにやって来た。
「こ……こんなに要らないんじゃないか」ヘイロンは力のない声で言った。
「なんで? 大勢いたほうが早く済むじゃん」
「あたしは力ないから拭き掃除とかするわね」ララがにっこり笑った。
「私は……」小飛がオドオドしながら言った。「何もしないで見てるね」
「うん、僕らのこと応援しててよ」取り巻きの男が言った。
「新しいアパートだな」メイが建物を見上げて言った。「新築?」
「あぁ、だって家賃一万ケチったせいで明日崩壊したら困るだろ」
「自転車とは違うだろ」メイが突っ込んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 10:25:08.37:V+yYA5qH
中へ入るなりメイが言った。
「うわっ。接着剤の臭いがする」
「マジか」ヘイロンは立ち尽くした。
「この臭い、どうにかしないとだな」メイは窓を全開にした。「後で消臭剤買って来よ?」

「あら、ララちゃん、化け物?」リーランが同い年の大学生ララを見てニタリと微笑んだ。
「ウフフ。ジンちゃんこそ相変わらずの化け物ね」ララはにこやかに言った。
仲良くお互いを化け物と呼び合うヘイロンの母と同学生を見ながら、手伝いに来た取り巻き達は頭の上に?をつけながら笑った。

「見ろよ、メイ」ヘイロンは得意げに部屋を案内して回った。「風呂があるぞ! トイレも中にある!」
「すげえぇぇ……」メイは心から感嘆した。「ロンの住むとことはとても思えない」
「そしてここが俺の部屋だ!」
ヘイロンはそう言いながら木目調のドアを勢いよく開いた。ドアの向こうにはまだ何もない小ぢんまりとした白い空間があった。
「やったねぇ、ロン」メイはケラケラと笑いながら言った。「これで心置きなく1人エッチできるね!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 10:39:44.23:V+yYA5qH
ヘイロンの言う通り、確かに取り巻き達の手伝いなど要らなかった。
荷物が極端に少ない上に、ヘイロンとメイだけで彼ら50人分の仕事をした。
「これ、どこ置く?」
メイが両手に段ボールを持ちながら聞いた。中身は本なので推定一箱50kgの重さがあった。
「リビングに適当に置いてくれ」と言った後、ヘイロンは突如として感激に震えた。「リ、リビングなんて言葉、自分が使うとは思わなかったぜ……」
「リビングでいいんだね?」メイはそう言うと段ボールを置いた。
「あぁ、リ、リビング……リビング……」ヘイロンは噛みしめるようにその言葉を繰り返した。
ヘイロンが感激している間にメイは次の荷物、100kgの手作りタンスを1人で担いで入って来た。
「これ、どこ?」
その姿を見てヘイロンははっとした。
朝日を背に、100kgのタンスを楽々と担いで笑うメイのイカした立ち姿が、工事現場で200kgの木箱を担いで笑うメイファンの姿と重なった。
『好きだ……』ヘイロンはしみじみと思った。『涙が出そうになるほどお前のことが好きだ……メイ』
「おい?」メイはイライラして怒鳴った。「どこに置くかって聞いてんだろ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 11:34:45.01:V+yYA5qH
ヘイロンの部屋に段ボールを運び込み、新しく買ったシングルベッドを組み立てた。
メイと二人でわずか3分足らずで完成したベッドを眺め、ヘイロンは声を震わせた。
「だ、大丈夫だろうか」
「何が?」メイがヘイロンの顔を不思議そうに見た。
「今まで固いせんべい布団で寝ていたのに、いきなりこんな柔らかそうなベッドで寝たら、腰を壊さないだろうか」
「ジジイか!」
「よし、布団を敷いてみよう」
そう言うとヘイロンは段ボール箱の一つを開け、きっちり畳んだせんべい布団を取り出した。
「結局それ敷くんかい!」
「だってお前、布団が変わったら眠れないかもしれんだろう」
真新しいベッドの上に長年使い込まれた布団セットが敷かれ、男臭さの染み込んだそば枕が置かれた。
ヘイロンはその豪華な寝具セットを眺め、うるうると涙を流した。
「お父さんに感謝だね」メイが言った。
「……まぁ、そうだな」ヘイロンは素直に認めた。
「あぁ〜、疲れたな。ちょっとここ貸してね」
そう言うとメイはベッドの上に寝転んだ。
ショートパンツから伸びる美脚が天井に向けて踊り上がり、布団の上に着地すると艶かしい曲線を作った。
Tシャツが捲り上がり、可愛いへそが姿を現す。その上のほうには2つのお椀型の山があり、ブラの線が透けて見えていた。
寝転がったメイの顎から首にかけての柔らかなライン、半開きの桃色の唇。
ヘイロンはメイの上に覆い被さった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 11:46:23.73:V+yYA5qH
「おいコラ、何すんだ」
メイは抵抗せずに、しかし鋭い猛獣の目を向けて睨んだ。
「メイ……。好きなんだ」
ヘイロンは布団に両手を着き、メイの顔を真っ直ぐに見つめた。
「皆すぐそこにいんだぞ? こんな所で童卒する気か?」
「メイ!」
ヘイロンはメイの頭を掴むと、その唇に唇を寄せた。メイは横を向き、ケラケラと笑う。
「冗談やめろよ。笑っちゃうよ」
「本気だ! お前が好きなんだ!」
「やめろって」
「もうキスはしたじゃないか! いいだろ!」
「いい加減にしろボケ!」
「何でだよ! お前、俺にアイラブユーって言ったじゃねぇか!」
「言ってねーよ! ネイティブの英語がお前に聞き取れっかよ!」
「メイ!」
「離せ!」
メイがそう言うのと同時にヘイロンの右腕が根本から飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 12:27:57.54:V+yYA5qH
ヘイロンは声を上げなかった。
しかし真っ黒な『気』を感じてララが飛んで来た。
部屋に入ったララは見た。ヘイロンが血の海の中で斬られた腕の付け根を押さえて蹲り、メイが茫然と自分の手を見ながら呟いていた。
「あたし……、こんなことするはすじゃ……」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/26(火) 13:20:57.96:Ndx9sCF6
「こんなことする『はず』じゃ、てしょ!?」ララは娘の間違いを厳しく叱った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 16:43:23.99:V+yYA5qH
「あたし、こんなこと……するつもりは……」メイは言い直した。
ララはすぐさま床に落ちたヘイロンの腕を掴み上げると、治療した。
リーランは息子の腕がないのを見て一瞬悲鳴を上げかけたが、ララの真剣な顔を見ると後ろを向いた。
「どうしたんですか?」
「何かあったの?」
「ちょっと息子がチンポを怪我しただけだァよ」
集まって来た取り巻き達を、リーランはそう言うと耳まで裂けた口でにっこり笑って押し戻した。
「ママ! あたし……こんなことするつもりなかった!」
メイは自分の手を押さえて泣きはじめた。
ララは何も言わずに娘を抱き締めた。
「メイ……」ヘイロンはくっついた腕を押さえながら、言った。「俺の気持ちは変わらないぞ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/26(火) 19:37:52.12:xCx/9zEE
金を払って和解
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/27(水) 07:27:46.40:hle8QqWF
   |∵∴∵∴∵∴∴|  
   |∵∵∵∴∵∴∵| 
   |∵∴(・)∴∴.(・)∴|  
   |∵∵∵/ ○\∵|    ドグン_____ 
   |∵∵ /三 | 三| |      /   __  \ \
   |∵∵ | __|__ | |     /   /..  \  \\
   |∵∵ |  === .| |   .. | |ノ (...|  ドグン|   \ 
   |∵∵ |___/ |    |..| ⌒ | ..  //     `ー、、
   |∵∵∵∴∵∴∵ \    |  .||  /    /   i  ヽ、 
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵\/..  ||. / /  /   i i ト、ヽトヽ
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴ .  /r、/__/_, ィ  l i    l l レ l }ヾ,
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵../ { _ヨニE_/-  { l  i |i レl| Vレ' }
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵│  77i ト、\  lト、 l | | |l ノ,乍{  !
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴∵/  .∠ノ'l ト、V`   _ヽl |ル' イ.‖ヽ _      
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵∴/   ./ { | ト、ヽ   /n \|     `  ,」       
   |∵∵∵∴∵∴∵∴∵/    { {; l | ヽ   {  i     /// /
   |∵∵∵∴∵∴∴∵/      .l ll  lヽ、  、_`ー-i      { こんなことするはずじゃぁぁぁぁぁーー
   |∵∴∵∴∵∴∵/        ヾヽ. l  `''ー--tミ      __/
   |∵∴∵∴∵∴∴|           ヽヽ、{   _ /    / ̄
   |∵∴∵∴∵∴∴|             `   }  ` ー- 、/
   |∵∴∵∴∵∴∴|                /      ___ヽ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 08:09:09.96:rHQ0RKjd
「何言ってるだ、お金なんかいいだ」
リーランはララの差し出す慰謝料を受け取らなかった。
「何よりヘイロンがいいって言ってるだ」

ララは何度もヘイロンとリーランに謝り、彼らの新居を後にした。
メイはずっと涙を流してばかりで、結局メイの口から謝ることはなかった。

「メイ」
ヘイロンはメイの背中に声をかけた。
「気にするな」

しかしメイは一度も振り返らず、ララに肩を抱かれて帰って行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 08:11:21.74:rHQ0RKjd
ララ「あっ。でも血で汚れた布団と床のクリーニング代は払ったわよ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 08:16:54.23:rHQ0RKjd
ハオから今日7回目の電話がかかって来た。
『大丈夫? 変わったことない?』
「大丈夫よ。何もないから安心してね」
『メイ、暴れ出したりしてない?』
「してない、してない」
『可愛いメイのまま?』
「うん。パパの可愛いメイメイのままよ」
『君は? 浮気とかしてない?』
「してないし、してても言わないわよ」
『そっか。……ざけんな』
「あなたは? 浮気とかしてるよね?」
『知ってるだろ、君一筋だよ』
「はい。それじゃまた電話してね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 09:24:42.91:w7rd5/E9
電話を切るとララはまたメイを抱き締めた。

「あたしの背後にドラえもんに似た悪魔がいるの」
そう言って泣いてばかりのメイの頭を優しく撫で、落ち着くまで寄り添った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 11:31:32.40:qk3OrHo1
メイが大学の中庭に座り、考え事をしていると、向こうからヘイロンがやって来るのが見えた。
慌てて逃げ出そうと立ち上がろうとするメイに、ヘイロンは声を投げた。
「メイ!」
びくんと肩を震わせて動きの止まったメイに急いで近づくと、ヘイロンは背中から抱き締めた。
「ちょっ……! ダメ……!」
声よりも弱い力で抵抗するメイをヘイロンはさらに固く抱き締める。
「昨日のことは本当に気にするな」
「ダメ……! 離して」
「離さない」
「また……っ! あたし……っ! 何するかわからない!」
「斬ってくれて構わん」
「ダメだよ……っ! ママも近くにいないのに……」
「お前のことが好きなんだ!」
ヘイロンのその言葉にメイの抵抗する力が止まった。腕を離すと、メイは俯きながらゆっくりと振り返り、言った。
「……違うでしょ」
「何がだ?」
「ロンが好きなのは……あたしの中に入ったメイファンなんだよ」
そう言うとメイは、顔がまったく見えなくなるほどさらに俯いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 12:03:25.68:qk3OrHo1
「違う!」
ヘイロンは強い口調で言った。
「俺……気づいたんだ。お前がこんなことになって初めて」
メイはまだ俯いている。ヘイロンは続けた。
「お前に気がないフリをしてた。お前に負けたくなくて……でもお前は眩しくて……お前に惹かれてるのが悔しかったんだ」
俯いたメイの顔から涙が一滴落ちた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 13:15:02.21:qk3OrHo1
「うおぉぉぉー! 俺はリー・メイメイが好きだー!」ヘイロンは大声で叫んだ。
中庭にたむろしている学生達が振り向く。
「ちょっ……! ちょっと!」メイは慌てて顔を上げた。
「俺はリー・メイメイが好きだぞー!!」
ヘイロンは顔を真っ赤にしてさらに叫んだ。
「や……! やめろっ! 黙れっ!」
口を塞ぎに来たメイの手を掴むと、ヘイロンは真っ直ぐに目を見て言った。
「お前を守りたいんだ!」
「ロン……」

それを2階の渡り廊下からララが見ていた。
ララは少し疲れたように微笑むと、ぽつりと呟いた。
「青春っていいわねぇ……」
時計を見るとハオからもう3時間電話が入っていなかった。いつもは2時間置きに電話して来るのに。
「ふぅん? 何してるのかしら?」ララはダイヤルを指でクリックした。「こっちから電話してみましょ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/27(水) 15:14:09.28:C+qGnz2K
ハオは8ベルで電話に出た。
『もしもし!? 何かあったのか!?』
「何もないわよ。何してるのかなって思っただけ」
『ありがとう、気にしてくれて。俺のほうは何も心配いらないよ』
「どうして息が荒くなってるの?」
『あ? あぁ、今、道場で稽古中でさ』
「いつもあなた門下生にやらせて自分は立って見てるだけじゃない?」
『たっ、たまにはね。自分で身体も動かすのさ』
「っていうか、そっち今、夜の7時台だよね? まだ道場開けてるの?」
『えっ、あっ。いや、1人でね、練習中なんだ。日々鍛練さ』
『先生、早く〜! もっと突いてよぉ〜』
「今の英語の女性の声は何?」
『あっ。門下生に中段正拳突きを教えているのさ』
「それ太極拳じゃなくてカラテだよね?」
『あぁ、最近カラテの動きも取り入れて……』
『先生〜また奥まで突いてよぉ、早くぅ〜』
「奥までって?」
『みぞおちさ』
「ハオさん」
『……はい』
「帰ったら覚悟しといてね」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/28(木) 17:32:15.48:z5OvXYE1
「ロン……」
「メイ……」
「ごめんね」
「!?」
「あたし……好きな人がいるんだ」
「なっ……誰だ?」
「あなたのお父さん」
「はぁっ!? リウ・パイロンだと!?」
「初めて会った時から」
「変態が好きなのか!?」
「見事な変態っぷりだった」
「目を覚ませ! 目を覚ませ、メイ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/29(金) 07:55:05.54:hL+ikg+N
ハオは女生徒をさらに突いていた。

「大丈夫だっ、証拠がないっ」

「先生! もっと! もっと!」

「離婚はしないっ、浮気じゃないっ、僕は女生徒を正拳で突いてるだけだっ」

「あぁっ! 先生っ! 来るっ! 来るっ!」

パンッ! パンッ! パンッ!
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/29(金) 08:42:22.72:Kz/oYXtp
「むうっ 出るっ」
どぴゅどぴゅ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/29(金) 09:31:15.01:uE1eTBNn
究極のブス専であるハオ
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/29(金) 12:52:52.27:hL+ikg+N
ハオ「ブス専じゃないっ、今ファックしてる娘がっ、たまたまブスなだけだっ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/29(金) 12:59:39.59:uE1eTBNn
リー・メイメイ「ひどい…」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/29(金) 23:27:14.07:VslltPng
     ∩
     ( ⌒)_     .∩_
   .//,. ノ  .\    / .)E)
  / ./ /i |_|i_トil_|  / ./   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ii.l/ /.[ゑ]‐[ゑ]  / ./  < 先生!もっと!もっと!
 .i|i  /'  /・・ヽ | ' /     \_______________
 i|/  lヽ    ̄ ノ ./
 |(  ヽ _ ,`ーi´ .く
 ゞヽ    三 三 .|.          ____
   \  |     |        /__.))ノヽ     _________
     } |  | |   |        .|ミ.l _  ._ i.)   /
   / ヽ。ノ´ヽ。ノ、      (^'ミ/.´・ .〈・ リ < 急用を思い出しましたわ。
                   .しi .  r、_) |   \_________
                     |   'ニニ' / 
                    ノ `ー―i´
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/30(土) 08:41:43.73:n7VT9Plt
なぜかヘイロンは、メイが自分の糞親父に惚れているという一瞬の白昼夢を見ていた。
意識を取り戻すと、目の前のメイが言った。
「ロン……信じていいの?」
「あぁ」
「あたし……信じていいのかな」
「本当だ」ヘイロンはメイの顔を見ようと前髪を撫で上げた。「顔を見せてくれ」
メイが顔を上げる。豹のような鋭い目から涙が流れていた。ヘイロンは思わずその涙に濡れた頬にキスをした。
「俺が好きなのはお前だけだ、メイ」
そう言うとヘイロンはメイの身体を強く抱き寄せ、桃色の唇にキスをした。
周りの学生達が思わず興奮した声を上げる中、二人は長い間唇を重ねていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/30(土) 09:05:29.63:n7VT9Plt
「なんかご機嫌ね、メイ?」
メイの作ったシーフード・パエリアを食べながら、ララが言った。
「そう? そう見える?」
メイはレタスをもしゃもしゃ食べながら、ふにゃふにゃな笑顔で言った。
「ヘイロン君と何かあったのね?」
「やだなー。もしかして、どっかから見てた?」
「覗きなんてしないわよ。で? 遂に付き合うことになったの?」
「まぁねー、へへへ」
そう言いながらパエリアを掬ったメイの手が止まった。
「ママは……何か元気なさそう……」
「そんなことないわよ」
ララは平然とパエリアを口に運んだ。
「何かあったの?」
「べつに?」
暫く二人は黙々と食事をした。やがて思い出したようにララが口を開いた。
「メイ。男の人の言うことを信じすぎてはダメよ」
「どういうこと?」
「平気で嘘をついて、裏では何を考え、何をしてるかなんて、わかりゃしないんだから」
「ヘイロンは違うよ」
「そうね。信じるのはいいわ。でも、信じすぎるのはダメ」
「あたしは……信じたらトコトン信じるよ」
「そっか」
「うん」
「仲良くね」
「何があったの?」
「何も……。ただ、男を信じすぎると裏切られた時にショックが大きいものだから、忠告したかっただけ。
「信じすぎないように気をつけて生きて来た女性でも、その瞬間、バカみたいに傷つくんだから」
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/30(土) 11:07:00.39:2xj9UIwf
      _____
    ./     .\ 
   / . r.li |_li_トi.l_|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ii.l  l .[ゑ]‐[ゑ]  < あたし……
  .i|i  (l  /・・ヽ |    l 信じていいのかな
  i|   ヽ   ̄ ノ    \__________ 
  |    _ノ `ー i´_   _____   
  ゞ /  三 三 ヽ ( __   ヽ._.  
   |  r       l | __  .| 三ξ )   もうやけくそですわ
   |  | |  l ヽ  ヽ.〉(゜)` "^).三l´ . 
   |  | |  | rl'l'l、 .(_.r、  .U  ソ チュパチュパ
   ヽ \。ノ ヽ  V7_ゝ / ./  |  
    \  ヾ   |  ノ ヽ_ イ . |
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/30(土) 14:36:50.89:WmTHHwKO
ヘイロンは新しい自分のベッドの上で天井を見つめていた。
せんべい布団がクリーニングから帰って来るまでの代用として、マットレスの上に新聞紙を敷いていた。
ララが新しい敷き布団を弁償すると言ったのだが、正直な話、ガサガサしていて固くないと寝心地が悪いのだ。

白い天井に大きくメイの顔が浮かんでいた。
メイファンとは違う、伸び伸びと育った健康的な少女が、メイファンと同じ鋭い目をして笑っていた。
抱き寄せた時の細い腰の強い動き、押しつけられた胸の柔らかさ、甘い唇。
ヘイロンは思わず母親には決して見せられない恥ずかしい笑顔が浮かび、口からはヨダレが垂れた。

思い出したように飛び起きると、カラーボックスの上に祀っている闘神様に手を合わせ、報告した。
彼は何か嬉しいことがあると手作りの木彫りの闘神様に報告するのがならわしだった。
「闘神様、俺、彼女出来ちゃったよ〜」
それは硬派と謳われた彼の、誰にも見せられない姿であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/30(土) 17:47:35.00:DZbY/Rf8
闘神様は思った。
(すっげーブスだなぁ)
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/30(土) 23:48:59.93:UJeiTKtd
「妬んでんじゃねぇよ」
ヘイロンはパンチで闘神様をブチ割った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 01:59:39.93:IT6VGXrU
その時、ヘイロンは突如、言葉に表せない嫌悪感とおぞましい気配を感じた

「なんだ…?今、何が起きた?」

先程、自身の拳で割った闘神様を見る
割れ目から、何かが覗いていた

再び強烈な悪寒に襲われるヘイロン

「なんだ…!俺は何を起こしたのだ!?」

闘神様の割れ目から、ゆっくりと何かが這い出してきた…
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 07:40:46.52:sLbq5pNx
割れ目から這い出して来た小さな女は、長い黒髪の間から目だけを覗かせ、ヘイロンを睨んだ。
四つん這いでゆっくりずるずると歩きながら、それは喋った。

「ロンロン……」

「し、小飛!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 07:55:33.52:sLbq5pNx
時代設定=2040年、舞台は民主化を遂げて21年経つ中国、北京。

【主な登場人物まとめ】

・リー・メイメイ(李 苺妹)……通称メイ。主人公。18歳の健康的な黒い肌の女の子。身長168cm。太極拳の使い手。美脚自慢。
黒い『気』を使う。生まれも育ちもアメリカだが、北京大学に入学したのを機に両親の祖国へ帰って来た。
前スレ主人公リー・チンハオとララの一人娘。両親とはバカがつくほど超相思相愛。ブラック・メイファンを中に宿す。

・ヘイロン(黒竜)……20歳の体格のいいイケメン。童貞。スレタイにある25歳は誤り。我流のマーシャルアーツの使い手。
赤い『気』を使う。リウ・パイロン大統領の非嫡子。母と自分を捨てた父を憎んでいたが、だんだんと気持ちが通じ合って来ている。
片想いしていた憧れのメイファンが死に、メイと両想いになるが、それは果たしてメイを愛しているのか、それともメイの中に入ったメイファンを愛しているのか?

・ブラック・メイファン……メイファンの憎しみだけが具現化した、身体を持たない『気』だけの存在。
全人類を憎み、皆殺しにしようとしている。全身を武器に変えて攻撃することが出来る。
現在はメイの身体の中に入り、大人しくなっている。

・リウ・パイロン(劉 白龍)……民主化を遂げた中国の大統領を20年勤めているカリスマだが、変態。53歳。
股間に悪い子を更正させる「マジカル・ステッキ」を持つ。
若い頃は中国の格闘技『散打』のチャンピオンであり、国民的英雄だった。婚約していたメイファンと結婚式の日に死別。

・ラン・ラーラァ(lan 楽楽)……通称ララ。ハオの最愛の妻。メイの最愛のママ。メイファンの最愛の姉。43歳。
白い『気』の使い手。大抵の傷なら治す能力がある。ただし戦闘能力はほぼない。性格は優しく明るく女らしいが、発狂しやすい。
12歳の自分をレイプしたリウ・パイロンを激しく憎んでいたが、今では触られただけで失神するほどのアレルギーに変わっている。現在妊娠4ヶ月。
身体を持たない『気』だけの存在。リウの作った新しく若い身体を得て、現在花の大学一回生。

・リー・チンハオ(李 青豪)……前スレの主人公。ララと結婚し、アメリカに渡り太極拳の教室を開く。メイのパパ。
気が弱く、基本ダメ人間だが、愛する者のためには凄まじいパワーを発揮する。52歳。
タバコを吸って酒を飲んで、あとセックスだけしながら生きて行くのが夢。
武術の才能は4千年に一人と言われるが、やる気がまったくない。現在アメリカで浮気中であり、ララにはバレている。

・ラン・メイファン(lan mei fang)……前スレで習近平にその存在を消去され、22年もの間全キャラへの復讐を胸に異次元に落とされていた女豹。
習近平元国家主席のボディーガード兼『黒色悪夢(ヘイサー・アーマン)』と呼ばれる最強の殺し屋だった。
元々姉のララを除く全人類は殺しの対象だったが、全キャラと和解し、リウのプロポーズを受け、平和な主婦になるはずだった。
結婚式の前夜、自分の中から現れたブラック・メイファンに首をはねられ、あっさり死亡。

・小飛(フェイ)……メイとヘイロンを合わせて仲良し3人組。口数の少ないマスコット的存在の小さな女の子。18歳。
長い黒髪、丸い顔、小さな身体が小型犬を思わせる。ヘイロンのことが好きだったがメイに取られる。

・リーラン……ヘイロンの母。昔リウ・パイロンの恋人だったが捨てられた。43歳。
身長2m22cmに鬼婆の顔を持つバケモノだが、性格はおだやかで優しく、そして非常にだらしない。

・イチロー先生……神出鬼没の謎の変態。
何の先生なのか、鈴木なのか小沢なのかもわからない。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 17:54:21.52:vubn4I99
「ロンロン、私のこと、フッたよね? それで、メイちゃんと、付き合うんだぁ?」
小飛はずるずると這って近づきながら、丸い目でまっすぐ見つめながら喋った。
「私の気持ちなんか、考えないんだ?」
「すまない小飛! 成仏してくれぇぇ!」
「死んでないよ、生霊」
「戻ってくれぇぇ! お願いだぁぁ!」
「戻らない、あたしにもキスしてくれるまで、メイちゃんにしたみたいに」
「うん」
ヘイロンは小飛の生霊を前から抱っこすると、子犬にするみたいにチュッとした。
「呪ってやるぅぅぅ」
目の前の小飛の顔がみるみる怒ったシーズー犬のようになって行く。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 18:12:52.54:sLbq5pNx
小飛の後に続いて割れた闘神様の割れ目の中からさらに何かが這い出して来た。闘神様本人だった。
「ヘイロン、お前、あんまりやわ」
「誰だよ、お前?」
「闘神様じゃ」
「本当にいたのかよ」
「わしがお前をここまで強くしてやったのに、この仕打ちはあんまりやわ」
「俺の彼女のことブスとか言うからだろ」
「心で思っただけじゃ!」
「丸聞こえなんだよ!」
「おのれぃ! やるか!?」
「ぶっ殺す!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 18:50:14.57:IT6VGXrU
ヘイロンは拳を繰り出す
今まで鍛え抜かれた体
その体から繰り出された拳速は既に音と同等の速さを誇っていた
「当たる」「避けられるはずがない」
そのような言葉がヘイロンの脳裏に浮かぶ

「甘い」

しかし、闘神様は驚きもせず、
さも当たり前のように蹴りの動作を始める
その瞬間、ヘイロンの拳が闘神様に届くより先に
ヘイロンの後頭部を闘神様の回し蹴りが直撃した

「先ほど言ったはずやぞ?お前をそこまで強くしたのはわしだと」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 19:13:24.13:sLbq5pNx
ヘイロンの足下でボコボコにされて倒れたまま、闘神様は言った。
「ヘイロン、強く……なったな」
「あぁ、いつの間にかお前より強くなってしまった」
「もう……わしは」
「あぁ、用済みだな。出てけ」
「……行くとこがないんじゃ」
「出てけ」
「冷たいな、お前。人のことを道具としか思っとらんのか」
「何年俺の側で見てたんだよ? その通りだ」
ヘイロンは唾を吐く勢いで見下した。
「何年糞貧乏を続けて来たと思ってんだ。俺にとって、他人はすべて食い物だ」
「メイとかいう彼女もか」
ヘイロンは黙り込んだ。
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/31(日) 21:03:45.77:NobLjSrw
     ∩
     ( ⌒).‐‐‐- 、    ∩_
   .//,. ノ_,_.ノノ__ .ヽ  / .)E)
  ノノ/ /ノ ‐-))-‐)ノノ/ /  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ノ// /ノ.=・= =・=|ノ/ ./ < 呪ってやるぅぅぅぅ!
 .ノ./ /ノ 、__ノ ・・ヽ_,l.' /    \__________________
 ノ/  l |  ,`=三='ノ ./
((   ヽ `,‐ー‐‐i´ く
 ヽヽ    -ヽ、_ノ-  l
   \        |
     } |   l   |
    ノ .ヽ @ ノヽ@ハ
創る名無しに見る名無し [] 2019/03/31(日) 21:11:24.72:NobLjSrw
      ____
    ./     \ 
   / . r.li |_|i_トil_|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ii.l  l .[ゑ]‐[ゑ]  <  ヘイロン
  .i|i  (l  /・・ヽ |    l  今更ガタガタ言っても逃げられないわよ。
  i|   ヽ   ̄ ノ    \_______________
  |    _ノ `ー i´  
  ゞ /  三 三\
   |  |  /  ヽ.l .|
   |  }/ /_ヽ ヽ、
   |  ヽ。ノ_))ノヽ。ノ     ________
   | .|ミ.lilil_  ._ i.)|   /
   \__)/.(゜)〈(゜)(ノ < ひいい 助けてくれぇぇ
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創る名無しに見る名無し [sage] 2019/03/31(日) 23:47:57.31:p+FVh4Ey
ヘイロンは悪霊から逃れるため聖人ガンジーオセロのもとに向かった
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 12:15:44.06:Y7swf76e
ヘイロンは闘神様を見下しながら言った。
「チッ。しょうがねぇな……。お前、俺のことまだ強く出来るか?」
「わしを超えたというのに……それ以上強くなってどうするつもりじゃ?」
「彼女のほうが強いんだよ」
「なんと……!?」
「最初は俺のほうが余裕で強かった。でもアイツが『気』を使えるようになってから、抜かれちまった」
「『気』か……」
「彼女より弱いのは格好悪いだろ。俺も『気』を操れるようになりてぇんだ」
「ふむ……」
闘神様は必死で考えた。自分は闘いの神であり、闘いにおいて使用する気功術も当然極めている。
しかしそれはすべて既にヘイロンに仕込み済みだ。それ以上の『気』となると、恐らく専門外だ。よく知らん。
しかし知らんと言えば、追い出される。彼女に聞けば? と言おうとしたが、それでもやはり追い出されるだろう。
それでつい言ってしまった。
「よし、わしに任せろ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 12:52:58.76:Y7swf76e
メイは父と離れてからも毎日鍛練を欠かさなかった。
今日も早朝から近くの公園で型の練習だ。

基礎練習が終わるとメイはポケットから胡桃をひとつ取り出した。
ジャッキー・チェンが「酔拳」の中で指で割った場面のように、二つの指で挟んで握る。
しかし割りはしない。割ることなどメイには簡単すぎる。
メイが『気』を込めると、胡桃は小型の手榴弾に姿を変えた。
再び『気』を込める。手榴弾は今度は鎖のついた分銅に変わる。
改めて『気』を込める。分銅はトゲのついた手裏剣のような武器に変わった。
「うん、そうだね」
周りには誰もいないのに、誰かと会話するようにメイは言った。
「ビールは作れないね、こんなこと出来るのに……」
『気』を解くと、元に戻った胡桃をポケットにしまい、アパートへ向かい歩き出した。
「破壊するためのものしか作れないんだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 12:54:57.13:Y7swf76e
メイが『気』でどんなことが出来るのかをヘイロンの口から聞きながら、闘神様は真っ青になって行った。
「どうだ? 出来るか?」
期待に目を輝かせながら聞くヘイロンに闘神様は答えた。
「任せんしゃい!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 13:02:32.48:Y7swf76e
午前の講義が終わり、中庭で二人はようやくその日初めて出会う。
「おはよ、ロン」
「ザォ(オッス)、メイ」
メイとヘイロンは並んで学食へと向かう。
「どーせならあたしと同じ方向に引っ越せばよかったのに、なんでまた逆方向なんだよ、家」
「フフ、俺と一緒に通学したいのか?」
「当たり前でしょ」
そう言ってメイは頬を膨らませ、ヘイロンは顔を赤くした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 13:24:34.42:Y7swf76e
「ククク、メイ。俺はお前を越えるぞ」
特盛の唐揚げのせご飯を食べながらヘイロンが言った。
「何? 美脚マッサージでも始めた?」
メイが興味なさそうに特盛の唐揚げのせご飯を食べながら言った。
「俺、『気』の使い方を覚え始めたんだ」
「えー? ロンらしくないな。オドオド優しく気遣い出来るロンなんて」
「その気じゃねぇ! ドラゴンボールに出て来るほうの『気』だ!」
「ふーん。かめはめ波でも打てるようになったの?」
ヘイロンはニヤリと笑い、答えた。
「打てるようになるんだよ」
「へー。すげー」
「お前、打てるか? かめはめ波」
「ムリムリ」
ヘイロンは心からの優越感を顔に表し、言った。
「俺の勝ちだな」
メイは呆れて小飛に話題を振った。
「男っていつまで経っても子供だよねぇ、フェイ?」
しかしいつもの席に小飛はいなかった。
「あれっ?」
「フェイ……てっきりいると思ってたな」ヘイロンも初めて小飛の不在に気づき、びっくりしていた。
「なんでだろ。一緒にいるような気がしてた……っていうかなんでいないの」
「あっ!」ヘイロンが思い出したように声を上げた。
「どうしたん?」
「まさか……まだ幽体離脱したままなんじゃ……」
そう言うと食べかけの唐揚げのせご飯を置いて、ヘイロンは駆け出した。
「幽体離脱?」
呆気にとられながらその背中を見送ると、メイはヘイロンのぶんの唐揚げのせご飯も取って食べ始めた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 13:35:49.39:Y7swf76e
ララはハオからの電話を31回無視していた。
食欲がないので小売部でメロンパンを一つ買い、中庭でちびちび食べていると32回目の電話がかかって来た。
「ララちゃん、電話鳴ってるよー」
たまたま近くにいた友人にそう言われ、マナーモードを切っていたのを悔やんだ。
しかしそろそろちゃんと話をしなければと思っていたこともあり、着信ボタンを押した。
『もしもし!? ララ!? なんで電話に出ないんだ! 何かあったのか!?』
「……」
『おい!? ララ!? 聞こえてるのか!?』
「……」
『ララ!? 何かあったんだな!? よし!! 今からそっち行く!!』
「近所に行くみたいに簡単に言うな」
『!! 聞こえてんじゃないか!! いや……よかった! 安心した! 元気かい?』
ララは電話を切った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 13:59:06.08:QqBszUuh
そしてララはすぐにアメリカへ電話をかけ直した。
呼び出し音4回目で相手は電話に出た。
『ハロー?』
「今晩は、ミーシャ」
『誰?』
「ララよ」
『……先生の……奥さん?』
「えぇ」
『……どうしたの? 電話なんて……』
「主人のハオがお世話になっているわよね?」
『……』
「あたしが中国にいるからって、安心した? 残念ながら、筒抜けなの」
『何のことよ? 知らないわ』
「ふぅん? しらばっくれるってことは合意なのね? あなた、許さないわよ?」
『知らないもの! 何の話をしてるのよ!?』
「興信所を雇ってるのよ。あたしのいない間に何かあるかと思って」
嘘だった。浮気相手がミーシャだというのは単なるララの女の勘だ。
しかしあの時電話の向こうに聞いた黒人特有の低いトーン、そして『先生』という呼び方からララは確信していた。
これでもミーシャがしらばっくれるならば、ララは自分の勘違いとして収めるつもりでいた。
しかしミーシャは慌ててこう言い始めたのだった。
『先生が! 先生が無理矢理……! あたし、嫌だって言ったのに!』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 16:56:56.29:QqBszUuh
ヘイロンが小飛の様子を見に行くと、中にいた女子学生達が声を上げた。
「キャー! 先輩、男子禁制ですよ!?」
「講義時間中だろう。なぜいるんだ、お前ら」
「昼休み中です!」
「あ、そうか……」
「先生呼びますよ!」
「いや、小飛……楊 飛飛がどうしているか知りたいんだ。もしかしたら倒れているかもしれない」
「小飛なら今朝見ましたよ」
「元気だったか? 今は?」
「呼んで来ましょうか?」
「頼む」

奥からチョコチョコと小飛が出て来た。どう見ても元気だ。
「よかった。飯に来ないから心配したぞ」
小飛はくすっと笑うと、小さな声で言った。
「呪ってやる」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 18:04:29.84:QqBszUuh
「ねぇ、今度二人でどっかの大食い大会に出ない?」
いつもの湖のある公園でベンチに座り、メイが言った。
「俺、あっちこっちの大食い大会で出禁食らってるんだ」
ヘイロンが答えた。
18時を過ぎても陽は高い。
「夏は嫌だな」ヘイロンが呟いた。「なかなか暗くならん」
「あたしは好きだよ。夏生まれだし。外で活動出来る時間が長くていいじゃん」
「しかし」早くチュッチュしたいのに、と思いながらヘイロンは素直に言えなかった。「糞暑いのが、な」
メイは小飛のことをあまり聞かなかった。元気だったという情報だけで安心し、まったく話題にしなかった。
ヘイロンは気にしまくりだった。あんなことを言われ、小飛に嫌われたらしいことが悲しかった。メイと小飛にも元通り仲良くしてほしかった。
「フェイのことだが」ヘイロンはメイに相談する形で言った。「俺、どうしたらいいのかな」
「どうって?」
「今まで通り仲良くしたいんだが……」
「無理でしょ」
「いや……しかし」
「あのコもロンのこと好きなんだよ? 突き放してあげてよ」
「そんな……! お前、お前はどうするんだ? 突き放すのか?」
「あたしが同情とかすんのは逆に酷でしょ」
「……そうなのか」
ヘイロンは恋愛に慣れていなかった。
「フェイ次第だよ」メイは少し遠い目をして言った。「あたし達にはどうすることも出来ないし、してあげる義理もない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 18:26:42.22:QqBszUuh
「俺……フェイのこと、利用してたのかな」
突然また意味のわからないことを言い出したヘイロンの顔を、メイは珍獣を見るように見つめた。
「俺、人間がペットを飼うのは、愛しているからではなく、自分の寂しさを埋めるための道具としてだと思うんだ」
「ペット飼ってる人には聞かせられない台詞だね」
「でもそんなもんだろ。俺もフェイのこと、自分を癒すための愛玩犬のように思ってたんだ。フェイの気持ちなんかどうでもよかったんだな」
「ロン、寂しかったの?」
「いや……何と言うか……」
「さっきあれほどフェイのこと気にかけたくせに」
「いや……俺は」
「ロンは自分の優しさに気づきなよ」
「優しさだと?」
ヘイロンは母以外に言われたことのないその言葉にとまどった。
「うん」
「いや、俺は、他人のことはすべて自分の金にするための道具としか見て来なかった奴だ! お前にも色々……」
「あー。利用されまくったよねー」
「……すまん」
「でも利用されるたびに、その後で優しさが滲み出てたよ?」
「……いつもはあんなじゃないんだぜ」
「それって」メイは意地悪な目をして聞いた。「あの時からあたしのこと、愛してたってこと?」
「知るか。……なんか知らんがお前には調子崩されたんだ」
「ふーん」メイはニヤニヤしながらヘイロンの横顔を見つめた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/01(月) 18:37:50.96:QqBszUuh
「俺、他人を食い物としか思えないような奴だけど」
ヘイロンは沈み始めた夕陽を見ながら言った。
「お前のことは、他人じゃなくて、家族みたいなものだと思ってる」
「うん」
いきなり家族って凄いなと思いながらも、メイは照れた顔でその言葉を受け取った。
「だから……大切にするよ」
メイはヘイロンの肩に頭を乗せた。
「べつに……道具や食べ物でもいいんだよ?」
「いいわけあるか」
「世界一大切な道具とか、大好きな食べ物だったら、それで」
「あー、なるほどな」
ヘイロンの笑顔が夕陽で真っ赤だった。
「じゃ、食べて」
メイがそう言って差し出した唇を、ヘイロンは口を開けて味わった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 07:57:26.12:ZZjyg732
『すまなかった! すまなかったーッ!』
「そう……。で? ミーシャと結婚するの?」
『するわけないだろ! 俺にはお前とメイだけが家族だ!』
「家族? 裏切っておいて、よくまだ家族だとか言えるわね」
『メ、メイに聞いたぞ!? ロマンスグレーの教授が君を側に置いて特別扱いしてるって。君だって、俺がいないのをいいことに……』
「断ったわよ」
『な、な、何!?』
「あたしがどうして中国に残ったかわかってる? 遊ぶためじゃないのよ?」
『あ、あぁ。メイのことが心配だし、それに……』
「そう。若返ったこの機会に大学を出て、正式な医者になるの」
『わかってるよ』
「あなたの稼ぎだけじゃ正直苦しかったからね」
『!』
「せっかく評判になっても、道場は大きくしない、講演会の依頼が来ても行かない、TVで有名になれるチャンスがあっても出ない」
『……』
「やる気のないあなたなんかいなくても、あたし達は食べて行けるわ」
『ちょっ……! ちょっと待て! 離婚はしないぞ!』
「あなたにそれを言える資格はないわ」
『やだ! 嫌だ! お前と、メイと、離れるなんて……!』
「自業自得でしょ」
『嫌だ! やだ! やだーー!』
電話の向こうでハオは鼻をすすりながら号泣を始めた。
「お願い、考えてみて」
ララは優しい声になると、言った。
「あたしの気持ちを……。他の女性を抱いたと知って、あなたを今まで通り愛して生きて行けると思う?」
『ほんの出来心なんだ! 本気なんかじゃないんだ! 信じてくれぇぇぇ〜……!』
「メイが帰って来たわ。切るわね」
『待て……!』
「言っとくけど、メイも知ってるからね。メイに電話しないでね。可愛い娘から罵倒されたくなければ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 08:07:04.14:ZZjyg732
「パパと電話してたの?」
メイは部屋に入って来ると聞いた。
「えぇ。パパは今、仕事で大忙しらしいから、電話して邪魔しちゃダメよ?」
「え〜? あのパパが? 忙しいことなんてあるの?」
「あるのよ。ようやくやる気を出してくれたの。邪魔しちゃダメ」
なんか変だなぁ、と思いながらもメイは飲み込んだ。聞かなくていい話なら聞きたくない。
「ご飯、作るね」
そう言うとメイはいつものように服をすべて脱ぎ、エプロンを着けた。
「うん。今日は何かな?」
「冷蔵庫にあるものでテキトーに」
「メイのテキトーは魔法だから楽しみだわ」
ララは屈託なく笑った。
しかしメイは気づいていた。母が最近、何かに心を痛めていることに。しか、それが何かはわからなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 08:21:54.24:ZZjyg732
出来上がった名前のないエビと豚肉とセロリの激旨料理を二人で食べながら、ララが聞いた。
「パパからよく電話かかって来るの?」
「しょっちゅうだよ。最近なんでか、ないけど」
メイは楽しそうに箸を動かしながら答えた。
「ごめんね、うざいね、パパ」
「ううん。あたしも大好きだし、かかって来るの嬉しいよ?」
「そっか……」
「うん。……なんで?」
「ううん」
「?」
「それよりメイ、なんだか機嫌がいいわね? 何かあった?」
「え〜? 普通だよ?」
そう言うとメイの顔がニヤケて止まらなくなった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 08:59:39.76:ZZjyg732
「幸せそうで、何よりよ」
ララはご飯を口に含んだ顔でにっこりと笑った。
「普通だってば〜」
「ところでメイファンは元気?」
「え。何、突然?」
「あなたの幸せ、あなたの中のメイファンにも分けてあげてね」
「何それ〜? 凶悪な人殺しだよ? メイファンおばさんの怖いとこだけの奴だよ? そんな奴に幸せなんて……」
「あの子はね、あたし以外の誰からも愛されなかったの」
「ん?」
「受ける愛が足りなすぎてああなっちゃったの。でもね」
「うん」
「そのくせ自分からは色んな人を愛しちゃうバカなのよ。そうでなければとっくにあたし以外の全人類を抹殺していたわ」
「冗談じゃねー……」
「根は凄く愛すべき子なのよ。あなたも知っているでしょう?」
メイの頭にメイファンと暮らした日々が甦った。
ビールの奪い合い、壊滅させた人身売買、顎でこきつかう女王っぷり……
「えぇと……」
美味しい料理を教えてくれた先生っぷり、相談に乗ってくれたお姉さんっぷり、何をしても鷹揚に受け止めてくれた聖人っぷり……
「まぁ……ね」
「でしょ?」
「でも、コイツは違う。コイツはメイファンおばさんを殺したメイファンだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 10:51:08.09:ZZjyg732
「じゃあ、どうするの? その子を。排除するの?」
「今まで通りだよ」メイは自信満々な顔で答えた。「あたしが支配する」
「もし支配しきれなくなって、また暴れ出したら?」
「その時は……あたしが闘うよ」
「ダメよ。許さないわ」ララはきつい目をして言った。
「だっ、大丈夫だよ。あたしも強くなっ……」
「あたしの妹なのよ」
「えっ」
「いじめたら、たとえメイでも許さない」
「マッ……ママ……?」
ママも首斬られたでしょ? と言いたいメイよりも先にララは言った。
「愛してあげるの。愛が足りるまで。それしかメイファンを救う方法はないわ」
「え〜……」
「メイファンおばさんのことは……好きだった?」
「うん」メイは即答した。「好きだったよ」
ララはにっこり微笑み、言った。
「どうして泣いてるの? メイ」
「え」
自分の頬を触ってみると、確かに一筋の涙が流れていた。
「本当だ、なんでだろ」
ララは真顔で泣いている娘をただにっこりと微笑みながら見つめ続けた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 12:11:30.70:ZZjyg732
メイと並んでベッドに寝転びながら、ララは考えた。
メイの言葉が胸に突き刺さっていた。

ーーあたしもパパのこと、大好きだし、電話かかって来るの嬉しいよ

隣で眠るメイの横顔を見る。幸せそうだった。
『この子から父親を奪えない……』
ララは考えた。
『あたしさえ我慢すれば……それですべては丸く収まる』
寝返りを打つと、ララは決意した。
『生まれて来る下の子だって、身体がなくてもハオなら間違いなく愛してくれる……。許そう、ハオを。家族のために』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 16:45:00.83:ZZjyg732
ハオは暗い部屋の中で、焼酎を飲みながら、メイが産まれた時のことを思い出していた。

真っ黒で皺くちゃな子だった。背中には黒い毛がぼうぼうと生えていた。心から産まれて来たことを悲しむような声で泣いた。
見た瞬間、ハオは愛しさよりも恐怖を覚えた。
これは誰だ、どこから来たものだ、俺はこんな奴知らないぞ。

少し大きくなっても可愛いとはとても思えなかった。
笑うことがほとんどなく、不機嫌そうな顔をしているか、あるいは泣いてばかりいる子だった。
内心ハオは残念がっていた。自分とララの娘ならもっと可愛いはずじゃないのかと絶望してさえいた。
「苺妹(メイメイ)」なんてスイーツな名前をつけてしまったけど、失敗だったな、似合わない、そう思っていた。

「メイは本当に笑わないね」
ある時ハオがそう指摘すると、ララはメイに母乳を飲ませながら笑った。
「この子、乳首を噛み切ろうとして来るのよ」
「まじか」
「歯があったらあたしの乳首はとっくに無いわね」
「……すまん。たぶん俺のヘッポコ遺伝子のせいだ」
「何言ってるの? 可愛いでしょ?」
「う……うん」
「この子が笑わないのはね、まだまだあたし達の愛し方が足りないの」
「あぁ……」ハオはララの言葉に胸が痛んだ。「なるほど……そうか」
ララはおっぱいを飲み終えたメイの背中を軽く叩いてゲップをさせると、頬擦りしながら言ったのだった。
「メイちゃん、愛して愛して愛しまくってやるから覚悟しなさい」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 16:59:47.98:ZZjyg732
それからハオはメイのことをなんとか愛するように努めた。
可愛いとはとても思えないながらも、暇があれば抱っこしてやり、ララの母乳の出が悪い時にはミルクをやり、離乳食も自発的に作り、与えた。

俺とララの子だもん、今はこんなだけど、絶対に可愛くなるさ。
それにこの子が可愛くないのはこの子のせいじゃない、ララの言う通り、俺の愛してやり方が足りないからなんだ。

来る日も来る日も必死で愛した。
殺気すらこもった目で睨んで来る娘を一方的に愛した。

ある日、ハオがメイをベビー椅子に座らせて離乳食をやっていると、いつものようにメイが怖い目で睨んで来た。
「アハハ。そんな目で見てもちっとも怖くないぞ?」
ハオがそう言うと、メイは歯を食いしばり、歯ぎしりを立てる勢いで顎を突き出して来た。
「アハハ。可愛い、可愛い」
メイは目を大きく剥き、ぷるぷると震えながら額に青筋を立てた。
「アハハ、面白い顔だなぁ。チャーミングだぞ?」
ハオがそう言うと、メイは急にきょとんとした顔に変わり、恥ずかしそうにそっぽを向いたのだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 17:14:07.42:ZZjyg732
2歳になるとメイは目についた物や人をなんでも蹴るようになった。
ララは抱っこするたびにお腹をドスドス蹴られたが、それでも笑顔でメイを抱っこするのを止めなかった。
ハオが自分に任せろと言っても「負けられっか! 愛してやる!」と聞かなかった。
しかしさすがに痛さに負けるとハオに抱っこをお願いした。
ハオはメイを受け取ると、いつも同じ台詞を言った。
「よぅし、メイ、蹴ってみろ」
ハオは気功で腹筋を鉄のように硬くすることも出来たが、柔らかいままのお腹を蹴らせた。
まるで憎しみを込めるように不機嫌そうな顔でドスドス蹴って来るメイに、ハオはとにかく笑ってみせた。
「痛い、痛いぞ。ハハハさすが僕の子だ! メイはキックが強いなぁ」

2歳から道場デビューもさせ、防具をつけた門下生を自由に蹴らせた。
そのお陰か、足のやたらと長い子になって行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 17:43:35.55:ZZjyg732
あれはメイが4歳か5歳の頃、家族3人で近くの山へ遊びに行ったことがあった。
メイは言葉を喋れるようになっても口数が少なく、たまに口を開けば「殺す」だの「糞が」だの物騒なことを言った。

そこの山にはハイキングコースがあり、ハオは体力のないララを芝生の広場に置いて、メイと二人で山歩きに行った。
メイは父を置き去りにしようとするように1人でさっさと歩いた。
その頃から足が速かったが、さすがに大人が追いつけないほどではなかったので、ハオは後をついて行った。

「天気がいいなぁ」
「……」
「空気もおいしい。来てよかったなぁ、メイ?」
「……」

無言でサクサク歩いているうち、綺麗な色の蜘蛛が巣を張っているのに見とれ、メイは石に躓いて転んだ。
膝からいっぱい血が出た。泣くのをこらえながらもショックを受けているメイに駆け寄り、傷口を見るとハオは言った。
「大丈夫、大したことない」
「もう、だめだー! 一歩もあるけないー!」
メイが何かのアニメで覚えたらしい台詞を苦しそうな顔で言った。
「大丈夫だ、そのぐらい。歩いてみろ。ホラ、ママのところへ帰って治してもらうぞ」
「おんぶー!」
「歩ける。頑張れ」
甘やかすのと愛するのは違う。これぐらいの傷なら問題なく歩けると教えるのも愛だ。
ハオは道場主として、そして父親として、メイに自分の足で歩ける強い子になって欲しかった。
そしてメイは言われるがままに立ち上がると、大してヒョコヒョコすることもなく、ママの待つ広場へ辿り着いた。

ママの姿が見えると、メイは勢いよく振り向き、ハオに言った。
「パパ! あたし歩けた!」
「よく頑張ったな、凄いぞ」
ララが手を振り、メイの膝を見ると笑顔のまま「あらあら」と口を動かした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 17:55:19.23:ZZjyg732
思えばあの時からメイは変わり始めた。
笑うことが多くなり、殺気立っていた顔つきもどんどん可愛らしくなって行った。
「ククク、ようやくあたしらの愛が足り始めたわね」
そう言いながらララが後ろからメイをぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「くるしいー! やめろママ!」
メイの言葉にララは喜び、ハオに言った。
「ほら! 『やめろボケ』じゃなくなったわ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 18:04:12.89:ZZjyg732
苦労したぶん、その反動のようにメイの可愛さが花開いた。
相変わらずなんでも蹴り飛ばす乱暴者だったが、門下生をムカついてキックなどした時には、叱ると泣きそうな顔をして飛んで来た。
「パパ! きらいにならないで!」
「いけないことをしたら叱る。でも、嫌いになんかなるわけないだろ」
「メイのこと、すき?」
「世界一愛してるよ、ママと、メイのこと」
それがいつの間に本当の本心になったのか、覚えてはいなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/02(火) 18:09:42.94:ZZjyg732
暗い部屋で、ハオは焼酎を飲み干すと、呟いた。
「ララがメイと離れたくないって言うなら、一緒にいさせてやりたいさ……」
涙が止まらなくなり、ベッドに仰向けに寝転んだ。
「……でも……不公平じゃないか!?」
仰向けに寝転んでも涙はとめどなく顔の横へ流れ続けた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/03(水) 16:44:17.96:iYd5Vvmh
メイと小飛はいつもと何も変わらない雰囲気で学食でご飯を食べている。
ヘイロンだけが気まずそうにそわそわしていた。
「体調はよくなったの? フェイ」メイが小飛に話しかけた。
「おかげさま」小飛はそう言うとくすっと笑った。
「今日、帰り、ロンと買い物行くんだけど、フェイも来る?」
「やめとくねー」
「そだね」
「あー。メイちゃん、今日のTシャツ超可愛いね、いかにも男受け狙った感じがする」
「ありがと。フェイのワンピースも可愛いね、犬が着るやつみたいで」
「でもメイちゃん、よかったね、目が怖くなって。一般受けはしなくてもロンロンの好みにたまたまハマったんだね」
「フェイも怖い目にしてみたら? 小型シベリアンハスキーになれるかもよ?」
「アハハ、それ面白ーい」
「ウフフ、フェイったら」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/03(水) 16:51:08.56:iYd5Vvmh
ヘイロンはたまらず話題を変えたかった。ふとメイのお腹を見ると、ララの子が放つ金色の『気』が少し大きくなっている。
「ところでメイ、お腹の子、お前が産むのか?」
「お腹の子!?」小飛が思わず丸い目をさらに丸くした。
「あー、何て言うか……。産まれては来ないらしいんだよね」
「そうなのか」
「???」小飛は必死で首を傾げた。
「あ、ロン。あたし、考えたよ、赤ちゃんの名前」
「赤ちゃんの名前!?」小飛が卒倒しそうになる。
「そうか。聞かせろ」ヘイロンが優しい顔になった。
「玉金(ユージン)っての、どうかな」
「いいな、宝物っぽいな」
「フフフ。ユーちゃんって呼んであげるの」
「お母さんにはもう言ったのか?」
「ん、まだ」
「親に内緒の妊娠!?」小飛は思い切り引いた。
「どうしたの? フェイ」
「あぁ、コイツ、メイのお腹に赤ちゃんがいること知らなかったんだっけ。実はな……」
小飛は勢いよく立ち上がると、学食から泣きながら走り出て行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/03(水) 17:23:17.76:iYd5Vvmh
学食を出てヘイロンと別れたところで、ハオから電話がかかって来た。
メイは嬉しそうな顔をすると、急いで着信ボタンを押した。
「ハロー、パパ!」
『……』
「どしたの? 仕事が忙しいんじゃないの?」
『……』
「……パパ?」
『……メイ。ママは側にいるか?』
「いないよ。今日、気分が悪いって休んでる」
『メイ、正直に教えてくれ。ママは若返って、ハメを外しているんだろ?』
「はぁ?」
『あんなに綺麗になって、僕の目の届かないところにいて、浮気してないわけがない!』
「ちょっ……パパ?」メイは困った笑いを浮かべて否定しようとした。
『だからママも浮気しているなら、僕のしたことばかり責められるのは不公平だと思うんだ!』
「えっ?」
『僕はメイが可愛いんだ! パパのこと罵倒してくれてもいい! でも、メイを取られたくないんだ!』
「ちょっ……?」
『浮気したパパのこと、不潔だと思うかい? 思うよな……』
「ちょっ……パパ! 聞い……」
『でも、ママはどうなんだ!? 僕は自分を不潔だと認める! だからママの不潔なことも、知ってたら教えてくれ! 頼む!』
「何? 何言ってるの……パパ。あたし、何も知らないよ?」
『……メイ? あれ……? し、知らないのか?』
「知らない……」
『ララめ……嘘ついたな』
「どういうこと? 浮気したの? パパが?」
『……』
「何? まさか……離婚とかしないよね?」
『……メイ』ハオは涙を噛み殺した声で言った。『お前……パパとママと、どっちと一緒にいたい?』
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/03(水) 17:23:35.57:j/kRDaNX
目の前に餃子が落ちている
明らかに罠
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 05:55:01.76:0qcwJQ1L
リーランは餃子を拾うと、誰にも見られないうちに口に放り込んだ。
「ふへへっ。これで3日は何も食べなくても持つだ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 08:19:48.98:aoUzAxjE
しかしそれはオザワ先生の罠だったのである。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 10:13:22.17:0qcwJQ1L
リーラン「ああっ! 身体中のいやらしいところが疼いてしょうがねェだ! 何だべ、コレ」
ヘイロン「どうしたんだ、母さん!?」
リーラン「いっ……いや、何でもねェだ。ちょっと母さん、オザワ先生んとこさ行って来るから、留守番頼むな?」
ヘイロン「オザワ先生? 医者か?」
リーラン「あァ、お医者さんごっこだァ」
ヘイロン「気をつけて行って来いよ。途中で拾い食いとかしないようにな」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 11:37:35.69:0qcwJQ1L
リーランが出て行って暫くすると呼び鈴が鳴った。
呼び鈴の音にまだ慣れていないヘイロンは「何の音だこれは」とひとしきりパニックを起こした後、顔を真っ赤にしながら玄関へ出た。
ドアを開けると中国国家元首が立っていたが、ヘイロンはつまらなそうな顔をした。
「よう」リウ・パイロンが言った。
「何の用だよ」ヘイロンが言った。
「引っ越し祝いを持って来た」
「遅ぇよ。引っ越してもう何日経ってると思ってんだ?」
「リーランは」
「病院だ」
「どこか悪いのか?」
「いつものことだ。痛みにめっぽう強いからなかなか病院に行ってくれないんだが、つまらんことではすぐに病院に遊びに行く。だから心配は要らん」
「そうか。リーランに話があったんだが……」
「悪いな、出直せ」
「いや、先にお前に言っておこう」
「何だよ」
「上がってもいいか」
「200円だ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 12:04:04.83:0qcwJQ1L
入場料200円を払い、中へ入るとヘイロンがお茶と菓子を持って来た。
「お茶が100円、菓子が500円な」
「頂こう」
「で? 話って何だよ」
「お前達、うちで一緒に暮らさないか」
憎まれ口で返そうとしたヘイロンの言葉が止まった。
「嫌か」
「……姐さんがあんなことになったらすぐ母さんに乗り換えるのか」
「もちろんメイファンのことを忘れたわけではない。ただ、思いついたら早いほうがいいと思ってな」
「何を思いついたんだ、急によ?」
「メイファンの無茶苦茶を許せた私に、リーランのダラダラを許せないわけがない筈だ、とな」
「母さんをバカにしてんのか」
「正直に言う。跡継ぎが欲しい」
「はん?」
「ヘイロン。今から経験を積み、私の跡を継いで大統領になれ」
「なれるわけねぇだろ!」ヘイロンは思わず座ったまま15cmほど飛び上がった。「いきなり何言い出した!?」
「私はまだ30年は大統領の座を降りないつもりだ」
「凄ぇな! 半世紀以上継続した国家元首っているのか???」
「だからその間にお前に勉強し、中国を統べるに足る実力を身につけて欲しいのだ」
「ムリムリムリムリ!!」ヘイロンは激しく首を横に振った。「やる気もねぇし! やりたくもねぇし!」
「メイちゃんをファースト・レディーにしてやりたくはないか?」
「いやいやいや! 大体、お前、俺のことよく知らねぇだろ」
「俺の子だ。俺の遺伝子を継いでいる」
「家に入れるのに200円取る男だぞ、俺!?」
「あの時……、お前が自分の胸を刺した時、確信したんだ。お前は俺の跡を任すに足る男だと」
「……ハァ。あの時は……」
「とりあえず考えてみてくれ。リーランにも伝えてくれ」
「……母さんが何て言うか……わかりきってんな」
ヘイロンの頭の中にリーランが狂喜して「ヘイロン大統領」と連呼する姿が浮かんだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 12:17:24.05:0qcwJQ1L
「ところでメイちゃんは変わりないか?」リウが100円を払ってお代わりのお茶を飲みながら聞いた。
「あぁ。完全にあの真っ黒いのを支配してる。目がカッコよくなったぐらいだな」
「目が?」リウはヘイロンの言葉が気にかかった。「変わったのか?」
「前のメイの可愛い目が、姐さんみたいな獣っぽい目になった」
「それは……よくなくはないか。目は心を映す窓と言うだろう」
「いや、真っ黒いののあの狂った目じゃなく、生きてた時の姐さんみたいな目なんだ。愛嬌があって、カッコ可愛いというか……」
「ふむ……」リウはお茶をテーブルに置いた。「メイちゃんは今、自分のアパートか?」
「今日はなんか午後の講義休んで、いきなり帰ったらしい。お母さんの調子が悪いから見に帰るとか」
「ふむ……。様子を見に行ってみるか」
「メイんとこ行くのか」ヘイロンはそわそわし始めた。「お、俺も一緒に連れて行ってもらっていいか?」
「ウム。一万円」
「冗談やめろ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 16:56:57.19:Olitdrzs
「メイに……電話したの?」
ララはメイの部屋で姿勢を正して座り、ハオからの電話を受けていた。
電話の向こうのハオは激昂している。
『お前! 嘘つきだな! メイは何も知らなかったぞ!』
「電話しないでって……言ったのに」
『お前の言いなりになるか! メイが教えてくれたぞ? お前も浮気してること!』
「メイがそんなありもしないこと言うわけないでしょ」ララは溜め息すらつかずに言った。
『いいや! 聞いた! お前も浮気してるのに、俺の浮気だけ犯罪みたいに責めるのは不公平だ!』
「黙れクズ」
ララの胸にあった昨夜の決意がいとも容易く消えてしまった。
『黙って頭を下げるべきなのはお前のほうだ! メイが可哀想だとは思わないのか!』
「どの口がそれを言うか。お前がメイに言わなければ、やり直すことも出来たのに」
『えっ!? やり直す!? なんだ、それならそうと……』
「もう遅せーよ、クズ」
『えっ』
「離婚だ」
『いや……ちょっ、待っ……』
「絶っっっ対に許さん! 離婚する」
『ララちゃん、あのっ、ごめんなさい。えぇと……もう二度としませんから……』
「もう……疲れたのよ」ララは顔を押さえ、泣きはじめた。「今まであたしがどれだけ無理して笑って来たか……」
『ごめんっ! ごめんララちゃん! だから……』
「離婚よ」
玄関のほうで物音がした。靴を急いで履き直し、ドアを開けるとすぐに閉め、速い足音が遠ざかって行く。
「メイ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 16:58:21.29:Olitdrzs
ララは慌てて立ち上がり、後を追ったが、ドアを開けた時にはもう姿も見えなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 17:09:17.00:Olitdrzs
ママと直接向き合って、その口から聞こうと思っていた。だから電話はしなかった。
玄関を入るとママが電話をしていた。相手は間違いなくパパだった。
「離婚」ーーその言葉をママの口からはっきりと聞いた。
メイはどうしていいのかわからず、ただ急いで外へ走り出た。もうこれ以上何も聞きたくなかった。
大好きなパパとママ、そして両親に愛されている娘。そんな関係が永遠に続くと思っていた。
幻だったように一瞬で壊れてしまった。メイは自分が何をしたいのかわからなかった。ただヘイロンの顔が頭に浮かんだ。
『ロン……助けて! あたし、壊れそう!』
足はヘイロンの家のほうへ向かって駆けていた。しかし自慢の足がなぜか重かった。自分の身体ではないようだった。
急に吐き気を催した。ちょうど公園のトイレがあった。メイはよろよろと重い足を引きずり、入って行った。
手洗い場の鏡に自分の顔が映った。嬉しそうに笑っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/04(木) 17:14:51.22:Olitdrzs
メイは鏡に思い切り自分の頭を打ちつけた。
鏡が粉々に割れ、コンクリートの壁が剥き出しになっても、そこへ何度も頭を打ちつけた。
メイの意識が遠くなって行った。メイは完全に気を失った。
気を失ったメイはさらに嬉しそうに笑うと、黒い煙を口から吐き、悪魔のような声を出した。
「クァカカッ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 00:10:28.32:BIAKKsoT
俺たちの闘いはこれからだっ!!

−第1部 完
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 08:08:29.63:dMByM+Lz
第2部 オザワ先生と愉快な仲間たち
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/05(金) 12:34:39.92:Y7yRtjnm
オザワ先生は言った、「チンコのついてないお偉いさんには興味ないよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 12:55:52.50:dOGX4n6t
蓮舫はクスッと笑うとミニスカートを捲り上げ、股間のもっこりしたモノを見せつけた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 17:03:14.98:2mhUStW2
主な登場人物まとめ

・メイ(リー・メイメイ)
18歳女子大生。壊れた。オザワ先生の性奴隷。

・ヘイロン
20歳大学生。金の亡者。オザワ先生に金で雇われる。

・ララ(ラン・ラーラァ)
43歳女子大生。純白の天使。オザワ先生にその身を捧げる。

・リウ・パイロン
54歳大統領。鋼の肉体。オザワ先生のライバルであり変態。

・ハオ(リー・チンハオ)
53歳ダメ男。太極拳の先生。オザワ先生の友達。

・リーラン
43歳ダメ女。寝たきりの母。オザワ先生の愛人。

・小飛
18歳女子大生。ほぼ犬。オザワ先生の愛玩犬。

・メイファン
27歳女。殺し屋。オザワ先生の命を狙っている。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 17:06:45.67:2mhUStW2
「オザワアァァァアッ!!」

メイファンは牙を剥くなりオザワ先生の首をもぎ取った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/05(金) 17:07:44.55:2mhUStW2
「ハハハハハ!」

もぎ取ったオザワ先生の首がメイファンの高く掲げた腕の先で笑う。
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/05(金) 22:03:29.83:u7sB0iQL
                 ,.――
               / ,ー―ヾヽ ,   ハハハハハ!
               | ノへ、=ノ'i))
              ノノノ.[ゑ]‐[ゑ].i  ,   ____
             ((.(6  /・・ヽ|ノ    ハ((.__\
                ヾ|  i.‐∀‐ノ     (i._  _ l彡|   
                 _ノ  `ーi´      | ・〉. ・` Vノ^)   
          / / nノ´     ´⌒ヽ   l| (_,ヽu  i.J  も、もう勘弁してくださいや     
           | l  l´ミ゚    │    Yヽ  ヽ`ニニ´/
.   ズッ      `人  @ 人 @ ノ / / i‐一  \
.       ズッ  /  〜〜 / ̄`ヽ / /    /  |
      __   /  '⌒⌒/     ヽノ    /  /
   /´     ̄ ̄' ⌒⌒ ´  l⌒l   ヽ   /  /
  /      // lλ '     ヽ \   ヽー _. /
      ノー----/::::,'、_   _,ノ `ー`ヽ ヽ―''"´
    /',  `''‐- |::ノ(| ゚。 ̄...      (    \
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 10:40:50.61:dc5IybK+
「なぁ、ちょっと頼みがあるんだが……いいか?」
ヘイロンは高級車の後部座席でリウ・パイロンと並び、窓の外を眺めながら言った。
「なんだ」リウは優しい微笑みを浮かべて聞く。
「出来れば、な。いつか俺と手合わせして欲しいんたが……」
「ウム! いいな、それは」リウは柏手を打った。「次期大統領たる者、武も極めていなければならん」
「その話はまだ決まってねぇよ」
「とにかくお前の武を見たい。早く見せてくれ。おい運転手、停めろ」
「いきなりかよ!?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 10:46:37.95:dc5IybK+
車を停めたところにちょうどいい広場があった。リウとヘイロンは向かい合って立つ。
「いいのか? その高そうな背広、脱がないと傷物になるぜ?」
「フッ。この背広に汚れでもつけられたら大したものだ」
そう言うとゆっくり散打の構えを取ったリウ・パイロンの姿にヘイロンは思わず震えた。
「さぁ見せてみろ」リウが笑う。
「クリーニング代すら払わねぇぜ?」そう言うとヘイロンは新技の構えを取った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 13:04:46.37:dc5IybK+
ヘイロンはボーリング玉を腰の横に両手で持つような構えを取ると『気』を込めた。
みるみる両手のひらの間に赤い『気』の球体が生まれる。
「黒竜砲!」
そう叫ぶとヘイロンは両手を前に押し出す。すると火の玉のように『気』の玉がリウ・パイロンめがけて放出された。

闘神様が適当に教えてみたら偶然出来た、ヘイロンの才能と思い込みの強さが産んだ新必殺技であった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 13:18:52.21:dc5IybK+
「ムウッ!?」
さすがのリウ・パイロンも驚いた。
「こんなものは……」
しかし赤い闘気を込めた拳を緩め、掌で簡単に『黒竜砲』を払い退けると、ヘイロンめがけて突進した。
「邪道だぁー!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 13:22:11.37:dc5IybK+
ヘイロンは確かに自分の顔めがけて真っ直ぐ飛んで来るリウのストレートを未来に見たはずだった。
しかし赤い闘気を込めた拳は一瞬、嘘のように消え去ると、海底噴火のように真下から人間技ではないスピードで飛び上がって来た。
ヘイロンが30m空を飛ぶ寸前で拳を急停止させると、リウはニヤリと笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/06(土) 13:32:41.99:dc5IybK+
「ま……参った」
腰が抜け、その場にへたり込んでヘイロンは言った。ジーンズの尻が土で汚れた。
「……さすがだな」
しかしヘイロンの顔は笑っており、悔しそうと言うよりもなぜか嬉しそうだ。
「妖術みたいな真似をするな馬鹿者」リウは言った。「こんなものでは現役散打王は倒せても、この俺は倒せんぞ」
「現役チャンピオン倒せるんならいいんじゃねぇか!?」
「いいものか! 男なら肉と骨で勝負しろ。こんなものは邪道だ! マンガだ!」
「ドラゴンボールは嫌いか?」
「とは言え、さすが我が息子よ。お前の才能は大したものだ」
「いや、一発しか打ってねぇんだけど……」
「その一発でわかったさ。『気』を飛ばすなど、あのメイファンでも出来なかったことだぞ」
「でも通じなかった」
「使い方が単純すぎるのだ」リウの目がきらめいた。「使い方次第では、その技は生きる」
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/09(火) 07:17:15.96:APrDhOTk
たまに人を殺したくてしょうがなくなる時があります

特に自分の大好きな人が、幻滅するような言動をした時とか、つまらなそうな顔をしている動画を見た時、

その人の後ろからナイフで刺して、顔やお腹や性器を裂いて、中にあるものを目で見たくてしょうがなくなったり

異常でしょうか?

ちなみにそんな時はいつも小さくイライラはしていますが、興奮してはいません
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:21:01.75:APrDhOTk

殺せばいいだろ
お前はそいつのことを愛してはいなかったし
そいつはお前に愛されるに足る人間じゃなかったんだ

っていうか愛すべき人間なんてこの世にいねぇよ
一人も
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:27:12.74:Vk4MrtOL
pringのアプリ新規登録、せこい奴ばっかだね。
招待コード使って新規登録してもらうだけで、自分に500円入るのに謝礼しない奴ばっか。
俺は400円謝礼として送金するよ。

招待コード rguyen

登録は後でを選択してから、上記の招待コードを登録するべし。
俺はマジで500円もいらんから必ず400円送金するよ。
だから招待コード使って新規登録してくれた貴方には計900円が入るよ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:31:30.76:APrDhOTk
ネットで誰かの相談書き込みにそんなレスをすると、メイは立ち上がった。

午前11時の大学の中庭は立ち止まる学生はなく、行き交う学生はチラホラといた。

未来に向かって明るい顔をした学生達が眩しかった。
メイはその眩しさに、あからさまに不快な顔をすると、少し離れたところにホウキが立て掛けてあるのを見つけ、そこへ向かって歩き出した。

「あら、リー・メイメイさん。珍しくお一人?」

後ろから声を掛けられ、面倒臭そうに振り向くと、ムームー先輩が取り巻き二人を従えて笑っていた。

「最近いつも取り巻きに囲まれていますわよね? 羨ましいこと!」

歪んだ笑いを浮かべ、化粧品の臭いに身を固める金髪女をまじまじと見つめ、メイは「ぷっ」と笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:39:47.55:APrDhOTk
「なっ、何ですの、今の笑いは?」
ムームー先輩は不快感とともに憎悪を剥き出しにしながらも、一歩引いた。
それがあまりにも醜いものに見え、メイは心地よい表情になると、言った。
「お前、いいな」
「は!? なっ、なっ……何?」
「私と一緒に歴史を作らないか」
「れっ、歴史? 何を言い出しましたの、この子は?」
取り巻きの女の子二人が前へ出てメイを睨みつけながら唾を飛ばす。
「ちょっとアンタ!? 調子に乗りすぎじゃない?」
「ムームー先輩こそ北大のみならず中華を代表する歴史になるべき人よ!? 何をアンタが上みたいな……」
取り巻き二人の首が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:47:49.99:APrDhOTk
目の前で友人二人の首が無くなり、血を噴いてそれぞれの胴体が芝生に倒れるのを見ながら、ムームー先輩は言葉を失った。
「さぁ一緒に来い。お前に歴史が動く様を見せてやる」
そう言うとメイはムームー先輩の手を掴み、引っ張って歩き出した。
ムームー先輩は絶叫する顔になりながらも声が出ない。ただ引っ張られるままに歩いて行く。
立て掛けてあるホウキを手に取ると『気』を流し込み、メイは一瞬でそれを鎌に変えた。
「全学生の首をはねるぞ。何人いる?」

二人の女学生の死体に気づき、学生達が集まって来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/09(火) 07:57:55.46:APrDhOTk
「おかしいな。これほど連絡がないというのは……」
リウは気を遣って部屋の一番遠いところに立ち、ララに言った。
ヘイロンは黙り込み、何度もメイにメッセージを送った自分のスマホをまた見る。
「所詮……ダメ人間同士が子育てなんて、無理だったのよ」
ララが涙まじりにまた同じことを言った。
「君はダメ人間なんかじゃない。メイちゃんは私も羨むほど立派な娘さんだよ」
リウがまた同じことを本心から言い、ララを慰める。
「やはりこれは家出では?」ヘイロンが言った。「フェイにも連絡してみたが、学校でも見掛けてないそうだ」
「お前はもういいから学校に行け」リウがヘイロンに言う。
その時、小飛からヘイロンに電話がかかって来た。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/12(金) 09:56:44.51:xkxhl73p
てs
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/14(日) 23:31:01.47:f+Y5+uVg
「なんだ? どうした、フェイ?」

ヘイロンが電話に出ると、小飛はのんびりした声で言った。

「てs」

「てs? なんだ、てsって?」

「ロンロン、学校来てないの?」

「あぁ……。ちょっとな」

「来てごらんよ。面白いものが見られるよ」

「メイは学校に来てるか?」

「んー……。知らない」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/15(月) 17:51:32.63:YU9fcV6C
「まぁ、学校に行ってみる。メイももしかしたら来るかも知れないしな」
そう言うとヘイロンは荷物を肩に掛け、歩いて出て行った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/16(火) 07:14:41.05:4KAHWoQw
ヘイロンが学校に着く前からパトカーがやたらと騒がしかった。
何だかわからないが嫌な予感のしたヘイロンは駆け出す。
目の前の空に血飛沫の靄がかかっていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/16(火) 07:24:59.04:4KAHWoQw
「あっ、来た来たー」
小飛がヘイロンに手を振った。
メイがその後ろに並んで立っており、その腕は付着した血で分厚く鎧のようになっていた。
辺りは一面戦場のように学生達の死体で埋め尽くされている。
「見て見て! ロンロンの彼女のメイちゃんはヒトゴロシだよぉ〜?」
小飛がさもザマァミロという風に言い、くすくすと笑った。
「じゃ、もう、いーよ? 待ってくれてありがとね」
メイに振り返ってにこやかにそう言うとすぐ、小飛の首が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/16(火) 07:31:24.24:4KAHWoQw
その大量殺戮事件はすぐにニュースになり、ララとリウ・パイロンの端末にも速報が入って来た。

「これは……まさか……?」
顔を険しくするリウを突き飛ばす勢いでララは駆け出した。

「メイ!」
神を呪い、自分をも呪う表情を浮かべて、ララは息が喘ぎに変わっても駆け続けた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/16(火) 07:33:01.41:4KAHWoQw
ヘイロンの前で小飛の首が飛んだ。

ヘイロンは夢を見ているのだと必死に自分に言い聞かせた。

メイがゆっくりと、笑いながら近づいて来る。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/16(火) 07:47:00.86:4KAHWoQw
学校に行くと、いつものように、メイと小飛が笑顔を浮かべて自分を待っていた。
いつもの光景だった。
ヘイロンはそんな日々がずっと続くと思っていた。

「よう、ヘイロン」斬り落とした小飛の首を蹴り飛ばしながら、メイが言った。
その声はいつものメイの声だった。
何も変わらなかった。
ただ、自分のことを「ロン」と愛称では呼ばなかった。

「乗っ取られたのかよ……?」
ヘイロンは震える声で言った。

「乗っ取られた?」メイは白い牙を見せ、勝ち誇ったように笑った。「元々これは私の身体だぜ?」

パトカーのサイレンの音が遠い。
武装警官隊も見当違いの場所で散開しているようだ。

「大体」メイはなぜか悔しそうにヘイロンを睨みつけた。「お前が好きなのは、メイじゃなくて私だろ?」

ヘイロンは左腕を顔の前に構え、ゆっくりと体を躍らせ始める。
赤い闘気がその拳に集まり始める。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/17(水) 15:57:09.36:LUTBjPKT
父リウ・パイロンから仕込まれたばかりの新技があった。

リウの言ったことをヘイロンは思い出す。

「『気』を飛ばしたところで威力は弱いし、びっくり技にしかならん。しかも邪道だ。
 お前の得意は何だ。スピード満点の左のジャブで相手を掻き乱し、隙を突いての右ロングフックだろう、堂々と。
 そこにその『気』の弾を乗せろ。リーチが格段に伸び、威力も上がるし、邪道じゃない。
 相手はびっくりした瞬間には喰らっている。これは邪道じゃない。言わば伸びるフックだ」

ヘイロンはステップを踏み、メイの可愛い顔を睨む。
その可愛い顔は返り血で真っ黒に濡れている。

「おぅあ!」
声を上げ、間合いを詰めると同時に高速のジャブを放ったヘイロンの首が飛んだ。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/17(水) 16:02:46.24:LUTBjPKT
その瞬間、ヘイロンは思い知った。
自分がどれだけリー・メイメイのことを愛し始めていたかを。
自分が愛しているのはメイの中のメイファンではなかった。
メイを助けるべく、ヘイロンはメイファンを躊躇なく殺しに行ったつもりだった。
しかし、人質を取られているも同然だった。
メイの身体を本気で破壊するための攻撃など出せなかった。
その大きな心の隙をメイファンが見逃すはずもなく、また何の躊躇いもなかった。
殺意のままに繰り出された手刀がいとも容易くヘイロンの首を斬り落とした。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/17(水) 16:05:29.18:LUTBjPKT
「フン、つまらん奴だな」
そう言うとメイは、崩れ落ちかけるヘイロンの胴体をさらに真っ二つに裂いた。
「童貞のまま死ぬ心地はどうだ?」
そう言いながらヘイロンの死体をぐちゃぐちゃに斬り刻むメイの頬を一筋の涙が零れていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/18(木) 00:44:09.46:b1x0ZmNq
深い悲しみに包まれた彼はスーパーチャイナ人へと姿を変えていた
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/18(木) 05:17:34.58:4qhd5w/I
遠くのほうから全速力で白い「気」が走って来るのを感じ、メイは嬉しそうに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 07:17:20.05:bPc8C/OJ
息を切らして駆けて来るララの白い姿が見えて来た。
その身体は細く、柔らかそうで、少し押しただけで簡単に折れそうに見える。
栗色の髪を揺らして立ち止まると、膝に手をついて息を整えながら、まっすぐにメイを見た。
メイの足元に広がる桜色のミンチがヘイロンであるとはまったく気づいてもいなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 07:26:41.55:bPc8C/OJ
ララは血肉の海に立つメイを見た。
昨日学校に着て行った白に大きな花模様のTシャツに茶色のショートパンツが紅く染まっていた。
長い黒髪をベトベトに濡らし、赤い光を浮かべた大きな瞳をこちらに向け、白い牙を見せて笑っていた。
そのお腹の中に金色の『気』の球体がはっきりと見える。赤ちゃんの無事を悟るとララはほっとして微笑んだ。
「メイ……」ララは荒い息の合間にそう言うと、愛娘の身体に向かってゆっくりと歩き出した。「いいえ、メイファン」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 07:42:22.35:bPc8C/OJ
殺気がないので近づくに任せた。ララはゆっくり近づいて来ると、メイの身体を優しく抱き締めた。
「ごめんなさい。あたしの愛し方が足りなかったのね」
ララはそう言うとメイの顔を見つめ、涙を流した。
「愛しているのよ、メイファン。あたしの妹……」
「そうか」
メイファンはにっこり笑ってそう言うと
、ララの腹部に手刀を突き刺した。
手刀はララの背中まで貫通し、人工物ながらもしっかりと赤い血が、大量にヘイロンのミンチの上に降り注いだ。
「私はメイとお腹の子だけを愛して生きることに決めた。だからお前は用済みだ」
メイファンは楽しそうにそう言うと、ララの目から上を横に斬り飛ばした。
「最期に何か歯の浮くようなこと言われてたまるか。早く消えろ」
眼球半分から上のなくなったララの桃色の唇がパクパクと動いたが、何も言葉にはならずに消えた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 11:15:49.18:rGAEz8MZ
ララの脳みそから火星人が現れた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 11:48:43.36:mBfpvc6e
「よっ、ララも来たのか」
習近平別邸にあるメイファンの部屋のベッドの上で、17歳の頃の妹が手を上げて笑った。

「メイ?」
ララは言葉を失った。
血肉の海の上で自分の娘を抱き締めていたはずだった。一体いつの間に、ここに?

自分と同じ顔をした肌の黒い妹が、優しくも悪戯っぽい笑顔のまま、言った。
「なぁ、ララ。私と一緒に人生をやり直さねーか?」
「人生? 何?」
「思えばひでー人生だったよ。親に捨てられるわ、皆から忘れられるわ、結婚式前日に殺されるわ……」
「あたしには……ハオと、メイが……」
「ハオには浮気され、娘には殺されちゃっただろ」
「でも……」
「私は愛され足りな過ぎた。お前は愛する者から愛を返して貰えな過ぎたんだ」
「そんなこと……!」
「ま、やり直そうや」
メイファンはそう言うと、異世界への扉を開いた。
「こっちへおいで。ttps://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1545547569/
産まれたところからやり直そう」
「でも、メイが……!」
「メイは私だろ」
獣のような勇ましい顔で優しく微笑むと、メイファンはララの手を取った。

頭部をなくしたララの白い身体が膝をつき、血肉の海へ崩れ落ちる。
メイは愛する母親を殺した手の感触の余韻を楽しみ、暫く放心したように天を仰いで笑っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 12:02:38.23:mBfpvc6e
リウ・パイロンは遠くで白い『気』が消えるのを感じ、自分の血を引く赤い『気』がどこにも見当たらないことも確認すると、舌打ちをした。
「やはりあの時、リー・メイメイを殺しておけば、こんなことには……! 俺ともあろう者が情に流されてしまった」
リウはメイの前には出て行かなかった。合理的に、権力を使ってリー・メイメイを抹殺しようと決めていた。
「人民解放軍のアホども、どこを探している! ターゲットは明後日のほうだ。探索のための『気』も使えんのか!」
元よりリウは現代兵器などあてにしてはいなかった。人間を超えた戦士の肉体に勝るものはないと思っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 12:04:03.93:mBfpvc6e
「俺には世界各国に17人の隠し子がいる」
リウは人民解放軍のモニター室で、宙空を見つめながら呟いた。
「今こそ我が戦士の血を受け継いだ彼らを戦場に放つべき時が来たのだ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 12:07:33.73:mBfpvc6e
ようやくやって来た軍隊の前で、メイは自分の身体を巨大な黒い手裏剣に変えると、
壁のように立ち並ぶ兵士達の身体を真っ二つにして空へと飛んで行った。
「ハハハハ! 楽しい! すべての人間を皆殺しにしてやるぞ!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 20:46:13.93:mr3kv/At
「リウ・パイロン、次は貴様だ!」
手裏剣になって飛び続ける空の上から、メイは憐れな地上へ向かって言葉を吐いた。
「ヘイロンやララのように、首をはね、身体をズタズタにしてやる!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 20:54:32.56:mr3kv/At
「メイファン……」
指令室の椅子にふんぞり返って座りながら、リウはワクワクしている自分を隠し切れずにいた。
「またお前と殺し合えるのだな」
傷だらけの顔を子供のように昂らせ、口角を歪に上げて笑った。
「しかし俺は年老いた。俺の代わりに俺の子供達がお前を殺しに行くぞ」
電話機を取り出すと、電話帳を開いた。
もう27年もかけていないその番号は、まだその名前とともにそこにあった。

服部 杏子

「杏子、お前は男の子を産んだな。そいつはちゃんと俺の熱い血を受け継いでいるか?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:01:58.71:mr3kv/At
さらに電話帳をスクロールする。

ディークシャ・アハマーン

「ディークシャよ。お前は女の子を産んだのだったか。生きているなら今年20歳になるはずだ」
「インドの戦神は何だったか? ガネーシャか? わからんが、その子が戦神の心を秘めた女戦士となっていることを願う」

さらに電話帳を検索する。
アメリカ、ドイツ、韓国、南アフリカ……
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:06:03.01:mr3kv/At
「リー・メイメイを倒した子は正式に俺の子と認めよう! 中華人民民主主義共和国初代大統領の嫡子だ!」

リウ・パイロンは先ず日本の服部杏子に電話をした。

日本の柔道家と試合をした時、通訳を務めた女性だ。
顔は醜かったが、中国語の話せる日本人女性は珍しく、リウは迷わず関係を持ったのだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:09:17.13:mr3kv/At
『もしもし?』
日本語で杏子は電話に出た。

「ウェイウェイ? 杏子かい? 久しぶりだね、リウ・パイロンだ」

『リウさん!?』

「思い出話は後にしよう。君は確か、僕の子供を産んだね? 男の子だったはずだが……」

『拳士郎のこと?』

「ケンシロウ?」リウはニヤリと笑った。「いい名前だ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:12:35.53:mr3kv/At
ハオは国際電話でリウ・パイロンから娘が大量殺戮に手を染めたこと、ララが殺されたことを聞くと、力なく項垂れた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:13:21.45:mr3kv/At
『パパの浮気がすべてを滅ぼす』


               〜 完 〜
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/19(金) 21:20:36.63:mr3kv/At
「これ……バッドエンドだよな?」

しかし主人公だった頃に持っていた、レスを遡りやり直す力は失われていた。

「このまま……物語を続けるしかないのかよ」

涙がボトボトと床に溢れて落ちた。
嗚咽が激しく身体を揺さぶり、暫く独り言も言えずに泣き続けた。

「メイは……僕が殺す」
ようやくそう言うと、顔を上げた。
「可哀想なメイ、僕が自由にしてあげる。そして僕も死ぬ。どうか誰か、僕とメイとララを、同じ墓に入れておくれ」

四千年に1人の天才と呼ばれた拳士は、産まれて初めてやる気の灯った目で中国の方向を睨んだ。
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/19(金) 23:22:59.92:nNNUdMYt
        ,.,.,.,.,.,.,.,.,__
       ,,;f::::::::::::::::::::::ヽ            
..      i::::::::/'" ̄ ̄ヾi           
      |:::::::| ,,,,,,  ,,,,,,|          
      |r-==(へ);(へ)
      ( ヽ  ::..__)  }    おそれながら申し上げます。このスレのどこに乙武氏を侮辱したり
.      / ヽ..  ー== ;     誹謗中傷している書き込みがあるとおっしゃるのでしょうか?
     /   \___ !       私は一武道家に過ぎません。たまたま私の容姿が乙武氏に似ているからでしょうか?
     /  | |   / |     それは恐らく気のせいだと思われます。AAいわゆるアスキーアートは、ネット上に              
    /   | |  / | |     あらゆる人物に似せたものがあります。当道場では、礼節を重んじるため、折りしも               
    /   l | /  | |     好都合なことに、「稽古を始めます。礼!」というセリフにピッタリのAAがたまたま           
   /    | ⊥_ーー | ⊥_      このAAであったにすぎません。どうか誤解をなさらぬよう、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。             
   |  `ーヽl_l_l.} ヽl_l_l.}               
  (、`ーー、ィ   } ̄`   ノ.               
    `ー、、___/`"''−‐"
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/20(土) 18:08:53.49:CRGbm1fw
しかしその後、リー・メイメイは少しの事件も起こすことなく、大人しくなった。

リウ・パイロンは思った。
「まるで俺の子供達と闘うことを楽しみに、準備をしているようだ」

リー・チンハオは思った。
「……」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/20(土) 18:11:40.27:CRGbm1fw
ハオは中国に帰って来ていた。

桂林の山奥で修行をしていた。
愛娘を殺すための修行をしていた。

その心は『無』だった。

ハオは今、タバコも吸わず酒も飲まず、セックスをしなくても、それどころか何もしなくても生きていられた。

2ヶ月の間、一言も言葉を発していなかった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/20(土) 18:37:12.53:CRGbm1fw
メイは大都会杭州の町中に隠れていた。
とある富豪を殺して得た金でボロアパートを借り、そこで大人しく暮らしていた。
暇ばかりだったのでアパートの軒先に椅子を置き、いつもそこで通行人を眺めていた。
眺めているうちに、人間に対する憎しみがすぅっと消えて行った。
殺す価値もない人間がほとんどであることに、メイは自分の憎しみの大層さが馬鹿らしくなり、牙も見せずに笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/20(土) 18:43:03.86:CRGbm1fw
部屋に入るとメイは今日もすべての『気』を自分のお腹の中へ送った。
お腹の中で、メイの黒い『気』の栄養を受け、金色の『気』は急速に大きくなっていた。
新生児相当になるまでまだ半年ある筈だったのが、もう一歳を越えていた。
「そろそろ喋り出すぞ」
メイはそう呟くと、愛しげに自分のお腹を撫でた。
「早く、もっと早く大きくなれ、玉金(ユージン)。私と一緒に生きよう」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/21(日) 06:51:14.79:WG6Y/QaY
それから5日後の朝、メイがレバニラ炒めを作っていると、お腹の玉金(ユージン)が初めて喋った。
「マー」
メイはニヤリと笑い、間違いを訂正してやる。
「私はママではない。お前のお姉ちゃんだ」
「マー」
「まぁ、よい。少しずつ教えて行こう」
ユージンは口がないのでメイの口を使って喋る。
自分の口が自分の中のもう1人の意思で動く感覚が何だか懐かしかった。

「さぁ、栄養のつくものを食べて、もっと早くお前を大きくしてやろう。1ヶ月後には10歳ぐらいまで育つ予定だ」
メイは卓に着くと、大量のレバニラを喰った。
「早くお前の能力が見たい。お前の金色の『気』には一体何が出来るんだ?」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/21(日) 07:15:56.41:WG6Y/QaY
メイはアパートの軒先に置いた椅子に座り、軽蔑の色を眼差しに浮かべながら、通行人と町のうるさい景色を眺めている。
そうしながら、ふと8月11日がとっくに過ぎていたことに気がついた。
「自分の誕生日を忘れるとはな。そうか、もう19歳になっていたか……」
メイにはもちろん指名手配がかかり、懸賞金もかかっており、この町のあちこちにも顔写真と特徴を書いたビラが貼られていた。
しかし『気』で顔を変え、ユージンを大きくするための大食いで体型も変わっているメイは、誰にも気付かれなかった。
「ヘイロンがプレゼントを用意してあると言っていたな。一体どんな笑える物だったか、見てみたくはあったな」
メイは馬鹿にするように思い出し笑いをした。
「しかしヘイロンなら私を見つけるかもしれないな」
顔と体型を変えたぐらいで自分を見つけることが出来ない無能な人間どもにため息を吐きながら、メイは呟く。
「外見は変わったが、内面は何も変わっていないぞ。私の黒い『気』を、誰か見つけてみろ」
その時、目の前で声がした。
「見つけたぞ」
メイがやる気のない顔を上げて見ると、そこにカモシカのように伸びやかで逞しい四肢を持つ黒人の男が立っていた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/21(日) 18:52:53.74:2ZmBpNl7
「リー・メイメイだな?」
「誰だよ、お前」
二人は英語で会話を交わした。
「俺の名はアジシ・オハール。お前を倒しに遙々南アフリカからやって来た」
「そりゃご苦労さん」メイは自分より優れた9頭身の体躯に見とれなから言った。「『気』が使えるんだね」
「俺はこの国の英雄リウ・パイロンの子だ」
「へぇ。リウに懸賞金でもかけられたか?」
「お前を倒せば認知して貰えるのだ」
「セコいな」
「ほざけ! 俺と母さんがこれまでどれだけの苦労をして来たことか……」
「なんかどっかで聞いた話だな」
「立て! この俺と勝負しろ!」
「ふぅん」メイはだるそうに立ち上がりながら、言った。「見つかったのがアホな奴で助かったぜ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/21(日) 19:07:19.57:2ZmBpNl7
メイは立ち上がるなりアジシの腹に手刀を突き刺し、血が流れ出る前に空高くへ放り投げ、それを追って飛び、
誰も見ていない空の上でアジシをバラバラに斬り刻むと、地上に血の小雨を振り撒くつもりだった。
しかしアジシは最初の光速の手刀が腹に刺さるのを避けた。
「へぇ? ヘイロンよりやるじゃないか」
素直な感想を呑気に漏らすメイの顔面にアジシの鞭のようなキックが飛んで来た。
ヒットした、とアジシは思った。
しかしメイはいつの間にか背後にいて、手刀を腰から腹へ貫通させていた。
しかしそれはメイの錯覚だった。アジシは背筋を鋼のように硬くすると、メイの手刀を逆に潰した。
それもアジシの錯覚だった。メイは鋼と化した背中に掌で触れると、『気』を高圧電流にして流し込んだ。
黒焦げになった、と思ったアジシは3mの距離を取り、こちらを向いて構えていた。
「いいな、お前」メイはニヤリと笑った。「場所を変えよう。ここでは本気が出せん」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/23(火) 18:05:38.49:6dJUuTha
「あれはうちの子じゃない」
トンファンが言った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/23(火) 19:19:27.76:xc8QvY6+
二人は川に掛かる橋の下へ移動した。

「ここならいいか?」アジシが聞いた。
「なぁ、ひとつ聞くが」メイは白目を剥いて笑い、舌なめずりをした。「私が勝ったらお前の身体、好きにしてもいいか?」
「屍姦するつもりか」アジシは顔を不快そうに歪めた。「この変態デブス女め!」
アジシの言う通り、メイは指名手配から逃れるため吹き出物だらけのむくんだ顔にぶよぶよ体型に変わっており、可愛い顔に美脚自慢の美少女の面影は微塵もない。
歯磨きをしていない口でネッチャリと笑うと、メイはアジシを眺め回しながら言った。
「お前のその脚、セクシーだよなァ」
アジシは背筋にびっしりフジツボが生えた心地がした。
「気色が悪い! 退治してやる!」
アジシの黒いしなやかな脚が鞭のようにしなった。
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/23(火) 23:06:37.24:qWbMYy6A
                                  / t;;;;;;;;;;;;;;ノノ;;;;;;;こ;;;;
                                  /   ヽ;;;;;;≡;;;;;;;;;;;ヾ;;;;
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          ,.,.,.,.,.,.,.,..,.,.                    )i)ノ   ノノ б);;;;;;;;;;;ミ
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        |/ ,,,,_  ,,,,,,_ヾ|   アンタじゃ無理だ        `ー=、      j、   );;;
       |=(三)=(三)=|   オレが代わる        ヾ~´   ノ i、 ,,ノ/;;;
       {  :::(__..::  |       _,,;=-‐‐-、   ,-‐-'"^ヾ`l   /  ヽ  イノ
.       ',  ー=ー  ', ..ー-=、_ / |ノ   >ィ`ー、_-ヽ `tゝ=''T")   `i、
     _,,ィt, ヽ___ /  ヽ   T"     /~>-‐-、rヽヽrヽ   | j----、、 _,,..ィ
   /j  :l   `'=='"      ,ノ     ,,(,イ´   ``^'''"´   l l __  7'
-tー'" i'  ノ   ヽ、    _,,;=''"_,,.;:    /              ll   `ヽ/
 |  `ー―--==、_ヽ ,,,.ィ'"´  ´  、 ,, /     ,/'         l.     j   /
    i  _   `7´ ,,,..-‐=    ナi"      (:j         l`i、 \l   /
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 08:45:59.22:0f8sJAwU
8本足の黒い悪魔が上からのしかかった。
アジシは四肢を押さえられ、メイの醜い顔に見下ろされる。
10日間歯磨きをしていない口の中から、糊のような唾液に包まれた紫色の舌が伸びて来た。
「やめろっ! やめろ!!」
激しく横に振るアジシの首を一番前の前脚2本で固定すると、メイは開かせた口の中へ舌を突っ込んだ。
噛み切ることは許されなかった。喉から奥へと入り込んだ舌は、食道を内側から舐め回し、
豊穣な臭気を放ちながら肺の内側を唾液で濡らし、心臓を舌先で脅迫した。
ずるりと一度舌を抜くと、メイはアジシの口の中へ勢いよく唾を放った。
唾は臭いぬめりとともに奥まで入り込み、やがて鳩尾の奥あたりで止まり、金色の光を浮かべた。
「マー!」
自分の口が勝手に喋り出すのにアジシは恐怖した。
「マー! たべる! たべた!」
「ななななんだこれは!」
アジシが声を出すのと勝手に喋る声が重なると、この世とも思えない不気味な合成音となり、暗いアパートの部屋に黒く響いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 09:00:27.09:0f8sJAwU
「さぁ、それではそろそろお前を殺そうか」
メイはそう言うとベッドから離れ、隣の部屋の扉を開けた。
「来い」
扉の向こうに向けてそう言うと、汚れきったどす黒いドレスに身を包んだ縦ロール金髪のお嬢様が現れた。
「ムームー先輩、あいつをこれで殺してくれ」
メイはそう言いながら拳銃をお嬢様に渡す。
受け取ったムームー先輩はとめどないよだれを床に落としながら、眼窩から飛び出した目でアジシの姿を捕らえた。
「イキマスワヨ!」
空気が裂けるような甲高い声で叫ぶと同時に、ムームー先輩はアジシを撃った。
弾丸は大きく外れ、ベッドの背もたれに煙巻く穴を開けた。
さらにムームー先輩は撃つ。しかしまったく狙いは定まらず、今度はアジシの足先をかすめただけだった。
「モットー! モットー!」
勝手に喋る自分の口がさらなる銃撃を催促する。
後ろで椅子に腰掛けて笑いながら、メイが言う。
「キチガイの弾はどこに飛ぶかわからんから面白いな」
ムームー先輩が続けて2発撃った。
1発はアジシの顔の横でマットレスに鈍い音を立て、もう1発はベッドの柵で跳ね返ってメイの肩に当たった。
「面白い、面白い」メイは肩から流血しながら大笑いする。「誰でもいい、誰か死ね」
アジシの口が勝手にキャハハハハと大声を上げて笑う。
次にムームー先輩が雑な動きで向けた銃口は、まっすぐ自分の額を向いていた。
アジシが覚えているのはそこまでだった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 09:05:53.46:0f8sJAwU
「エヘッ……エヘヘッ!」
完全に気が狂ったアジシの拘束を解くと、メイはその胸に手を差し込んだ。
そして狂ったアジシの『気』を取り出すと、側にあったゴミ箱の中へ捨てた。

「さぁ、ユージン。この身体はお前のものだぞ」
「マー!」アジシの顔が無邪気に笑った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 11:52:54.60:0f8sJAwU
南アフリカの隠し子アジシ・オハールの行方不明を聞いて、リウ・パイロンは顔をしかめた。
「見つけたのかもな」
聡明な顔つきの若い東洋人がリウの呟きに答えた。
「彼は特に動物的なカンが利くようですから」
「しかし……見つけたのなら知らせろ! 単独行動をするな! バカめが!」
「お言葉ですが」黒い肌の美しい若い女性が口を挟んだ。「みんな、ご褒美を独り占めしようとしているのですわ、パパ」
「エサの用意のしかたがマズかったというのか」
「お言葉ですが、その通りかと。協力プレイをさせるようなルールに今からでも改善すべきですわ」
「その点、お前らは心配がないな」リウは二人の名前を呼んだ。「服部 拳士郎、ラクシュミ・アハマーン」
「えぇ、お父さん」拳士郎は爽やかに笑った。「会ってすぐにこんなにも感じ合えた女性は初めてです」
「私も、驚いています」ラクシュミは頬を赤くしながら隣の拳士郎の顔を見つめた。「しかもコンビネーション技がいきなりあの完成度ですから」
「確かにな」リウは満足そうに笑った。「リー・メイメイを倒せるとしたらお前達だと俺は思っている」
「僕達、リー・メイメイを討った暁には結婚しようと思っています」
「おいおい、一応お前ら兄妹だぞ」
「そんなこと」ラクシュミは嬉しそうに笑った。「愛の力で乗り越えますわ」
「エル……」
「ケン……」
二人は手を取り合い、見つめ合った。
「敵わんな」リウは苦笑いしながら薄くなった頭を掻いた。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 11:57:50.94:0f8sJAwU
「あっ」突然、拳士郎が声を上げた。
リウがどうした? と聞くと、彼は黒縁眼鏡に手を触れ、虚空を見ながら答えた。
「タニア・フェイニャォが『気』を消しました。いつの間にか反応がありません」
「見つけたのか」
「恐らくそうだと思われます。タニアも独り占めを狙っているものと……」
「バカもーん!」リウは怒鳴った。「タニア! お前に一人で何が出来るか!!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 12:10:59.04:0f8sJAwU
メイは図書館で調べ物をしていた。赤ちゃんをより早く成長させるにはどうすればいいかを知りたかったのだが、そんなことを著した本はなかった。
真夏の陽射しが窓からレースのカーテンを透かして差し込んでいたが、クーラーの効いた室内は快適だった。
静かな空間なだけに余計にその殺気は目立っていた。しかもすぐ隣にいる。
「おい、その殺気、うるさいぞ。静かにしろ」
隣を睨むと小顔の女の子がびくりと身体を震わせた。急いでTシャツの中からナイフを取り出すと、メイに突きつけた。
「なんだ? お前もリウ・パイロンの隠し子か?」
メイが聞くと女の子は明らかにドギマギしながら答えた。
「そっ、そうよ! あなたを殺すんだから!」
「自己紹介しろ。聞いてやる」
「はっ、遥々マレーシアからやって来たのよ!」
アジシの南アフリカと比べてメイは思わず「近っ」と言った。
「名前はタニア・フェイニャォ。『マレーの奇跡』と呼ばれる19歳の美少女よ!」
「自分で言うな」
「しゅっ、趣味はウクレレ! 好きな食べ物は……」
「もう、いい。お前、戦闘力ゼロだな」
「かっ、格闘技は出来ないけど! あなたを殺す方法なんて文明の利器を使えばいくらでもあるわ!」
「その小っこいナイフが利器とかいうヤツなのか」
「殺すんだから! あなたを殺せばリウ・パイロンの正式な子供になれるんだから! これまであたしとママがどれだけ苦労して来たか……」
「またその話か」
「とっ、とにかく! 大人しく殺されて! お願い!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 12:16:42.50:0f8sJAwU
ナイフを握るタニアの震える手を面倒臭そうに見ながら、メイはため息を吐いた。
「こんな所でそんなものを持っていては……ほら、皆が見てるぞ」
タニアははっとして周囲を見回した。確かに他の利用客が自分に注目し、通報されそうな空気が漂っていた。
「ど、どうしよう。どうしたらいい?」
オロオロしはじめたタニアに向き直ると、メイは優しく言った。
「わかった。お前に殺されてやる。可哀想だもんな」
「ほっ、本当!?」タニアの顔がぱぁっと明るくなった。
「あぁ」
「でっ、でもね? 本当は、もちろん、あなたのこと、殺したくなんかないのよ? こうしようよ、あなた、あたしに殺されたことにして、国外に逃げてくれれば……」
「いいな、それ。逃亡後の援助をしてくれるか?」
「もちろん!」タニアは明るく笑った。「あたし、リウ・パイロンの子供になるんだもん!」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 12:19:49.18:0f8sJAwU
「よし、話は決まりだ」メイが言った。
「あ……あなた……あなた、いい人ね」タニアは目に涙を浮かべてメイの醜い顔をまっすぐに見た。
「じゃあ、お近づきのしるしに一緒に食事でもしないか?」
「ぜひ! どこで食べるの?」
「私のアパートへおいで」メイは優しく笑った。「ご馳走を用意するよ」
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 12:26:54.03:0f8sJAwU
メイの部屋の汚いベッドに縛りつけられ、タニアは食事を待っていた。
何かおかしい気がするが、リー・メイメイは優しいひとだ。これは趣向を凝らした新しい食事の楽しみ方なのに違いない。
そこへメイがアルミの蓋を被せた大きな皿を持って入って来た。
「お待たせ」
コックの白い帽子を被り、にっこり微笑むメイに向かってタニアも微笑み、言った。
「あっ、あの……。これ、ほどいてくれます?」
メイは無視して大皿の蓋を取った。皿には黒や茶色のウンコがたっぷりと盛り付けられていた。
「私と、ユージンと、ムームー先輩の3種ウンコの盛り合わせだ。これは旨いぞ」
言葉を失い、悲鳴を上げかけるタニアに近づくと、メイは人差し指でウンコを掬い、マレーの奇跡と呼ばれているらしい美少女の艶のある唇にそれを塗った。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 12:37:02.09:0f8sJAwU
「どうだ? 旨いか? 具体的な感想を言うまでやめないぞ?」
そう言いながら、メイはタニアの口の中へ黒や茶色のウンコを詰め込み続けた。
「ほら、どうした。飲み込め」
そう言うと皿の下に溜まっている黄金色の液体を口の中へ流し込んだ。
「ウンコばかりで飽きて来たか? 口休めに豆でも食べるか?」
メイは手刀でタニアのTシャツを切り裂いた。小ぶりな乳房の先にピンク色の乳首が露になる。
メイは側に置いてあったタニアのナイフを手に取ると、それでピンク色の豆をひとつずつ、切り取った。
乳房の先から細かな血の噴水が上がり、ベッドとタニアの褐色の身体を濡らした。
「ほら、食え」
優しい笑顔でメイはタニアの口に乳首を放り込むと、顎を掴んで咀嚼させた。ギュムギュムというような音が部屋に響いた。
「そうだ、ここにも豆があったな」
メイはタニアのスカートを捲り、パンティを降ろすと、繁った陰毛を掻き分け、大きめのクリトリスにナイフをあてがった。
創る名無しに見る名無し [sage] 2019/04/24(水) 14:48:04.32:0f8sJAwU
まだまだ二人の楽しい食事会は続いていた。
「どうした? まだ食えるだろう。遠慮なくおかわりしていいぞ?」
「キャハハッ」
「こう見えて私は料理が得意なんだ。美味しいだろう?」
「フフフッ」
「特にユージンのウンコが自慢なんだ。赤子の柔らかさと黒人の逞しさを兼ね揃えているだろう?」
「ウヘヘッ」
そこへアジシの身体に乗ってユージンが入って来た。
「マー」
「マーじゃない。私のことは姐(ジェー)と呼べと言ってるだろう」
「姐。ぼく、それがいい」
「何のことだ」
「その子かわいい。この黒いのやだ」
「やめとけ。もう身体の中ウンコだらけだぞ」
「それでもいいもん! それがいい!」
「かわいいだけの役立たずだぞ。お前にはまだわからんのだ」
「やだー! やだー! それがいいのー!」
アジシは足をダンダン踏み鳴らして駄々をこねた。
「これは遊んでから殺すんだ。かわいいのならもうムームー先輩が」
ユージンはアジシの口から勢いよく飛び出すと、タニアの口から中へ入った。
「あっ」
「うわー! まずいー!」
「そりゃ口の中ウンコだらけだからな」
「うわー! いたいー!」
「そりゃ豆とか色々切り取ったからな」
「でもいいー! かわいいー!」
クスッとメイは笑った。
「この、かわいいマニアめ」
創る名無しに見る名無し [] 2019/04/26(金) 08:45:28.41:IBoqAZGG
一方その頃────

謎の男No.1 「ほう...彼奴が例の“光の勇者”か。」

謎の男No.2 「我等の計画には“光の勇者”の存在が必要。ケケケケ!腕がなるぜ!!」

謎の男No.3 「オイNo.2。貴様のその笑い方は実に不快だ。少し黙ってろ」

謎の男No.2 「ケケケ、No.3殿はお堅いな!」

謎の男No.1 「・・・諸君!我等の今の目的は“光の勇者”を末梢する事・・・さあ、開始だ!!!」


某国の秘密組織が動き出した。この組織は一体!?

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